第9話 ~佐夜のカレー講座~
今回はやや短いのでSSSを加えておきました。
「どうしてこうなったんだろう……」
美里佐夜は大いに後悔していた。
というのも事の発端は先日のこの世界における中途半端な食革命だ。
マヨネーズは卵の殺菌(主にサルモネラ)に問題があり、パンは賞味期限の認識違い、出汁はキノコ問題に、カレーは水質問題とスパイス不足による味薄&毒化、肉・魚は熟成しているのかと思いきや唯々(ただただ)腐って大腸菌大発生!
どれもこの世界に転移・召喚勇者達による知識の持ち込みなのだがどれもそれらによる注意が怠っていた為か、食中毒患者が各国で続出しまくっているらしい。
それを見かねた佐夜が奮起しティーナに相談したのだがそれが結果として大事となってしまったのだ。
ティーナに(一応リオにも)相談した翌日、3組が滞在する街に悲報が舞い込んで来てその内容に一同ギョッとした。
何でもこの国の王族達が一昨日の立食パーティで熟成肉を食した所、見事にその後強烈な腹痛に見舞われ某有名な『腸管出血性大腸菌感染症』っぽい症状に陥ったらしい。
こうなるとこの熟成肉を伝授した異界人が王族の怒りを買い、処刑されてしまう恐れがあったので、ここは生徒ではなく教師&先輩達が出動し、直接王城へ赴き症状が現れた者達全員に異世界の特効薬(今回は非常事態なので)を投与し、通常は数十日掛かるものを2~3日で回復させ、死者も出さずに済んだ。ややギリギリだった者もいたが。
ちなみにその際『リグ・セイバー|(守護者)』候補のメンバーも病人の看病に当たっていたのだが、その時佐夜が担当していたこの国の第一皇子にその健診な看病をする佐夜に一目惚れしたらしく、回復したとみるやいきなりプロポーズをしたとかどうとか………(結果は言うまでもない)。
その後落ち着いた所で回復した王様との会話に応じ、熟成肉(魚)やその他諸々の異世界料理に関する注意事項を教え、特に熟成環境を作るのに困難な熟成○○は重症になる食中毒になりやすい為禁止させる事にした。腐りかけが旨いのは認めるが、その分危険も大きいのだ。
その他諸々の説明には『柔らかい異世界パン』は賞味・消費期限について、『出汁・ブイヨン』はキノコ系の出汁取り禁止、『マヨネーズ』は使う卵の徹底した殺菌・消毒を、そして『カレー』にはちゃんとした清潔・綺麗な水と正式なスパイスの種類を教えた。
だが、この世界で取れるスパイスには生えている種類の偏りがあり、尚且つスパイスの栽培はしていなく自生している物を全て刈り取った場合、その種を絶滅させてしまう恐れがある。それほどカレーの魅力は大きいのだ。
そしてこの世界で栽培可能なスパイスでカレーを王族達に作った結果、
「本当、どうしてこうなったんだろう………」
佐夜は今、大勢の人達の前でカレーを作る準備をしていた。
というのも教師、先輩、3組一同合わせて一番料理上手なのが佐夜なのでこうなってしまってるのだが、上手といってもあくまで佐夜は普通に料理が上手なだけで、某料理漫画の食戟を繰り広げる少年達のレベルまでは行かない。あくまで家庭料理の少し上を行く程度の能力なのだ。……程度の能力って何?
一応愛沙とこの為に現場に呼んだ非戦闘員のいずみが佐夜のお手伝いをする事になっているが、佐夜とこうして並ぶと佐夜の方が圧倒的に美人さんなので、
((正直こういう目立つ所で佐夜の隣に立ちたくないよぅ……っ!))
