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あの人に死を  作者: 月見うどん
第3章 おっさん覚醒する
51/107

51.城

「本当にもうどういうつもりなんですか? 広すぎます!」

 エントランスに立ちソフィーが叫ぶ。

「俺のストレスの解消も兼ねて創り上げた傑作なのだ」

 人間のままだったら絶対作れないぞ、こんな壮大なお城はな。

「そういうことを言っているのではありません! 管理はどうするのですか? お掃除は?」

「それは大丈夫だ、俺がやるからな。自分たちが使う部屋くらいは自分でやって欲しいけど」

「…いいでしょう。では、部屋に案内してください」

 また怒りが爆発しない内に案内してしまおう、ただハリボテで内装など殆どやってないのだが。


「本棟は五階建てなんだけど尖塔もあるし、どこが良い?」

「…移動距離が少なく、見晴らしが良い部屋が良いです」

「なら、この上の前庭を望む部屋が良いだろうな」

 上を指差し、どうかと尋ねてみる。

「では、三階辺りの部屋が良いですね」

「なんでそんな中途半端なんだ?」

「階段を上るのでしょう?」

「甘いな、エレベーター完備だぞ」

 動力は摩訶不思議な神の力だ。

「それなら最上階が良いです」

 女心の難しさは分かっているつもりだ、過去に痛い目を見ているからな。


「その前に、お豊を部屋に案内しようか」

「あたしの部屋かい? どこなんだ」

「こっちだ、付いて来い。あぁソレはそこのソファに置いていけ」

 ソレとは俺の肉体のことだ、あとで部屋に持っていくのだ。

「こんなところに置いておくなんてダメです」

「大丈夫だって、ちゃんと把握しているから」

 ソフィーは心配性なんだから。


 エントランスから真っ直ぐ奥に進んでいく。右手側には大きめのパントリーがある、その対面左手側にお豊の部屋を設けた。

「ここだ自由に使っていいぞ、反対の向こうがパントリー、キッチンだな」

 部屋の扉を開き説明する。

「こんなに大きなキッチン必要ないではありませんか!」

 マズい、またソフィーが怒り出した。

「パーティーでもやるなら必要にもなるだろう?」

「そうですか」

 目が怖い。


「それでこっちのパントリーなんだが、あそこの扉が例の転移扉だ。俺があっちに行くのは危険みたいなんでな、お前たちだけで出入り出来るようにしてある」

「行くのは分かりますが、帰りはどうするのですか?」

「認証は俺の力になってるから、帰りたいと望んで扉をくぐれば戻ってこられるだろう。たぶん」

 ソフィーには分体の指輪があるし、お豊の体は俺の純正だ。

「たぶんって言いましたよね?」

「テストして無いからな、ぶっつけ本番だ。でもちゃんと双方に指標を設定して移動先は固定だし、俺みたいな失敗は無いさ」

 俺みたいに過去に飛んで行ってしまうことは無いはず。


「あとで試してみましょう、それではお部屋に案内してください」

「お豊は自分の部屋で好き勝手していろ、では行くか」

 構造上シンメトリーにしたのでパントリーと同程度の広さがある、一人で使うには恐ろしい広さの部屋だ。

 エントランスまで戻り、俺の肉体を浮遊させて保持する。短い階段を上り左に曲がり進むとエレベーターホールだ。

「これに触れればエレベーターを呼べる」

 なんてことの無い金属のボタンが固定されているだけだ、トリガーは思念となる。

 触れて来いと念じれば来る、言ってみりゃ俺とこの城のある空間は全て繋がっている、だからやりたい放題なのだ。

 エレベーターの箱が下りてきて扉が音もたてずに開く、ソフィーと共に乗り込み五階と念じるだけだ。

「これも同じように触れて、行きたい階層を思えば着く仕組みだ」

 使い方を一応説明した。ワイヤーなど無い不思議なエレベーターなので妙な浮遊感もなく、瞬時に到着する。


「こっちだ、…ここだ」

 最上階に部屋は幾つか用意してあるが、見晴らしの良い中央の部屋に入る。

「何もありませんよ?」

「お前の望みを出来る限り叶えようと思ってな、内装は何もやってない」

「それならもっとこじんまりとした屋敷が良かったです」

「それを言ったらお終いだろう、それより窓の外を見てみろ」

 前庭も大門まで見渡せる景色だ。

「あら、結構良いものですね。ウサオちゃんも走り回ってます」

「ん? ウサオ外に置いて来たのか…」

 しかしよく見えるな、点にしか見えんぞ。

「それで、内装と家具を思い描いてもらえるか?」

「私が考えるのですか?」

「お願いします」

 ここで一気に機嫌を回復させるしかない!

 分体にソフィーの思考を読ませ、フィードバックさせた。その思考を今度は俺が具現化する。

 数秒で彼女のイメージした部屋の内装と家具がその姿を現す、あとは固定させるだけだ。

「どうでしょう、ご満足いただけましたか?」

 それにしてもちょっと派手じゃないかね…。

「思った通りの可愛いお部屋になりましたね」

 う~ん、イマイチ感性がわからないが口には出さない。

「喜んでくれて何よりだ、そのベッドには俺を寝かせても良いんだよな?」

「はい、肉体のお休み専用ベッドです」

 ご丁寧にキングサイズのベッドの横に、もう一つシングルベッドが置いてあった。

 キングサイズのベッドにはやる気が漲っている気がする、少し怖い。

「お前はこういうのが好みなのか、次回から参考にしよう」


「今日からここで暮らすのですね」

「ああ、そうだな」

「お城に住めるなんて、お姫様みたいですね」

 さっきまでプンスカ怒っていたくせに、変わり身の早いことだ。だが、

「何言ってんだ? 女王様だろ」

読んでくれて、ありがとうございます。

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