第15話 ~不器用なゼリア軍~
GWオワタ……。
ゆっくりとした歩みで東島は肩に竹箒を担ぎながら周りを見渡す。
片方は障壁で必死に弾丸を防ぐ特殊部隊みたいな連中。
もう一方はその特殊部隊連中を弾丸の雨で蹂躙しようとする軍隊。そしてそれを指揮するゆるふわクリーム色ロングの少女(?)。
「あのガキ、カードをドローして使い、味方の攻撃の手数を増やしてやがるんのか。っつー事は決闘者か。めんどくせー」
溜息を付きながら東島は特殊部隊ではなく軍隊の方へ向かって歩き出す。
「え、何で民間人がこんな所に? と言いますかこっち来たら撃ちますよ?」
「撃てば? 当たらんけど」
「散開、ターゲット民間人(?)!」
「「「「「はっ」」」」」
指揮をする少女(?)シャルルがタゲを散開させ、一部の部下達の銃口が東島に向く。
ダンダン、ダンダン────
甘く見てるのか連射ではなく単発を数発撃つ程度で東島を殺る、もしくは威嚇する。だが相手は竹箒を持った悠々とシャルル達の方に歩みを進め、
「ひょいひょいっと」
「「「「「「「は?」」」」」」」
マッハを超える速度の弾を軽々と避け、どんどん近付いて来る。
「っ、単発の威嚇ではなく連射にてきちんと仕留めなさい!」
「「「「「ッサー!」」」」」
一瞬呆けたが、すぐさま気を引き締めシャルルは部下に指示を出し、部下達もマシンガンの単発から連射に切り替える。
ダラララララララララr────
「もーめんどくせーからいちいち撃つな」
ブォン─────
「なっ!?」
今度は竹箒を薙払いして弾丸の霰を受け流す。
そしてその間に『増える弾丸』の効果が切れ、シャルルはすぐさま部下達を止める。これ以上撃つと実弾数が減るからだ。
「ならばこれはどうです? 『インスティング・ファイト』! ライフを500払い、自身が動けない代償として味方全員の攻撃力・防御力・スピードを30%UP! さぁ、お逝きなさい!」
「「「「「ッサー!」」」」」
何気に味方に死亡宣告しちゃっているが部下達は軍刀を抜き、一部を残し半数以上が東島の方へ駆けてくる。
「ふー。銃無しなら全力で手ぇ抜いてやんよ」
と、東島は臆することなく竹箒をだらんと下ろして引き摺り、総勢40名ものゼリア軍の群れに突入する。
「「「「「おおおおおおお─────おぉぉぉ──………!?」」」」」
だが突入したと思ったらいつの間にかタゲは自分達の後ろにいた。慌てて振り返り、背後から斬りかかろうとするが時間差で首や頭部、鳩尾などに激痛が一瞬走り、東島の方に向かったゼリア軍達は皆白目を向きながら気絶した。
「くっ、部下達が一瞬で………っ」
そして未だゆっくりと歩いてくる東島にシャルルは「早く100秒経たないかしら……」と呟くが、後50秒くらい残っている。
「「シャルル少佐がピンチだ我らで援護するぞ!」」
「「「おう!」」」
すると特殊部隊の方に向かっていた10人が異変に気付き、更に半分に別れて5人が銃や軍刀を手に東島の方に突っ込んで来る。
が、
「はい終わり」
気付いた時には壁に激突。というより地面が壁? 的な感じで再び突っ込んだ5人が気絶する。
「ええい、もうこっちは放置で総攻撃だ!」
「「「「おお!」」」」
「え、ちょ、皆さん!?」
最終的には護衛も特殊部隊への警戒も放棄し、シャルルの静止も聞かず残った5人と最初に突っ込んで気絶させられた者の中で何とか意識を回復した者達(約8人)が総攻撃でハンドガンやマシンガン、その他の重火器や手榴弾などの爆発物で東島を狙う。
「いい加減にもう寝てろっ。『武装・攻撃解除』!」
「「「「「「うわあああああああああああ!?」」」」」」
「「「「「「「きゃああああああああああ!?」」」」」」」
ただ攻撃を無力化したかっただけなのにしつこく狙ってくるのでちょっとイラっとした東島はダランと下げた竹箒を振り上げ魔法を唱える。
すると発射した弾丸とピンが抜かれた手榴弾などの爆発物、そしてその他の重火器や刃物が全て明後日の方向に飛ばされ、大爆発を起こす。ついでに武器を奪われ爆発に驚くゼリア軍の隙を付いて意識のある者を全員気絶させた。