と2人は佐夜に聞かれない様、心の中で叫んでいた。……男なのに女の子より美人とか意味が分からない。
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カレーのスパイスの基本は『色』『香り』『辛み』。味などの『旨味』は使う具材から出るので問題は無い。
まずは『色』付け。カレーの色付けといえばターメリック(ウコン)。これは普通に自生しており、この世界での栽培も可能なので使用可能。
次に『香り』。ここで自生している物は『クミン』と『カルダモン』、『シナモン』と『グローブ』、そして葉っぱ系の『ローレル』と『ホーリィバジル』で、栽培可能な物を使うとなればやはり『クミン』『カルダモン』『グローブ』だろう。今回は匂いを出す為に『クミン』と『グローブ(やや多め)』を使用。
カレーに不可欠な『辛み』といえば唐辛子。といってもまんま唐辛子を使うのではなく『カイエンペッパー』や『レッドチリペッパー』。そして香辛料の生姜や胡椒もあるのだがここは物質界ではないので胡椒は栽培が難しく不可。生姜は胃腸の働きを助けてくれる上にこの世界でも栽培が可能なのでおK。唐辛子は両方栽培が可能なので今回は『レッドチリ』を使用。
最後にオールスパイス系でよく使われる『ガラムマサラ』だがこれは数あるスパイスの調合によって出来る万能スパイスで、カレーメーカーによって調合が違う上に、この世界だと調合の為の資材が無い為ガラムマサラは作れない。作れたとしても時間が掛かる上に佐夜だと経験値が足りないので無理。なのでオールスパイスは使わない。
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という訳でスパイスの簡単な説明回想は終了(誰の回想?)。
その間に佐夜達は全ての材料を切り終わり、下拵えを終わらせてここからカレーの講習会&試食会を開始する。
「まず牛乳で作ったバターを鍋で溶かし、スライスしたオニオンを半分入れ、フニャフニャの飴色になるまで炒めます」
「いやフニャフニャて……」
「言い方がいちいち可愛い過ぎるわ!」
「ふぁっ!?」
どう表現したらいいか分からなかったので見た目で説明したら何故かお手伝いの2人にツッコまれた。
次に豚肉っぽい肉と残ったオニオンを投入し、肉にキチンと火が通るまで炒める。
肉に火が通った後は食べやすい大きさに切ったニンジンとジャガイモを投入し、ろ過した綺麗な水を入れる。ちなみに実家&イニシエ時は1000mlの野菜ジュースと水を加えてコクを出すがここには野菜ジュースは無いので断念。
程よく煮詰まってニンジンとジャガイモが柔らかくなった所でようやくカレースパイスの投入。スパイスの配合は科学者であるゼロの協力を得て配合しますた。
「「「「「「「おおおおおお……………」」」」」」」
で、スパイスが煮詰めた鍋のスープに溶け込んだ所でカレーが持つ空腹を誘う強烈な香りが辺り一面に広がって行き、会場に集まった者達はおろか、会場の外までカレーの匂いが広がっていきどんどん会場に人が集まってきた。
「はい、これで一応完成だけどこれだとシャバシャバなのでとろみを付けたい時はこのまましばらく煮詰めるか、水で溶いた小麦粉を入れます。今回は時間が無いので水で溶いた小麦粉を投入し、よくかき混ぜます」
ぐーるぐーると鍋をかき混ぜカレーにとろみが付いた頃にようやく火を止めて、
「完・成!」
「「「「「おおおお………っ」」」」」
「あ、あはは……」
完成と聞くや否や会場の人達の歓声が木霊するが、その歓声に紛れて腹の音も盛大になったのを佐夜は聞き逃さなかった。
「はい、一般の方はこちらに」
「勇者と異界人の方はこちらへお願いします」
その後、色々と人達が殺到した為協会メンバーはカレーを求めに来た人達を2つに分けて整列させる。
というのもこれは現地の人達と文字通り異界人(勇者含む)を振り分けて異界人達を送還させる作戦なのだ。振り分けた会場に入れ、異界人達がカレーを食してる間に大型送還術を発動させる為に呼んだユフィに送還術を使わせてまずは勇者を送還。次に「何事!?」と混乱するこの場に残った次元迷子者に事情を説明し保護する。
ついでに説明すると、カレーの匂いに誘われたが罠だと思って会場に入らなかった勇者と、入りたくても奴隷落ちして入れない次元迷子者が周りにいる事を想定し、今回は3組の生徒だけでなく教師と先輩達全員でこの東の国の異界人達を一網打尽にする。……言い方は少し物騒だけど別に殺さないよ?
ちなみにこの世界にはライス……米は無い為、パンをカレーに付けて食べるスタイルになっている。勿論パンも柔らかくカレーに合うパンを使用。当然ライスじゃない為、福神漬けなどは作らなかった。色々ややこしくなるから、あれ。
そして当たり前の話だが奴隷落ちした者が多い次元迷子達は奴隷から解放されるのと元の世界に帰れる事に歓喜し、会場に入らずに周りをうろついて捕まった勇者達は送還される最後まで抵抗していた。
東の国:カレー大作戦で送還した勇者の数 37人
保護した次元迷子者の数 71人
今日1日で結構仕事したな、と佐夜は思った。料理しかしてないけど。
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~SSS(盗み食い集団)~
