51.城
「本当にもうどういうつもりなんですか? 広すぎます!」
エントランスに立ちソフィーが叫ぶ。
「俺のストレスの解消も兼ねて創り上げた傑作なのだ」
人間のままだったら絶対作れないぞ、こんな壮大なお城はな。
「そういうことを言っているのではありません! 管理はどうするのですか? お掃除は?」
「それは大丈夫だ、俺がやるからな。自分たちが使う部屋くらいは自分でやって欲しいけど」
「…いいでしょう。では、部屋に案内してください」
また怒りが爆発しない内に案内してしまおう、ただハリボテで内装など殆どやってないのだが。
「本棟は五階建てなんだけど尖塔もあるし、どこが良い?」
「…移動距離が少なく、見晴らしが良い部屋が良いです」
「なら、この上の前庭を望む部屋が良いだろうな」
上を指差し、どうかと尋ねてみる。
「では、三階辺りの部屋が良いですね」
「なんでそんな中途半端なんだ?」
「階段を上るのでしょう?」
「甘いな、エレベーター完備だぞ」
動力は摩訶不思議な神の力だ。
「それなら最上階が良いです」
女心の難しさは分かっているつもりだ、過去に痛い目を見ているからな。
「その前に、お豊を部屋に案内しようか」
「あたしの部屋かい? どこなんだ」
「こっちだ、付いて来い。あぁソレはそこのソファに置いていけ」
ソレとは俺の肉体のことだ、あとで部屋に持っていくのだ。
「こんなところに置いておくなんてダメです」
「大丈夫だって、ちゃんと把握しているから」
ソフィーは心配性なんだから。
エントランスから真っ直ぐ奥に進んでいく。右手側には大きめのパントリーがある、その対面左手側にお豊の部屋を設けた。
「ここだ自由に使っていいぞ、反対の向こうがパントリー、キッチンだな」
部屋の扉を開き説明する。
「こんなに大きなキッチン必要ないではありませんか!」
マズい、またソフィーが怒り出した。
「パーティーでもやるなら必要にもなるだろう?」
「そうですか」
目が怖い。
「それでこっちのパントリーなんだが、あそこの扉が例の転移扉だ。俺があっちに行くのは危険みたいなんでな、お前たちだけで出入り出来るようにしてある」
「行くのは分かりますが、帰りはどうするのですか?」
「認証は俺の力になってるから、帰りたいと望んで扉をくぐれば戻ってこられるだろう。たぶん」
ソフィーには分体の指輪があるし、お豊の体は俺の純正だ。
「たぶんって言いましたよね?」
「テストして無いからな、ぶっつけ本番だ。でもちゃんと双方に指標を設定して移動先は固定だし、俺みたいな失敗は無いさ」
俺みたいに過去に飛んで行ってしまうことは無いはず。
「あとで試してみましょう、それではお部屋に案内してください」
「お豊は自分の部屋で好き勝手していろ、では行くか」
構造上シンメトリーにしたのでパントリーと同程度の広さがある、一人で使うには恐ろしい広さの部屋だ。
エントランスまで戻り、俺の肉体を浮遊させて保持する。短い階段を上り左に曲がり進むとエレベーターホールだ。
「これに触れればエレベーターを呼べる」
なんてことの無い金属のボタンが固定されているだけだ、トリガーは思念となる。
触れて来いと念じれば来る、言ってみりゃ俺とこの城のある空間は全て繋がっている、だからやりたい放題なのだ。
エレベーターの箱が下りてきて扉が音もたてずに開く、ソフィーと共に乗り込み五階と念じるだけだ。
「これも同じように触れて、行きたい階層を思えば着く仕組みだ」
使い方を一応説明した。ワイヤーなど無い不思議なエレベーターなので妙な浮遊感もなく、瞬時に到着する。
「こっちだ、…ここだ」
最上階に部屋は幾つか用意してあるが、見晴らしの良い中央の部屋に入る。
「何もありませんよ?」
「お前の望みを出来る限り叶えようと思ってな、内装は何もやってない」
「それならもっとこじんまりとした屋敷が良かったです」
「それを言ったらお終いだろう、それより窓の外を見てみろ」
前庭も大門まで見渡せる景色だ。
「あら、結構良いものですね。ウサオちゃんも走り回ってます」
「ん? ウサオ外に置いて来たのか…」
しかしよく見えるな、点にしか見えんぞ。
「それで、内装と家具を思い描いてもらえるか?」
「私が考えるのですか?」
「お願いします」
ここで一気に機嫌を回復させるしかない!
分体にソフィーの思考を読ませ、フィードバックさせた。その思考を今度は俺が具現化する。
数秒で彼女のイメージした部屋の内装と家具がその姿を現す、あとは固定させるだけだ。
「どうでしょう、ご満足いただけましたか?」
それにしてもちょっと派手じゃないかね…。
「思った通りの可愛いお部屋になりましたね」
う~ん、イマイチ感性がわからないが口には出さない。
「喜んでくれて何よりだ、そのベッドには俺を寝かせても良いんだよな?」
「はい、肉体のお休み専用ベッドです」
ご丁寧にキングサイズのベッドの横に、もう一つシングルベッドが置いてあった。
キングサイズのベッドにはやる気が漲っている気がする、少し怖い。
「お前はこういうのが好みなのか、次回から参考にしよう」
「今日からここで暮らすのですね」
「ああ、そうだな」
「お城に住めるなんて、お姫様みたいですね」
さっきまでプンスカ怒っていたくせに、変わり身の早いことだ。だが、
「何言ってんだ? 女王様だろ」
読んでくれて、ありがとうございます。




