第27話 ~侵略者の鎮圧と……~
話の最後に悲劇が起きます(ネタバレ)
「ほら謁見の間の手前のそこと、そこ、後王座の左右の端に一人づつ、そして中央に王様が人質になってる」
王城の一室でヴァンがどこからか持ち込んだTVの画面をみんなに見せながら説明する。画面の中には色々な角度を捉えた謁見の間の様子が映し出されている。
勿論、ヴァンが中(謁見の間)に入った訳じゃなく、仲間の科学者が作った小型(ハエ型)の機械をいくつか放ち、謁見の間の壁や天井に張り付かせて撮影しているのだ。
「「「「「「「は、箱の中に人間(王様)が……」」」」」」」
「まさかこのセリフを聞くとは思わなかった……」
などと、TVを知らない異世界の住人達は定番セリフを口にする。唯一1人だけ物質界出身の佐夜は頬を引き攣らせて苦笑する。
「……この箱(TV)の事とか俺達の事とか色々聞きたいだろうが、今はそんな暇はないからこういうもんだと思って無視しろ」
TVの仕組みだとかそんなの説明するだけ無駄だと言わんばかりにヴァンは話を先に進める。
「でだ、せっかく人数がいるんだ。謁見の間に突入時、お前達には人質の元へ行きこの解除装置を首輪に当てて、ロックを解除し首輪を外せ」
「え? 隊長、人質の方にも兵がいるよ? そのまま向かったら危ないんじゃない?」
リオが人質の側にいる兵を指差してヴァンに言う。
「大丈夫だ。突入前に超電磁石を発生させて銃やナイフ、その他の火薬系武器を兵から離す。そうすりゃ何とかなるだろ」
「何とかなるって、隊長……」
「ただでさえメンドクサイ状況なのにこれ以上時間は掛けられん。ある程度は俺達も人質も覚悟しないとな」
「むぅ……」
これ以上時間が掛かると人質も危ないというのはリオも分かってはいるが納得はしていない。
「ごめんちょっといいかな?」
するとここで佐夜が話に入って来た。
「どうした? 何かあるのか?」
ここで意見があるとは思わなかったヴァンは眉を顰めた。
「実は僕『時短』能力持ちなんだけど───」
と、佐夜は右手にしている時計(?)を見せて言う。
「時短能力ねぇ。 ………。 って、それ【秘宝具】じゃねーか!」
一瞬佐夜の腕時計を見て『使えるかもな?』と思ったヴァンだったが、急に動きが止まったかと思うと佐夜の腕時計を二度見して言った。
「「「「「「「「【秘宝具】?」」」」」」」」
聞いた事無い単語に首を捻る8人。
「え? さややの付けてるそれってそうだったの?」
佐夜の能力については聞いて無かったリオもそれを見る。
「……なるほどな。でもそれを入手した経緯などは今は聞いてる暇はないから後で聞くとしよう。それでその能力はどのくらい持つ?」
「今は一秒を10倍にするのが限界かな。」
「ふむ。なら相手がこちらに気付く一秒の間、こちらには十秒の余裕がある訳か。それだけの時間があれば人質の解放も侵略者達の鎮圧も出来るな」
佐夜に能力について詳しく聞いたヴァンはすぐさま計画を変更し、危険が少なくなる様シュミレートを行った。
「余程の事が無い限りこれでいいか。んじゃ、行くぞ。準備は良いか?」
「「「オッケー!」」」「う、うん」「問題ない」「同じく」「……(頷く)」「宜しいですわ」「いいよ」
「………」
ヴァンは見事にバラバラな返事に一瞬どう返したらいいか迷った。
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カタカタカタカタ───────
「な、何だ? 銃が────」
「ナイフが上に引っ張られる……!」
「手榴弾やスタンも!?」
「ぐあ! 誰かこっち来てくれ! 通信機が……!」
「わ、分かっt…うわあ! 俺の財布!」
「マミー(母親)の写真が入ったネックレスが!」
「マザコンか! ってああ通信機が飛んでった!?」
