第8話 ~未帰還者の事情~
お、遅れました。眠い……
「アハハハハ♪」
「ハハハハハ♪」
夕方の大草原にて1組の若いカップルがやけに楽しそうに追いかけっこをしていた。
誰なのかというまでもなく佐夜とイングだ。(何で?)
「つっかまーえたっとぉ!」
「キャッ!」
男子の手が女の子の手首を捕まえて己の腕の中に抱きかかえる。女の子は小さく悲鳴を上げるが別に嫌がってはいない様だ。
「サヤ…………」
「イング………」
そしてゆっくりと2人の影が重なり───────
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「う、うおおおお、おおおおおおうっ!!?」
「ひゃああ!?」
(夢の中で)2人の唇が重なる直前で目が覚めた佐夜は絶叫を発しながらベットから飛び起きた。そして、寝ていた筈の佐夜が突然ワイヤーアクション張りの動きを見せた事で佐夜の看病をしていたリオもビックリして椅子から転げ落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
「さ、さやや……? だ、大丈夫?」
ベットの上で顔を紫色(真っ赤と真っ青が混じった状態)ではぁはぁ言ってる佐夜に恐る恐る声を掛けるリオ。珍しく大人しい。
「ゆ……夢かー」
リオを見た佐夜は、自分が(変な)夢を見ていた事にホッとする。
「夢? 夢とな? さやや、絶叫を上げる程どんな夢を見たのかリオ、気になる! いや、木になるよ!(誤字)」
「何で言い直す? 後、夢の内容はよく覚えてない。絶叫を上げる何かがあったのは確かだと思うけどさ」
「何だ。ざ~んねん」
佐夜は自分が(絶叫を上げる程の)見た夢に興味を持ったリオを諦めさせるため嘘をついた。で、ないと『あの光景を』思い出してしまうからだ。
閑話休題
「へぇ、それじゃああのキングアルベは無事討伐出来てた訳だ」
「うん。そうなんだけど、ひなちゃんとさややが撃ったあの福音弾の反動がすごくてね、さややが作った壁を2人は突き抜けたと思ったら、門すらも突き抜けて石壁に背から激突した時は正直死んだかと思ったんだよ? ひなちゃんはさややがクッションになったおかげでぶじだったけどね~」
「そっか、陽菜々は無事なのか。良かった」
「良くはないよ!?」
佐夜は自分が気絶した後の顛末をリオと話しながらサイエンGOの艦内を歩く。
「何気に死に掛けている佐夜を見てひなちゃんはオロオロするし、レイレイ達はまた何か別のトラブルに巻き込まれて召喚対象者を送還せずに連れてくるし、おかげで今この艦内は混乱の嵐だよー」
「あー。まぁとりあえず先に陽菜々の様子でも見に行くか?」
「そだね。ひなちゃん、かなり心配してたからね~。……覚悟した方がいいかもね」
「???」
あさっての方を向くリオを連れつつ2人は陽菜々とユフィの部屋に入る。
「あら? リオ……と佐夜さん。目が覚めたのですね。良かった……」
食事の準備をしていたユフィがリオを見た後、佐夜を見てホッとする。この人も佐夜を随分心配していた様だ。
「あ……あああ………」
「「「ん?」」」
佐夜とリオ、そしてユフィの3人は、何か掠れる様な声の方を向くと、陽菜々が佐夜を見てフルフル震えていた。
「ひ、陽菜々……?」
佐夜が恐る恐る声を掛ける。すると、
「サヤさーん!」
「あはは、大丈夫。俺は平気だかr──わぷっ!?」
陽菜々が泣きながら佐夜の方へ駆け寄ったかと思ったら、そのまま佐夜の顔を目掛けて抱き着いた来た。佐夜もこれには少し驚いたが、これくらいまでなら別に問題は無かった。
そう、リオが言っていた覚悟とは─────
「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ───────」
「ぎゃあああああああああああああ!!!?」
抱き着かれて気付く間もなく佐夜は陽菜々のペロペロの餌食になり、尻餅をついた。勿論、尻餅を付こうが陽菜々のペロペロは止まらない。
「あーやっぱりこうなったね~」
「あらあら」
顔を陽菜々の涎塗れにされている佐夜を見てリオとユフィは苦笑する。
実は佐夜が背中を強打し気絶して3日は経っているのだが、その間陽菜々が佐夜の様子を窺いに部屋に来ると毎回こうやってペロペロしていたのだ。なのでその後に来るリオか義信、ユフィが顔をベトベトで寝ている佐夜の顔を拭いているというわけだ。
