第3話 ~召喚術と送還術~
幻想界【アルフィーニ】の世界に佐夜が到着しました。第二章では主に『VS勇者』がメインになると考えてもらっていいいと思います。
シュン───────
「っととと、危ない」
リオと義信と共に【アルフィーニ】の街道の岩陰に転移してきた佐夜。慣れない転移で足元がよろめいて危うく岩に激突するところだった。
「さやや、大丈夫? 転移酔いしてない?」
「転移酔いって何!?」
リオの聞きなれない単語に思わずツッコむ佐夜。いや、ツッコむ必要はあったのか?
マロンの作業分担指示後、とりあえず佐夜達3人を桜井達の元に送る為【アルフィーニ】へ向かったエルシオン。到着時間までは丸1日(約26時間後)あるとの事なので佐夜はその間にゲストルームの一室を借り、先に風呂や睡眠を取らせてもらった。
それでも時間が余る為、その空き時間の間を利用して艦内を見て回り、昨日の話で聞けなかった事を聞こうとヴァン達を探していたが、不運な事にリオに出会ってしまった事で時間ギリギリまで遊び相手をさせられた佐夜は話も聞けず、むしろ精神的に疲れるだけの結果になった。
「え~と。桜井係長達が居るポイントはここから東の方へ4キロ先だそうだ」
スマホのGPSマップ機能を使い桜井達の場所を探した義信が東を指す。
(異世界&未調査の世界って言ってたのにGPS(衛星)が使えるって変じゃね?)
と佐夜は口に出さずに思った。
「お? 丁度この先にいった所に町があるよ?」
「「いやいや、見えねえよ」」
周りを見渡したリオが町がある方角を指差して2人が見るが全然見えない。
リオが指差した先には小規模の森があり、その森を抜けた先に町があるとリオは言うがいくら目を凝らしても見えないものは見えない。これは単にリオの視力が良いというだけの話で佐夜と義信の目が悪いという訳ではない。
ガサガサガサ──────
「「「ん?」」」
3人がワイワイ騒いでいると森から何か不穏な音と気配を感じた。その不穏な気配にリオと義信はすぐに気付き、その後のガサガサという音でようやく佐夜も気付いた感じだ。まだまだ2人と佐夜のレベルの差は大きいっぽい。
「「「「はぁ、はぁ、はぁ………」」」」
すると森の方から4人の若い男女が傷だらけの状態で走って来た。
ブモオオオオォォォォォ──────!!!
「うわ、何だアレ!?」
するとその奥からかなり大きい猪(?)が4人を追いかけている。その大きさに流石の佐夜も驚きを隠せない。
「あのままじゃ絶対追いつかれるね。影ノブ、お願い!」
「そのあだ名で呼ぶなって! ったくお前は……」
ぶつくさ言いながらもリオのお願いを聞く義信はいつの間にか手にしていたウェンカー(GPS自動照準付き)ライフルを構えて、
ドパン、ドパン………ドパン!!
ブオオオオオオオォォォォォォ…………
ズザザザザザザ───────
額を三発撃たれて即死した猪(名前はビッグボアと言うらしい)が走って来た勢いそのままで前のめりに倒れ、大地を削りながら4人へと迫る。
「そこの人達ー! 横に避けてー!!」
「「「「っ!?」」」」
リオの大声に反応した4人はすぐさま横に避け、避けた所を死亡したビッグボアがズザザザザーっと通って行き、4人から数メートルの所でようやく止まった。
「相変わらずあんた等って凄いな……」
義信の的確で正確な射撃(自動照準だから関係ない)とリオの即決指示を側で見ていた佐夜はただただ感心するしかない。
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「た、助かった~~」
「し、死ぬかと思った……」
「俺達、い、生きてるよな」
「はぁはぁはぁ」
窮地を脱して安心したのか4人はその場にへたり込んだ。
「えっと、君達大丈夫?」
リオと義信に良い所を持って行かれたので、せめて4人の手当てをしようと佐夜が声を掛けた。相手が自分より年上なのか分からない為、一応丁寧語っぽく話す。
「な、何とかな……」
「とりあえず回復させるから動かないで」
「あ、うん。頼む」
走って逃げて来た為呼吸が荒くなってる男【健斗】に回復魔法(小)を掛ける為動かない様に指示を出す佐夜。そんな献身的な佐夜を見て何故か顔が赤くなる健斗。何となーく理由は分かるが今は割愛。
