↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/40

第39話 天使が駆け出したクリスマスイブ③

 陽が完全に落ちてから暫く時間が経った。

 俺と麻衣は「ケーキ完売御礼」という張り出しを店頭に飾っていた。

 見事ケーキを売り切ったのだ!

 身体は疲れたが、心地よい疲労感と達成感が気持ちを満たしていく。

「やったね! 全部売り切ったね!」

 麻衣も顔に疲れを滲ませながら、顔は喜びを隠せない。

 でもケーキが売切れれば、それで俺のお役も御免。それが何とも言えない名残惜しさを感じさせていた。

「じゃあ、俺もこれで上がりかな。」

 後ろ髪を引かれつつも、俺にはこのセリフしか吐けなかった。すると、

「ねえ、この後時間ある?」

 麻衣が少し改まった面持ちで俺に声を掛けた。

「うん、大丈夫だけど。」

 俺の胸が高鳴る。

「じゃあ、ちょっと私の部屋で休憩しない?」

 なんと! 俺が? 麻衣さんの部屋に??

「う、うん。じゃあ、お邪魔します……」

 俺の顔はきっと真っ赤だった。陽が落ちていたことに感謝した――

 

 麻衣の部屋は見事に女の子の部屋という感じだった。

 白を基調に整えられた家具、淡いピンク色のカーテン、そして棚には大小のぬいぐるみが置いてある。ベッドには白いフリルの布団と丸いクッションが置かれていて、そこに一体のぬいぐるみがあった。

 これはクレーンゲームで獲った、ミミーのぬいぐるみだ!

 一緒に寝て大切にしてくれているんだ……。

 そう思うと、何だか自分が恥ずかしくなった。

「ちょっと、恥ずかしいからあんまりジロジロ部屋の中をみないでよね!」

 麻衣は、折り畳みのローテーブルと座布団代わりの小さなクッションを用意しながら、少し顔を赤らめて俺を注意する。

 女の子の部屋なんて、いつぶりだろう。莉子の家に遊びに行って以来だなあ……。

「今、お茶を持ってくるから。そこに座っててね」

 麻衣はそう言うと部屋を出て行った。

 部屋に一人で座っていても、何だか気が落ち着かない。

 これはチャンスなんじゃないか?

 俺は、ふとした衝動に駆られていた。

 麻衣さんに気持ちを伝えたい!

 今しかないんじゃないか?!

「お待たせ。紅茶で良いかな? 温かいのを持ってきたよ。今日は寒かったからね」

 麻衣がトレーに乗せてお茶を持ってきてくれた。

 そしてそのトレーの上にはケーキも乗せていた。

「そのケーキって?」

「じゃーん! これは私のお手製ケーキだよ!」

「え? 麻衣さん、ケーキ作れるの?」

「パパに教えてもらって、今朝早起きして作ってみたんだ。まだ上手に作れないけど」

 そんなことを言いながらも、見た目は完璧だ。

 サンタクロースのチョコレートも、チョコンとケーキの上に乗っかっている。

「いや、凄いよ。このサンタも麻衣さんが作ったの?」

「ありがと! うん、そうだよ。ちょっと難しかったけど」

 俺はマジマジとケーキを見つめた。

 俺と一緒に食べるために作ってくれたのか……。

 そう思うと、既に感無量だった。

 麻衣はお茶とケーキを配膳すると、

「じゃあ、一緒に食べようか! いただきまーす!」

 そう言って、着席してケーキを頬張り始めた。

 俺もそれにつられるようにケーキを一口する。

 美味しい!

 ただ、その美味しさと共に、さっきまで俺の中に有った衝動も蘇ってきた。

 今しかない!

「麻衣さん、このケーキ、凄く美味しいよ」

「やったー! お替りも有るから言ってね。」

 その言葉を聞きながら、俺は身を乗り出す。

「麻衣さん、大事な話があるんだ。聞いてくれるかな?」

「何、大事な話って?」

 俺は天を仰いだ。

 神様、キリスト様、今日だけでいいです。俺に勇気をください!

「あの……」

「うん……」


「麻衣さん、好きです。付き合ってください!」


 言った! 勇気を出して、言えた!

 結果は分からないが、もうこれだけで自分で自分を褒めてあげたい!

「……」

 麻衣は黙っていた。意外な程に冷静な表情をしていた。

 俺の想像とは違う反応だ。もしかしてダメなのか?

 俺は黙ったままの麻衣をひたすらに直視し続ける。

「……あの……」

 麻衣がようやく、恐る恐る口を開く。

「気持ちを伝えてくれてありがとう」

「……うん」

 どっちだ? 答えはどっちなんだ??

「……でも、今日の雰囲気に流されているってことはない?」

「ううん、そんなことない。俺は麻衣さんと一緒に居て、毎日が楽しかったんだ!」

「うん、私も洋祐君と一緒に居る毎日がとても楽しかった」

「それじゃあ……」

 俺の鼓動が高鳴っていく。

「洋祐君、武佐高校の伝説って知ってる?」

「え? 知らないけれど……」

「知らないなら、それでいいわ」

 麻衣は一呼吸置くと、そのまま続けた。

「今ではないの……。私に一晩、時間が欲しい」

 え? どういうことだ?

 そう言うと麻衣は立ち上がった。

 ――ダッ!

 ――ピカッ!


 麻衣はタイムリープをした。時は巻き戻った。

 俺はまだ手の付いていないケーキを前に、着席して麻衣と向かい合っている。

「洋祐君……」

 麻衣が口を開いた。

「明日、終業式の後、屋上に来てくれない? その時に、洋祐君から大事な話を聞きたいの」

 俺は黙って頷いた。

 分かったよ、告白は明日にするよ…麻衣さん!――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。