宇都宮ダンジョンの深奥・上
大変長らくお待たせいたしました。
区切りまで連投します。多分8連投の予定。
それと、連投中の何処かで何人かのキャライラスト(漆師葉、清里、カタリーナ、トゥリィ、フェンウェイあたり)を載せようかと思っていますが如何でしょうか。
ビジュアルイメージがすでにあるから要らん、という人もおられたりするので、ちょっと確認です。
宇都宮ダンジョンの中に入った。
4人のサポートチームが3つと僕らの総勢16名。これだけたくさんで一度のダンジョンに入るのは初めてだ。
そして、周りはみんな僕より年上っぽい。唯一の例外は黒いコートを着た漆師葉さんだ。
みんな正社員なら大学生とかそれ以上だから当然なんだろうけど、知らない大人の集団に混ざるとなんか居心地の悪さがあるな。
「片岡4位、よろしくお願いします」
「必ず無傷で7階層までお届けしますので」
「頼りにしてますんで」
そんなことを考えていたら何人かが声を掛けてくれて、少し気が楽になった。
一応この中でランク的には最上位は僕と檜村さんなんだよな。
階段を下りたら十字路のような場所だった。
新宿系特有の四角いタイルのようなものに覆われたまっすぐな通路が伸びている。
赤い光で視界に不自由はない。
新宿系のダンジョンに入るのは久しぶりだな。
ゲームの画面を思わせるうねうねしてないまっすぐな通路は見通しがいい。
周囲に散った人たちが警戒するように通路を見回した。
なんとなく土ぼこりとかの気配を感じてしまう、八王子系とか奥多摩系の遺跡とか洞窟っぽい空間と、新宿系のダンジョンは明確に違う。
3Dダンジョン探索ゲームの画面を見ているようない感じで、空気もなんか澄んで感じる。
「とりあえず、敵はいなさそうね」
漆師葉さんが通路の奥に視線をやって言う。
八王子系とか奥多摩系は洞窟とか遺跡っぽくて死角とかが多い。
だから不意打ちの警戒が必要になるし神経も使う。
見通しがいいから不意うちとかは食らいにくいのはいい。
その分、見つかったら戦闘は避けられないんだけど……今のところは僕らの話し声が廊下に響いていているだけで、音ひとつしない。
新宿系の魔獣は強い。
セス達の言葉を信じるなら、あれはドローンとかそういうのと同じらしい。
戦闘に特化した感じで確かに手ごわい。風ではレーザーのような攻撃を止められないのもかなり厄介だ。
できれば戦闘は避けたい。
「周囲に敵影無しです」
「ルートは分かるんですか?」
「当然だろ、きちっと下調べしてあるぜ」
国分さんが自慢げに言う。
本当に抜かりがないな……こういうのを聞くと安心できる。
「じゃあ、行きます」
「よろしく頼むぜ。吉成」
多分大学生か、それより少し上かなって感じの背の高い男の人が目を凝らすように先を見ながら通路を歩き始めた。
多分探知系の能力を持つ人なんだろう。
その横を、剣と槍を持った二人の男の人が陣形を組むように挟んで進む。
探索開始だな。
◆
下調べしてある、というだけあって、全く迷いなく2階層の階段の部屋まで来た。
20分ほどでここまでたどり着けたのは敵が何も出てこなかったからだ。2階層まで来ても何もでないとは。
「静かすぎて不気味だな」
「楽できていいじゃない」
「お気楽すぎるんじゃないのか?嵐の前の静けさって感じで俺は嫌だね」
メンバーの人たちが言葉を交わしあう。
個人的には僕も嵐の前の不穏な静けさのようで嫌な感じだ。
三階層へ至る階段の部屋は5メートル四方くらいの正方形の部屋だ。
以前の銀座で見たのと同じように、平らな床に四角い穴が開いていて、透明なパネルが螺旋階段のように下の階層に伸びている。
「予定通り1班はここで待機します……感度良好」
一つ目のサポートチームの人が大きめのヘッドホンのようなものを付けて言う。
静かな回廊にその人の声が響いた。
「通信機ですか」