突然発生した強力な電磁石の影響で、金属で出来た攻撃用武器(銃や手榴弾など)、通信機、そして私物が謁見の間の天井に張り付いた。
「来たか………」
大佐が異世界の奴等にやられたという報告を受けている准将はヴァン達がここにも来ると読んでいて、懐から取り出したのは人質の首にはめている首輪の起爆スイッチだ。
勿論准将が取り出したこれは偽物で、本物は違う奴が隠し持っている。要はこれ、相手を誘き出す為の囮だ。
しかしここで准将にとって予想外な事が起こる。
ピシュン──────
「がっ!?」
外から狙撃されない様に窓とは関係ない場所に陣取っていた筈の准将の腕が、どこから撃ってきたかも分からない状況で撃たれ、手に持っていた起爆スイッチ(偽物)を落とす。
実はこれ、義信が街の外より、小さい跳弾ガラス(鏡バージョン)を用いて撃ったのだ。義信は地味ながら結構活躍している男だ。
そしてこれがヴァン達の突入する合図。
まず、全員が佐夜の身体に触れた状態で佐夜が時短を発動。これで佐夜に触れていない者達が1秒動く間に佐夜達は10動く事が出来る。
准将の持っていた起爆スイッチが本物か偽物かは分からないが、准将が手に持っている起爆スイッチをとりあえず落とせば、起爆スイッチを准将以外が持っている奴が出すのに1秒以上は掛かる筈なので、その1秒を10秒にしてその時間で相手を無力化&人質を解放する。
時短術の外0.1~0.3秒(術内1~3秒)───────
まず、全員が謁見の間に突入し、双子は手前の左側に居るエミリアの弟の元へ、タックとアイスナーは手前の右側に居るエミリアの妹の方へ。その他の者は真っ直ぐ直進する。
0.4~0.5秒(4~5秒)───────
中央周りの軍兵はヴァンが『雷の矢』を用いて倒し、中央で人質になってる王様の首輪を開放したのは佐夜。それとほぼ同時に手前左右の人質(エミリアの妹と弟)も兵を倒しつつ開放する。
0.6~0.8秒(6~8秒)───────
王座の後ろで待機していたゼリア軍が銃が使えない事を瞬時に察して接近戦を仕掛けてくるが、それに合わせてマナがエクスプロジョーン(小)を放ち、王座の椅子諸共ゼリア軍達を吹っ飛ばす。それと同時に王座の右壁側で人質になってた人をエミリアとリンが救出。
0.9~1秒(9~10秒)───────
そして最後に【カゼノコロモ(改良版)】を纏ったイングが真っ直ぐ准将に突っ込み顔面に拳をめり込ませて、
1秒~(時短術切れ)──────
スローになった世界から元に戻った瞬間、ゼリア軍が全員吹っ飛び、イングが殴った准将は謁見の間を突き破って外に落ちた。同時にヴァンが発動させていた超電磁石も解除され、ゼリア軍の武器(その他)一式が落ちて来るのをリンがワイヤーを張って落下を防ぐ(そのまま落ちて銃などの暴発を防ぐ為)。
ちなみに妃(エミリアの母親)はふっ飛ばした准将のすぐ横に居た為、イングがふっ飛ばした後、そのまま首輪を解除した。
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「こいつで最後か?」
「うん。後は外に居る影ノブと黒ムキンが片付けてる連中だけだね~」
リオが捕縛し、それを順次エルシオンに転送するヴァン。
「それにしてもこいつらの目的って一体何だったんだ?」
ヴァンとリオ以外のメンツが、怪我をしている騎士達の手当てをしている最中に疑問に思った事を言うタック。
「お父様に聞いたところどうやらこの兵達は【オーパーツ】と【資源】を求めてた様ですわね」
「オーパーツって確か『古代文明で作られた技術の結晶』って意味だっけ?」
エミリアの言葉に元の世界でウィキ先生に載ってた記載を思い出した佐夜が首を捻りながら言う。
「そんなものを求めてどうするの……?」
「さぁ? それはこの人達に聞かないと」
マナに聞かれ、先ほどとは反対側に首を捻る佐夜。肩が凝っているのだろうか?