佐夜達が料理をし、教師や先輩達が見回りがてら会場外の異界人の捜索を行っている頃、会場の裏でコソコソしてる集団がいた。
健太「(コソコソ)、後は密かに湯煎で温めた(清良から貰った)レトルトご飯の上に佐夜のカレーをよそえば……」
男子A「おおぅ……これが噂に聞く佐夜カレー……」
男子B「一度食ってみたかったんだよなぁ……」
マック「いつもはリオが邪魔をして食わせてもらえないからな」
男子達の脳裏にリオの「キシャーッ」と威嚇するリオの姿が。
男子C「……だがようやく念願の佐夜カレーが食えるっ」
男子A「レトルトライスを譲ってくれた清良に感謝しないとな」
マック「……当の本人は女物を持って追いかけてきた椿姫達の所為で逃走したけど大丈夫かアレ?」
健太「別に命には関わらないから大丈夫だろ。それより早く食わないと冷めるぜ」
男子B「お、おお、そうだった早く食って見回りに戻らないと誰かに見つかてしまう」
健太「あ、おい! そのセリフは────」
うっかりフラグを立ててしまったその直後、
ルルセナ「コラー! お前達何をサボっている!?」
男子ABC「「「うわぁっ!?」」」
当然の如く女騎士先輩のクッコローセに見つかった(ファミリーネームで呼ぶなぁ! byルルセナ)。
健太「ほら見つかった」
マック「で、どうするコレ?」
見つかった一同の手にはまだ口の付けていないカレー皿。
ルルセナ「貴様等、全員反せ───」
健太「あ、よかったら先輩も食べますかカレー。まだ後1食分残ってますよ?」
ルルセナ「な!? 何を言っている、今は任務中だぞ。食事なんかしている暇は───」
キュルルルルルr─────
ルルセナ「あ、あ……あ………(赤面)」
男子ABC「「「~~~~~~っ(必死で笑いを堪えている)」」」
凛として後輩を叱ろうとした女騎士ルルセナだったが、お腹の方は正直らしい。恐らく佐夜のカレーに反応したのだろう。
マック「ルルさん。『腹が減っては戦は出来ぬ』と物質界ではそういうことわざがあるみたいだぞ」
男子A「それ、ことわざだったか?」
有名なセリフではあるがことわざなのかどうかは知らない。
ルルセナ「こ、こほん。確かに腹が減っては満足に戦えないのは確かだが今は任務中だ。それに私は今、断食中で───」
ぷ~ん………(香ばしいカレーの匂い)
ルルセナ「ああぁ~~(カレーの匂いにやられています)」
健太「ほらほら、そんな調子で世界破壊者と出会ったら1KILLされまっせ。ここはひとつちゃんと腹ごしらえをして勤務に当たってくだせぇ」
マック「……何だその口調?」
健太の怪しい越後屋みたいな態度にマックはジト目になるがルルセナはそれどころじゃない。どんどんカレーの誘惑に誘われる。
健太「ほらほら、今ならこの周りに誰もいませんし先輩が黙っていればバレませんよー?」
ルルセナ「だ、だが私はぁ~~」
まるで健太が悪党の様だ。
リオ「はい、あ~ん」
ルルセナ「はもっ!?」
男子ABC・健太「「「「リオ!?」」」」
マック「い、いつの間に……」
するといきなりひょっこり出て来たリオが混乱するルルセナの口にカレーの乗ったスプーンを突っ込む。
男子A「───って、あー!? 俺達のカレーが!?」
男子B「皿に乗ってたカレーが食われてる!?」
男子C「一体誰が!?」
健太「いや、犯人はひとりしかいないだろ」
マック「ああ……」
嘆く男子生徒達に健太達はやけに落ち着いている。そう犯人は───
リオ「んむ?」
いつの間にか健太達の皿を掻っ攫って食っているリオだった。
ルルセナ「はぐ、はむ、はも………っ」
健太「ってこっちもいつの間にか見境が無くなってるし!?」
そして一口食べてしまった所為で余計カレーへの食欲が抑えきれなくなったルルセナもがっつく様にスプーンが進む。
マック「一度食べ始めたら止まらんよなカレーって……」
リオ「だよねぇ~」
男子ABC「「「だからって俺達のを食うなよ!?」」」
リオ「えへへ、美味しそうだったからー」
男子AB「「そんな笑顔で言われても誤魔化されんぞ!」」
男子C「そっかー、ならしょうがないよな~(デレデレ)」
男子A「何か陥落してる!?」
男子B「お前ってそっちの趣味だったのか……」
男子C「べ、別にいいだろ。可愛いは正義だ!」
男子AB「「えぇ……」」
男の娘であるリオが好みだったらしい男子Cに男子A・Bはドン引き。
リオ「ほらみんな、サボってないで仕事しなきゃメッ、だよ!」
健太「俺達のカレー食ったお前が言うな(ズビシッ)」
マック「同意(ズビシッ)」
リオ「えへへー」
まるで説得力が無いリオに2人は軽いチョップを入れるがリオは笑顔だ。全く反省の色を見せないガキに2人は溜息しか出ない。
リオ「みんなのご飯を横取りしたお詫びに、はいコレ!」
マック「? 何だこれ、パンか?」
健太「……おい、この衣が周りに付いたパンってまさか!?」
どこかで見た事があるフォルムに健太はその揚げたてのパンを割る。そこには───
男子ABC・健太・マック「「「「「カレーパンだ!」」」」」
佐夜が皆に差し入れと密かに愛沙達と作っていたカレーパンがそこにあった。
ルルセナ「はぐ、はぐ、はむ───んぐっ!?」
そしてその横でカレーをがっついた所為で喉に詰まらせたルルセナが密かに死にかけた。
次回は仕事の関係上お休みになります。
なので次回は4/13~14日になります。
ではまた。