「これでより連携がしやすくなった。まだ2階層分くらいしか通じないが、無いよりいいだろ」
国分さんが言う。
連絡が取れるっていうのは確かに大きい。特にこんな風にチームで動くなら猶更だろう。
それにほんの少しの音声であっても、ダンジョンの中では仲間の存在を感じられて心強いと思う。
「周辺の捜索を開始します。もしかしたら人がいるかもしれない」
サポートチームの人達が言う。
そういえば、このダンジョンに入って行った人がいるとかそういう話だったっけ。
「無理はすんなよ、ヤベえと思ったらすぐに下がれ。上にも助けを求めろよ」
「わかってます」
国分さんがリーダーらしく言って、サポートチームの人達が頷く。
此処に待機する人たちは多分まだそこまで実戦経験がないんだろうな、という緊張感が伝わってきた。
「よし、じゃあ次は俺たちが先行します」
そういって、次の班が先頭に立って階段を下りて行った。
◆
その後は4階にもう一班サポートチームを置いてさらに下に降りた。
ただ、戦闘は全く起きなかった。全く魔獣の気配すらないままに6階層まで来た。
スマホの時計を見るとダンジョンに入って2時間弱ってところだ。
ここまで何もないと、運がいいとかそういうのじゃなくて不穏だ。
最初は楽ができていい、という感じだった漆師葉さんも5階層あたりからは無言になっている。
隣にいる檜村さんからも不安な空気が伝わってきた。
「国分先輩に漆師葉さん、片岡さんと檜村さん……皆さん気を付けて」
「ああ、お前らもな。ここは6階層だからな、気を抜くなよ」
国分さんがサポートチームの人と言葉を交わして、階段を下りる。
階段を下りた部屋はこれまた今まで何度もみた5メートル四方くらいの部屋だ。
赤い壁の一つに大き目の通路の入り口があって、まっすぐ回廊が伸びている。
「この階がラストなんだが……さすがにここはほとんど調べてねぇ。万が一ダンジョンマスターとぶつかるとやばかったからな」
国分さんが言う。
タブレットを見せてくれたけど、確かにこのフロアは全然マップが映っていなかった。
「ただ、まあ行くしかねぇな……迷わなくていいのはいいぜ」
国分さんが巨大なハンマーを構えて自分を鼓舞するように大きな声で言う。
国分さんが先頭に立って回廊に足を踏み入れた。
殺風景な回廊には敵影も無ければ人の姿も無い。
定着ダンジョンの捜索の経験はあまりないけど……ここまで何も出てこないっていうのは異常だと思う。
「静かすぎるわね」
「確かに……」
赤っぽい足音と僕たちの話し声だけが響いてひたすら不気味だ。
廃墟の研究室とかを歩いているように感じる。
ただ、このままダンジョンマスターの部屋まで行ければ、消耗一切なしで戦えるかもしれない。
それはそれで悪くはない……とポジティブに考えたいところだけれど。
「ここまで何も出ないと本当に不気味だな」
先頭を行く国分さんがつぶやく。
途中の分岐は何か所かあったけど、国分さんが迷わず道を選んだ。
どうせマップがあるわけじゃないし、ここは迷っていても仕方ないってことだろう。
何度かの分岐と何度目かの曲がり角を抜ける。
ポケットからスマホを出してみるけど、まだこの階層に来てから10分ほどしかたっていなかった。
もっと長い時間がたった気がする……警戒しながら歩いている分だけ時間が長く感じるんだろう。
息が詰まる感じだ。
横を見ると、檜村さんも漆師葉さんも疲れた表情を浮かべていた。
袖で額ににじんだ汗を拭ったところで、先を行く国分さんが足を止めた。
「どうしたの、国分」
「あれ、見ろ……」
国分さんが指を刺したその先。
赤い光に照らされたまっすぐな通路の向こうに何か黒いものが見えた。
あれは、人か?
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