プロローグ ~健太の偶然~
はい第7章です。
出来ればサクサク終わらせて次の世界に行きたいです。
「「「待たんかゴラァー!!(怒)」」」
「うひぃー!?」
揚鶏健太は西の国の冒険者・商人達に追われていた。
というのもこれは事故とかではなく、あえて追われている。追われているのだが、いい加減追手を撒きたい。いくら任務の為に囮を任されたからといって健太は体力馬鹿じゃない。このままでは掴まってしまうだろう。
ちなみに何の為の囮かというと、言わずもがな異界人の解放だ。残っている異界人がいる場所が奴隷商なので下手をすると異界人達が殺されてしまう。なので逃げ足が速く、かつ超危機回避能力スキルを持っている健太が抜擢され、あえて奴隷商の中で馬鹿な事をやって相手を怒らせ、奴隷商を外に出す事に成功。
しかし、奴隷商が冒険者を雇うという想定外な行動に出てしまった事で事態はややこしくなる。なので健太は街の門を抜け、岩山まで走って来た。ここなら上手く岩に隠れながらやり過ごせば逃げ切れると思ったからだ。正直森でも良かったのだが、森だと魔物と遭遇しそうなのでやめた。
「ここかぁ!」
「ぬおぁ!?」
危機回避スキルが発動し、冒険者の奇襲を避ける事に成功した健太。のと同時に健太はあらかじめ用意していた丸太(リオから貰った)に服を被せたものを岩山の崖に落とし、スマホアプリの『迷彩』を使用して相手に自分が崖から落ちたと思わせる。所謂なんちゃって空蝉の術だ。
「あ、落ちちまった?」
「アレじゃ即死だろ」
「運の悪い奴だ。まぁ、落ちなくても殺していたがな」
「はい撤収撤収ー」
そう言って冒険者達は岩山の麓で待機していた商人に報告し、岩山を後にする。
・・・・・・・・・。
「あ、危なかったー」
連中が十分に離れるのを確認し、迷彩を解除した健太はその場でへたり込んだ。
「……というかここまで逃げないで少し距離を取った時にアルゴノートに逃げれば良かったじゃん。無駄に死にそうになったぜ」
と、今更気付き嘲笑する。
「………ん? 何だアレ?」
地面にへたり込んで休憩していると、ふと視線の先に空間の切れ目を発見した。
「正直普通は絶対危ないと思うけど、今の所『スキル警報』は出ていない……か。………見てみるか?」
誰に言っているのか知らないけど、健太はスキルが発する警報が作動していないのでまだ大丈夫だろうと空間の切れ目に手を突っ込み入り口を広げる。
「ん~~~~っ、ん~~~~~~~~!!」
「え、誰かが拘束されてる?」
入り口を広げて中を見てみるとそこには1人の青年が厳重に拘束されてもがいている。鎖に手錠は勿論、口に嵌めるアレや目隠し、おまけに耳栓までされている。
で、もし発見したのが現地人、もしくは次元難民(異界人)だったらどう見ても『何かヤバい人が封印されている』か『重罪人』にしか見えないだろうけど発見したのは異界を調査する協会メンバー。
故に健太も下っ端ではあるが上司(教師・先輩)達から「管理人が管理室と一緒にどこかに監禁されている」という話を事前に聞いているので、空間の歪みと中に配置されている近未来的な機材を見る限りこの拘束されている青年が管理人なのだろう。
「と、とりあえず先に顔の拘束を解いてやるか」
そう呟きながら健太は青年の簡単に解けそうな顔部分の拘束を解いた。
「っ、死ね! 目からビーム!」
「ぅおあっ!?」
すると拘束が解けた瞬間、青年は健太に向けてビームを撃ってきた。それも器用に目からビーム。技としては古いが手や足が封じられている状態だと結構有効かもしれない。避けられたけど。
「助けたのにいきなり何すんだ!?」
咄嗟に『く』の字で避けた為、若干背中を痛めた健太がオコ。
「何って……あれ、あの3人は?」
「あの3人って誰だよ? 俺はヴァルハーレ協会の健太だ。アンタはこの世界の管理人?」
「ああ、僕はこの世界の管理人の【ハズ】。僕を拘束したのは死霊一族のアンデッド達だ。爺さんとおっさんと女の子なんだけど見てない?」
軽く自己紹介をしつつハズは己を拘束した連中の事を話す。
「見てない。つかそもそもここを発見したのは偶然だしな。任務中に敵に追われて岩山に逃げ込んだらこの場所に空間の切れ目があって中に管理室があったから今、こうしてここにいるって訳」
「空間の切れ目があってって事はあの連中、入り口をちゃんと止めないで外に出てたのか。君じゃなくこの世界の住人に見つかったら大変な事になっていたよ。ありがとう」
「いいさ。それにこの世界の管理人と連絡が取れないからってみんなで調査する事も任務に入っていたからたまたま偶然だけど見つかって良かったぜ」
「これで1つ問題が解決したわぁー」と腕を組んで誇らしげにする健太。
「それはそれとして健太君。この鎖も解いてくれないか?」
「鎖? ………太いな?」
手や足の錠に繋がっている鎖のサイズがどう見ても船のイカリに付いている様なサイズでちょっとやそっと傷つけても壊れなさそうだ。
「……ん? ちょっと待てよ? ちょっと外行ってくる!」
「え、あ、おい健太君!?」
ハズの静止を振り切って健太は一旦岩山に戻ってとある物を探す。
キシャシャシャシャシャ─────
「ぅゎヤバい、もうここまで浸食してきている!?」
健太が外に出た瞬間、管理室上部の角から黒い何かが奇声を上げながら管理室を浸食していく。動きはかなりゆっくりだが早く脱出しないとハズも喰われてしまう。
