第16話 ~決戦・その5 転送~
今回は魔王城の外で戦っているリオとユフィ、あとチャアの話です。
「「「「「「やあああああああっ!!」」」」」」
「ちゃああああああっ!!」
「たあああああああっ!!」
ちみっ子の2人《リオとチャア》が剛の配下達と共に寄生恐竜(仮)から出ている触手をズバズバ斬る。
「……………。これじゃキリがないです………」
が、触手とだけあって、再生能力もある様で、斬っても斬ってもどんどん生えてくるのでキリが無いのでユフィも召喚(招来)のタイミングが全く掴めない。下手に召喚(招来)するとリオ達を巻き込みかねないからだ。
「「もーっ! どんだけ触手生えてくるのさーっ!」」
「あははは……。ごめんね。何か対策が思いつくまでもうちょっとだけ頑張って!」
「うきー!」っと言わんばかりに地団駄踏みながら愚痴るリオとチャアを苦笑しながら宥めるユフィ。子供か!……子供か。
「「「「きゃあああああああっ!?」」」」
「「っ! はあああっ!」」
時より油断からか、剛の配下の子達が何回か足を取られたりしてリオとチャアに助けられたりしているが、段々とその数も多くなっていき、そろそろ本格的に何とかしないと危険かもしれない。
その時、
≪こちら『ベルガイア』、こちら『ベルガイア』。ユフィ、リオ、聞こえるか? 聞こえていたら応答してくれー≫
「え、ヴァン!?」
「隊長!?」
スマホを所持している2人のスマホから【アルフィーニ】の近くに到着したヴァンから緊急回線での通信が入り、ハンズフリーで通話状態になる。
≪来る途中からモニターでお前達の戦いをちらっと見てたけど、その相手(寄生恐竜)ってお前達と相性悪すぎないか?≫
「……分かりますか」
≪分からいでか。罠師のリオじゃ普通に火力不足だし、お前の術でソレを消そうとしたら威力が強すぎて地形ごと変わってしまうからな≫
ユフィの懸念にヴァンが答え、「やっぱりですか……」と溜息を付くユフィ。
「ええ……。なので最悪廃墟世界のどこかへ強制転送させようかと」
≪おいおい……。いくら廃墟世界だからって誰かがそこで住んでたらどうすんだよ?≫
「だから、最悪の話です。……ですがヴァン、貴方がわざわざこうして会話に割り込んできたという事は、何か策がお有りですよね?」
≪ああ……まあ、策といえなくはないやり方だけどな。とにかくそいつをとある場所へ転送するから数秒だけ抑えててくれ≫
「はい、分かりました。リオも聞こえましたか?」
「おっけーだよ隊長~!」
≪……相変わらず元気な奴だ。じゃ、頼むぞ≫
「「はいっ!」」
動きまくっていては転送が出来ないというヴァンに、ユフィとリオの2人は応え、チャアや剛の配下の少女達に『寄生恐竜(仮)』の動きを制限させるよう指示を出した。
勿論、リオが取り出したスマホを見てチャアがそれに興味を持ち、若干戦いそっちのけになったりもするが、今は戦闘中、「後で見せたげるから!」と言うリオに渋々従った。
「GYOOOOO$”>{|?<#**+>ふじこZ$”^・:!!?」
段々と動きを制限させていく様に寄生恐竜は途中から変な雄叫び(寄生された事で狂変したのではないかと)を上げながら触手を暴れさせる。
「……何か途中で『ふじこ』って言わなかった?」
「そのツッコミは野暮ですよリオ。戦闘に集中してください」
「あ、はい」
何故、寄生恐竜が定番のセリフを言ったのかは誰も知らない。
「「「「はあああああああっ!!」」」」
左右両翼から剛の配下達がひたすら生えてくる触手を切りまくり、
「にゃああああああ!!」「ちゃああああああ!!」
後方のチャアとリオは本体の恐竜を背後から攻め立て、
「招来『ロウ・シルフ』『フロー・カイア』!!」
そして前方と上空をユフィが召喚(招来)術を用いて風の精霊と土の星霊を呼び出して寄生恐竜(仮)の動きを封じ、逃げ場を無くす。
先ほどまでとは違い動きを封じればいいだけなので、また触手に捕まる危険はないが、長距離からの転送なので多少時間は掛かり、ヴァン(厳密には透)からの転送準備完了の合図まで5分は掛かった(『ベルガイア』が古い機体なので処理に時間が掛かったというのも要因の一つ)。
「っ! 今です、みんな退却してください!」
「『プレス』!!」
透からの合図を受け取ったユフィが皆に指示を出し、最後に恐竜の動きを止める為、シルフが上から空気による圧力を掛けた。これにより恐竜&触手の動きを一時的に止める事ができ、更にリオ達が退却する時の反撃をも無効化する。
≪転送!!≫
ブォン──────
「GYOOOOO$%%|¥<;@ふじこ!!?」
シュン──────
「お、終わった?」
「ええ、もう大丈夫ですよ」
「……やっぱ『ふじこ』って言ってた! 隊長も聞いた?」
≪そんなのどうでもいい≫
チャアの疑問にユフィが笑顔で答え、一方のリオのツッコミにツッコミ返すヴァン。どんな会話だ?
