↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
14/40

第14話 涙のWデート⑤

 麻衣を見ると、顔を真っ赤にしていた。

 その目は真剣そのものだ。まるで何か覚悟を決めたかのように。

 そして口を開き、

「私は、洋祐君と乗るわ」

 きっぱりと言い放った。

「おいおい、二人は良い感じなのか?」

 池谷が冗談めかしてそう言うと、麻衣は俺の腕を掴んだ。

「そうかもね! 洋祐君も良いでしょう?」

「う、うん……」

 びっくりして目を丸くしている留美の横で、池谷の顔はムッとしていた――


 ――カタン…… カタン……

 夕陽を浴びた観覧車のカゴがゆっくりと回っている。

 俺は麻衣と向かい合っていた。

 麻衣は、何か考え事をするように窓から外を眺めている。

 優しく回る観覧車の中を、無味な静寂が覆う。

「多分……」

 沈黙を破るように俺は切り出した。

「北島さん、池谷に告白してるんじゃないかな」

 麻衣は外に向けた顔を、こちらに向け直す。

「……きっとそうだね」

 麻衣はそれだけ呟いた。

 そして、再び顔を窓の外に向けた――


 観覧車を降りると、先に降りていた池谷が俺達を待ち受けていた。

「留美は?」

 麻衣が池谷に尋ねる。

 池谷は気まずそうな顔をした。

「今日はもう先に帰るって……」

 それだけ聞くと、麻衣は突然駆け出した。

 ――ダッ!

 ――ピカッ!


 ……

 もう何回目の観覧車だろうか。

 麻衣はその後も周回を繰り返した。

 そして、周回する観覧車の中で、麻衣は黙って景色を見ていた。

 でも、分かる。その目には涙が浮かんでいた。

 その涙は、周を追って深くなっていた。


 麻衣も理解しているのだろう。

 周回を繰り返したところで、結果は変わらないことを。

 時は巻き戻せても、人の心は巻き戻せないことを。

 俺は黙ってタイムリープに付き合っていた。

 彼女の気が済むまで……。


 ……愛おしい。

 俺は、友達を想って必死な麻衣に、今までにない感情を覚えた。


「……ねえ、洋祐君」

 今までのループでは沈黙して窓の外を見ていた麻衣が、突然口を開いた。

「私、今泣いてるよね」

「うん……」

「どうして理由を聞かないの?」

「誰にだって自分の気持ちを黙っていたい時はあるよ」

 俺の言葉を聞いて、麻衣は俯いた。

 まるで自問自答するように。

 俺は続けた。

「逆に、自分の気持ちを伝えなきゃならない時もあるよ。その結果が分かっていても」

 麻衣はハッとした顔で俺を見つめて、直ぐにその顔を窓の外に向けた。

 暫くすると観覧車が止まった。

 俺達は観覧車から降りた。

 麻衣はもうタイムリープをしなかった。

 その気持ち、俺には痛いほど伝わったよ…麻衣さん!――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。