↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した大家族長女の私、今世は天使なちびっこと幸せになります!  作者: 沙夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/38

うちの天使な妹が、実は……? 4

「時間を取らせて悪かったな」


「いえいえ。私たちこそ、楽しい時間をありがとう」


 お茶を飲みながら、私たちは色々な話をしてまったり過ごした。そうしてそろそろカフェでの休憩を終えようと席を立った時、シャルのお連れの方が見つかった。


 お連れの方はかなり焦っていたようで、出会えた時には泣いて喜んでいた。それなのにのんびりお茶をしていて、なんだか申し訳ない気持ちになった。 


 ということで、三人の時間はここで終わり。お別れだ。


 ほんの数時間一緒に過ごしただけだが、別れが寂しい。それだけシャルと仲良くなれたということでもあるのだけれど。


「また、あえる……?」


 どうやらクラリスも寂しく思っているようで、私の服の裾をぎゅっと握り、眉を下げてそんなことを言う。


 また会いたいという気持ちはよくわかるのだが、私たちはこれから国境を越えてもう少し旅をする予定だ。偶然また会える可能性は、かなり低いだろう。


「会えるといいな。俺も、そう思ってるよ」


「! うん!」


 なんと答えたものかと悩んでいると、シャルが迷いなく言った。


 下手に期待させるわけでもなく、現実を突きつけるわけでもない。ただ素直に、〝また会いたい〟という気持ちを伝える言葉が、とても素敵だなと感心した。


「私も、また会えると嬉しいな。その時は、また一緒にお店を回ったり、お茶をしましょうね」


「ああ。次は友人として、一緒に過ごそう」


 そう言うとシャルは、ひらりと手を振り、ぺこりとお辞儀をするお連れの方と共に去っていった。


 友人として、か。そう思ってもらえたのが嬉しいな。


「さて。私たちはそろそろ宿に行きましょうか。混みそうだし、明日は早めに申請しに出かけましょう。はぐれないように、しっかり手を繋いでいてね」


「はぁい」


 ふたりきりに戻り、ちょっぴり寂しい気持ちを抱えながら、私たちは宿屋へと向かったのだった。


 ーーこの時の私は、知らなかった。まさか、クラリスがあんな能力を隠していたなんて。





その日の夜。


「おねぇちゃん、だいじょうぶ……?」


「うん、ちょっと痛いけど、大丈夫。ドジしちゃってごめんね」


 心配そうに覗き込むクラリスの頭を撫でる。


 借りた部屋のベッドに腰掛けた私の足首には、氷袋が乗せられている。先ほど挫いてしまったのだ。


 大したことがないのは本当だ。夕飯を食べに食堂へと歩いていた時、脇を走ってきた子どもがぶつかってきて、バランスを崩してしまった。その子の方に倒れそうになってしまったので、無理に体を捻った際、足も変な方向に捻れてしまっただけなのだから。


 二、三日大人しくしていれば腫れも引くだろうし、普通に歩けるようになるだろう。


 ただ、それまではここに滞在しなくてはいけないということなのだが。


 うーんと考え込む。滞在中のお金はなんとかなるが、できるだけ早く住む場所を決めて働き口を探し、安定した生活が送れるようにしたかった。


 それに、身動きとれない私に合わせて、クラリスを一日中この部屋で閉じ込めておくのもかわいそうだ。ひとりで外に出すわけにはいかないし、部屋の中に遊べるようなものもない。


 賢い子だからわかってくれそうだけど、それでもずっと部屋の中はつまらないよね。


「……おねぇちゃん、はやくなおったら、うれしい?」


 クラリスの声にはっと我に返る。空色の綺麗な瞳が、私を真っ直ぐに見つめていた。


「そうね、クラリスに心配かけちゃうし、早く治したいなと思うわ。三日くらいあれば歩けるようになると思うから、それまでここに泊まりましょうか」


 深刻な顔を見せちゃだめだったわねと反省し、にっこりと微笑む。クラリスだって不安なんだから、いつも通りに振る舞わないと。


 けれどクラリスは、なぜかゆるゆると首を振った。どういう意味だろう。


「……あのね、たぶんわたし、なおせるよ。おねぇちゃんのケガ、いますぐに」


 そんな馬鹿なと思いながらも、真剣な表情のクラリスに、ぐっと息を呑む。


 するとクラリスは、氷袋をどかし、そっと手のひらを私の腫れた足首にかざした。そしてゆっくりと口を開く。


「いたいの、とんでいけ」


 か、かわいぃぃぃぃー! なにそれ、前世の〝いたいのいたいのとんでいけー〟的なやつ!?