「【オーパーツ】はそれぞれ形状や効果は違うが、大体国を作るのに必要な物だと言われてるな」
「異世界に侵略してくる人達がこぞって狙う物が大体それとか、さややの付けてる秘宝具とか色々あるよ」
「要は侵略達は『神の奇跡、もしくはそれに準ずる力』を欲している訳だ。そして次に求めていた【資源】も奴等にとって大事な事だ。……佐夜といったか。お前なら何となく奴らが資源を求めていた理由、分かるんじゃないか?」
ヴァンとリオが補足説明し、ヴァンが佐夜に続きを促す。
「『資源を求めている』って事は、あの兵達のいた元の世界では(化石)燃料とか木材とか金属(鉱山資源)が底を着いてるって事?」
「他にも環境そのもの(大気・オゾン系)を欲しているかも知れないが、理由としては大体合ってるな」
佐夜の答えに満足したのか、腕を組んで頷くヴァン。
「何だかよく分かりませんが、つまりこの国は守られたと言う事で宜しいんですわよね?」
異世界事情に詳しくないエミリアが首を傾げて言う。よく見れば佐夜以外のレニアナの住人達も良く分かってない様子で皆首を傾げている。
「さて、じゃあ後は残したこいつ(気絶してるゼリア軍1人)と佐夜を連れて帰れば万事解決」
「だね~」
「「っ!」」
そしていよいよ佐夜が呼ばれた事で佐夜とイングの2人はビクッとする。恐らく佐夜が連行される事を忘れていたに違いない。
「ちょ、ちょっと待って2人とも。僕をこの世界から連れ出すのって今すぐの話?」
心の準備が全く出来てなかった佐夜が焦って言う。
「悪いがすぐだな。俺達も暇じゃないんでな。別れの話なら今の内にやってくれ」
「いや隊長、早いよ!? もう少しさやや達に時間あげてもいいじゃん!」
ヴァンの急かすような態度にリオが抗議する。が、
「……そうやってこの前、保護対象者に逃げられたのは誰の所為だ? あ゛?」
「隊長痛い痛い! ウメボシ(頭部グリグリ)はヤメテ~~」
ヴァンが額に青筋を入れながらリオのこめかみをグリグリする。実はレニアナに来る前にも同じ様な事があり、別れの挨拶の時間が欲しいと言われてリオに説得させられたヴァンはやむなく許可した。
すると約束の時間になっても対象者(男)が来なかった為、別れの挨拶をした人物に(詳しく)話を聞いたところ、対象者(男)は恋した現地の女性と駆け落ち、つまりヴァン達の元から逃げ出したのだ。
ヴァン達も別に2人を引き離すつもりは無く、対象者(男)の元いた世界の家族に連絡を取らせるために保護するのが目的なのだが、この対象者(男)は勝手に現地の女性と別れさせられると勘違いし逃げ出した。
その結果、ヴァン達が発見した時には時すでに遅く、野盗に襲われ死んでしまった男女の遺体があった。
もし、リオが別れの挨拶の時間をあげると言い出さなかったら、そしてヴァンがそれを許可しなかったらこの2人は死ななかった。
ゆえに、
「この世界での保護対象者が逃げるかどうかは知らんが、保護した以上は一度俺達の方で身柄を確保する。佐夜、お前の身を護る為にな」
「うっ………」
リオの頭をグリグリしながら佐夜を見つめるヴァン。その瞳に見つめられてたじろぐ佐夜。
「さややごめんね。弁護出来ない~」
「泣きながらそんな事を言われてもリオの所為じゃないよ」
ヴァンにグリグリされて泣きながら謝るリオの頭を撫でた佐夜。
「サヤさん。貴女……」
「うん。どうやら僕は本当にここで一度この世界を出なきゃいけないみたい」
「マジかよ」
「サヤ………」
「「サーヤ~~」」
この場でみんなにサヨナラしなければいけなくなった佐夜にみんなが困惑する。佐夜と同様に別れの言葉なんて用意していないからだ。
「サヤ……」
特にイングなんて絶望したような顔になっている※。
※:何度も言うようだが佐夜とイング、二人共『男』です(佐夜は男の娘)。
「なんて顔してるんだよイング。リオもさっき地下(遺跡)で言ってたじゃない。強制的に元の世界に返す訳じゃなく、あくまで保護して調査してから決めるって。それに融通も効かせてくれるらしいからね。むしろここでヴァンさんがさっき話した逃げた男の様に逃げだしたら、それこそ強制的に戻される可能性があるよ?」
