第21話 不思議だらけの文化祭③
「次は私が周りたいところに行かせてもらうわ」
クレープの模擬店を出ると、奈美が言った。
「どこですか?」
「占いの館よ」
奈美がそう言うと、麻衣が反応した。
「占いの館って、もしかして野須さんのところですか?」
麻衣が目をキラキラさせて言う。
「そうよ」
「何? その占いの館って」
「三年生の野須寅子さんって方が占い師の模擬店なんだけど、めちゃくちゃ当たるって有名なの。数学の河村先生と英語の大村先生の熱愛も見事当てたって有名だわ!」
それは当てられた先生達も不憫な……。
「でも奈美さん。素人とはいえ、野須さん凄い人気だから予約でいっぱいですよね?」
「寅子は私の親友だから、特別に枠をもらっているわ。あなた達も占ってもらえるわよ」
「やったー!」
麻衣は飛び上がって喜んだ。
まあ、俺はあんまり興味はないんだけど、麻衣さんが嬉しそうだからいっか。
「寅子、来たわよ」
「あら、奈美。やっと来たわね。お友達も一緒?」
「そう。占ってもらうわよ」
俺達は行列をスルーして寅子のところに直接話しかけていた。
「野須寅子です。よろしくね」
『よろしくお願いします!』
寅子からは強いオーラを感じ、俺と麻衣は緊張しながら挨拶をする。
「じゃあ、今日は何を占おうかしら」
寅子がそう言うと、奈美が俺の腕に手を絡めた。
「この子と私の相性を占ってもらうわ」
『え?!』
俺と麻衣が声を合わせる。
何で鈴岡さんは俺との相性を占うんだ?!
「いやかしら?」
奈美は俺の腕に絡めた手を更に引くと、今度は腕を絡めて来た。
――むにゅっ
柔らかい……。柔らかい何かが腕に当たる……。
「い、いえ……。嫌じゃないです」
嫌じゃない。ただ、イヤらしいです、奈美さん。
そんな様子を気にも留めず、寅子が切り出した。
「じゃあ占いましょう。あなたの名前を教えてちょうだい」
「……坂東洋祐です」
「坂東君ね。じゃあ、この中からカードを一枚選んで。奈美も」
寅子は、テーブルの上に散りばめられたカードの数々を指さす。
俺も奈美もそれぞれが一枚ずつ選んだ。
俺は手に取ったカードを捲って見てみる。
花の絵だ!
「ふーん、私はミツバチか」
奈美がカードを摘まみながらつぶやく。
「なるほど、花とミツバチね。そして二人の名前を見ても……。うん、二人の相性は悪くない、ううん、とても良いわ」
寅子が解説を始める。
「でも奈美。そのミツバチは気まぐれ。熱しても冷めやすいもの。合わないと思ったら直ぐに離れていくわ。」
そして寅子は俺を見る。
「そして坂東君。ミツバチは花から蜜を奪うもの。あなたは奪われないように気を付けることね」
「奪うって何をですか?」
「さあ、そこまではっきりとは分からないわ。きっと、あなたにとって大切なものよ」
うーん、何だろう?
「ふーん……。奪われないようにしてよ、よ・う・す・け・く・ん」
奈美が俺にウインクをしてきた。
何か奪われても良い気がしてきた。
むしろ奪ってくれー!
「じゃあ、次はあなたね。名前は?」
「金堂麻衣です」
「そう。じゃあ、あなたもカードを一枚選んで」
麻衣はカードを一枚手にする。
「白い犬?」
「そう、あなたは白い犬を選んだのね……。あなたと白い犬には強い縁を感じるわ」
「縁?」
「きっとあなたの願いは叶うわ。あなたの望むようにね」
「私の願い……」
俺の頭の中では、以前の麻衣の話とリンクしていた。
白い犬を助けたら神様が夢の中に出て来た。
でもその神様は、麻衣の願いは叶えずに、タイムリープの能力を授けた。
なんだ、外れてるじゃないか……。
――ダッ!
――ピカッ!
麻衣はタイムリープを使った!
どうしてだろう?
もしかしたら、麻衣も外れてると思ったからかもしれない。
麻衣はもう一度カードを選び直した。
今度は違う場所からカードを引く。
「白い犬……」
そう、またしても引いたカードは白い犬だった。
そんなはずはないのに。
――ダッ!
――ピカッ!
「白い犬……」
こうして、麻衣は何度違う場所から選び直しても、白い犬を引き続けた。
まるで白い犬を引くことが、間違いのない事実であるかのように……。
「きっとあなたの願いは叶うわ。あなたの望むようにね」
「でも、私の願いは叶えてもらえなかったんです!」
麻衣が寅子に強い口調で言った。
「そう……。あなたが何を言っているか、私には分からないわ」
続けて、
「ただ、それはあなたの勘違いかもしれないわね」
寅子は穏やかに語った。
「勘違い……」
麻衣は困惑していた。
俺も意味が分からない。
寅子は続ける。
「あと、気を付けなさい。願いが叶っても、小さな失敗をするわ」
「……それってどんな失敗ですか?」
「はっきりとは視えないけれど、大事なことを伝える時に、くしゃみしたり噛んじゃったりとか、きっとその程度のことよ」――