 予想外のクラリスの行動に、思わず両手で口元を覆う。かわいいがすぎる妹に、変な声を聞かせるわけにはいかない。


 悶えたいのを必死に抑えていると、クラリスの手のひらから柔らかな光が放たれた。


「えぇっ!? なに、これ」


 足首がじんわりと温かい。それに痛みも和らいでいく。


 まさか、これは。


「噓でしょ。まさか、光魔法……?」


 本でしか読んだことのない、稀少な魔法。この世界のほぼ全員が魔法を使える中で、光魔法の使い手は、国にひとりいるかいないか程度だと言われている。


 しばらくして光が消えると、足の腫れも痛みもすっかりなくなっていた。


「……よかった、なおった。ひさしぶりにつかうから、ちょっとしんぱいだったけど」


 クラリスの口ぶりだと、使うのはこれが初めてではなさそうだ。色々聞きたいところだけれど、とりあえず。


「ありがとう、クラリス。もう痛くないわ」


「どういたしまして」


 感謝の気持ちを込めて、クラリスをぎゅっと抱き締める。そのまま膝に乗せて、えへへと嬉しそうなクラリスにいくつか質問することにした。


「クラリス、今のは、魔法? あなた、光魔法が使えたの?」


「うん、たぶん。三さいのときだったかな……きゅうにつかえるようになったの。おとうさんとおかあさんから、だれにもおしえちゃだめ、ひみつだよっていわれてたの」


 話を聞くと、どうやら初めて魔法が使えたのは、クラリスがご両親と住んでいた家の近くの草原で遊んでいた時。ケガをした小鳥を見つけて、かわいそう、治してあげたいと思ったら使えたらしい。


 普通、魔法は十歳頃から使えるようになる。あまり幼いと、魔力のコントロールが難しいためだろうか、それ以前に教えようと思ってもなかなか使えない。


 それなのに、三歳ですでに光魔法が使えただなんて。


「もうすこしおおきくなったら、くわしくおしえてくれるひとのところにいこうって、いわれてたの。めずらしいまほうだから、わるいひとにみつかったら、ゆうかい? されちゃうんだって。だから、かぞくだけのひみつだよって」


 なるほど、たしかに幼くして光魔法に目覚めたとなれば、注目を浴びるのは間違いない。下手をすると、無理矢理両親と引き離されて利用される可能性だってある。


 だからきっと、ご両親はある程度の分別がつく、普通に魔法が使える歳までは隠しておき、その間に信用できる機関を探そうと考えたのかもしれない。


 あまり幼いと異端の目で見られることもあるし、悪い大人に騙されやすいから。


 もう亡くなってしまったご両親は、どれだけクラリスを心配しただろう。たったひとり残してこの世を去ることになってしまい、どれだけ悔やんだだろう。


「おねぇちゃん? ないてるの……?」


 同じように家族を残して死んでしまった前世の私。でも、美怜の家族は、両親も兄弟もいる。私なんかの比にならないくらい、クラリスのご両親は無念だったに違いない。


「ごめん、大丈夫よ。クラリスはとっても大切に育ててもらったんだなぁって、安心しただけ。クラリスのお母さん代わりにはなれないけれど、おねえちゃんとして、これからもたくさんクラリスのこと、ぎゅってするからね」


「うん。わたしね、おとうさんとおかあさん、だいすきだったんだ」


 涙ぐむクラリスを、もう一度ぎゅっと抱き締める。肩越しにくすんくすんと泣く声が聞こえて、私もまた涙が溢れる。


「秘密だったのに、治してくれて、ありがとう」


「だって、おねぇちゃんだもん……。わたしの、おねぇちゃんだもん」


〝家族だけの秘密〟


 本当の姉だからと言われたみたいで、嬉しくて。クラリスの頭を撫でながら、「ありがとう」と囁いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。