……もしかしたら夢の出来事も陽菜々の(ペロペロの)所為なのかもしれない。
「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろぺろ───────」
「いいから早く陽菜々を何とかしてくれー!」
顔どころか首元まで陽菜々の涎塗れになりつつある佐夜が助けを求めた所でようやく2人が助けに入った。
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何とか佐夜を心配してペロペロしてくる陽菜々を宥めた3人はそのままユフィのカレーを昼食として頂き、4人で桜井と義信がいるサイエンGOのブリッジへ向かった。
「───だから俺がそこに行くと言ってるだろ!」
「こちらも何度も言わすな。不許可だ」
「まあまあ、二人共落ち着けって」
「「「「???」」」」
ブリッジに入るとそこには何やら言い争っている桜井と正義、そして2人を宥めている義信の姿があった。一体何で言い争っているんだろうと4人は首を傾げる。
「あ………」
「あ、愛しゃんだ。やっほ~~」
「や、やっほ~~?」
するとモニターの椅子に座っている愛沙とリオの目が合い、手を振る2人。ちなみにリオにとって愛沙の愛称が『愛しゃん』らしい。どうでもいいが。
言い争っている2人と義信を置いておいて、4人は愛沙の元に行く。
「え~っと初めまして、俺は佐夜って言います」
「え? お、『俺』?」
見た目がかなりの美少女が自分の事を『俺』と言った事に驚く愛沙。
「あはは毎回思うけど、さやや、見た目と性別が合ってないよね~~(笑)」
「うふふ♪」
「笑うなよ!」
「(もぐもぐ)」
リオとユフィが笑い、佐夜がツッコむ。陽菜々は4人にそっちのけでデザートのいちご大福に夢中の様子だ。
閑話休題。 ←使い方間違っている
「え? 男? 貴女(?)男の子なの!?」
「い、いえす……」
「はぁぁ~~………どう見ても男の子には見えないわね」
「うう………」
愛沙にジロジロ見られてバツが悪くなる佐夜。
「それはそうと愛しゃん。あの2人何で言い争ってるの?」
「……そのあだ名、何とかならない?」
「ならな~い。で、あの2人は一体どうしたの?」
どうやら変なあだ名を付けられた愛沙はちょっと嫌がっているらしいが、あだ名付け癖が身についているリオは直す気が全くないらしい。
「はぁ。どうやら魔王軍の本拠地を見つけたらしいんだけど、正義が『俺が行く!』と言って、桜井さんが『不許可』と言って、正義とまともに取り合わないからこんな感じになってるのよ」
そう言いながら愛沙は3人(正義・桜井・義信)の方を指しながら短く溜息を付く。その間にも正義は桜井に噛み付き、その桜井は正義の話を適当に受け流し、その2人が剣や銃を抜かない様に宥める義信。
「だから貴様みたいに偏った正義感に捕らわれている奴がノコノコと魔王城へ乗り込んで行った所で何も出来ずに死ぬだけだ。そんなの許可出来るわけない」
「俺が何も出来ないって……てめぇ、それは一体どういう理屈だ!?」
「だから正義落ち着けって! 係長も、いちいち相手の癇に障るような言い方は止してくださいよ!」
「俺は普段通りに話しているつもりなのだが?」
「誰にでもその話し方をするのは、それはそれで問題なんですけどね!」
遂には義信まで桜井に食い付く始末になった。
「……何この状況?」
「カオスだね」
「あらあら。とりあえずゼロの方は私と陽菜々が対応しますね。愛沙さんは正義さんを、リオと佐夜さんは義信さんをお願いします」
「「あ、はい」」「おっけー」「(もぐもぐ)」
ユフィの指示でそれぞれ動く。陽菜々はまだ食べているが(6個目)。
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「ヴァンの奴に『佐夜に無茶はさせるな』と言われてたんだが、まさかその当人が自ら相当危険な事に首を突っ込むとはさすがにあの時は思わなかったぞ」
「う……すみません」
桜井の言う『あの時』とは勿論、陽菜々と『福音弾』を撃った時の話だ。
「ま、結局俺の管理責任が悪かっただけの話。むしろ保護対象者を戦闘に巻き込む事自体がありえないからな。貴様が無事ならそれでOKだ」
「そ、そっすか……」
いつになく殊勝な態度の桜井に少し戸惑う佐夜。いつもなら勝手な行動をした場合、桜井に『お仕置き』されるのがお決まりの定番になりつつあったのだが、今日は何かちょっと大人しい?
