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第16話 ~この世界の現状~

今回は少し短いです。


「俺様の嫁になってくれー!」

「断るぅぅぅぅぅっ!!」

 佐夜が凄い形相で逃げる。


 突然だが佐夜は今、西の国ウェスタの第2王子【ケイズ】から求婚されながら逃げていた。


 事の発端は東の国と同様、(異界人が原因の)食中毒事件が原因だ。

 といっても今回は王宮(城)や貴族街ではなく庶民が多い商店街の方で起こった事件だ。なので西の国を調査してる最中にその場を通りかかった佐夜達(佐夜、優李、清良、健太、詩紗)で応急処置を行う事に。

 幸い、命に関わる様な重病人は出なかったが結構な数の食中毒患者が出たので途中から応援に来たクラスメイトと共に対応に当たった。


 で、前回東の国で王族の対応に当たった佐夜は前回の事も踏まえてなるべく金持ちっぽくない平民達の方を看病した。

 だがここで佐夜の作戦が裏目に出る。


 なんとTHE・平民的な恰好をした青年を看病したと思ったら王族でした。どうやら御忍びで平民の恰好を装って下街を視察に来ていたらしく、たまたま小腹が空いた時に食べ歩きしていたらお腹を壊したらしい。

 ちなみに今回食中毒になった原因は粉物の定番【お好み焼き】と【なんちゃってタコ焼き(タコっぽい何か)】だ。


 何で粉物で食中毒になったのか、佐夜が錬成術で現場に残っていたお好み焼き&タコ焼きもどきを分解して調べてみると、『カビ(細菌能力は低い)』と『水質汚染』が出て来た。おまけに生地が『生焼け』だ。これだけ揃えば腹痛は必至。

 原因が分かれば薬の調合もすぐ出来るそうなので佐夜はゼロに報告し、20分後には抗生物質やら下痢止めなどが調合された薬が届けられたのでみんなで痛みを訴える人々に配布する。


 その後、一通り患者の容体が落ち着き協会のメンバーが一息付いたその直後、ついさっきまで腹痛で悶えていた第2王子ケイズに感謝の言葉と共に背後から抱き着かれた佐夜は絶叫。

 例え相手がイケメンであろうと男に抱き着かれて喜ぶ野郎はゲイしかいない。佐夜は只今ジェンダーアイデンディティが崩壊気味なので良く分からない!


 そりゃあ容姿は勿論、言葉使いも丁寧だし(この容姿で俺口調だと皆びっくりする為)、おまけに献身的な看病に毒物の特定や薬の調合(ゼロが調合したのだが誤解されている)と全てにおいて完璧な人間性美少女に惚れない訳が無い。

 混乱した佐夜は慌ててケイズを引き剥がして逃走。その佐夜を見て「照れちゃて可愛いな!」と盛大に勘違いしたケイズは佐夜の後を追う。


 で、その後は言わずもがな東の国と同様、王子に求婚されながら街中を逃走中。賞金は出ない。捕まったら────?


 一応念の為高台から義信が狙撃できるよう待機しているらしく、「殺すか?」とスマホからハンズレス通話で言ってくるが殺したらダメだろ。

 いざ身の危険になったら麻酔弾でも撃ってもらうようお願いした。


「だぁ! セロファンといい、こいつといい、どいつもこいつもしつこい!」

「わっはっはー。大人しく俺様の嫁になれぃー!」

 曲がり角などを利用して撒こうとするが発信機でも取り付けられているかの様にどこまでも追って来るケイズ。最早ある意味ホラーだ。


「うお、行き止まり!?」

 だがここは相手のホーム。ここの地理に詳しくない佐夜は行き止まりに捕まった。


「さぁ、もう逃げられないぞ~」

「く……っ」

 そして両手をワキワキとさせながら近付いて来るケイズに佐夜はたじろぐ。


「ふ……なんてなっ」

「え?」

 と、油断させておいて佐夜は地面に手を付き地面を隆起させ、容易く行き止まりの壁を乗り越えた。ケイズもまさか相手が土魔法(←勘違い)を応用させて逃げるとは思ってもいなかったようでポカンとする。佐夜はその間に逃げ切った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「はぁ……ったく、何でいつもいつも俺ばっか求婚されんだ。しかも男に!」

 (ステルス機能付き)拠点に戻った佐夜が椅子に腰かけながらそう言うと皆、「はぁ?」みたいな顔をしてそれぞれこう言う。


「可愛いからだろ」

「美人だから」

「人当たりがいいからでしょ」

「割と錬成能力も高い」

「歌が上手い(今は関係無いけど)」

「料理も上手(普通より少し上のレベル)」

「慈愛の歌姫神!」

「理由を述べる必要あるか?」

「∩(>_<)∩」

「(・ω・)ノ」

 と、一気に捲し立てられ佐夜は「おおう……」と仰け反る。つか最後の2人は何が言いたいんだ?


