命の眠る、宝の山 5
「すみません、つい。でも、以前に比べて本当に野菜を食べてくださるようになりましたよね!」
ここに来たばかりの頃のアドルフ様は、まったくというわけではないが、あまり野菜に手をつけていなかった。嫌いとまではいかないけれど、積極的に食べようとは思わないくらいには、好きじゃなかったのだと思う。
「……君が用意してくれるものは、なんでも美味いからな。それに、色々な料理に野菜を細かくして入れているだろう? このハンバーグにも」
アドルフ様がぱくりとハンバーグをひと口食べて、美味いと言ってくれた。なんだ、気付いてたんだ。
「……ピーマンも、ハンバーグと一緒なら美味しいでしょう?」
「まあ、かなりマシだな」
ふんと鼻を鳴らすアドルフ様に、くすくすと笑う。
すると、今度はクラリスが驚きの声を上げる。
「え、ハンバーグにピーマンはいってたの? きづかなかった……」
「玉ねぎとニンジンと、実はシイタケも入ってるのよ?」
「「シイタケも!?」」
クラリスとアドルフ様の声が重なった。一瞬びっくりしたけれど、シンクロしたふたりがおかしくて、ぷっと吹き出してしまった。
「……笑うな」
「ご、ごめ、なさ……。クラリスと同じ驚き方だったのが、面白くて、つい……ふふっ」
恥ずかしかったのか、アドルフ様の顔が少し赤い。
「えへへ」
そんな私たちを見て、クラリスが嬉しそうに笑った。
「なんか、おとうさんとおかあさんといっしょに、ごはんたべてるみたい」
懐かしそうに話すクラリスに、私は目を見開いた。
「わすれちゃってたけど、こんなだったなぁって。たのしくて、あったかくて。こうしゃくさま、ごはん、いっしょにたべてくれて、ありがとうございます」
「……いや、別に」
クラリスにかわいくお礼を言われ照れたのか、アドルフ様がさらに顔を赤めて視線を逸らした。
ご両親が亡くなって、親戚の家で辛い思いをしていたことを知っている私は、ちょっぴり切ない気持ちになったけれど。
「あ、そうだ。食事が終わったら、クラリスにプレゼントがあるの」
しんみりとした空気を薙ぎ払おうと、ぱんと両手を叩いて努めて明るい声を出す。
「プレゼント⁉ え~なんだろう? たのしみー!」
クラリスもぱっと表情を明るくしてそれに応えてくれた。
その後、元気を取り戻したクラリスは、ぺろりとハンバーグを平らげ、デザートのレモンのシャーベットも美味しいと言って食べていた。
アドルフ様も、野菜も含め全部綺麗に食べてくれた。シャーベットも口に合ったようで頬が緩んでいた。
そうして食後のお茶が運ばれてきた時、私は昼間届いたばかりの包みを取り出した。
「はい、クラリスに。お待ちかねのプレゼントよ」
「わーい! ありがとう、おねぇちゃん」
クラリスがわくわくしながら包みを開く。誕生日やクリスマス、こうやってプレゼントをもらってドキドキしながら開いていたのを思い出す。
今世では、家族にプレゼントなんてもらったことがない。私からも、プレゼントなんて渡したことがない。
だから、クラリスに『お誕生日おめでとう』と言ってもらえた日が、初めてだった。すごく、ものすごく嬉しかった。
「あ……これって……」
「うん、クラリスが私にくれた、綺麗な石。いつも身につけていられるようにしたくて、アドルフ様にお願いしたの。それで、こんなに素敵なネックレスに加工してくださったのよ」
クラリスが包みからネックレスをそっと出した。シンプルなデザイン。だけど、モチーフの四葉のクローバーの一葉に、クラリスがくれた石がしっかりはまっている。
「せっかくだから、おそろいにしちゃった。クラリスにも私にも、たくさんの幸せがやってきますようにって!」
すでに首にかけ、服の中に入れていた自分のネックレスを見せる。
クラリスがくれた幸せを、ふたりで分け合いたくて作ってもらったネックレス。気に入ってくれるだろうか。
「かわいい……。おねぇちゃんと、おそろい?」
「そう、おそろい!」
ぱあっとクラリスの目が輝いたのがわかった。よかった、喜んでくれたみたい。
「ありがとう、おねぇちゃん!」
「どういたしまして。でも、お礼はアドルフ様にも言おうね。ネックレスにできたのは、アドルフ様のおかげだから」
それを聞いたクラリスは、勢いよくアドルフ様の方を向いて、一礼した。
「ありがとうございます! とってもうれしいです!」
満面の笑みのクラリスに、アドルフ様もふっと頬を緩めた。
「いや、私は発注しただけだ。姉君からの贈り物だからな、大切にするといい」
「はい!」
元気に返事をするクラリスに、ネックレスをつけてやる。長さもちょうどいいみたいでよかった。
「わぁ……! おねぇちゃんみて、かわいい?」
「うん、とっても似合ってる。かわいいよ」
「えへへ」
ネックレスももちろんかわいいけど、それ以上にクラリスがかわいすぎる……! 褒めてほしくて質問してみて、希望通りの褒め言葉に照れてはにかむその笑顔、天使すぎる……!




