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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
52/107

52.治らない

「あ! そうだ、面白いものを見せてやろう。お豊も迎えに行くぞ」

「なんなんですか、急に」

 踵を返しエレベーターホールまで戻り、一階まで降りていく。

「不思議に思わなかったのか、ここがどこか?」

「それはサティの屋敷に居る時から考えていましたが、わかりませんでしたね」

「俺も最近になって知ったんだが、まぁ見ればわかるさ」

 お豊に与えた部屋の前に着いた、二階ノックして扉を開ける。


「お豊、ちょっと外に行くぞ」

「ちょいとお待ちよ、旦那。この部屋、何もないじゃないか」

 あぁそうだった内装は殆ど放置したままだったな。だが最初に言えよ。

「何もない部屋でずっと何してたんだ?」

「呆然としてたというか、旦那が戻ってくるのを待っててんだよ!」


「どうするかな…。ソフィーこの部屋も上と同じように考えてくれるか?」

「私がですか? ここはお豊の部屋ですし彼女に考えさせたら如何ですか?」

「こいつに現代的な知識は皆無だ、お前が考えた方が良い」

 お豊は短い期間だけサティの屋敷で過ごしているが、あそこもかなり原始的だったからな。

「旦那様が考えたら良いではないですか?」

「俺がやるとお豊は恐らく馴染めない。お前なら古いものの良さと新しいものの斬新さを調和がとれるはずだ」

 気が遠くなるほど生き続けているソフィーに打って付けだ。

「わかりました、では」

 むむむむっと考え込むソフィーの頭の中を覗き見る、勿論指輪を介してだ。

 上の部屋みたいに俺では理解に苦しむデザインがフィードバックされるが、少し弄って投影した。

「こんなもんでどうだ?」

「旦那様、違和感がありますが…」

 その違和感は俺が弄った部分だ、お前いつの人間だよ斬新すぎるだろ!

「なんだか派手な部屋だねぇ、でもこれは奥様が考えてくれたんだろう?」

 多少弄ったが派手さは軽減できなかった、すまん。

「旦那様が少し変更されたようですが、私が考えたものですよ」

「なら、あたしはこの部屋で良いさね」

 ならって何? お前も頭おかしいだろ? こんなピンクの部屋で普段暮らせるわけないだろ! 仕方ない、苦情が出たらその時に考えよう。

 ソフィーのセンスはちょっと俺では理解できない。人間長い間過ごしていると落ち着いてくると思うのだけど…。

「あぁ思い出した、ちょっと外に行くぞ」

「何しにいくんだい?」

「見せたいものがあるんだ。お前にはかなり難しいかもしれんが、後でソフィーに教えてもらえばいい」

 魔女って、どういったものなのだろう? 驚き過ぎて、何が何だかよく分からないままここまで来ちゃったけど。

 エントランスを越え、城の外に出る。興奮したウサオが走り回っている、そこらに穴も掘っている。



「では、ご観覧あれ! ここがどこなのか、わかるかな?」

 俺は腕を薙ぎ払うような仕草をした。天空に陰になるものは無くなり、大地もまた透ける。

 ソフィーは落ち着きなく辺りを見回している。

「ここは宇宙ですか?」

「そうだ、よくわかったな」

 俺も実験場をぶっ壊してから知ったことだ。お豊は考え込み、首を傾げていた。

 俺は大きく見える惑星を指さす。

「あれが何かわかるか? ソフィー」

「土星、木星?」

 目を細めつつ考え込み、ソフィーは答えた。

「ソフィーの知識の底が見えんな」

 今まで蓄えた知識の量は尋常ではないのだろう?

「色がそういった色だったので…」

 それにしては、この答えは小学生レベルだ。どういう風に知識を得てきたのだろう?

「ここは木星の環の上だ」

「何故こんな場所に?」

「生まれ育ったあの世界に、出来るだけ悪影響を及ぼさないように、な」

 全ての欲望を束ねてしまう俺には、これくらいしか出来なかったんだよ。


「全くもう一人で抱え込んでしまって、馬鹿なんですから」

「俺の馬鹿はもう治らない保証付きだからな、死ななきゃ治らないって云うだろ?」

 ソフィーは笑う、ほんのりと悲しみを含んで笑う。

読んでくれて、ありがとうございます。

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