12 胸に抱く秘密
辺境から王都まで馬車で7日の旅らしい。夜は、小さい宿屋を貸し切りにして、泊まると聞いた。
馬車でがだごと。道が舗装されていないから、揺れが激しい。
私の向かいには領主のアルスレッド様が座り、その横には、従者のサリが座っている。私の横には女官長!なんと女官長も領主様が連れてきた召使だったもよう。知らなかった、、、、。
ところで、この世界に上座というものはあるのかしら??私、進行方向向きに座っているから、こちらの席の方が、領主様にふさわしいような気がするような、、、、、。と考えながら、窓から景色を見渡していた。だってね。目の前に麗しいご尊顔が常時、こちらを見ているのよ?恐れ多くて、前を見えていられないわ。だから、窓!窓から景色をながめているよ。
「退屈か?」
「ほぇ?」急に、はなしかけられた、私はびっくりした。
「普段、賑やかな君が黙っていると、不思議だ」
「私も静かな時くらいありますわ。」
「そうですよ。アルスレット様。いくら辺境の村娘が初めての旅で領外に出るといってもですね。普通は、大興奮するとはいえ、冷静なこどもがいてもおかしくはないでしょう。」サリがちらっと眼鏡の奥底から視線をよこした。
や、やばい。これは、疑っている?フォローされている?サリもひとすじ縄ではいかない男な気がしたのよ。これは、子供らしく、「わぁああああーーーーーー」すべき場面だったのか。
外の景色は、ほとんど中世の時代と変わらないし、景色は美しいけど自然、豊かなだけの印象。あまたの人生の記憶がある身としては、それほど特筆すべきところはなかったのだけど、、、、。
「えっと、えっと。あまりにも興奮して、言葉を失っていただけですのよ。」
「そうか。」
アルスレット様は、そう呟いて、持っていた書類に視線を落とした。馬車の中でもお仕事をなさる
勤勉な領主様。そのお顔からは表情は読めない。だ大丈夫?私?平常運転のお顔ですから、致命的な失敗してないわよね。
そんな時間を過ごすこと数刻。
ふぅ。やっと宿屋に着いた。従者のサリが、手続きを行っている。どうやら、領主様とサリ、私と女官長。そしてハロルドに分かれて、泊まるらしい。そして、一番いい部屋は、ハロルドらしい。どうしてかしら?馬車の御者で馬を操っていて、一日中馬を走らせていたから疲れてるのかな?
女官長と一緒に部屋に入るなり、女官長は私をおいて出て行った。なにやら仕事がいっぱいある模様。
そうだよね。なんか女官長、領主様に心酔してそうな気配だもん。まぁ。それをいったら、サリもハロルドもそうなんだけどね。でも女官長が一番信頼できそうな気がするから、同じ部屋でよかったかも。
サリ様は、おしゃべりで親しみやすいのだけど、腹黒い気がするし、ハロルド様は寡黙で、何考えているかわからない。
あ、今のうちに、体をきれいにしておこう。お湯を頂いて、布を用意した。
よかったわ。女官長が出て行ってくれて。
実は、わたしの胸には痣がある。女神の祝福と言われている文様らしい。詳しいことは、私にもわからない。ただ、お母様に、人に絶対見せないと言われていること。その時のお顔がいつになく真剣で、青白く手が震えていたこと。だから、これを見られると私は殺されるのかもしれないと思っていること。
分かっているのはそれだけ。この生でろくな教育も受けず村八分だった私には、真実を知る術はなかった。一生、秘密にするしかないだろう。
「こんな、薄い文様になんの意味があるのかな。。。。」
お母様がこんな辺境にきたのもこの痣が原因かもしれない。と思うと母様に申し訳なかった。
「ああ!やめやめ。私がこんなもの持って生まれてきたのも私のせいじゃないし、誰かが責任を感じるなら、神様のせいよね。わたしのせいじゃない。ポジティブポジティブ!」
夕食は、さびれた町宿のごはんとは思えないほど、豪華だった。どうやら女官長の仕事は、台所に入り、メニューのあれこれを指示していたらしい。でも、手は貸してないみたい。そうよね。台所仕事なんて下女の仕事だもん。あっ!しまった。これは私の仕事じゃない?うう。明日から頑張ろう。
あっという間に、首都アウフガーデアに着き、いつの間にか子爵の養女となったらしい。でもね、養女の書類が血判だったの。まぁ、血判は、遠い昔の記憶で経験あるよ。親指を切って親指で、印を押すの。でも今回はそうじゃなくて、血液を垂らすのよ。そしたら、書類が光って、契約成立みたいなの。そう、魔法よ、魔法。初めて見たわ。長い人生していると、いろんなことに慣れっこだから、初めての魔法には、大興奮したわ。この世界に生まれて、平民と暮らしていては、縁のないものだったからね。
どうやら
女官長の家に使える下っ端貴族との縁組みとか?私は、驚いた。女官長って貴族だったのーーーーー。と脳内で。場の空気を読んだわ。。。。
貴族に囲まれていると、素を出せないつらさ、わかってくれる?
でもね。考えてもみてよ。女官長に仕えている人すら貴族なのよ?女官長って下っ端貴族ではないということよね?では、女官長が使えているアルスレット様は、もしくは名門貴族だったりなんかして、、、、
と考えてたら、汗がとまらなくなった。
どうしよう?態度とか改めるべき?もっと距離を置くべきよね?今まで、都合のいいときは、子供アピールでごまかしてきたけど、さすがに、、、。。
と、ベッドでゴロゴロしながら、周りを見渡した。私に与えられた貴族の娘としての部屋。調度品も立派だわ。ここは、領主様のタウンハウスらしいけど、調度品は、貴族の中でも超一級品だと思う。簡素だけど、格式高いものだというのがビシビシ伝わってくるわ。木製の家具に赤い調度品がアクセントになっていて、アルスレット様のセンスの良さに脱帽です。そういえば、私、長い人生で、一度もデザイン的なセンスに恵まれたことなかったわね。
正直なことを言うと、夢の記憶があるから、貴族になってもびくついたりはしない。だてに長い人生してたわけじゃないわ。貴族に仕えていたこともあるし、貴族だったこともあるもの。まぁ、その時も下っ端貴族で、隅っこで暮らしていたけどね。だから、なりきるのも得意だし、礼儀作法もその時代とそんなに変わらないみたいだから、何とかやっていけると思う。でも、アルスレット様は、なんのために私を貴族の一員に加えたのだろう。
不意にノックの音がして、すぐさまドアが開いた。
「レティーシア。時間ができた。どこか行きたいところはあるか?せっかくの機会だ案内しよう。」
「アルスレット様。レディの部屋に、許可も得ずに、ドアを開けるなんて、紳士のなさることでは、ありませんわ!」と、少し高めの声をだしながら、非難した。絶賛!お貴族様なりきり練習です。
「これは、これは、すまんな。ご立派な淑女としては、そこで横になって、何か考え事かな?」
「ええ!体をリラックスしていると、よいアイデアが生まれるのですよ!おすすめです。」
含み笑いのようなお顔で
「して、行きたい場所に希望はあるか?」
「魔法が見たいです!!」
「魔法か。。。。ならば、魔法士団の訓練場かな?」
ということで、王都の北にある森に向かうことになった。
だってね。この世界って地球の中世の時代にそっくりでね。辺境の領地からここまで馬車から道々眺めたけど、そんなに驚くものは見つからなかった。この世界で、私にとってなじみのないもの!魔獣!魔法!よ。




