第31話 思い出溢れる修学旅行③
「グー!」
リバークルーズを終えて河岸に降りると俺のお腹が盛大に鳴った。
は、恥ずかしい……。
「あらー、お腹は素直ね、洋祐。でもちょうど良いわ。お昼にしましょう。」
「どこに行くつもりだ?」
「徳島って言ったら徳島ラーメンに決まっているでしょう! 麻衣さんはラーメン好き?」
「大好きです!」
「なら決まり!」――
そして俺達は徳島駅前の「麺キング」の暖簾をくぐった。
俺達三人は麺キングスペシャルラーメンを注文していた。
「徳島ラーメンって聞いたことないけれどどんなジャンルなの?」
麻衣はワクワクした表情をして俺に聞いてくる。
「豚骨醤油がベースなんだけど、特徴はチャーシューじゃなくて豚スライスが入っているところと、生卵を溶かして味変できるところかな。まあ、すき焼きみたいなラーメンだよ」
「すき焼きみたいなラーメン?!」
「まあ、食べてみれば分かるよ」
そんな話をしていると、
「はい、お待ち!」
ご対麺となった。
「うわー、すごく濃い茶色! 美味しそう! いただきまーす!」
そう言うと、麻衣は一気にラーメンをすすり始めた。
「本当だ、濃厚な醤油味にどこか甘さがあってすき焼きみたい!」
「麻衣ちゃん、本当にラーメン好きなんだね!」
莉子は美味しそうにラーメンを食べる麻衣を満足そうに見つめた。
「麻衣ちゃん、足りなかったら替え玉も出来るんだよ。そう言えば洋祐、ちょっと前に替え玉チャレンジして五杯食べたわよね」
莉子は笑いながらぶち込んでくる。
「莉子、お前なあ……。ちなみに六杯だよ」
余計なことを……とは思いつつ、懐かしい記憶についつい楽しくなってしまう。
しかし麻衣は、そんな俺達の様子を見て、やはり真面目にというか、ポカンと話を聞いている。
麻衣さん、何を考えているんだろう?
「どう、麻衣ちゃん替え玉を頼む?」
「あ、うん……。私は止めておくわ」
あれ? 実はお気に召さなかったのかな?
しかし、麻衣は食べ終わるとおもむろに立ち上がった。
――ダッ!
――ピカッ!
そして再び麻衣はラーメンをすする。
その回数、計五回!
余程お気に召したんだろう。俺はホッとした。
タイムリープは正直だ。俺はつくづく思った――
俺達は麺キングを出ると、市内の南に向かって歩みを進めていた。
「麻衣ちゃん。次はね、阿波おどり会館!」
「確かに阿波おどり会館は見どころだな」
「阿波おどり会館?」
麻衣が「何それ?」という顔をする。
「毎日阿波おどりの公演をやっている会館だよ。ほら、徳島は阿波おどりで有名だろ。でも阿波おどりは毎年8月12日から15日の四日間しかお祭りとしてはないからさ。今の時期に阿波おどり見るにはここしかないんだ。」
「へー、そうなんだ」
俺達は阿波おどり会館に到着した。
ここは徳島市のシンボル「眉山」の麓でもあり、ここを起点にロープウェイも走っている。
「ちょうど次の阿波おどり公演がもうすぐみたいね」
俺達は急いで券売機で入場チケットを買うと、二階のホールに入場した。
――ドンドン…… カッカッ…… ドドンガドン……
――チャラララ…… チャッチャッ……
――キンキンキン……
――ヒューッ…… ポンッ……
ホール内に阿波おどりの鳴り物が鳴り響く。
「ア ヤットサーヤットサー ア ヤットヤット♪」
「アーラエライヤッチャ エライヤッチャ ヨイヨイヨイヨイ♪」
「踊る阿呆に 見る阿呆 同じ阿呆なら 踊らにゃ損々♪」
今度は連(阿波おどりのチーム)の踊りに合わせて、「唱はやし」が響く。
ああ、この感じがやっぱり徳島だよな。
俺の身体の中に染み付いた徳島の感覚が蘇ってくる。
麻衣も舞台正面を一点に集中して見つめている。
「それでは阿波おどりの練習もしてみましょう」
最初の演目が終わると、司会者が入場者に向けて呼びかけた。
「え? 私達も踊るの?」
麻衣は目を丸くした。
「それでは皆さん、立ち上がってください」
司会者が入場者に起立を促す。
「右手を挙げて、右足も同時に前に出してください。そしてその次は、左手と左足を同時に前に出してください……」
舞台上の司会者による基本動作の説明が進んでいく。
やがて、入場者が一体となって阿波おどりのリズムを形成していく。
「洋祐、一緒に踊るの懐かしいね。」
「ああ、いつ以来だったかな」
「最後はほら、中二の時に大輔が連作ってさ、皆で8月に街中で踊ったやつだよ」
「ああ、やったなあ。あの時、謎に皆で学生服で踊ったよな。」
「どんなスタイルでも自由に踊れるのが阿波おどりの良いところよ!」
俺と莉子は、踊りながら懐かしトークで盛り上がる。
麻衣も踊りながら、そんな話をしている俺達を黙って見ていた。その口元には微笑みを浮かべているようにも見えた――