閑話休題。 ←コピペか!?
「とりあえず骨や筋、筋肉や神経に異常は無く、お前自身も痛みは無いという事からこの話はこれで終わりだ。次にみんなこれを見てくれ」
佐夜の怪我が完治した事で早々と話を切り替えた桜井はブリッジのモニターを切り替えて、とある国の映像が映し出される。
「うわぁ………」
「……これってさ」
「うん。どうみても『魔王国』だよね。空が紫色だし」
「お城の造りがマガマガしいね! アニメみたい」
「……何だか凄く懐かしい気分です」
佐夜を含む5人の美少女達が魔王国を見てそれぞれ感想を言う。う~んかしましい。
「………んを? ちょっと待て。桜井、今回の任務って『勇者・その他召喚対象者の送還』だって言ってなかった? もしかしてここにも勇者とかいんの?」
「あ~、そういやそこんところの説明はまだしてなかったね」
何故魔王の国がモニターに出ているのか不明だとばかりに佐夜が首を傾げると、ここまで一緒に居たリオが「あはは」と笑ってごまかした。
と、いうわけで改めてリオから事情を聴く。
何でも人間達が『勇者(それ以外も含む)』を召喚したのと同様に、魔王が住む国と、その周辺の魔族達の集落に住む者達が『異世界の化け物』を召喚したらしい。
で、アモカ王国の街道で桜井と正義が対峙した魔王軍のベリアルがその内の一体を密かに北の方に連れてきた事からその事が判明。
それでその後、一旦サイエンGOに戻り、召喚反応を『人間』ではなく『全部』にし、召喚された人間は送還し、それ以外の物の怪の類は出来るだけ送還、でなければ仕方なく討伐する羽目になった。
「う~ん。そこまではまぁ、理解した。でもさ、じゃあ何でその召喚された『正義』と『愛沙』は元の世界に送還してないんだ?」
「む?」
「え、えっと……」
異世界から召喚された怪物(?)、魔獣(?)、妖怪(?)類の事は理解した佐夜だったが、そうなると次に浮かび上がった疑問が『何故勇者がここにいんの?』だ。佐夜に呼ばれた2人が反応する。(特に意味は無い)
「この2人以外の他にあと6人ほどがあの場に居て、その6人は無事送還して帰って行ったんだけど、この2人はちょっと込み入った事情があったんだよ、さやや」
「込み入った事情?」
リオの説明に首を傾げる佐夜。うむ、可愛い。
「実はこの世界に召喚された時、俺と幼馴染の愛沙、そしてその愛沙の妹『真桜』も一緒に召喚されたんだ」
「でも、召喚されて一ヵ月後、真桜は魔王軍に誘拐されてしまったの」
そう言って正義と愛沙に影が落ちる。
「真桜が生きていると信じて俺達はその後、同じ召喚された人達と一緒に旅を続け、真桜の居所や元の世界に帰る方法を探していたんだ」
「でも一向に真桜の居所は掴めなくて、元の世界に帰る方法も見つからない。そんな時、魔王軍がアモカ王国に侵攻してきている情報を掴んで、仲間と共にあの場に居たの」
「へ、へぇ~~(重い)」
正義と愛沙の話を黙って聞いていた佐夜は乾いた笑いしか出てこない。
「つ、つまり2人はその妹さんを取り返すべく送還されないでここ居るわけだ?」
「うん」「ああ」
佐夜の言葉に頷く2人。
(な、なあリオ。何となく展開が読めた気がするんだけど気のせいか?)