これで残る(意識のある)ゼリア軍はシャルルただ1人。ちなみにここまで一切手を出してこなかった特殊部隊の人達の事は既に目もくれていない。恐らく戦うだけの力が無い(もしくは残っていない)か、最初から争う気が無いのだろう。
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「ふっ、ここまでですか………」
そう言いながらシャルルは再びカードを切る。引いたカードは最強の『死者蘇生』。シャルルが戦闘を行っている間に死んだ者を生き返らせるカードだ。ただし使用者には適用されない上に現状今死んでいる者がそのまま戦闘終了になった場合、そのまま死亡扱いになる。
つまりシャルルが終わらせない限りは敵も味方も仮死状態になっている訳だ。といってもこのままでは使えないカードだ。現在仮死状態になっている部下の数は4人。対して死者蘇生単体での効果対象は1人のみ。つまり1人しか生き返られないのだが、シャルルがあえて特殊部隊との戦闘を長引かせていたのかというと、手札に『死者蘇生』と『複製&実行』が揃うのを待っていたのだ。だが結局揃う前に東島が乱入して全てがおじゃんになってしまったのだ。
そしてシャルルは丁度部下達が自分から離れている事を幸いと思い、せめて1人だけでもと死者蘇生で1人を生き返らせ(といっても重症くらいでの復活)、続いてとある最悪のカードを持ち、東島を見る。
その手に持つ最後のカードは『自爆』。文字通り自分の命ごと相手を殺す事が出来る最後の手段のカード。これを使用すればシャルルは死ぬ。だがこのカードもそのままでは使えない。
効果範囲は5m。使用すればコンマ0.001秒で大爆発が起きる。どんな奴でも逃げられない。シャルルは東島が効果範囲に入るのを待つ。
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「………ちっ」
一方、シャルルと目が合った東島は決死の目をしているシャルルが何かを狙っている事を瞬時に理解し舌打ちをする。
舌打ちしながらも東島は歩みを止めない。こちらが気付いた事を悟られれば何をしてくるか分からないからだ。なので相手が動いた一瞬を狙う。
そして東島の足が効果範囲の5mに入る。
「っ、この瞬間、『自ばk───」
「させるかっ」
やはりそれかと言わんばかりにシャルルの自爆を悟った東島は正面からシャルルの右手首を掴む。これで一瞬だが発動を阻止。
「く……っ」
だがシャルルも諦めが悪い。掴まれたのは手首。なら自分が後ろに一歩引けばカードをセット出来る。
「させねぇよ」
「っ!?」
だが後ろに引こうとした瞬間に東島は一瞬でシャルルの背後に回り込み、右手と左手を掴む。傍から見たらイチャイチャカップルに見えなくも無いが今は真面目な場面、ふざけている場合ではない。
「正直お前が決闘士で良かったよ。これが普通の魔法での自爆だったら止めるのが大変だから、ま」
「な、何をするつもりですか!?」
右手に持っている『自爆』カードを手前に引き寄せて口で咥え、開いた右手をそのまま左手の方へ持っていく。
そう、今まで相手を倒す=殺すか、一定時間を越えた状態(約100分)でしか決闘状態を解除する方法が分からなかったシャルルなのだが、実はもう一つ解除方法があったのだ。
某・遊〇王を知る者なら誰でも(?)知っている方法なのだが実際にそれをやっている光景があまり無かったのでシャルルに決闘を教えた者もその事を教えるの忘れたのだろう。
「え、これ……は?」
つまりデッキのカード排出口(とその上部)をもう一方の手で覆う『降参』だ。これならばいちいち時間切れを待つ必要も無ければどちらかが死ぬ必要も無い。負けという屈辱はあるかもしれないが死ぬよりはマシだろう。
「ふぅ、何とか自爆は避けられたな。久しぶりに変な死線を潜ったから冷や冷やもんだったぜぇ」
『降参』させた事でシャルルのデッキが透明化し決闘空間が閉じた事で東島が一息つく。
「くっ、何時までくっ付いているんですか。離してください!」
「おっとそうだった。一応言っておくが変な真似すんなよ? 物理攻撃くなかったらな」
「……分かりました」
せっかく戦闘を終わらせたのに暴れられたんじゃ意味が無いからな。
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「で、そっちは大丈夫かー?」
