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第27話 ~芝崎新の事情・上~

今回は月やベレッカを襲ったスキルテイカーの新がアニカと出会って過去話に発展する回です。

長くなりそうなので分けました。


「ぅー、お腹空いた………。佐夜も見つからないしどうやって艦(ふね)に戻ればいいのかな?」

 アルゴノートから勝手に抜け出したアニカは外界から捜索できない様な崖下を歩いていた。ちなみにそこは南東辺りの谷底。何故そこにいるのかは不明だが、アニカの足元に転がっている魔物の骨を見れば何となく察する。


「──おや、君は………?」

「う?」

 するとそこに小汚い恰好をしたマントの少年【芝崎 新(あらた)】が現れ、アニカと出会う。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 芝崎新は言わずもがな物質界から召喚された少年で授業中だったクラスメイト達と共にここに召喚された。ちなみに召喚されたのは新少年のクラスだけじゃなくその階の学年ごと召喚されている。

 で、召喚された者は何故かバラバラに東西南北の国に転移され新少年は北の国で目が覚めた。

 その際勿論北の国でも勇者召喚だけじゃなく次元転移での難民もいる為、北の国ではステータスプレートにて勇者か異界人(それいがい)を判別した。


 そして北の国では直に戦える者、つまり即戦力になりそうな者を優遇する傾向にある為勇者はともかく異能を持たない殆どの異界人達の扱いは酷かった。

 先日東の国で起きた様な人としても扱われず、最悪他人の排泄物まで喰らう羽目になるくらい酷い扱いを受けている。いや寧ろ東西南北で一番、北の国での異界人の扱いが酷いともいえる。なんせ魔法の的当てや魔物の囮や餌にされるくらいだ。


 ついでにいうと北、東、西、南の順で異界人の扱いが違う様に南の国が一番異界人に寛容(?)だ。寛容というより普通の扱いを受けられる。他の国の様に酷い扱いは受けなくて済むのだ。

 ……まぁ、何で他の国で勇者以外の異界人の扱いが酷いのかは以前話した通りだ。


 ちょっと脱線したがここで話を戻そう。


 先ほども言ったが北の国では勇者以外の扱いがこの世界で一番酷い。ならクラスメイトと共に勇者召喚された新少年は何の問題も無いと思われた。


 だが北の国に勇者召喚された同じ学校の同級生73人の内、新だけが『勇者』では無かった。念の為ステータスプレートやその他の鑑定で確認もしたが、やはり新は勇者じゃなかった。それに加え何の異能も補正値も無かった為、ただの異界人と認定されてしまった。


 もし新が西や南の国に転移して来ていたのなら問題無かったのだろう。しかし運命はあまりにも残酷で北に転移して来てしまった新は優遇から一転、奴隷まで落とされた。


 それはもう文字通りの奴隷。他の次元転移者の奴隷と共に超肉体労働から魔物からの囮や壁役、酷い時には同級生から魔法の実験体にされた事もあった。

 そんな扱いを受ければ当然物理的に死ぬ奴も出てくれば精神が壊れたりする奴も続出する。現に同級生によって殺された者は既に百人以上に上る。


 けど新の場合は死ぬ程の扱いをされても何とか気力と根性で頑張った。異世界あるあるの『急に異能に目覚める(もしくは授かる)系』を信じて。


 しかしそんな健気な新が気に食わなかったのか同級生たちはより一層新を苛める事にし、気力や努力ではどうしようもない体力が減っていき、どんどん新は弱っていく。

 そして最後のトドメと言わんばかりに新は同級生たちに嵌めらて(王女を性的に襲った)冤罪を掛けられた。勿論無罪なのだが先ほど言った通り同級生たちに嵌められた事で新の有罪が確定。

 処刑場所として挙がったのがゲノム大谷峡という凶悪な魔物で魔窟になっているという谷に落とされるといった刑だ。一度落ちたら空を飛べない限り、絶対に脱出不可能といわれる高度の低い場所なのだそうだ。

 攻撃力や防御力などのステータスはイジメに遭ったおかげか多少上がったが異能が無い新が落とされれば死亡必死なのは誰の目にも明らかで、新は冤罪が確定した時にはもう絶望していて処刑時に誰か大勢の者達が何やら罵声など喚いていたが絶望しきっていた新にとってはもうどうでもいい。


 そして長々と罵声が止み新は兵士の槍によって突き落とされ崖底の谷に落ちていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こ…ここは………」