ちなみにエルシオンにいる間に佐夜はマロンから回復魔法(小)を伝授してもらっている(錬成術の応用)。
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「ふ~ん。やっぱり君達【召喚被害者】だったんだー」
「そうなんだよ。学校のHR中、急に目の前が光ったと思ってきがついたら────」
「みんなここにいた、と?」
「「「「(コクコクコクコク)」」」」
リオの質問に召喚された4人は激しく首を縦に振る。
健斗達4人の話によると、この世界に召喚されたのは健斗達のクラスメイト32名だが、それ以外にも別の国や場所でも健斗達と同じように召喚された人達がいるらしく、その数は健斗達にも分からないそうだ。
「おまけに私達は選ばれし『勇者』じゃなく、単に巻き込まれただけの一般人らしくて────」
「ウチ達を呼んだ国のお偉いさん連中ときたら、勇者以外のウチ等4人を役立たず扱いしよって国外追放してな────」
「んで僕達もこのまま死にたくないからギルド登録して色々と依頼をこなしてきたんだけど……」
「一緒に召喚されたはずの勇者達とは凄いレベルの差が広がっちゃって……」
「それで俺達、その差を埋めるべく最近かなり無茶をして高依頼をやってレベルを上げようとしたんだけど……今回は無理だったわー」
そう言って健斗達は後ろに倒れ込んで嘆いた。女子達は心なしか涙ぐんでいる。
「もう帰りたいよ……」
「ウチもや……」
「カレー食いてえ……」
「戦いたくねえよー!」
リオ達に話を聞いてもらった所為か、本音が止まらない4人に対し、
「じゃあ今すぐ帰る?」
「「「「「え?」」」」」
簡単に言うリオに4人……と何故か佐夜まで反応した。
「だから、君達が帰りたいのなら今すぐ帰れるよ? 召喚術の反対『送還術』を使えばね」
「「「「まっじで!?」」」」
「う、うん。まっじで」
帰れる希望が湧いた4人はリオに縋りつく。ちょっとイジメみたいな光景だ。
「それでリオ、どうやって4人を返すんだ?」
「それはこの『送還シート』を使うの!」
ジャジャジャッジャジャーン!
謎の効果音と共に某・猫ロボの道具よろしく取り出したのは魔法陣が描かれているシート。このシートに描かれている魔法陣が送還術の陣なのだろうか?
「じゃあ4人共、この上に乗って乗って!」
リオがシートの端に手を付いて4人に指示を出す。が、
「こ、こんなので本当に帰れるのか?」
「不安や……」
「本当に大丈夫?」
「今更『嘘でしたー』なんて言わないよな!」
「言わないから早く乗っ……あ、その前にこの世界の武器や道具、特に刃物系は全部おいて行ってね。でないと返った後に銃刀法違反で捕まるから」
「「「「あわわわわ!(慌)」」」」
リオの注意事項に4人は慌てて装備していた剣やら道具やらを外して捨てた。そんな簡単に捨てていい物なのかと佐夜は思った。
「じゃあ今度こそ……あ、ゴメン。もう一個言い忘れてた」
「忘れすぎだろ……」
リオの突発的思い出しにツッコまざるを得ない佐夜。
「召喚された者が送還されて元の世界に帰還する場合、召喚された世界での経験やスキル、勿論魔法なんかは全て消去されて召喚される前の状態に戻るから」
「「「「「? ???」」」」」
良く分からないリオの説明にまたも佐夜を含めた5人が首を傾げる。
まあ、簡単に言うと『全ては夢だった』的な感じだと思ってくれればいいと思う。
「君達の場合だと『記憶処理』する必要は無いと思うからそのまま帰すね!」
「「「「え……え、え?」」」」
「『送還』!!」
シュワ───────
「「「「わ、わぁ────」」」」
シュン────────
「き、消えた……」
戸惑っている4人を余所にリオが送還術を発動させ、4人は悲鳴を上げながら空へ光を放ちながら消えて行った。
「はい終わった終わった~~」
「え、えええ~~~~?」
パンパンと手を払うリオ。あっという間に4人がいなくなった(帰って行った?)為、佐夜は困惑するしかない。
「何か、聞きたそうな顔をしてるな?」
「え? あ、まあそりゃあ色々と?」
困惑して頭に『?』マークを浮かべていると義信が半笑いしながら佐夜に聞いてきた。
