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異世界無双禁止規定(ステージ オブ グラウンド)『緩』 ~歌姫神と称された少年のあれこれ~  作者: 浅葱
第一章 ~次元迷子の少年(佐夜プロローグ)~
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第28話 ~イングの死と死者蘇生~

この話で佐夜が禁忌を犯します(2重の意味で)

 これは佐夜が錬成術を習い始めた頃。

 佐夜は立ちながらテーブルの上にある錬成陣を用いてぐしゃぐしゃになった紙を折り目の無いまっさらな状態に戻す訓練をしていた。


「なぁ。アルガドじいさん」

「何じゃ?(さわさわ)」

 訓練中の佐夜がとある事を思い出し、アルガド爺さんに話を振ると何故か佐夜の尻を撫でながら聞いてきた。

「……何で事あるごとに俺の尻を触る?(怒)」

「そこに尻があるからじゃ!(キリッ)」

「………」


 ドガッ!

「うぎゃ!」

 当然の様に言うアルガド爺さんに佐夜は無言で肘鉄を入れ、爺さんは悶絶する。


「─────という訳なんだけど、どうかな?」

「……すまん。お主に肘鉄入れられた時の激痛で話を全く聞いておらんかったわい」

「………」

「わぁ! また無言で拳を振りかぶるのは止めんか!」

「……ちゃんと聞けよな、じいさん」


 佐夜がアルガドに聞いたのは錬成術の限界範囲……つまりどの程度の事までならやってもいいのかを聞いた。

 錬成術は普通の魔法(魔術)と違い、やろうと思えば大抵のことが出来る。大気中の酸素と水素を混ぜて『水』を出し、燃えやすい水素などを燃やしたい場所に集めて指で発動させれば『炎』が発現。水と炎を組み合わせて『風』となり、体内のエネルギーをそのまま『電気(雷)』に変換も出来る事をこのアルガド爺さんに聞いた佐夜。

 普通、一つの属性魔法を発現させるのに結構な時間が掛かると言われ、それを極めるのにも膨大な時間が掛かる。

 しかし錬成術をある程度使いこなす事が出来ればほとんどの属性魔法とほぼ同じ事が出来るらしい。しかしその上限(・・)については何も聞いてない。

 ゆえに佐夜はアルガドにどこまで出来るのかを聞いた。

 

 その理由は佐夜が元の世界で見た『錬金術』をテーマとしたアニメが影響。

 そのアニメでは錬金術での『人体練成』は禁忌とされ、それを死んでしまった幼馴染の女の子に『人体練成』行った主人公だがその結果、幼馴染の女の子を生き返らせる事も出来ずに主人公は禁忌を犯したという事で、神様によって異世界へ転移させられたというものだ。その後の話は割愛。

 

 そしてこの世界での『人体練成』について聞いた佐夜だが、どうやら内容は昔見たアニメと大体同じの様だが、アルガドが言うには少し違うらしい。

 死んだ人間を生き返らせるのは『人体練成』ではなく『蘇生術』という物で全くの別物らしく、『人体練成』は文字通り人体を錬成する為だけのものらしい。勿論その『蘇生術』も禁忌扱いだ。


 その上、『人体練成』といっても軽い怪我(傷や骨折まで)程度なら錬成術で治しても問題ないらしく、駄目なのは『欠損部分の再生』…つまり腕や足、原型が無い物に対しては錬成術で治す事は出来ない。厳密に言うと、出来なくはないが下手して無理をすると昔見たアニメの様に『拒絶反応(リバウンド)』が高確率で起きるらしい。

 ちなみに錬成術で『蘇生術』は出来ないとアルガドは言うが、佐夜はその言葉に疑問を持っていた。


「お主が一体何を考えているのかは知らぬが、決して死んだ者を蘇生してはならんぞ」

「わーってるよ。興味本位で聞いただけだ」

 しかし、某アニメでは失敗したが何かしらの反応はあった為、やり方次第では錬成術で『蘇生は出来るんじゃね?』と佐夜はこの時思っていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「「「「「「「イング!!」」」」」」」


 時が止まった世界が動き出し、物言わぬ屍となったイングにみんな(佐夜、タック、マナ、双子(ノンロロ)、エミリア、アイスナー)が駆け寄る。


「ちっ……」

「っ………!」

 敵対勢力を完全に沈黙させたヴァンとリオだったが、現地人を死なせてしまった負い目でヴァンは舌打ちし、リオは声に出さず泣きながらヴァンに抱き着く。

 戦闘のプロが見てもイングはどう見ても死んでいる。それも即死に近い。

 もし着弾した場所が頭ではなく、心臓とかで致命傷を負っていたとしても何とかなったからだ。しかし即死の場合、治しても対象者の魂がすでにそこに無い為、意味が無いのだ。その為ヴァン達はイングに対し何の手の施しようもなく、後悔しか出来ない。


