表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酔っぱらい盗賊、奴隷の少女を買う  作者: 新巻へもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/193

第2部第24話 加勢

「そんな面白そうな話、ワシを除け者にする気か? ワシも1枚噛ませろ。他にも参加したいという奴はワシの指揮下に入り、ワシが貴殿の指示に従う。そういう図式なら協力しよう」

 聞けば領都から反乱軍鎮圧に乗り出すときに声がかからなかったのを切歯扼腕しながら我慢したそうである。

 惨敗した後には代官から依頼があるかと思ったら話がない。

 冒険者ギルドは依頼を受けて仕事をするのが原則であるから勝手に動くわけにはいかずジリジリしていたところにやってきたのがこの俺というわけだった。


「まあ、アーシェラにも貴殿の頼みには便宜を図ってやってくれと頼まれていたからな」

 一瞬アーシェラって誰だ、と考えておっかねえ婆さんの名前だと気づく。

「ノルンのギルマス、サマードさんとはご懇意で?」

「おう。若い頃は一緒にパーティを組んだこともあるな。まあ、昔話は反乱軍どもを鎮圧した祝いの席にとっておこう。それじゃあ、さっそく下で依頼をかけてくれ」

 どっちが依頼人か分からない指示を受けて俺はギルド長の部屋を出た。

 窓口で話をして報酬を前払いする。

 それからジーナたちのところに向かおうとするとちょっとした人だかりができていた。


 若い冒険者たちが輪を作りジーナの話に聞き入っている。

 どうもバラスと戦ったときの様子を話してきかせているようだ。

 ちょうどエイリアが戦乙女の祝歌の魔法を唱え、ジーナがザ・ブレスを発動したところに差し掛かっている。

「はい。うちのギルマスが戻ってきたわ。悪いけど明日に備えて休息を取らなくちゃ。それじゃあね」

 ギャラリーから残念そうな嘆息の声が口々に漏れた。

 聖騎士ゼークトや高位神官エイリアには知名度でやや及ばないまでも、キャリーもジーナもバラスマッシャーという生きた伝説である。

 直接話を聞いたとなれば相当長いこと自慢できた。


 非難がましい視線が俺に集まる。

「あれがギルマス?」

「元スカウトらしいぜ」

「クラスは一緒でもハリスと違って大したこと無さそうだなあ」

 そういうヒソヒソ声を耳が拾った。

 おっと。

 折角うちの精鋭を見せびらかして参加者を集めようという作戦は俺のせいで効果が薄れそうである。


 宿屋で一泊した翌朝、まだ薄暗いうちに冒険者ギルド前に出かけた俺は多くの人間が屯しているのを見て驚いた。

 俺が率いるメンバーと同数かやや多い人間が待ち構えている。

 白髭のギルマスことデュラスが逞しい腕を上げた。

「おお。依頼人どの。古い砦の探索への同行依頼だが、参加希望者が多くてな。依頼金の範囲内で雇えるだけということだったので多い分には文句はないだろう?」

 いやいやいや。

 俺だってもともと冒険者だし、今はよちよち歩きの新人とはいえギルドマスターをやっているので知っている。

 支払ったのは20人弱の人数を集められるのがやっとの金額だった。


「それじゃあ、早速でかけよう。善は急げというからな」

 デュラスは領都の冒険者に声をかけるとさっさと歩き出す。

 俺も自分の指揮下の冒険者に合図を送るとデュラスを追いかけた。

 横に並んで話しかける。

「こちらとしては構わないがさすがにちと多くないか。これじゃあ報酬が足りないだろう?」

「まあ、砦の連中はここの冒険者にしても邪魔だったからな。ダンジョンの入口はあの砦の近くにあるし、麓は薬草などの採取に便利だった。街道を通行できなくなったもんで護衛の仕事も減っていたし、さっさとぶっ潰したい。ただ、俺たちだけだと手に余る。貴殿の依頼は渡りに船ってわけさ」


「それが分かってりゃあな。冷や冷やしながら夜間に小麦粉を運ぶ必要もなかった」

「それだよそれ。貴殿たちが反乱軍の半数を叩きつぶしたという話が伝わったのも大きいんだ。それが無けりゃ俺の引き連れている人数はもうちっとこじんまりしていただろうぜ。まあ、いいじゃないか。戦いは数だぜ」

「ところでデュラスさん。得物がないようだが?」

 俺と似たような革鎧を着ているが腰にも背中にも武器を帯びてはいなかった。

「ああ。俺の武器はこいつだ」

 細かい金属製のリングを編み込んだグローブを目の前に掲げてみせる。

 日の光をきらりと反射した。

 なるほど、拳闘士というわけか。


 今度はデュラスが俺の頭からつま先までを視線でひと撫でする。

「その鎧。カウバーン社製だな。若いが分かってるじゃないか」

「そういうデュラスさんもそうでしょ?」

「当たり前よ。金属鎧なら話は別だが革鎧だと最近じゃ他に選択肢がないからな。そのせいで高いのはまだしも納期が遅れ気味らしいぞ。困ったもんだ」

 そう言いながらあまり深刻そうな顔はしていない。

 町の城門を抜けて進んだ。


 荷馬車がないので強行軍で取って返す。

 今度は主街道から堂々と接近した。

 路上で多くはないが旅人と遭遇する。

 俺たちが反乱軍の半数を倒した一団と知ると称賛の言葉と共に、奴らの現状について話をしてくれた。

 人数が半減してしまった上に食糧不足がさらに進んで進退窮まっているらしい。

 もうあまり外に出てくることも無く砦に籠りがちであり、そのお陰で多少のリスクを覚悟すればこうして街道を通過することもできるようになっている。


 話を聞いたデュラスさんは太い腕を組んで首を傾げた。

「このまま閉じこもっていてもジリ貧だろうに。まあ、木の実などで食いつなげはするだろうがこの先どうするつもりなんだ?」

「助けが来るのを待っているんでしょう」

「どういうことだ? 反乱軍への助け?」

「まあ、あの連中が自発的に反乱なんて勤勉さが必要なこと始めるわけがない。誰かにそそのかされたんですよ。これ以上はちょっと言えませんが」

「なるほどな。いずれにせよ。それならばさっさと倒しておくべきだな」


 さらに砦に接近すると街道脇の木立ちから1人の人品卑しからぬ男が出てくる。

「私はオルテガ。セプテート子爵に仕えている。反乱軍の鎮圧について貴公らのリーダーと話がしたい」

 あー。

 随分と前(第77話)になるが、王都でティアナたち女性陣やエレオーラ姫に絡んだ酔っぱらいのおっさんがそんな名前だったのを思い出す。

 そのおっさんに仕えていた騎士だった。


 たちまちのうちにデュラスが率いる冒険者たちが身構える。

 本人の言う通りの人間なのか確認する術がないからだった。

 俺は知っているが知っているというわけにはいかない立場である。

 幸いなことにあの騒ぎのときに現場にいた2人が俺の隊の最後尾からやってきた。

「あ! あの時の失礼な男の部下じゃない」

 ジーナが発言するとオルテガも顔を思い出したようである。

 コンバはジーナの体を隠すようにずいと前に乗り出した。


「過日は大変失礼なことをした。重ねてお詫びを申し上げる。ただ、今は火急のときゆえ貴公らのリーダーに取次ぎをお願いしたい」

 オルテガが勢い込んで言う。

 ジーナは俺に視線を向けた。

 その視線をたどってオルテガは俺の前にやってくる。

「我らも反乱軍鎮圧に助力させていただきたい。ついては打ち合わせをお願いする」

 俺を見つめる瞳にはけげんそうな色が浮かんでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