 兵士に突き落とされ谷底に落ちていった筈の新が目覚めたのは木の上。どうやら斜めに生えた木々がクッションとなり地面への衝突を避けてくれたのだろう。その証拠に十数メートル先の谷底を見てみれば大きな魔物達が死闘を繰り広げている。

 運がいいのか悪いのか、新は丁度身体が引っ掛かった木の横に人1人通れそうな通路(?)があったので新は魔物に見つからない様そこを通り下に降りようとした。


 で、再三言うがここは巨大な魔物の巣窟かつ迷路みたいに複雑な地形をしているのでどこから魔物が現れるか分からない。

 というか現に地面まで後2~3メートルの所で大狼の群れに出くわし、急いだ所為で結構な高さから降りて足を挫く。

 足を挫いて魔物に追われるこの時点で普通はもう完全にOUT(何故か英語)なのだが、新は同級生に苛められ抜かれた所為で痛みにある程度の耐性が付いていた。

 正直奴隷をやっていてこれだけは同級生たちに感謝しつつ、新は少し痛む(・・・・)足を気にせず大狼から逃げる。逃げるが所詮一般人に毛が生えた程度のステータス。狼の群れからは逃れられない。


 すぐに追いつかれて肩を噛み付かれ、地面に押し付けられた時、新は「あ、オワタ……\(^o^)/」と全てを諦めた。


 しかしまたもや運命の悪戯が新を助ける。


 新が大狼に追い付かれて地面に平伏せられた場所が丁度十字路にあった事で新が喰われそうになった時、横からバジリスクが突っ込んで来て新の上に圧し掛かっていた大狼2匹を蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた2匹はともかく他の大狼は突然割り込んで来たバジリスクに敵意を向けようとするが当のバジリスクはそれどころじゃなく、そのまま走り去って行く。で、不意打ちを喰らった大狼達は「舐めやがって……」と言わんばかりに新の事が頭から離れ、怒り心頭とばかりにバジリスクを追って行った。


「た、助かった……?」

 肩から血を流しゆっくり身体を起こして立ち上がる。


 だが安心するのは早かった。


「っ!?」

 とりあえず壁に寄りかかって休もうとした時、バジリスクがやって来た所から何かがやって来るのを感じ、新は痛みを堪えながら何とかその何か(・・)に補足される前に壁の岩陰に隠れる。


 フィオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ────


「な……んだ…アレ………」

 新が先ほどまでいた場所を幽霊──多分『リッチ』とかいう奴だろう。その大軍がバジリスクや大狼の群れの方へ向かって行った。


「ふぅ……何とか落ち着いt………っ!?」

 リッチ達がいなくなってようやく一息付こうとした時、またもや何かがすぐ近くにいる事を察した新は壁から離れ後ろを振り向く。


 ふしゅるるるるるるるるるるrrrr─────


「何……だよ…こいつ………っ!?」

 そこには一つ目のトカゲ(?)が新が先ほどまでいた場所の2~3メートル上にいた。舌をベロベロと出しながらこちらを睨んでいる。多分後少し気付くのが遅かったら終わっていた。


 とりあえずバレた以上狙ってはこないっぽいのでその場から急いで離れる。


 右へ行ったり左へ行ったり、うっかり魔物同士の戦闘に出くわして戻ったり、時には無理をして強行突破で正面を突っ切って、致命傷になりそうな場所への攻撃だけを布で巻いた手で防ぎ逃げる。


 逃げ続ける。


 ひたすら逃げる。


 超逃げる。


 だって死にたくないから。

 勇者じゃないからって奴隷にされるのはこの際、飲み込む。

 けど何も悪い事していないのに同級生に冤罪を掛けられ、挙句の果てに崖から突き落とされるとか、どんなラノベなんだよ!

 と、ようやく見つけた安置で一人愚痴る。


「…あいつ等……今の今まで俺が勇者じゃないからって渋々妥協していたけど、今回という今回は絶対に許さない………っ」

 そして静かな怒りを溜め込んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「と、まぁ、こんな事があった訳なんですよ────って寝てるし!?」

「ZZZzzz……」

 長々とアニカに己の事情を話していた新だったが、いつの間にかアニカは横になって寝ていた。


 というのも、新とアニカが出会った後、さも当然の如く(?)新はアニカに襲い掛かり、能力やステータスを奪って殺そうとしたが如何せん。アニカは上位アンデッドにして死霊王(アンロード)の一族。不死者な上に能力を奪う事が出来ず、逆に返り討ちにあった。