「あ、ああ……すまない、助かった」
へたり込んで大人しくなるシャルルをその場に放置し、東島は西郷征也に声を掛ける。
だが征也の横から別の隊員が走って征也を抜き、更に東島をも抜いてシャルルの元に走り、持っていたハンドガンを抜く。
「手前、よくも翠山を殺りやがったな!?」
「っ」
チャキっと、シャルルの頭部に銃口を押し付け同僚の死を嘆く男性隊員。
「本藤、止めろ!」
「まぁまぁ、落ち着け」
そんな男性隊員こと本藤に征也が制止の声を掛けるが、その一方で呑気な声を言いながら東島が本藤の元に向かう。
「リーダー、そっちの奴も助けてくれた事には感謝するが、それとこれは別だ!」
「そりゃそうだがよ。そちらさんの死んだっていうそこの女、生きてるぞ? ギリギリだけどな」
「へ?」「は?」「え?」
「というか、そこの女だけでなくゼリア軍の連中も生きてるぞ。こっちもギリだがな」
「え、ホントですか?」
東島の言葉に双方の軍(隊)は死んだと思っていた仲間の元に駆け寄る。生きてはいるが本当にギリギリの状態なので東島はスマホでバスの中にいる回復師達にすぐ来るよう指示し、回復師達のお陰で双方の軍(隊)は死者を出す事無く戦闘を終わらせる事が出来た。
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「すみません。こちらから襲っておいて治療までさせてもらえるなんて……」
「別にいい。これも俺等の仕事だ」
背後からペコペコと謝罪してくるシャルルにそっけない態度の東島。
「ですがこれでまた私達は元の世界へ送還されるのですね?」
「ああ、流石に2回も次元侵略したともなれば今度は次元封鎖どころか『鎖国』も考えられる。そうなりゃもう外界には出られんだろ」
「そう……ですか…………」
送還されると聞いてシャルルは俯き、腰からナイフを取り出す。
「おいおい。今更そんな物で俺が殺られる訳ねーだろ」
「そんな事は重々承知してます。……ですがこのままおめおめと元の世界に還っても私は責任を取らされて処刑されてしまいます。ならばいっそここで───」
「!?」
立ち上がるシャルルが襲ってくると警戒した東島。だが様子が少しおかしい事に気付いたのか、振り向くとシャルルが取ろうとした行動に驚く。
そう、シャルルは自分の喉元にナイフを突き立て自殺しようとしていたのだ。
ガシッ!
「な、何やってんだお前!!?」
慌てて強引にナイフの刀身を強く掴み自殺を阻止する。その手には強引に握ったが故に血が流れている。が、今はそれどころではない。
「だって……っ、お父様が先の侵略失敗の責任を取って自害し、今回も資源確保の為に一緒にやって来た姉さまが勇者達に殺され、私もアナタ方に捕まってしまいました。どうせ帰っても殺されるだけの人生です。……ならばいっその事、姉さまが死んだこの世界で私も命を絶ちます!」
帰ったら死、という現実に絶望したシャルルは姉が死んだというこの世界で命を絶とうとしている事を知る東島。
「──っの、バカヤロウがぁ!!」
「きゃっ!?」
そんな事を言われて黙っていられないのか東島は歯軋りし、掴んだナイフを強引に引いてシャルルの手から離し後ろに投げ、更にもう一方の手で裏ビンタをお見舞いする。
「な……何を………っ!?」
横倒しにされたシャルルが呆けた顔で東島を見ると、東島はビンタした手でシャルルの胸倉を掴む。
「ふざけるなよお前。お前はこいつらの上官だろ? 何勝手に一人で死のうとしてるんだ?」
「だ、だって……」
「だってもクソもあるか! お前がここで死ねばこいつらはどうなると思う?」
「どうなるって………。……あっ!?」
そう、この世界に来たゼリア軍の階級持ちはシャルルとその姉ベレッカのみ。もしこの2人が還らず、残りの兵だけが元の世界に帰された場合、責任者不在という事で全員が処罰されるだろう。つまり全員処刑される。
「で、ですがこのまま何も出来ずに帰ったら私、死んじゃうんですよ!?」
ここで自害しても還っても死ぬ。正直自殺を防止するメリットなんて東島には無い。だがメリットとかディメリットとかそんな些細な事、東島には関係ない。
