第14話 涙のWデート⑤
麻衣を見ると、顔を真っ赤にしていた。
その目は真剣そのものだ。まるで何か覚悟を決めたかのように。
そして口を開き、
「私は、洋祐君と乗るわ」
きっぱりと言い放った。
「おいおい、二人は良い感じなのか?」
池谷が冗談めかしてそう言うと、麻衣は俺の腕を掴んだ。
「そうかもね! 洋祐君も良いでしょう?」
「う、うん……」
びっくりして目を丸くしている留美の横で、池谷の顔はムッとしていた――
――カタン…… カタン……
夕陽を浴びた観覧車のカゴがゆっくりと回っている。
俺は麻衣と向かい合っていた。
麻衣は、何か考え事をするように窓から外を眺めている。
優しく回る観覧車の中を、無味な静寂が覆う。
「多分……」
沈黙を破るように俺は切り出した。
「北島さん、池谷に告白してるんじゃないかな」
麻衣は外に向けた顔を、こちらに向け直す。
「……きっとそうだね」
麻衣はそれだけ呟いた。
そして、再び顔を窓の外に向けた――
観覧車を降りると、先に降りていた池谷が俺達を待ち受けていた。
「留美は?」
麻衣が池谷に尋ねる。
池谷は気まずそうな顔をした。
「今日はもう先に帰るって……」
それだけ聞くと、麻衣は突然駆け出した。
――ダッ!
――ピカッ!
……
もう何回目の観覧車だろうか。
麻衣はその後も周回を繰り返した。
そして、周回する観覧車の中で、麻衣は黙って景色を見ていた。
でも、分かる。その目には涙が浮かんでいた。
その涙は、周を追って深くなっていた。
麻衣も理解しているのだろう。
周回を繰り返したところで、結果は変わらないことを。
時は巻き戻せても、人の心は巻き戻せないことを。
俺は黙ってタイムリープに付き合っていた。
彼女の気が済むまで……。
……愛おしい。
俺は、友達を想って必死な麻衣に、今までにない感情を覚えた。
「……ねえ、洋祐君」
今までのループでは沈黙して窓の外を見ていた麻衣が、突然口を開いた。
「私、今泣いてるよね」
「うん……」
「どうして理由を聞かないの?」
「誰にだって自分の気持ちを黙っていたい時はあるよ」
俺の言葉を聞いて、麻衣は俯いた。
まるで自問自答するように。
俺は続けた。
「逆に、自分の気持ちを伝えなきゃならない時もあるよ。その結果が分かっていても」
麻衣はハッとした顔で俺を見つめて、直ぐにその顔を窓の外に向けた。
暫くすると観覧車が止まった。
俺達は観覧車から降りた。
麻衣はもうタイムリープをしなかった。
その気持ち、俺には痛いほど伝わったよ…麻衣さん!――




