第30話 思い出溢れる修学旅行②
「すごーい! 徳島の街がパノラマだね!」
「ここは元々はお城だったんだよ」
麻衣は全身で伸びをして、高台から周囲を見渡し喜ぶ。
俺達は徳島駅からほど近くの徳島中央公園にやってきていた。
この広大な公園は元々は徳島城であり、城址となっている。公園内には小高い城山があり、そこを十分程で登ってきたのだ。
「目の前に見えるのが眉山で、街のシンボル。で、あっち側に見えるのが昨日ラフティングした吉野川の下流だよ。」
俺はツアーガイドよろしく街中を案内する。
「へー、凄い! でもここ、全然人が居ないね」
「まあ、周囲を見渡せる以外に何も無いからなあ。たまに地元の人が来るぐらいだよ。」
そんなことを言った舌の根も乾かぬうちに、一人の人影が姿を現した。
ストレートロングのあの髪型、見覚えがあるような……。
『あ……』
俺がその人影の正体に気付くと、人影もこちらに気付き、同じタイミングで声を上げた。
「あー、洋祐じゃん!」
「莉子!」
驚きだった、まさか莉子がここに来ているとは!
「あの人、どなた?」
麻衣がキョトンとしている。
「うん、俺の幼馴染だよ。紹介するよ」
莉子の方も驚いた顔でこっちに寄ってくると、俺達は向き合った。
「どうしたの、洋祐。こんなところで。また戻ってきたわけじゃないわよね。他校の学生服を着ているし」
「修学旅行なんだよ。あ、こちらは金堂麻衣さん」
「初めまして、金堂麻衣です」
「こんにちは、瀬尾莉子だよ!」
挨拶を交わすと、莉子は「ふーん」という感じで麻衣を見渡す。
「洋祐の彼女さん?」
「ち、違うよ。転校してから一番お世話になっている友達だよ」
「ふーん、興味深いわね……」
莉子はニヤニヤしている。
麻衣はそんな俺達の様子にポカンとしている。
「それにしても徳島に修学旅行なんて珍しい学校ね」
「ああ、俺も驚いているんだ。それはそうとして、莉子が平日に私服でここに居るのも驚きだけど」
「洋祐、もう忘れたの? 今日は我らが城星高校の開校記念日でお休みよ!」
言い放った莉子はどこか得意気だ。
あー、確かに開校記念日って有ったな。
「そういやそうだったな。んでもって、莉子はこの眺め大好きだったもんな」
「それは洋祐もでしょ!」
「それはそうだったけど……」
莉子は再び麻衣をジロジロと眺める。
「よし、今日は私が案内してあげよう!」
『え?』
俺と麻衣は目を丸くした。
「あら? 嫌かしら?」
「い、いや、俺はいいけれど……、麻衣さんはどう?」
「ううん、全然嫌じゃないわ。よろしくね、莉子さん!」
調子を崩していた麻衣は平静を取り戻していた。
「じゃあ、決まり!」
強引な展開に俺は半ばあきれ顔だったが、それでも莉子が案内してくれるのは嬉しくもあった――
「へー、徳島は水の町の一面もあるのね」
麻衣がボートから身を乗り出して、興味津々に周囲を見渡す。
俺達は徳島市内を流れる新町川でボートに乗り、リバークルーズしていた。
「そうなのよ、麻衣ちゃん。今いるところはひょうたん島って言って、川に囲まれてるの」
莉子はツアーガイドよろしく、周辺を案内する。
「洋祐ったら、昔はトイレ我慢できないとよく川で立ちションしてたのよ!」
「お、おい。それはたった一回だけだろう!」
このようにちょくちょく余計な案内をしてくる。
それでも麻衣は呆れた様子を見せるでもなく、「へ~」という顔で真面目に聞いている。