「お待たs……って何だアレ!?」
慌てるハズを知る目に岩山の採掘場から持ってきた『つるはし』を手に戻ってきた健太はその奇妙な物を見て仰天。それと同時に健太のスキルがエマージェンシーコールを発している。
「健太君、アレは『世界喰い』。アレの所為でこの世界はもうすぐ滅びてしまう!」
「アレが原因なのか!? は、早く皆に知らせないとっ」
「って、ちょっと待って! 僕は放置かい!?」
「ぅおっと、そうだったそうだった」
と健太はつるはしを持ってハズの手足の錠に繋がっている鎖に向かう。
「……えっと健太君? そんな物でこの鎖切れないと思うんだけど……」
「いや切らない」
「え?」
てっきりつるはしを連打して鎖を破壊するものだと思っていたハズだったが健太はそれを否定。
「切るんじゃなくて梃子の原理で抜くんだよ」
「抜く?」
「まぁ、見てなって」
そう言いながら健太はつるはしの尖っている方を壁に埋まっている鎖の穴に嵌め、梃子の原理で思いっきり反対側に引く。
ガキンッ!!×4
「はぁ、はぁ……。まさかこんなに疲れるとは思わなかった」
何とか壁に埋まる鎖を引っこ抜く事は出来たが当然そう簡単に抜ける事は無く全体重を乗せる感じでやってようやく抜く事が出来た。
「ふぅ……助かったよ健太君。これでシステムにアクセス出来る」
「ど、どういたしまして」
肩で息をする健太に礼を言いながらハズはまだ浸食していない(様に見える)機材に近付く。
「はぁ、はぁ………。……?」
するとここでまたもや健太のスキルが発動。危険がある場所に目が行く。
そこは────
「危ねぇ!」
「おぁ!?」
今まさにハズが向かおうとしていた世界にアクセス出来る機材。咄嗟に手を伸ばしてハズの手を掴み、思いっきり引っ張る。
「い、いきなり何をするんだ健太く───」
「馬鹿、目を凝らしてちゃんとアレを見ろ!」
「え? ………うわぁ!?」
健太に指摘され、さっきまで触れようとしていた機材をよく見ると、そこには機材の隙間からあの黒い物体があった。それもよく見ないと分からないレベルでうっかり触ろうとすれば恐らくそのまま食べられていただろう。
「なんて事だ。もうシステムにまで浸食してるなんて。これじゃあもう手の打ちようが無い……っ」
「───というかもうここも危険だっての!」
「ぎゃっ!?」
絶句するハズの首根っこを掴み、一気に管理室を出る。
ギャギャギャギャギャギャギャギャ─────
「う、うわああああああああああああ!?」
「は、走れっ! メロ○の様に!」
「メ○スって何ー!?」
2人揃って出た瞬間、黒い何かに目玉が生え、2人を追って来る。
「い、いずみ! 俺だ、この世界の管理人を保護したから急いでアルゴノートに回収してくれ。変な物に追われてるんだ!」
≪わ、分かった。座標を特定するからどこか開けた場所に出て!≫
「急いでくれよっ」
器用にスマホを取り出し、アルボノートのOPいずみに回収をお願いし、2人は岩山を駆け降りる。
「あ、テメェ。生きていたのか!?」
「捕らえろ! いや、むしろ殺せ!」
「へっへぇー。最近仕入れたナイフが唸るぜ?」
するとまだ麓に残っていた冒険者が健太を見て襲い掛かろうとする。
「アホか、今はそれどころじゃねえって。早く逃げろ!」
「あ?」
「な、何だアレ?」
「目玉?」
だが健太達の背後から追って来る謎の物体に思わず足を止める冒険者達。その隙に冒険者達の横を通り抜ける健太は冒険者達に逃げる様に言うが、健太ほど危機回避能力が低く、かつ冒険者の性が沸いたのか、未知なる魔物のドロップ品に目が眩んだ冒険者達はすぐさま健太達には目もくれず、その目玉の闇に立ち向かう。
「お、おい君達っ」
「ハズ、あいつ等はもう駄目だ。逃げ切れる距離じゃない」
「で、でも……」
「警告はした。んでそれを無視したのはアイツ等の意思。それに俺達に今出来る事は逃げる事だけだー!」
「わ、分かった……」
自分の世界の住人が死に向かうのを止められなかったハズに健太が説得する。どうせもうこの世界は救えないのを分かっている為ハズは歯噛みながら健太の後を追う。
そして冒険者達には悪いけど、その冒険者達の犠牲もあって何とか目玉の魔物(?)から逃げ切る事が出来、2人はアルゴノートに無事避難する事が出来た。
「うわぁ!? 何で君がここに!?」
「んぁ? 何だ、アンタ生きてたの?」
で、案の定、先にアルゴノートに来ていたメイファと鉢合わせ、喧嘩に発展しそうになり、2人まとめて真桜に叩きのされた。
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「♪♪~~~♪~~~~ぇ?」
そしてその頃同時刻、この世界ではやや標高が高い場所の高台からライブを行っていた佐夜も健太達が先ほどまでいた岩山の方に視線が行き、謎の黒い物体に目玉が大量に生えた謎の魔物を目撃し、一瞬歌が止まる。幸い曲の最後のメロディなので歌のパートは終わっていたが佐夜の視線はその魔物に向いていた。
「……おいおいおい。まさか滅落の原因がアレじゃないだろうな?」
そして佐夜の視線を追った警備のゼクターもそれに気付き、「面倒くさい事態になった……」と盛大に溜息を付きつつ頭を掻いた。
何か最近佐夜の出番が無いけどそろそろいっぱい出したいですね。主人公なので。