「だったら何で素直に助けを求めない!?」
「……え?」
レニアナでの時はあくまでも次元侵略での行為だったので全員強制送還されたのだが今回は小規模での資源確保。故にわざわざ戦う必要は無く、素直に助けを求めるか、特殊部隊と協力し、一緒に採掘すれば良かったのだ。
だがシャルル達は軍の人間。それもシャルル達の世界では大規模のでの軍事国家なのでそのお偉いさんにでもなればプライドも自動的に高くなる。例え資源が残り少なくなり世界の滅亡へのカウントダウンが始まろうとしていたとしてもだ。
故にゼリア軍はプライドが高い所為で他世界や亜空間内を移動する各組織に『助けを求める』のではなく『侵略しその土地の資源を頂く』といった不器用な方法しか行動出来なかったのが実情らしい。ちなみにこれは今アルゴノートにいるベレッカから聞いた話。
「キチンと相手と話や交渉をし、その上で助けを求めれば無駄にレニアナで戦争を起こす事無く、更にこんな意味の無い戦いをする必要は無かったんだ。違うか!?」
「そう……ですね………」
実際レニアナにはいなかったシャルルだが、確かにわざわざ戦争を起こすメリットはない筈。寧ろ相手は未知なる敵、協会に抑えられるまでは奇襲での攻撃で有利に事を得ていたらしいが、何時魔法とやらで反撃を喰らってもおかしくなかったのだ。
「それにさっきお前、姉ちゃんがこの世界で死んだって言っていたな?」
「は、はい……」
「生きてるぞ」
「ふぇ?」
姉が生きていると言われたシャルルは目が点になる。
「お前の姉ちゃん、確かベレッカで勇者に襲われたと言ったな? その後そいつ偶然にも俺の後輩と遭遇し、保護されてるぞ。色々あったらしいがな」
「ほ、本当ですか!?」
「おおう!?」
姉が生きていると聞き、シャルルは東島に跳び付いて問い詰める。心なしか顔と顔との距離が凄く近い。シャルルが背伸びしながら東島に跳び付いているので傍から見ればキスをしている様にも見える。
という事は、
「何でお主、敵と接吻しとるんじゃ?」←椿姫
「戦って愛情が芽生えたってか?」←覚助
「いや、吊り橋効果というやつじゃないのか?」←マック
「ふ、フレンチですわ!?」←花蓮
「破廉恥だろ」←正義
「ZZZzzz……」←寝郎
「私達に怪我人の治療をさせておいて自分はイチャつくとか……有罪?」
「「「「有罪!!」」」」
戦闘が終わったのを見計らって怪我人の手当ての手伝いをしていた疾走組と回復師達が急激に接近している2人の距離感を見て物凄く茶化してくる。
「お、おい離れろ。何か仲間に凄く誤解されてる!?」
「嫌です! 姉さまの事を詳しく話してください!」
「話すも何もさっき言った事が全てだ!」
「嘘です。まだ何かある筈ですー!」
全くの誤解なのだが傍から見ればただのイチャイチャカップルにしか見えない。
しかもその光景は東島の味方だけでなく、シャルル以外のゼリア軍達の目にも止まっていた。
「き、貴様ー! 我らのシャルル様に触れるなー!」
「そうだ、その御方は我らの女神なのだぞ。安々と触れるでない!」
「いやぁー! シャル様が穢れるー!?」
「殺」
「滅」
「いやお前達一文字じゃなくちゃんと話せ。でもあいつは殺す」
先に意識を回復した兵にボロクソを言われ、
「俺達、助かったんだよ……な?」
「うん……でも何か空気的扱いじゃない?」
「言いたい事は分かるがここは黙っとけ。混ぜっ返すとめんどくさい」
「あ、翠山が目を覚ました」
すっかり外野……というか空気みたいになっている征也達がこそこそする。下手に口を出せばどうなるか分からないからだ。
「いいから離れろー!」
「嫌ですー!」
……はい。どう見てもバカップルです。お疲れ様。
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リオ「ヤバい、ヤバいよさやや、セーラ。正統派がやって来た!?」
佐夜「男の娘に正統派とかあるのか?」
セーラこと清良「俺は関係ない! つかセーラ言うな!」
その後、ベレッカから弟シャルルとの関係の報告をスマホで見たリオが密かに戦慄していた。
ダラダラタイム終了~。
本業が始まると思うと鬱になりそうですが頑張ります。
ではまた。




