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第34話 偶然の再会と強引なタイムリープ①

 12月最初の土曜日午後。俺と麻衣は授業を終えた後、カフェ・コンチェルトに着席していた。ここにももうこれまでに、四、五回は一緒に来ただろうか。麻衣はいつものごとく、周回でチョコレートパフェを堪能すべく、俺を誘い出したのだ。

 麻衣さん、本当にここのチョコレートパフェが大好きだなあ。

 まあ、俺も周回で堪能できるから、構わないんだけど。

 そんなことを思いつつも、実際にはそれを理由に麻衣と過ごせることが、いつだって何よりも心を沸き立たせていた。

 この日もいつもの通り、注文を済ませて待っていると、

「あれ? 麻衣じゃない!」

 カウンターに座っていた女の子が振り返ってこちらに声を掛けて来た。

「あー! 香奈!! 久しぶり!」

 麻衣は嬉しそうにカウンターに駆け寄る。

 ふーん、友達かな。俺はカウンターの方に目を向けながら、二人の様子を見る。

 何を話しているか分からないが、香奈と呼ばれた女の子はチラチラとこっちを見て来た。

 すると、香奈は食べているティラミスを手に持って、こちらのテーブル席にやってきた。

「こんにちは。私、麻衣の中学校時代の友達の中川香奈!」

「あ、どうも……。俺、麻衣さんのクラスメイトの坂東洋祐です。」

「ちょっと私も相席させてもらうわね」

 そう言うと、俺の返事も待たず、香奈は俺達のテーブルに着席する。

 麻衣は「ごめんね」という感じで手を合わせる。

 まあ俺は良いんだけど、結構強引な娘だな……。

 俺はその時はそれぐらいにしか思っていなかった。

 注文したチョコレートパフェが届いても、二人は懐かしトークで盛り上がる。俺は付いて行けず、蚊帳の外である。チョコレートパフェをちびちび食べながら、こんなに会話が盛り上がってるんだから今日は周回は無さそうだな等と考えていた。そんな時、

「ねえ、麻衣。今日これから時間空いてる? 洋祐君と一緒に遊ぼうよ!」

「え? 私は良いけど……。洋祐君も良い?」

「え? あ、うん、良いよ。別にこの後何も予定無いし」

「じゃあ、決まりね!」

 そう言うと、香奈は麻衣の耳元に口を近づけた。

「……」

「えー?! そんなんじゃないって!」

 麻衣は顔を赤くしながら、何かを否定している。

「まあ、いいじゃない。楽しくなりそう!」

 対照的に、香奈は楽しそうだ。

 何を話したんだろう??――


「じゃあね、先ずはボーリングに行こう!」

 カフェ・コンチェルトを出ると、香奈が仕切り始めた。

「洋祐君は、ボーリングは得意なの?」

「いやいや、人並みだよ。アベレージ120ぐらいかな」

「ふーん……」

 香奈は少しつまらなそうにした。麻衣はそのやり取りを俯きながら聞いている。

 ボーリング場に入ると、俺達は靴を借りてボールを選び、いざゲーム開始となった。

 そういや、ボーリングは久しぶりだな。アベレージ120ぐらいって言っちゃったけど、そんなに出るかな……。俺は段々不安になってきた。

「さあ、最初は洋祐君からだよ。ストライク期待してるよ!」

 香奈がやけに俺を煽ってくる。

 まあ、なるようになれだ!

 ――シュッ! ゴロゴロゴロ! バコーン!

 俺の投げた球は、センターピンに真っ直ぐ向かってピンをなぎ倒した。

 よし、出だしは上々だ!

 そう思ったのも束の間、ボールが真ん中に真っ直ぐ入り過ぎたのか、左右に一本ずつ残すスプリットになってしまった。

 これはスペアを取るのも無理だろうな……。

 はあ、と一息つくと、

 ――ダッ!

 ――ピカッ!

 麻衣が時を戻した。

 ありがとう、麻衣さん!

 俺は麻衣が失敗をタイムリープでフォローしてくれたことに心で感謝した。

 そしてやり直しの第二投。

 ――シュッ! ゴロゴロゴロ! バコーン!

 今度も上手くセンターピンやや左側にうまく入り、右端の一本を残して九本倒した。

 これならスペアを狙えるな!

 俺がホッとして胸を撫でおろしていると、

 ――ダッ!

 ――ピカッ!

 麻衣が再び時を巻き戻した!

 えー?! スペアもダメなの??

 ……

 その後は鬼のようなタイムリープが展開された。

 麻衣は俺がストライクを取らない限り、容赦なく何回でもタイムリープを繰り返したのだ。

 体感でもう何時間俺は投げたのだろうか……。

 時が戻ると体力は戻るので、フィジカルの疲れはそれ程ではないが、メンタルがかなり堪えた。

 そして、今、最後の一投を放った。

 ――シュッ! ゴロゴロゴロ! バコーン!

 これはどうだ……?

 やった!

 ストライクだ!

 やっと終わった……。

 今、電光掲示板にはオールストライクの「300」の文字が煌々と輝いている。

 見た事のない数字に、俺自身の目が点になっている。

「おい、あそこ凄いぞ!」

「パーフェクトだって!」

 周囲も300の掲示に気付き、こちらを注目してくる。

「よ、洋祐君。あなた、プロボーラーなの?!」

「た、たまたまだよ……」

「たまたまって……。たまたまで達成できる記録じゃないよ!」

 香奈は目を真ん丸にしながら俺を見つめる。

「アベレージ120とか言っちゃって、あなたって、凄く謙虚な人なのね……」

「い、いや、本当にたまたまなんだって!」

 や、やりすぎだよ…麻衣さん!――


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