「そうだけど…そうだけどサヤ、俺は!」
「イング」
「っ!」
男のくせに泣きそうになったイングを、これまた男(の娘)の佐夜が抱擁する。傍から見れば普通のカップルっぽいが、両方とも『男(片方は男の娘)』なので、もう何が何だか分からない。
「美男美女のカップルか。この仲の良い二人を引き離すのは俺も心が痛いが、今は我慢してもらうしかない」
「「「「「「「………。え?」」」」」」」
「ん?」
ヴァンの言ったセリフに納得しかけた一同がハッとある事(佐夜=男の娘)を思い出し、その事を知らないヴァンの方を見て、ヴァンは何で自分を見てるのか分からず首を傾げる。
「隊長、隊長。ちょっと耳貸して」
「んあ? 何だリオ」
「あのね。さややの事なんだけど─────」
リオがヴァンの耳を拝借して佐夜における新事実を伝える。
「……はぁ。………。はああぁ!?」
先ほどヴァンはイングと佐夜を見て『美男美女のカップル』と言っていたが、佐夜が『男(の娘)』だとリオが言い、その後佐夜を見て一時沈黙後、驚愕した。
そしておまけにこの時、同時に佐夜達にとって途轍もない不運な事が起こった。
「………。 ……?」
佐夜に抱擁されて大人しくなったイングが呆けた表情で佐夜の肩越しに見える人質の一人『隣国のセウレン帝国の第二皇子』を見ていた。見ていたというよりは視界に入っていただけで、最初そいつが何をしようとしていたのかまでは分からなかったし気にも留めていなかった。
チャキッ─────
そいつ(第二皇子)の手に握られている銃を認識するまでは────
「っ!? サヤ!!」
「!?」
「「!!」」
その銃口が丁度こちらを向いてた(様に見えた)ことでイングは咄嗟に佐夜を横に投げ射線上から外す。イングの慌てる声にヴァンとリオが反応した。
パァン!
「ぐっ!?」
それと同時に発射された弾はイングの左肩に当たり、イングは仰け反りながらも何とか立つ。その直後、先ほどのバカ騒ぎ(佐夜の性別について)の所為で敵対反応が遅れてしまったヴァンはイングを撃った第二皇子を沈黙させ、リオは簡易シールドを展開させる。
これだけならば不幸中の幸いなのだが、本当の不運はここにあった。
まずリオが展開させた簡易シールドの範囲がギリギリイングに届いておらずイングがシールドの外に居た事。
ヴァンが第二皇子を沈黙させるためにイングとの距離が出来てしまった事。
そしてここにもう一人イングを狙っていた奴がいた事に気付いたヴァンとリオが援護に入ろうとしたが時すでに遅し。
イングを狙っていた者。それは先ほどイングによって城の外にふっ飛ばされた准将だ。城外へふっ飛ばされた時、准将が身に付けていたベルトの一部が城の外壁に引っかかった為、地面への落下を免れた准将が一矢報いようと自力でよじ登り、穴の開いた所に上半身を乗せ、銃口を位置的に狙えるイングに向けて発砲────
パァン──────
「──────っ」
─────バタン…………
イングが側頭部を撃ち抜かれ、声も発せず、倒れた────
「い、イング……?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった佐夜だが、頭を撃ち抜かれ、横倒しになって倒れるイングの顔を見てようやく事態を飲み込み、
「イング───────!!!」
佐夜の叫びが城内に木霊した。
そう、この時、イングは、即死した。
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あとがき地獄↓
R「あいつ死んだか?」
義信「死んだね。そりゃ頭撃たれたら普通死ぬって」
透「それこそ『不死者』とか『不形体生物』で無い限りはほぼ99.9%の確率で死にます」
???「みなさん酷い言い方ね……」
リオ「うう……油断してたよ~」
ヴァン「ああ、猛省しないとな………」
プロなのに民間人(?)を見殺しにしてしまった2人が凹む。
義信「さ、さて、この後佐夜達はどうなるのか」
R「次回を待て」
透「ですね」
???「またね~」
頭を撃たれて死んでしまったイングに対し、佐夜がどうなるのか。
それは次回に続きます。




