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第23話 不思議だらけの文化祭⑤

「ただいま、中庭で校内写真ミスコンの発表をやってまーす!」

 巨大迷路から抜け出して体育館を出ると、実行委員らしき人達が呼びかけを行っていた。

 もう陽が傾き始めていて、文化祭も最終盤という雰囲気が周りから漏れている。

「坂東君、私の写真はエントリーしたのよね?」

「はい、鈴岡さん。クレープ食べてる時にURLにアクセスして、アップロードしましたよ。」

「そう、じゃあ結果を見に行きましょう」

 俺には奈美が校内写真ミスコンに関心があるとは思っていなかったので意外だった。

 まあ、これで優勝したら、鈴岡さんも二連覇だもんな。

「奈美さん、これで優勝したら二連覇ですね!」

 麻衣がまるで俺の気持ちを代弁するように言った。

「私は坂東君がどんな写真を送ったのかが気になるだけよ」

 そう言う奈美の顔は、本当にただそれだけ、という感じでさばさばしていた。


「ここまでが佳作でした。ここから準優勝を発表します」

 中庭に行くと、ステージでは「写真ミスコン委員」という腕章をした司会者が、プロジェクターに投影した画面を背景に、佳作までの発表を終えていた。

 佳作の写真の中には……。

 うん、鈴岡さんの写真は無いな。

 こりゃもしかすると本当に優勝するかもしれないな。

「それでは準優勝は……」

 ――ドゥルルルルルルルルル……

 ――バーン!

「鈴岡奈美さんです!」

 大画面が奈美を映し出す。

 これは……。

「鈴岡さんの素が見える、クレープを食べている写真です。撮影者は坂東洋祐さん!」

 俺の写真だ!

 準優勝だったか!

 その写真は、奈美がクレープを舌先でペロっと舐めているものだった。

 奈美の方を見ると顔色一つ変えていない。麻衣はその隣で拍手をしている。

「鈴岡さんと坂東さん、いらっしゃいますか? ステージに上がってきてください」

 俺と奈美は目を合わせた。

 奈美は無言で頷くと、ステージに歩みを寄せた。俺もそこに続く。

「はい、二人にはステージに立ってもらいました。感想をお願いします」

 司会者がマイクを奈美に渡す。

「特に、無いわ。」

 奈美は、無味乾燥な司会者泣かせの一言を放った。

 本当に関心がなさそうだ。

「あ、はい……。そうですか。では坂東さん、一言お願いします」

 司会者は焦りながら俺にマイクを譲る。

「受賞嬉しいです。被写体が良かったおかげです」

「ありがとうございます。素の鈴岡さんの魅力が良く出ている素晴らしい写真ですね」

 司会者は俺の感想にホッとしたように総括した。

「では、受賞した二人にはゲームをしてもらいます。鈴岡さんはこのボックスの中からくじを引き、引き当てた内容を実行してください。出来ない場合は罰ゲームです」

 あ、そんなゲームがあるんだ……。

 どんなくじがあるんだろ?

 奈美は去年の受賞で慣れているのか、余韻も無く、サッとくじを引いた。

「じゃあ、鈴岡さん。くじの中身を読み上げてください!」

 奈美は司会者に促され、くじの中身を開く。

「撮影者のほっぺにチュー、ね」

『おおー!!』

 会場が沸き上がる。

 なんと!

 そんなものがゲームになっていたのか!

 俺は少し顔を赤らめながら奈美の方を見る。

 しかし奈美は至って冷静だった。まるで売れない芸人のつまらないコントを観るかのように。

 俺は今日二度目のチューをされるのか!

 もしかしてここから麻衣さんのタイムリープもあり得る?!

 しかし、展開は意外だった。

「パス。罰ゲームを受けるわ。」

 なんと、奈美がパスしたのだ! これは意外や意外!

 なんでなんだろう……。

『えー!!!』

 会場は一気に盛り下がる。

 しかし、これもまた奈美は一向に気にする様子を見せていなかった。

「パス、ですか……。では罰ゲームのスクワット二十回をこの場でやってもらいます」

 司会者はそう言うと、その場でスクワットを実演する。

 奈美はそれを見ながら、スクワットを始めた。

 ――ユサッ… ユサッ…

 弾けんばかりの四肢が大胆に揺れる。

 もちろん、その豊かな胸も……

『おおー!』

 会場は一転して歓喜に沸く。なんて分かりやすい……。

 それにしても何で鈴岡さんは罰ゲームを選んだんだろう?

 時は巻き戻されたとしても、巨大迷路では俺にキスをしてきたのに?

「二十回終わったわ」

 奈美は、まるでアフターヌーンティでも嗜んだかのような涼やかな顔で、司会者に目を向ける。

「あ、ありがとうございました!」

 司会者も奈美に見とれていたのか、少し慌てた表情をした。

「奈美さん、お疲れ様です。何かすみません。俺の写真が準優勝になったせいで」

「気にすることは無いわ。私が罰ゲームを選んだんだから」

「でも、どうして?」

「……気分が乗らなかっただけよ」

 え?

 俺はその意味がさっぱり分からなかった。

 ミツバチは気まぐれ、か。そういうことにしておこう。


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