≪もしもし隊長? リオちゃん? 聞こえてますかー?≫

「……ああ、透か。聞こえてるよ」

 謁見の間突入前にヴァンとリオはインカムを付けていて、変なタイミングでエルシオンに居る透から突然話かけられてとても呑気に出ている状況じゃないが、大事な内容の場合もあるので声を潜めながら電話インカムに出る。


≪王都に侵略にきたゼリア軍達の鎮圧(殲滅)が完了したとRより報告があったので報告します。………何かありました?≫

「ちょっとショッキングな事件が起きてな。それでリオはちょっと泣いてるから(電話には)出れない」

≪……そうですか。ですが時間も押しているので早めに退去をお願いします≫

「ああ、分かった。でも少しだけ時間を貰えるか?」

≪それは────≫

≪いいよーヴァン。むしろリオと保護対象者のケアをお願いねー≫

「……は? 何でお前がそこに居る!?」

 他にも行かないといけない世界がある為、早めに戻ってきてほしいと言おうとした透の声を遮って割り込んできた女性の声にヴァンが落ち込んでいた事も忘れてツッコんだ。


≪何でって言われたら仕事をサボったからに決まってるじゃない~≫

「お前なぁ」

 あっけらかんと言う女性に青筋を立てるヴァン。

≪とにかく、ヴァンはショックを受けた子(リオ、佐夜)のケアをちゃんとしてね!≫

「あ、おい。ま────」


 ぷつ──────


「逃げた………」

 先ほどヴァンにも漂ってた淀んでいた空気はどこへやら。割り込んできた女性のおかげでテンションが戻って来たヴァンは溜息を付きつつリオの頭を撫でながら佐夜の方を見た。


「……おい。何をやってんだお前!?」

 そこでヴァンが見たのは佐夜が死んだイングの頭部の周りに錬成陣を引いていた光景だった。しかも通常はチョークなどで引く錬成陣だが、佐夜は『血』で錬成陣を引いていた。

 そこから連想される事とは、

「おい、馬鹿やめろ! それは─────」

「ひゃっ!?」


 抱き着いてるリオを押しのけてまで、佐夜のやろうとしている事を止めようとするヴァンだったが、それよりも早く佐夜は己の手の平を血で塗り、手のひらを合わせてイングの身体に手を付いた。


 カッ─────────


=====================


 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 ・・・。


「ここは……どこ?」

 イングの遺体に錬成術をほどこした直後、佐夜はどこかの河原にいた。目の前には大きな川があり、キャンプや水遊びには絶好なスポットだろう。

 しかし佐夜にはそんな精神的な余裕は無い。イングを助ける為に錬成術を使ったはずなのに、こんな所に来た意味が全く分からないからだ。


 佐夜はすぐさま周りを見渡し、ここがどこなのかを確認しようとした。するとすぐにその違和感を感じた。

 まず河原の水が全く冷たくない。なのに何故か寒気がする。

 次に河原の近くに生えている木や草にも生命力を全く感じない。

 極め付けは奥の方は真っ白で、川の上流や下流、山などの景色が無い。それどころか空だって青く晴れているのに違和感が半端ないのだ。

 そしてようやく佐夜は気付いた。

 ここは三途の川の手前───いわゆる『此岸しがん』なのだと。


 ならばきっと近くにイングがいるはずと佐夜は周りを見渡すがやはりイングの姿は無い。

「ま……まさか………」

 顔を青ざめた佐夜は川の方を見る。でも近くにはいない。

 

「イング……!」

 焦った佐夜は、ここが『此岸』と呼ばれる場所で、尚且つ川を渡った先があの世───いわゆる『彼岸』又は『死後の世界(輪廻界)』だというのも忘れて川に入りイングを探す。幸い川の深さは浅く、膝くらいまでの水位なので、探すのに苦は無い。


 ・・・・・・・・・・・・・・・。


「いた! イング!」

 しばらく前に進むと目の前にようやくイングの背中が見え、佐夜はイングを呼びかける。

「………」

「……イング?」

 しかしイングからは何の反応もない。再度呼びかける佐夜だがやはり応答はない。

 それどころかイングはどんどん川を渡ろうとしている。

「!! イング、ダメ!」

 と、佐夜がイングに後ろから抱き着いて止めようとするが、イングは全く止まる気配が無い。


「………」

「ダメ! イング、これ以上行ったらダメだってば!」

 目の焦点が合ってないイングに何度も呼びかける佐夜だがイングには届かない。


「イング……どうして………?」

 ここで体力の限界で力尽きた佐夜が膝から崩れ落ちる。

 