 本当に超(・・・・)色々あって(・・・・・)から超強くなった事を自分で自覚してから今日、初めて敗北した事で新は今までに無かった感情が芽生えたのか、アニカと戦った後、空腹で倒れたアニカを何となく介抱し、「お腹空いた~」と言っているので丁度近くにいた大熊やら大蛇やらその他よく分からない魔物を殺してステータスを奪い、アニカにその死体を喰わせた。

 その際魔物を食べているアニカが新自身の事を聞かれたので新は「……ま、いっか」と今まで自分に取り待っていた闇が晴れたかのような感じがしたのでムシャムシャと喰うアニカに自分がこれまで辿って来た道のりを話していた。

 まぁ、その途中でお腹いっぱいになったのか、いつの間にかアニカが寝ていたので新は街で盗んで来たタオルケットをアニカに被せ、その横で新は座りながら眠る。

 理由は何となく分かると思うが横になった状態だと魔物に襲われた時、咄嗟に対処できないからだ。けどまぁ、今はアニカがいる事で護るべき者を得た事で新の心にも少しだけゆとりが出来たので、寝ているとはいえそこまで警戒レベルを上げず、新は久しぶりにグッスリと深い眠りに就いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ~SS(男の娘達の××)~


 現在午後9時過ぎ(あまり意味のない時間表示)


リオ「今回も出番がないぉー!」

シャルル「わ、急に何ですか叫んだりして!?」

佐夜「ほっとけ。どうせいつもの癇癪だから」

リオ「癇癪言うなぁー!」

佐夜「あ、あはははは。わ、脇腹くすぐるなぁっ!」

シャルル「仲良しですねぇ……」

 リオが喚きながら佐夜の脇腹をくすぐりシャルルが呆れる。


 バァン! ←ドアが勢いよく開く音。


ルイ「ちょっとリオ、聞いてよ!」

リオ「んぁ? ルイじゃん。どったの?」

 するとそこに機関(オルガン)のガンナー、ルイ登場。どうやら愚痴りたい事があるらしい。


シャルル「あ、あの、初めまして、シャルルですっ」

ルイ「え、あ、うん………って、うわっ!? 正統派じゃん!」

佐夜「だからその正統派って何?」

 リオとルイが言う正統派がホント良く分からない。


リオ「で、どしたの急にこっち来て?」

ルイ「あ、そうだった。聞いてよ班長(勇治郎の事)が────」

 と、ルイの話す内容は単に勇治郎が最近忙しすぎて構って貰えない事に関する事だった。要するにどうでもいいから愚痴りたいだけなのだろう。けど機関の周りに男の娘はいないのでこうやって番外編(?)でしかここにこれないらしい(?)。

 あ、ちなみに半蔵と共にやってきた【杏樹】はオネエなのでノーカウント。


清良ことセーラ「しかし何だ、この小説はどこに向かってるんだ?」

佐夜「さぁ? 他の異世界小説と比べて結構性別の曖昧な奴が多いのは確かだけど」

シャルル「佐夜さんには言われたくはないですね……」

佐夜「お前もな」

清良(セーラ)「ははは……」

 どっからどう見ても美少女2人のジト目睨み合いに清良(セーラ)は笑う。


佐夜・シャルル「「いや、お前(貴方)も他人(ひと)の事言えないからっ」」

清良(セーラ)「えぇっ!?」

 何気なくここに連れてこられた時点で清良は気付くべきだった……。


 ちなみにアニカを含めた男の娘の特徴はこちら↓


リオ:忍者っ娘。黒のポニテ(尻尾は30センチ程度)

ルイ:ガンナー娘。青のショートにカウボーイハット。居合撃ちが得意。

佐夜:ブレザーを改造したバトル服を着た亜麻色ロング美少女。気分(性格)次第でポニテや編み込みにしている。

シャルル:クリーム色のゆるふわウェーブ(ロング)。軍服デュエリスト。

アニカ:(今現在は)ピンク髪のロング。アンデッドにして死霊王の一族。

清良:藍色のショートカットにモミアゲ部分の毛が結構長いのが特徴。何となく眼鏡の似合う委員長に見える。眼鏡していないけど。普通に男装している。


清良(セーラ)「だから俺をそっちのカテゴリーに入れるなぁー!」

佐夜「俺も俺も!」

リオ・ルイ・シャルル「「「いや、だから佐夜(アンタ)はこっち側!」」」

佐夜「なして!?」

 こうして男の娘達「だから違ぇー!」の夜は更けていった。


さぁ、新の過去に一体何があったのか?

大体予想はつくと思いますがもう少し過去話にお付き合いください。

ではまた。


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