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874話 疾風の夢。ヒロミの夢。








「ミライが孤児…………」

と疾風は一人自室で呟く


手元に有るのはジョーンズから渡された

資料のコピーだ。


ミライの個人情報が書いてある。



(……………ミライ

こんな世の中ではそう珍しいことでは無いが

……………そうかミライも家族はおらなんだか。

……そうか)

と疾風は思う


疾風の家族も既にこの世には居ないし

仲間達もドンドン先に死んでいった。



(…………同じじゃなぁ

ミライ)

と疾風はミライのあの夏

疾風を見つめた蕩けた瞳を思い出す



(あれは本当に

良い物じゃった)


最近は仕事も忙しくそれ程会えてはいない

それに時折顔を合わせても

ミライの瞳からあの

蕩けるような熱は消えた。



親愛の視線は有るが

それだっていつ失うのかなどわからない。



(………………わしは失ってばかりじゃ

何も残す事も出来ん

……戦う力も失えば

本当にもうなにも。)

とギュッと掌を握る



最近は良くジョーンズ達と

夕食を共にする


賑やかな家族の食事風景。


ジョーンズもツバサも

当たり前のように受け入れてくれる。


疾風をじいと呼んで慕ってくれるローズも可愛い


しかし疾風は本当の家族が欲しい。


自分の血族、分身。

自分が消えてもその後に続く道。



長い長い道。


しかし疾風の道は行き止まりだ。




(…………ミライも家族が欲しいのでは無いか?

……わしと同じなら。)

と思う。



ふいに脳裏に浮かび上がる


いつもの食事風景


その中に混ざるミライの姿を想像すると

疾風は胸をかきむしりたくなる



ミライとツバサ

ジョーンズとローズ


まるでピッタリそう有るのが当たり前のように感じる

それは幸せな家族像だ。


そこには疾風の居場所など無い。



(………………精通前まで

若返ってしまっては…………

もう子を成すのも無理じゃ

…………あとどれ程時は残されておるのか。

…………まずもってこの体で子を成せるのか

それすらわからんがのぉ……

じゃが………やってみん事には

何もわからんままじゃ。

…………ミライを孕ませたい

わしの子を産んでほしいのぉ

………………家族が居ない同士

家族になれたら)

と思う



そこまで考えて

疾風はクシャリと資料のコピーを握りつぶす。



(………………一人勝手に突っ走る

………これも若返った影響か?

……………なんとも青く未熟な思考じゃ

危険じゃなぁ)



夢物語を語るような

そんな歳はとうに過ぎた筈だった

しかし

こうして夢物語に心踊らせて


枯れたと思っていた欲まで湧いてくる始末。


(……………ふう。

老成とはなんじゃ?

…………ただ時を無為に過ごせば

良いと言うわけではないのじゃな?

精神は肉体に引っ張られると言う訳か?

…………なんとまあ

…………わしのこれまでの長い時を

否定されたようじゃなぁ)


「ふ……ははは」

と疾風は乾いた笑いを零した。








〜〜〜〜







「行ってらっしゃいませ

ご主人様

また帰ってきてくださいね」

とナナは最後のお客を見送り

ふうと息を吐く。


そしてこれからテーブルの片付けだと

お盆を手に取る



最後のお客と言っても

今は店内にまだ加藤や柴崎

安藤達は残っているが

トルテ達の知り合いらしいから

もう気にしなくて良いと言われた。



「今日は凄く楽しかったな

………うふふ」

とナナは小さく笑いを零す



ご新規さんが沢山来てくれたし

女性のご主人様も来てくれた


その中の一人はナナを推しメイドに

選んでくれた。

確か名前はセフィラ


帰りも名残惜しそうに手を振って居たなとクスリと笑う


チェキも沢山撮ってくれた

本当に楽しかった。



でもナナの顔は曇る



(……………でも、店長

……あの人達本当に…大丈夫かなあ?

………トルテさんは味方って言うけど

でも狂犬だよ?

それに背の高いお兄さん少し

怖そうだったし…………

額に入れ墨入ってた………)

とナナはヒロミを心配する



裏に行ったヒロミ達はまだ表に戻って来ない。


(………………店長

私は最後までずっと側に居たい……。

…………もし店長が

本当に…………どうしようもなくなったら

…………私が…………

黒蝙蝠を………

だって此処は店長の夢のお店だもん

………潰させない

絶対に……)

とナナは手にしたお盆に力を入れる




「ナナ?私も片付けるよ」

とトルテが声をかけて来た


ナナはハッとした。



「あ、うん。

じゃあトルテさんは向こうのテーブルお願いね」

と告げるとトルテはニコリとして

頷く


(あ……………やっちゃった

…………最近はコントロール出来てた筈なんだけどなぁ。

…………やっぱり店長が心配だもん

……………はあ落ち着かなくちゃ

……)

とナナはお盆を見て

はあと息を吐いた。



硬いはずのそれには

くっきりと指の跡が残っていた。










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