「あんなので本当にあの4人は元の世界に帰れたのかなーって思ってさ」
佐夜はリオが片付けている送還シートを指差して聞く。
「なに、問題ないさ。何故なら────」
義信が何やらドヤ顔で説明を始めた。
召喚された者は皆、魂に見えない糸みたいな物が付いていて、その行き先が元の世界に繋がっているのだ。これは召喚された者だけに付いている『喚起糸』というもので、何時でも元の世界に帰る為の道標みたいな物だと考えればわかりやすいだろう。
「あれ? だったら俺の場合もこれで元の世界に帰せれるって事なんじゃ?」
「あーそりゃ無理だ。送還術で元の世界に帰れるのは『召喚された者』だけ。佐夜、お前の場合、召喚じゃなく穴を通って次元転移した訳だから当然『喚起糸』は付いて無い。よってあれはお前には使えない」
「そ、そうか……(どのみち帰ってもまともに生活なんてできないしな)」
義信のNGリアクション(両手で×を作るやつ)に苦笑する佐夜。
「それじゃあ次、この森を抜けた先の町に出発進行~」
「「……はいはい」」
マイペースリオに佐夜と義信は苦笑しながらリオの後を追った。
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「何? あの4人戻って来てないのか?」
「らしいな。森の方を遠視で覗いたが見当たらなかったぜ」
「……死んだか?」
「どうやらそのようね」
「ふん。勇者に成れなかった役立たずが死んだ所で何の問題もないわ」
「「「「同意!(笑)」」」」
森を抜けた先にある町【メリル】の一角にある、明らかに場違いな大きな屋敷の中で勇者を名乗る男女5人が談笑していた。
「とはいえあいつ等が死んだのならこれから回ってくる依頼……低依頼も含めて俺らがやらなきゃいけなく訳だ」
「まんどくせー」
「そんなの一般の冒険者にやらせればいいじゃない」
「よねー」
「だがそれも仕方ない。そんなに高依頼でなければ毎日一人ずつでいいだろ。たまには身体も動かしたいしな。で、異論はあるか?」
「「「「異論なーし」」」」
リーダー格の男子が仕切り、その他の4人はダラけきった状態で応える。
この勇者5人は先ほどリオが還した4人のクラスメイトで、尚且つ勇者でもある。召喚の際に得た祝福の力によってチート的な力を手に入れた5人は、先ほどの(勇者に成れなかった)4人を鍛えるという名目のイジメをし、勇者宛にくる依頼をその4人に全部押し付け、自分達は毎日屋敷の中でゴロゴロしているのだ。
町の人達も勇者じゃない4人に同情はするが流石に勇者に物申す輩はいなかった。下手に勇者の機嫌を損ねて殺される危険があるからだ。それくらいこの世界の勇者は強いのだ。まあ、紛い物の強さではあるが。
「どうせ勇者である俺等に敵う奴なんて同じ勇者か魔王くらいだろ」
「というか馬鹿正直に魔王を倒そうとする勇者っていないでしょ」
「「「「同意!(笑)」」」」
そう、勇者といっても全員が全員魔王を倒すのが目的ではなく、ただただ召喚された腹いせやチート的な祝福の力を用いて色々な悪事に染める奴(勇者限定)の方が圧倒的に多いのが今のこの世界の問題なのだ。
「やっぱりいたね~」
屋敷から離れた所で3人は小型の無人機から送られてくる映像を見ていた。正直「屋敷から見える場所で望遠鏡を使えばいいのでは?」と言った佐夜だったが、「それは気付かれるからNG」と義信に言われた。気配のない小型の無人機を使えば屋敷の中を簡単に見る事が出来るらしい。
「あいつらが勇者……なのか? 言動からするにとてもそうは……」
「気持ちは十分分かるけどな。今や勇者なんて肩書に過ぎねえよ。気にすんな」
「……そうだね」
その5人を見た佐夜はなんだかやるせない気分になった。
「で、どうするんだ? さっきみたいにいきなり送還すんの?」
「いやいや無理無理無理。相手は腐っても勇者だよ? さすがのリオも勇者相手では突貫バトルは不利だって~」
佐夜の質問にケラケラ笑いながらリオは言う。さすがのリオも勇者には勝てないのか。
「こういうのは事前の仕込みが肝心だからね☆」
と、ウィンクしてリオは佐夜と義信に指示を出し、対勇者への対策を立てたのだった。
次回、桜井達と合流する予定です。




