戦い終わって
「片岡、お疲れ。さすがだったわね」
「無事だったな」
檜村さんと話をしていたら、国分さんと漆師葉さんが声をかけてきてくれた。
二人とも無事だったか。
まあ僕らが地上に戻ってるってことはもちろん二人とも戻っていたはずだけど、それでも顔を合わせると安心する。
「サポートチームの人は?」
「大丈夫だ。ルーンキューブと戦いになって危なかったみたいだがな」
「突然キューブが消えて地上に戻ったって言ってたわ」
「国分さんは足は大丈夫です?」
「ああ、大丈夫だ。ただあと少し遅かったら足を折られたかもな……片岡、助かったよ」
国分さんが足元を気にするように言った。
国分さんが動けなくなっていたら多分負けていたな……改めてきわどい戦いだったな。
「でも、流石だったわね、片岡。あたしのライバルにふさわしいわ」
「ライバルなの?僕は乙だけど」
「だってあんたの能力、どっちかというと甲寄りでしょ」
「それは……まあ」
登録当初は風を操作するなんてまったくイメージできなかった。
射程も精々で2メートルほどだったし。そんなこともあって僕は登録時点では乙類に分類された。
でも、戦っているうちにだんだん使い慣れてきて射程が伸びたり使い分けができるようになってきた。
現状の能力は甲類寄りだろうな、と思うけど、一度登録すると変更はできないらしい。
鎮定に会ってから、もっと風の能力を使いこなせるようになった気がする。
鎮定に言わせると全て使い手次第、ということらしいけど、気分的には鎮定が助けてくれているという感じだ。
「つまり、乙類の清里や斎会よりあたしの方があんたのライバルに相応しいというわけね。万能型の剣使いなんだからね。すぐに追いつくから待っていなさい」
そう言って漆師葉さんが気取ったように髪をかき上げた。
◆
「しかし……あれでよかったのね」
国分さんが救出された人たちを見ながら言う。
衰弱していた何人かは救急車で運ばれて行って、他の人はテントの下で魔討士協会や役所の人、家族らしき人と話をしていた。
とりあえず誰も亡くなっては居なかったようでよかった。
あのワイヤーに首を絞められていた女の子も両親と弟さんらしき人に囲まれて何か話していた。
亡くなった一人であっても、その人に大切な人が何人もいれば、その悲しみは大きくなってしまう。
あの子が亡くなっていたら……どうなっていただろうかと思う。
漆師葉さんが怪訝そうに国分さんを見た。
「何言ってんのよ、国分」
「だってよ、あの人たちは望んで夢を見てたんならさ、その夢から無理やり冷ましてしまったんじゃないかってな」
国分さんがさんが言う。
あの女の子は、あの時のような夢見るような顔じゃないけれど、疲れたような戸惑ったような表情がここからでもわかる。
「……しんどいことが多い世の中だからよ、気楽な夢を見ていたいって気持ちは分かるんだよな」
「……いいのよ。あとは自分たちでどうにかしてもらわないとね。それに勝手に眠ったままになっっちゃったら家族がやってられないでしょ」
漆師葉さんが言う。
確かに、いきなり自分の家族がいなくなって行方知れずになったりダンジョンの奥で眠ったままになるとかになったら……それを受け入れられる人はいないだろうな。
これで良かったかどうかは分からない
……でもあの場では最善を尽くしたと思いたい。
◆
「でも、本当にありがとう。これで3位に上がれそうだよ」
檜村さんがスマホの画面を見せながら言う。
檜村さんと国分さんが画面をのぞき込んだ。
「よかったですね。おめでとうございます。目的達成ですね」
「こんな通知が来るんだな、初めて見た。3位なんて俺には想像もつかないね」
ダンジョンに入る時点で、討伐点が檜村さんに優先的に付くように申請してあった。
だから、攻略と同時に通知が来たんだろうな。
3位昇格の要件はわからないけど、7階層の定着ダンジョンの攻略は流石に大きかったらしい。
もう一つ定着ダンジョンの攻略をするなんてことにならなくてよかった
ダンジョンマスターの強さにも差はあるけど、やっぱり手ごわい。
今回もたまたま国分さんや漆師葉さんと動きが噛み合ったからよかったけど、一つ間違えば負けもあり得た。
そうなったらどうなったかは……考えたくないな。
「ところで檜村さん。魔法を詠唱してるときは周りは見えてるの?」
「まあ一応は見えているよ。とはいっても魔法に集中してるから正確ではないけどね」
「あのワイヤーが結構近くまで来てたけど、気がついてた?」
漆師葉さんの言葉に檜村さんが頷いた。
「片岡君が守ってくれると信じていたから、私は私の役割を果たすだけだよ」
檜村さんが言う。
「ああいう時は信じて一秒でも早く魔法を撃つだけさ」
頼られるのはうれしいんだけど……なんか漆師葉さんと国分さんの目が冷たい
白い目に気づいたように檜村さんが首を振った。
「いや、もちろん君たちもだよ、片岡君だけじゃなくてだね」
「なんだろ、ねえ、国分。なんか腹立たない?」
「同感だ、まったく幸せそうで何よりだよ。変な夢見せられるより幸せそうだよな」
「片岡。あたしから忠告しておくけど、あんまり露骨にいちゃつかない方がいいわよ」
「そうだぜ、有名人だろ、あんたら」
「功績点譲るのばからしくなってきたわ。こんな幸せそうな二人に」
「俺も今そう思ってた」
二人が言って檜村さんが頬を真っ赤に染めてうつむいた。
隣でそういう態度をとられるとこっちまで恥ずかしくなるからやめてほしいぞ……気まずい。
「でもよかったわね。檜村さん。昇格おめでとう」
「3位昇格には審査があるんですよね。すぐに審査を受けるんですか?」
「もちろんそのつもりだよ」
どうやら冗談だったらしい……二人が気楽な調子で言ってくれた。
檜村さんがはっきりと答える。
結局、こんな危ない橋を渡ったのは涛早の難癖の対抗するためだ。
これ以上騒がれないうちに早く終わらせてしまいたい
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