(多分…佐夜の思ってる通りだと思うかな~~)
正義と愛沙から離れた佐夜はリオの元に行き、2人でヒソヒソ話する。
佐夜の思っている『展開』とはつまり、
真桜という少女が魔王軍に攫われた。
↓
真桜→まお→まおう→魔王
↓
つまり、愛沙の妹『真桜』は魔王と勘違いされて誘拐、もしくは魔王の魂の依代的な意味で連れ去られた可能性が非常に高い。最早定番の展開だ。
「で、だ。この艦の船長である桜井……さんが魔王軍の本拠地『ヴォース』を見つけたと言ったから俺は今すぐにでも行きたいと言ったんだけど!」
「だから不許可だ。いくらなんでも危険すぎる。今、乗り込むという事は自殺行為にすぎないと俺は言っているんだが?」
「むぐぐぐ……」
「……………」
正義と桜井がまた衝突する。どうやらこの2人、相性は最悪みたいだ。
「えーっと……それでゼロ、この迂闊に手出し出来ない状況を一体どうするつもりなんですか?」
「あー、一応案は考えたんだが……先にこれを聞いた方が早いか」
そう言って桜井はパネルを操作して回線を開き、スピーカーの音量を上げる。
すると、
≪全く……魔王様横暴すぎるぜ。見ろよ、持ってきた遊戯が粉々だぜ?≫
≪お前はまだいいさ。俺なんか顔がキモイと言われてファイヤー喰らわされたんだぞ!?≫
≪ふ、あなた達まだまだ甘いわね。あの方の機嫌がかなり悪いと地震が起きて城にヒビが入るのよ。あの時は宥めるのにかなり苦労したわ≫
≪魔王様ってホント、我が儘すぎるよな!≫
≪まぁ、まだ子供だから仕方ないけどさ。力が強い上に下手に逆らったら即、首チョンパ!≫
≪≪≪お、おおう(ブルブル)≫≫≫
≪はぁ、誰か良い人材はいないかしらね~。ホント……≫
≪≪≪≪≪同意!≫≫≫≫≫
ポチッ!
「ま、こういう事だ」
回線を切った桜井がこちらに振り返って言う。
「つまり、その魔王様の身の回りの世話をしつつ、情報を集めるのがゼロの案ですか?」
「それもあるが、これは単に魔王の精神を安定させる為だけの話だ。もし俺達が突入した時に癇癪を起されて魔力が暴走したら敵味方全員クシャってなるぞ?」
「おおう……それは怖いね」「く~ん……」
桜井の言葉にリオと陽菜々が震える。
「で、係長。誰かがその魔王の身の回り……つまりメイドをやり、それ以外のみんなで妹さんや召喚獣を何とかする訳ですね」
「そう言う事だ」
義信のまとめに頷く桜井。
「それで桜井。誰がメイドするんだ? ユフィさん? 愛沙さん? 陽菜々……は無理か。リオは……。………。」
「……さやや、何で黙るの?」
「いや、何でもない。気にするな」
「むうっ!」
佐夜のリオを見る変な視線に怒るリオ。子供か。
「ここは消去法で佐夜、お前に行ってもらう」
「………え?」
リオに胸をポカポカされながら佐夜は桜井の言葉に耳を疑う。
「佐夜、お前には魔王直属のメイドになってもらうぞ!」
「はああああああああああ!?」
もしかしたら9月まで遅れ気味になるかもしれません………。
出来るだけ早めに投稿できればいいんですけどね~~。
では。