「それよりも懸念していた事が発覚しましたね」

「ああ、まさか本当に『水不足』だったとはな……」

 ティーナの言葉にゼクターが目を閉じて溜息を付く。


 そう、この世界は常に水不足に陥っていた。

 そもそもこの世界には『海・川』が無く、精々南の国に『湖』がある程度だ。おまけに雨もそんなに降らない上、せっかく降っても地面がスポンジみたいに柔らかいので全て地面に吸い込まれ、湖や地下水へと替わる。

 そして東の国と西の国の標高もそこそこ高いのでその地下水の殆どが東西南北の国々の丁度真ん中にある街道の真下に流れてため、実質水不足に陥る羽目に。

 それ故、この世界では東の国と西の国でこの中央街道の水源を争っていたという事なのだ。

 ちなみに南の国は湖があり、北の国には冬になると雪が降るらしいのでこの2ヵ国に関してはそんなに深刻ではない。


 だからせっかくの水なのにそれを『ろ過・殺菌』もせずそのまま使った所為でせっかくのカレー(東の国での事)や粉物も台無しになっていた訳。ろ過や煮沸殺菌すると水が減るからそれが出来ず、それで毎年食中毒患者が東西の国で多く出るらしい。

 あ、ちなみにろ過や煮沸消毒に関しては勇者や次元転移者も警告していたらしいが無視されていたらしく、目に見えない無色透明な水はこの世界にとっては飲料可能だというやや危険思想な傾向にある。

 目には見えないが雑菌だらけの水ってあるよね。怖い怖い。


「これってこの世界のシステムコアに『異常』が出ているからなのか?」

「そうですね。おまけにその管理者が現在行方不明な上、死んだ訳でもないのでこちらから操作も出来ません」

「ついでに付け加えてこの世界を覆っている外殻も既にボロボロだったらしく、見事に何者かの手による幻影でカモフラージュされてあったとの報告がありました」

「ご苦労」

 いつの間にかルルセナも合流しゼクターに報告する。


 世界を構成する要素は主に3つ。


 ・構成・維持・運営・機能システムコア

 ・スターライド(エネルギーコア)

 ・メモリーコア(歴史・現象記憶媒体)


 その中で異常が発生したのがシステムコアの機能部分。更に言うとその機能の中にある『空気→結合(雨雲化)→雨』の部分に欠損がある事が分かり、その所為でここ数年間まともに雨が降らず、降ってもゲリラ短期豪雨的な殺人雨が降る。

 おまけに先ほどルルセナが言っていた『世界の外殻が穴だらけ』という現象が雨雲を発生させにくい&亜空間に漏れる原因にもなっているらしい。


「……それでこれからどうするの? このまま勇者とか次元迷子者を撤退させて終わり?」

「それはない」

 この場にいる3組の皆を代表して優李が静かに言うとゼクターに否定される。


「元々、この世界に来る時は『世界調査班』と『異界人保護班』に班分けしていたが『世界調査班』は『管理人調査班』へと変更し、更に新たに『臨機応変(その他)班』にも人数を振り分ける」

「『臨機応変(その他)班』?」

「簡単に言えば外交やその他のイベントへの対応をしてもらう。……佐夜が」

「俺!?」

 いきなりの抜擢に目を剥く。


「……先ほども言ったが管理人が不在の所為で水不足が深刻化しているため東と西で戦争が起こっている。が、幸いな事に両国の皇子(王子)が揃いも揃って佐夜に惚れ込んでるじゃないか。この手を使わない手はない」

「「「「「「あー」」」」」」

「『あー』って何だ、『あー』って!?」

 皆が納得顔するが当の本人は分かっていない様子。


「佐夜っち、あれだよ。『やめて、私の為に争わないで!』ってやつよ」

「何そのセリフ!?」

 優李のブリッ子に思わずツッコんだ。


「要するに佐夜に惚れ込んでいる皇子(王子)達に頼んで戦争を止めさせる訳だ」

「嫌だよ、何で男に媚びなきゃいけないんだ!?」

「というより佐夜が原因で戦争にならなきゃいいけど」

「それはもっと嫌だ!?」

 まさに罪深い歌姫神や。


「後は後続のバス組を待って合流し班決めを行うか」

「嫌だよ、俺はやらないからな!?」

 佐夜の抗議はスルーされました。


「大変大変たい───へんたいだよー!」

「誰が変態だ!?」

 最後が『○○たい』になってるので変態と聞こえた佐夜が吠える。いや男に惚れられている時点で十分変態だと思うぞ?


「リオ、そんなに慌ててどうしたんですか?」

「ば、バスが爆発して中に乗っていた皆が戦闘不能(リタイア)しちゃった!」

「「「「「「はぁ!?」」」」」」

 リオのその報告に皆が仰天した。


「それって勇者とか例の世界破壊者に襲われたって事か?」

「ううん、何でもテルテル(椿姫の事)が誤って(?)誤爆しちゃったらしいよ?」

「「「「「「どゆこと!?」」」」」」

 敵ではなくまさかの味方からの攻撃で死んだ事に更に驚く。


「で、今は歩きでこっちに向かっているんだって。ゼリア軍(+α)も含めて」

「え………」

 まさかここでその名を聞く事になった佐夜は真顔で言葉を失った。



次回は17~18日更新予定です。

ではまた。

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