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第40話 告白と本当の願い

 澄んだ空がきれいな放課後の高校屋上。

 頭のてっぺんに昇った太陽が、その光を地上に強く照り付ける。

 私は一人の男の子と向き合っていた。


「麻衣さん、好きです。俺と付き合ってください!」


 瞬間、向き合う男の子――洋祐君の顔が赤らむ。

 その顔は夕陽を浴びて眩しく見えた。


 私、告白されたんだ。

 一日置いても、きちんと思いを告白してくれた……。

 私も昨晩眠らずに返事を考えたよ、洋祐君。

 この思い、しっかりと言葉で返したい。

 その刹那――


「ヘ……ヘ……ヘーックシュ!」


 私はくしゃみをしてしまった。

 洋祐君の顔が一瞬硬直する。

 告白した恥じらいじゃない、とまどいで、だ。

「ご、ごめん洋祐君、もう一回!」

 私はそう言うと、屋上を全力疾走した。

 時を戻す――

 そう強く願うと周りの景色が歪んだ。


 ――ピカッ!


 そして目の前には、さっきまでと同じようにやはり洋祐君が立っている。

 洋祐君は私を真正面に見つめる。

「麻衣さん、好きです。俺と付き合ってください!」

 今度こそ……!

「わ、わたス……」

 今度は噛んじゃった!

「……噛んじゃった! ごめん、もう一回!」


 ――ダッ!

 ――ピカッ!


「麻衣さん、好きです。俺と付き合ってください!」

 洋祐君が真正面に見つめている。

 その真っ直ぐな顔に惹き付けられる、

 途端に涙がこみあげてくる、

「私……、なんでうまくできないんだろう……」

 次第に涙がこぼれてきた。

 昨晩、必死に返事を考えてきたのに……。

 洋祐君、きっと意味が分からないよね。

「麻衣さん、くしゃみしようが、噛んでしまおうが、そんなの構わない。難しいことを言わなくてもいいよ。そのままの気持ちを聞かせてくれれば、それでいいんだ」

 え?! どうして……?

「さあ、答えを聞かせてよ…麻衣さん!」

 洋祐君は満面の笑顔で私を見つめてくる。

 その真っ直ぐなところが……。

 その笑顔が……。

 その全てが……。

 一晩掛けて用意していた言葉はもう要らない!


「私も好きです。洋祐君!」


 洋祐君が、ハーッと息を吐き出す。

「その言葉を何回も待ってたんだよ、麻衣さん」

「え? 何回もってどういうこと? あと、くしゃみとか噛んじゃうとか、どういうこと?」

 洋祐君は一度俯くと、顔を上げて微笑んだ。

「そのタイムリープ、俺にはバレてるよ…麻衣さん!」

 えーーー?

 本当に?! いつからバレてたの??

 超恥ずかしい!!!

 私の心は混乱を極めた。

 私は、一度スーッと深呼吸をして後ろを向く。

 そしてダッシュをした!


 ――ダッ!


 時よ、戻って!


 ……しかし、周りの景色は歪まなかった。

 何で?! どうして?

「麻衣さん、今更時を戻したって意味無いよ。俺には通用しないもん」

 それはその通りだ。でも、恥ずかしくて誤魔化したかった。

 穴が有ったら入りたい、ならぬ、タイムリープできるならしてみたい、だ。

「そっか、全部知ってたんだ……。」

 私は顔から火が出る思いだった。

「うん、小テストで最初のタイムリープしている時から知ってたよ」

 きっと洋祐君には、私の顔から湯気が見えているだろう。

「じゃあ、私がチョコレートパフェを何回も食べてるのも?」

「うん、もちろん。間接キスって言ったら時を巻き戻されたことも」

「まさか、水着の試着も?」

「もちろん!」

「そ、そこもなの?!」

 私は色々諦めた。思い出す方が今はもう辛い。

「こんな私でも、嫌いにならないの?」

「ううん、そんな麻衣さんだから好きになったんだよ」

「え?」

「失恋した友達のことを思いやってタイムリープしたり、ケーキを落とした子を助けるためにタイムリープしたり……。全部見てきて、それで好きになったんだ」

「洋祐君……」


 私は改めて、この人を好きになって良かったと実感した。

 そしてこの言葉ではっきりと理解した。

 神様は願い事を叶えてくれていた!

 神様が授けてくれたのはタイムリープではあった。

 でもそのタイムリープを通じて、洋祐君と――大事な人と、恋を育んだ。

 それこそがあの時神様にお願いした私の本当の願い事……――


「神様、私に素敵な恋人をください!」


 今、タイムリープはできなくなった。

 でも、その理由は今ならはっきりと分かる。

 きっと、願いが叶ったから、もうタイムリープができなくなったんだ。

 ううん、できなくなったんじゃない。

 必要なくなったんだ!

 

 澄んだ空に掛かる一筋の雲が、まるであの時助けた白い子犬に見えた。

 武佐高校の伝説――クリスマスの屋上で結ばれたカップルは永遠になれる。

 私は今ならその伝説も信じられる気がした――

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