「それよりさ。あのデカブツが急に消えちゃったけど、どこ行ったの?」
「多分あっちかな?」
チャアが両手を頭の後ろに組みながらリオに聞いたら、リオはとある場所を指差していった。そこは夕日が指す太陽の方向。
「あっちって、どの辺よ?」
「ん~。だから、あっち。太陽」
「………は?」
「だから、太陽」
「………?」
「何言ってんだコイツ?」とばかりにリオをジト目で見るチャア。
そりゃそうだ。『宇宙』という概念がまだ無い世界にとって昼や夜、月や太陽などといった事象はあるが、それがどんな風になっているのかなんてわかる筈もない。昔の地球人だって『星は丸い』と分かったのに相当な時間と労力が掛かったのだから。
「~~~~~~~~~~~~~~」
※:リオによるチャア達への星の概念(軽め)の説明が行われています。
閑話休題
「ん~~っ! これだけ暴れたんだ。もう敵は出ないでしょ!」
剛の流星魔法(?)と寄生恐竜が暴れた事で魔王領が壊滅状態になったのを見てこれ以上敵は出ないと思ったチャアはリオの説明を聞いた後、伸びをした。
「あ~~。チャア、そのセリフは言わない方が良いよ?」
「? 何で?」
「あちゃ~」っと額に手を当てて嘆くリオに首を傾げてチャアが聞く。
するとその直後─────
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────────────
「「「「「きゃあああああああっ!?」」」」」
「え? 何…何っ!?」
崩壊した魔王領で地震が起き、立っていた少女達はそれぞれ尻餅をつく。リオに指摘されたチャアも何が起きたのか分からず四つん這いになりながらテンパる。
「『この戦いが終わったら~~する』とか『ここまで逃げれば追手は追って来れない』とか変な事言うのをフラグって言うんだけど、その系の言葉を口に出したら大抵の場合─────」
チャア達がまともに立てないのにも関わらず、立ったまま虚ろな表情のままのリオがそう言った時、それは起こった。
GOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!
「ほ~ら、こうなった………」
リオが「あはは……」といった先に、魔王領の崩壊した建物の瓦礫や魔王城そのものが集まって合体し出来た巨大なゴーレムが雄叫びを上げる。その大きさは先ほど戦った恐竜なんかじゃ比じゃない。ゆうに3、400mは超える大きさだ。
「「「「おあああああああああっ!!?」」」」
「「「「「「????」」」」」」
そして変な声がゴーレムの方から聞こえ、皆がゴーレムの脇腹あたりを見ると、ゴーレムの生成に巻き込んだ魔王城から正義、ベリアル、暴君、魔導士の4人がポイっと吐き出され、落下していた。
「って事は……あれ? さやや達がいない?」
正義達が吐き出されたので、同じ魔王城内にいる佐夜達も外に吐き出されたのでは?とリオが軽く望遠鏡からゴーレムの正面あたりを見るが少なくともそこにはいなかった。
「ヴァン、透。ゴーレムの周りに佐夜さん達がいらっしゃったら回収してもらえますか?」
≪ああ、分かった。それよりどうするんだそのゴーレム? 見た限り、異世界関係じゃないからあまり手出し出来ないぞ?≫
ヴァンの言葉にユフィが「う~ん……」と悩む。
基本的に『世界管理協会』が関与出来るのは、その世界に存在しない事象が絡んだ時だけだ。
先ほどの恐竜の場合もこの世界には存在しない他世界から召喚された生き物なのでそれを捕獲&駆除という名目で手出し出来たのだが、この巨大ゴーレムの場合、全身がこの世界で出来た物&異世界の力を感じないので軽々しく手出しできない。
ちなみに佐夜達は魔王の部屋を出て通路を通ってる間に、魔王城とは別の建物に移動している為、運よくゴーレム出現での影響は無い。
『君達、よくもやってくれたね。僕のペットをどこにやったっ!?』
そしてようやくゴーレムが完成したと同時に、どこからか拡声器の様な物で誰かが怒ってきた。
「誰なの!? 隠れてないで姿を現せー!」
「ちょっ……! 何でわざわざ挑発するのチャア!?」
「だって誰かも分からない奴にコソコソされるのが気に食わないんだもん!」
「それは分かるけど!」
何時動き出してもおかしくないゴーレムを操っている奴をテンパりながら挑発するチャアにリオが背後から羽交い絞めにして止めさせようとするが、怪力系の能力者であるチャアには効果がなく、見た目的にじゃれている様にも見えなくもない。