 やはり死んだ人間を生き返らせるのは無理なのだろうかと佐夜は半ば絶望しながらも、イングの今の状態や、いままで習った事や元いた世界で見聞きした知識を総動員して、何とかならないのかと思考を練る。


また(・・)、やるしかない……!」

 そして時間も掛けられなく思いついた最終手段として佐夜はある行動に出た。


 佐夜は止まろうとしないイングの正面に回り、そしてイングの顔(頬)を両手で挟み、

「ん………」

 選抜戦決勝の時の様にキスをした。それもイングの心に届くよう、濃厚なキスをした。それも数十秒間ずっとだ。



「ん……。………。 ん? んんん!?」

 

 佐夜の健診的な行動にようやくイングが目を覚ますが、気が付いたイング的には「何でまたサヤにキスされてんの俺!?」と選抜戦の時と同様に混乱するが、


「んん………」

「ん……。ん?」

 さすがに二回目とあってすぐに落ち着いたイングだったが、何故か自分から強請ねだる様に佐夜にキスをした時、佐夜はイングの変化に気付いた。


「ぷはっ! ……イング?」

「ん。 おはようサヤ」

「イング!」

 まるで恋人のような朝セリフを吐くイングに、これまた女の子の様に感極まった佐夜はイングに抱き着く。まるで映画のワンシーンだ。

 

 ……何だこの不毛な光景?


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────────


「な、何だ!?」

「か、川が氾濫してる!?」

 謎の嫌な音の方に二人が目を向けると、真っ白で存在しない筈の上流の方から川が津波の様に押し寄せて来た。

「ヤバイよイング! 下流の方が────」

「うをっ!? 滝になってるだと!?」

 謎の津波が行く先であろう下流の方を見ると、さっきまで真っ白で何も無かったのに津波が出現と同時にその先が滝になっていた。


「急いで戻るよイング!」

「あ、ああ!」

 そういって2人は来た道を引き返す。


 しかし、河原までの距離が結構あり、2人はとても間に合わないと分かっていても一生懸命走る。


 そして遂に目の前に津波が迫り、イングは佐夜を津波から庇う様に抱きしめ衝撃に備え二人は津波に飲み込まれた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「───ら。こら、佐夜よ。起きんか!」

「う、う~ん………。はっ!?」

 佐夜が気がついた時、そこは最初に居た河原だった。佐夜をそしてその佐夜を叩き起こしたのは佐夜に錬成術を教えた【アルガド爺さん】だった。


「え? 爺さん? 何でここに?」

 何故ここにアルガド爺さんがいるのか分からない佐夜は回らない頭で混乱する。


「全くお主は……。あれだけ『蘇生術』は使うなって言ったのにやらかしおって! それに教えてもいないのにどこで蘇生術習ったんじゃ!?」

「えっと……。あの……ごめんなさい。アレは独学で練習してたんだ」

「はぁ!? はぁ……ワシがあと少し駆け付けて助けるのが遅かったら、お主ら2人ともまとめて死んでおったぞい」

 佐夜の衝撃発言に驚いたアルガドだが、それはもう済んでしまった事で今更追及しても意味ないので溜息を付いて、佐夜に自分が来なかったらどうなってたかを教えた。

 

「ああ、じゃあやっぱりあの先って……」

「そうじゃ。川を渡り切っても、津波に飲み込まれて滝壺に落ちても行先は同じ『死後の世界(輪廻界)』じゃ」

「じゃあ、僕達本当に危なかったんだね……。……。あれ? イング?」

 安心したのもつかの間、佐夜が周りを見渡すとイングの姿が無い。


「イング? イング!? 爺さん! イングは? イングはどこに!?」

「ちょ、ちょっと止めんか佐夜! 首が、首がもたれるわ!」

 イングがいない事で慌てる佐夜はアルガドの肩を高速で揺すり、アルガドの首が激しく前後して折れそうになった。


「はぁ、はぁ……。全く、少しは、落ち着かんか……!」

「しゅん………」

 危うく逝きそうになったアルガドに佐夜はしゅんとなる。というか言っている。


「………あの小僧は一足先に現世へ返したわ」

「そ、そっか。良かったぁ~~」

 イングの蘇りが確定した事で安心した佐夜は泣きながらその場でへたり込む。その姿はどこをどう見ても女の子そのものにしか見えない。


「それでの。お主だけここに残したのはちょっとした説教と罰を与える為じゃ」

「説教と……罰?」

「そうじゃ。まあ説教は先ほど言った上に、これ以上言うと長くなるからもうええが、罰はこれからじゃ」

「え? 何をされるの僕?」

「……何故身構える?」

 アルガドの罰を与える発言に身構える佐夜。主に身の危険的な身構え。


「……主に与える罰は主に2つ。まずは───────」


 アルガドの罰の内容に佐夜の頭の中は真っ白になった…………



次回、第一章最終話。

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