表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
297/302

僕が刀を握る理由

「では皆さん。集まって!」


 そんなことを話していたら伊達さんの呼び声が聞こえた。

 伊達さんを中心にして皆が全員が円陣を組むように集まる。


 揃いの隊服がなんとなく野球とかのユニフォームっぽい。30人近くはいるから結構大きな輪になった。

 中央に伊達さんが立って周りを見回す。


「では皆さん。いつもどおり頑張っていきましょう!」

「おう!」


 力強い伊達さんの声が響いた。

 全員が同じように力強く応じる。

 

「囚われた人がいるといいます。もちろん一人残さず救い出しましょう!」

「おう!」


「そして、誰も欠けることないように!皆さん。ここでまた会いましょう」

「おう!」


「私達の力を見せましょう!私達の明日のために!皆に武運を!」

「フォレストリーフ・ウイザーズギルト!行くわよ!」

 

 伊達さんの言葉の後に漆師葉さんが締めて皆がタイミングを合わせて手を叩く。

 みんなの手拍子の音が青空に響いた。



「なんか照れますね」

「こういうのはチームの指揮を高めるんですよ。スポーツでも円陣を組むでしょう?」


 伊達さんが少し照れ臭そうに微笑んで言う。

 あんまりこういう熱血イメージじゃないんだけど、これもチームのためってことか。


「まあ、確かに」


 僕もなんとなくテンションが上がった気がした、

 それに、さっきとは少し雰囲気が変わった気がする。


 なんというか空気が引き締まって戦闘モードに入ったって感じだ。

 それぞれのチームが真剣な顔で言葉を交わし合っている。


「ところで、片岡君……さっきから気になっていたんだが、電話が鳴っているんじゃないか?」


 檜村さんが首をかしげて言った。

 確かにポケットの中でさっきからスマホが震えている。

 

 さっきから何度も鳴ってたけど無視していた。

 ほぼ間違いなく涛早からの電話なのはわかっていたし。とはいえ、言われたら出ないわけにはいかないか。


 ディスプレイには案の定すでにうんざりするくらいに見た電話番号が表示されていた。

 見るだけでうんざりするな。


『ようやく出たわね。片岡。今日はあなたの紹介動画を取ると言っていたでしょう?どこにいるの?』


 通話ボタンを押すと、さっそく怒ったような涛早の声がした。

 檜村さんが声を聴いて少し怯えた様な顔をする……全く、テンションが下がるな


 SMSのメッセージでそんなのが表示されてた気もするけど、今日だったのか。

 見ないようにしてたからしらなかったな。どうりでしつこく電話してくるわけだ。


「今からダンジョンを討伐しますんで、動画撮影とかは無理です」

『は?何で今更そんな無駄なことをしているの?戦う必要はないって言ったでしょ』


 イラついたって感じの声がスピーカーから聞こえてくるけど。


『私の言うことが聞けないっていうわけ?』

「戦わないなら、それはもう魔討士じゃないでしょ」


 そう言って赤いアイコンを推して電話を切る。

 涛早のやかましい声が消えた。


 そして、なんとなく感じていた涛早へのいら立ちが分かった。

 鏡を見るように感じた。涛早は、あるかもしれない僕の姿だ。


 いわれてみれば、高校生初の乙類4位だ。

 なんかいつの間にか顔も知られるようになった。

 魔討士として戦うのなんて辞めてインフルエンサーとかになって楽に稼ぐことができる。

 確かにそういう道もある。


 でも、あんな風に言う僕、戦わないで楽に生きればいい、と賢そうに言う僕。

 そんなの、想像するだけでうんざりする。

 

 それに僕がそうしたとしたら……僕があいつに感じた嫌悪を、きっと斎会君や清里さんが僕に対して感じるだろう。

 そんな自分は嫌だ。


 こんな風にするのは合理的じゃないかもしれない。でもあんな風にはなりたくない。

 今戦う理由はそれで十分だ。

 またスマホが震えたけど、通話拒否ボタンを押して電源を切ってポケットに戻した。

 

「バカ話は終わった?みんな待ちくたびれてるわよ。片岡」


 黒い軍服風のコートをひるがえして漆師葉さんが言う。

 準備万端って感じだな。僕もいうことを言ったら少しすっきりした。


 ダンジョンの入り口の前ではすでに緑の隊服を着た人たちが待機してくれている。

 入り口まで進むと国分さんが片手をあげてくれた。強めにハイタッチすると、国分さんがいかつい顔で笑ってくれた。


「おし!じゃあ行くか!」

「行きましょう!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