『僕を無視するなー! 僕は魔王軍の将軍の一人『喚起』なんだぞ!』
ユフィはヴァンと、チャアはリオ&配下達と話している為、シカト状態になった将軍が一人『喚起』とやらが何やら激オコしている。
「喚起……という事は、あなたがあの恐竜や神龍達をここに召喚したのですね?」
『喚起』といった者のその言葉に反応したユフィが、思わず判明した召喚師に向けて言う。
※:ちなみに喚起≒召喚(招来)
『そうだ。これで魔王軍の戦力が格段にアップしたと思ったのに、最近何故か呼び出した筈の召喚獣が消えてなくなっていたり、再び喚起術をしても何の反応も無かったから魔王軍内でも貶されまくったんだぞ!』
「あーそれね………ご愁傷様」
『喚起』の怒りにリオが手を合わせて合掌する。
その訳は勿論、召喚獣たちはユフィが送還で元の世界へ返し、喚起(召喚)術が使えない理由は、ゼロが外部から掛けた『次元封鎖』の所為だ。
『な………お前等の仕業か─────っ!!!!』
その事も含めてリオが残念な奴を見るかの様に憐れみながら言うと、ついに『喚起』がキレた。ええ、それはもう。姿は現してはいないが物凄く怒っているのは間違いないだろう。現に操っているゴーレムが地団駄踏んでるし。
「「ご、ごめん(なさい)ね」」
『うがああああああああ!!』
リオとユフィが揃って(誠意のない)謝罪をすると『喚起』が発狂した。
『はぁ、はぁ……も、もういいさ。こうなったら僕が作ったこの最強のゴーレムで全員潰してやるー!!』
駄々を捏ねた子供の様に『喚起』が言い、先ほどから動く様子がなかったゴーレムがゆっくりとではあるが動き出す。
「GOOOOOOOOOOOOO!!!」
『いっけーっ!!!』
そして『喚起』の掛け声とともにゴーレムが腕を振りかぶり、リオ達の居る所へ拳を下ろす。
咄嗟にユフィが『アイギス』を広範囲に出して防御に回り、衝撃に備えた。
────────ガッ!
『……………は?』
「……………え?」
「……………へ?」
≪……………な、何っ!?≫
ところがどっこい(死語)、巨大ゴーレムの拳はチャアのグーパンチで止められていた。これには『喚起』は勿論、流石のリオ達とモニター越しで見ていたヴァンと透も驚きを隠せない。
チャアが『怪力』の能力者だという事は『喚起』以外のみんなは知ってて重々承知ではあるが、いくらなんでも自分より200倍近く大きい相手の拳を素手で受け止めるなんて普通は無理だ。
一応、ユフィの『アイギス』や、ヴァンもゴーレムの拳を止めようと思えば止められるのだが、いくらなんでも馬鹿正直に拳で止めようとはしない。
「ちゃあああああああああああああああああああっ!!」
ドォン!!
「GOOOOOOOOOOOOOOOO!!?」
そしてチャアはそのままゴーレムの拳を押し返し、逆にゴーレムを仰け反らせた。一方のゴーレムもまさか止められるとは思っていなかったであろう。顔の表情は分からないが何となくビックリしている様に聞こえる。
そしてそのゴーレムが一瞬怯んだ所を見逃すチャアではなくそのままゴーレムへ向かって一直線に飛び、
「ちゃああああああ────────────ふっ!!!」
ドッ───────────
「GOO─────────────ッ!!?」
腹パンの要領でゴーレムの腹に一撃入れ、そのままゴーレムは一直線に空を飛び、星となった(笑)。
『「「えええええええ………」」』
そのあまりの一瞬の出来事に『喚起』はおろか、リオやユフィも絶句せざるを得ない。
≪何かよ……空を飛んで行ったゴーレムが、この星の近くにあった惑星を貫通して行ったぞ? ……自分でも何を言っているのか分からないが……≫
絶句しているリオとユフィの持つスマホからも、ヴァンが2人と同様に絶句していた事が伺えた。
「ふぅ~~。スッキリ!」
後に残ったのは実に清々しい笑顔で伸びをするチャアとそれを見て苦笑いをする配下の少女達だった。
ちなみに、何故先ほどチャアが取り乱していたかというと、いつもの様に力任せだと寄生恐竜は倒せなかったストレスと、その後に現れたゴーレムもまた変な事になっているのではないかと不安になってたらしいが、このゴーレムがただ大きいだけの物だと分かればこっちのもの。
つまり単純にふっ飛ばせば良いだけの話。簡単だね!
話の途中で落下してきた正義達の話は次回に持ち越しです。
ではまた。




