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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
53/107

53.招待客

「転移扉のテストに総菜でも買ってきてくれ、今日いきなり作るのは無理だろう?」

「豊を連れて行けばいいのですか?」

「買い物も仕方や通貨を教えないと駄目だろうからな、今日は連れて行くだけでいいさ」

「そういえば、そうですね」

 空間の景色を元に戻し、お豊を連れパントリーまで移動した。


「この扉だ、何の変哲もない扉だが開けると、あら不思議」

 扉の先にはスーパーの陳列棚や客に店員まで見受けられる。

「もし違う所に飛ばされたら、ちゃんと迎えに来てくださいね」

「他の神の世界に飛ばされない限りは知覚できるはずだ。もし地球上のどこか違う場所に出るようなら迎えに行くよ」

「それは他の神の世界だと迎えに来れないと仰っているのでは?」

「原則的に他の神の世界には入れないことになってるからな、気にせず行ってこい」

 間違って入ってしまった場合は、俺には認識できないのだ。故に、迎えにいく処の話ではない。

 その場合は残滓を搔き集めて探すか、叡智のおっさんにでも訊くしかない。

「豊、買い物に出掛けますよ。付いていらっしゃい」

「はい、奥様」

 お豊のソフィーに対する呼び方は『奥様』で固定なんだな? なんか妙な感じだ。

「そこのスーパーはアジフライが旨いぞ」

 元肉屋なのだが何故かアジフライが絶品なのだ。



 ソフィーたちが出掛けたのを見届け、俺は大門の外へと移動する。

『アーリマン、叡智の王、聞こえるか?』

『私は忙しいのだが?』

『引越しをしてな、場所を教えておこうかと思ってな』

『そうか、位置は把握した。ではな』

 さっぱりしてんな、あのおっさん。アーリマンに至っては最初の呼びかけで横に現れている。

「あんたは身軽なんだな」

「暇じゃからの」

「我が家へ招待するよ、暇なんだろ?」

「良いのか? 儂なんぞ入れてしもうて」

「俺はお前らとは一線を引いているつもりだから平気さ」

「言いよるわ」

「んじゃ行くか」

 門を開き招き入れる。


「馬鹿げたものを創ったの、世界にはせんのか?」

「あぁ、いずれ壊すくらいなら必要ない」

「まだ引き摺っておるのか?」

「しょうがないだろ、俺は人間の感性を持っているんだよ」

「辛くなるだけじゃろうに」

 前庭を城へと向けて進んでいく。

「して、ここにはどの位の数で住むつもりじゃ?」

「俺と従者が二人、それに相棒だな。人間が二人、化物が二体、兎が一匹だ」

 詳細は、ソフィーと俺の肉体、俺とお豊、ウサオだ。

「それにしては大きすぎるじゃろ? 馬鹿なのか」

「ああ、馬鹿なんだよ」

 さっきもこんな会話したばかりだぞ。


「ちょいと待っておくれ、従者を呼んでもええじゃろうか?」

「一人くらいならな」

 もう現れたよ、力の扱いが上手いな歴史を感じるわ。

「お初にお目に掛かります、王。私はこちらの主の従者を務めているゲラルドと申します」

「よろしく頼むよ、うちは俺も従者も新米だからお手柔らかにね」

 顔が爺さんなんだけどキビキビと動く、お豊の男バージョンといったところだ。

「立派なお城ですな、素晴らしい造形でございますな」

「初めて褒められたな」

 例え社交辞令だろうと、初めて褒められたのは嬉しい。

 前庭を抜けやっと城のエントランスに辿り着いた、ソフィーたちはまだ暫くは帰らないだろう。

「ほぅ内部の造形まで手が込んでおるな、それにしても従者が居らんようじゃがどうしたのじゃ?」

「買い物に行かせている、時期に戻るだろう」

「お主が送っていったのか?」

「いや、俺は行かない方がいいと聞いたからな。専用の転移装置を用意した」

「そうか、半端な説明になってしもうたからの。お主、分体は創れるかの? 分体であれば影響は出ぬぞ、残滓は本体に集まるでな」

「そういう裏技があるのか、良いことを聞いたな」

 分体は指輪くらいしか創ってないから判らなかったよ。

「大事な儂らの王じゃからの、レクチャーしてやるわい」

 そんな話をしているとソフィーたちの気配が城の中に発生した、帰ってきたのだろう。


「どうやら戻って来たようじゃの」

「そうだな、迎えに行ってくる。そこらに掛けておいてくれ」

 エントランスから少し進んだところにラウンジを設けてあるので、休んでいてもらおう。

 その間に俺はパントリーへと二人を迎えに行く。

「おかえり、二人とも。テストは成功だな」

「ただいま帰りました」 「ただいまだよ、旦那」

「旦那様なんですかあのお店は! もっと早く紹介して頂けたら良かったのに」

「待て待て、俺が招待した客がいる。悪いがお豊は急ぎで茶の準備を頼む、二名分だ」

「どなたを招待なさったのですか?」

「アーリマンだ、今はラウンジで待たせている。それにしても結構買い込んだのだな?」

「アーリマン…聞き覚えがあるような気がしますが…。そうです、何ですかあのお惣菜の質は!」

 藪を突いてしまった。

「とりあえず、客を持て成そうか。食堂もあるのだが、ラウンジで良いか」

「初めて見えられたお客様ですし、ラウンジで会話を愉しむのも良いと思いますよ」

「お豊、ラウンジわかるか? 入り口の辺りだぞー。行こうか、ソフィー」

 パントリーに居るお豊に場所を教えてから、ラウンジへと急いだ。

読んでくれて、ありがとうございます。

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