第2話 最初のタイムリープ
時は新学期の授業日初日に遡る。
担任の声が教室に響く。
「今日から二学期の授業が始まる。その前に転校生を紹介するぞ。坂東、入れ」
教室の扉を開けた瞬間、二年A組の視線が一斉に俺へ向いた。
「徳島から来ました、坂東洋祐です。これからよろしくお願いします!」
さすがに知らない顔ばかりだと緊張するなー!
俺はこれからクラスメイトとなる学生服の面々を見渡した。
――ドキン!
突如、俺の緊張感が増した。
見慣れぬクラスメイトの顔を見て緊張した訳ではない。
教室の一番後ろの席、ミディアムボブの黒髪で、キリッとした眉毛に切れ長の目、形の整った鼻、柔らかそうな薄いピンクの唇の女の子……。
めちゃくちゃタイプなんだけど!
「それでは、坂東には金堂の隣に座ってもらう。金堂、隣の席なんだから色々と教えてやってくれ」
「……はい、分かりました」
金堂と呼ばれたその女の子が返事をした。
これは幸先がいい! まさか俺の好みドンズバの娘が隣の席に居るなんて!
あの娘、金堂さんって言うのか……。
俺は後に知ることになる。
その娘の名前は、金堂麻衣。
それが俺の麻衣との最初の出会いだった――
「徳島ってどんなところ?」
「東京には初めて来たの?」
休憩時間になると、クラスメイトが集まってきた。
知らない顔ばかりで戸惑うけど、とりあえず歓迎されたようで良かったな。
でも肝心の隣の席、金堂さんは何も話しかけて来ないぞ?
俺に興味が無いのかな? でも俺のことを観察するようにジロジロは見ているし……。
一体何なんだ?!
俺はクラスメイトと会話をしながらも、神経は麻衣の方向に向いていた。
すると、
――ガラッ!
「数学の授業を始めるぞ。皆席に着け」
数学教師が入ってきて、皆は席に戻っていった。
金堂さんのことは気になるけど、まあ追々お近づきになればいっか!
そんなことを思いながら、教壇に立つ数学教師に目を向けると、数学教師は開口一番、
「今日だが、先ず皆の夏休み明けの学力を把握するから、小テストを行う」
『えー?!』
クラス全体が騒然となった。
いやいやいや、「えー?!」は俺の方でしょ!
俺、転校初日だよ? 学習の進度とか全然分かってないし……。
転校するから夏休みの宿題とか全ブッチしてきて、鉛筆の持ち方すら忘れた可能性もなきにしもあらずだよ?
まあ。数学は得意な方なのでマシと言えばマシだけど……。
そしてすぐにテスト用紙が配られた――
――カリ…、カリ…、カリ…
テストが始まると、クラスはシーンとして、皆が筆を滑らす音が聞こえる。
「ふう、解き終わった」
うん、小問は量が多いけど、難しくはないな。
ただ、最後の問題は結構ムズかった……。これを解けた自分を褒めてやりたい!
きっとこの問題で時間無い奴も多いんだろうな。
そんなことを考えながらふと教室の時計を見る。
後二分か。少し余裕があったな。
俺は心の中でホッとしていた。
新しいこの学校――武佐高校でも、勉強は何とかついていけそうだ!
その時――
――ガタン!
隣の席から椅子を引く物音が聞こえた。
静かな教室でその音が目立ったのか、周りの人も、テストを解く手を止めてその物音に注目する。
金堂さんだ!
金堂さんが立ち上がっている! なんでだ?!
すると、麻衣は「フウッ」と一息つき、教室の出口に向かって走り始めた。
な、何をする気だ?!
――ピカッ!
う、嘘だろ??
金堂さんの身体が輝いている!
ん……? 何か軽く眩暈もするし……。
「!!」
あれ? 俺、たしか、教室の出入口の方に身体を向けていたよな?
でも俺の身体は今、答案用紙に向かっている。
何だ、この強烈な違和感は?!
その時、
「よし! 成功した!」
隣の席から独り言が聞こえて来た。
え? 金堂さん?!
な、何で、立ち上がって走ってた彼女が着席しているの?!
しかも金堂さん、めちゃくちゃ試験に集中しているし……。
さっぱり意味が分からん!
俺はそんな麻衣をボーっと眺めていると、
「坂東、横を向くのは止めなさい」
先生から諫められた。
いかん、いかん。さっきのことは一旦忘れよう。
最後に答案の見直しでもするかな。
「?!」
答案を見た瞬間、俺の額に脂汗がぶわっと滲んだ!
全部解き終わったはずの答案が、最後の一問だけ空白になっている!
どうして?? 一問見落としてた? いや、何にしてもこれはマズい!
残り時間はどうだ?
俺は時計を見た。
「?!」
時計は、残り十一分を指している。
おかしい!
さっきは残り二分だったのに……。
えーっと最後の問題は……。
えぇ!!! これ、さっき解いた問題だぞ! 何で空白になってるんだ?!
決して解き忘れが一問有った訳ではない。
頭の中は疑問だらけだが、とにもかくにも俺は慌てて最後の一問を解き直した。
一度解いた問題だけあって、無事、数学の問題は解けた。
ただ、さっき起きた不可思議を解くことは、最後までできなかった……――




