↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/241

第8話 ~アンヴェの中途半端な食革命からの被害~

今回は少し短めです。


あ、後、食事中の方はご注意ください。


 揚鶏健太(あげどりけんた)は飢えていた。


 いや、厳密に言うと物質界のメシに飢えていた。


 というのも、殆どの幻想界における食事情が何百年か前の物質界の調理法なので、その調理法が『焼く』『煮る』で、調味料も『塩』がメイン。『出汁(だし)』なんて存在しない。


 故にここアンヴェでも例に漏れる事無く飲食店のメシはクソ不味い。単に健太達の舌が肥えているだけ、というのもあるが流石にポトフ(塩味のみ)とパン(超固いやつ)と干し肉、おまけの果物(切っていない)だけでは味気無い。

 これが1日2日とかならば我慢できるがアンヴェに来てもう4日、流石にもう固いパンは嫌だ、と健太は心の中で愚痴る。

 おまけに健太の空間収納(小)と次元収納(小)の中にある食料のその殆どが栄養ドリンクやポーション、そして長期保存可の水とカロ〇ーメイト携帯食が豊富に入っている。調理済みの料理や、食材や調味料などは一切持ち合わせていないので健太はその事で凄く後悔している。


 なので、

「ごめんマック。また醤油貸してくれ」

「またか。というか何で本当に携帯食しか持ってこなかったんだお前は?」

 同じ物を食していたマックが眉を顰めながら渋々健太に醤油を貸す。勿論これはマックが持ち込んだものだ。それを健太はポトフに入れ、味変させて食う。

 マックの言う通り本当は皆、物質界限定(イニシエはどちらかというと物質界より)の食材や調味料を持ち込んでいるのだが、健太は逆に携帯食しか持ってこなかったのだ。

 これは単純に健太がマック&ロッテの元いた世界で一緒に旅をしていた時、仲間内で実力的に一番弱い健太は料理番をする事になっていたのだが、その時は戦闘に継ぐ戦闘の連続が続き、とても料理をする暇が無かったのだ(一応最低限の料理は出来る)。その時は携帯食で補っていたし。

 なので今回も同じ感じかなー、っと過去の経験から健太は出来るだけ無駄な物は入れず、本当に携帯食や水を大量に仕入れていたのだ。まるで災害用の非常食並み。


「ったく、ネクスト現場に行く時はちゃんと持ってこいよ」

「はいは……───っ!?」

 マックの指摘に御座なりな返事をしようとした健太。しかしその時、急に強烈な悪寒を感じその強烈な気配の方向を向く。


「N、どうした? まさかスキルに何か引っ掛かったのか?」

「………っ(凄い冷汗)」

 マックの掛け声にも答える事が出来ない位、健太の顔色が悪い。


 だが、その強烈な気配は急に方向を変え、別の方角へと向かって行ったので健太の緊張も解放される。

「はぁぁぁぁぁぁ。久しぶりに心臓を鷲掴みされた気分だ」

「って事はこの近くにデンジャーな奴がいたって事か?」

「ああ、っていっても距離的には少し離れてたけど、それでもここまで『威圧』の気配を感じたくらいだったから相手はかなりヤバい使い手だ」

「Don’t Cry(どんくらい)?」

「いやニュアンスおかしいだろ。」

 『Don’t Cry』だと『泣くな』って意味だ。文脈的に意味不明。


「ん、んん゛っ。……それで、デンジャーな奴はどんな感じだ?」

「……例えるなら前、佐夜の紹介で会った四月朔日とかゼクター先生の持つ強い闇の気配に近いな」

「強い闇の気配………。まさか世界破壊者(コードブレイカー)か?」

「いやいや、まさか。……でも少なくとも闇落ち(ロスト)してる可能性はあるんじゃねーかな? 現に相手はこっちを向いてた筈なのにゼクター先生がこっちにいるのを感知して逃げたかの様に思う」

「アー、こっちは本物の世界破壊者だからなー」

 まさかまさかの正解を叩き出した健太に拍手。


「でも一応念の為ティーナちゃんと艦(アルゴノート)に連絡しておくか」

「じゃあ俺はゼクター教諭とルルセナ先輩にLi●eしとく」

 (イニシエ滞在時より)質素な食事を終えた2人は上司に連絡を入れた。まぁ、既に意味無いけども。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あはははは~、こっちこっち~(笑)」

「ちょ、ちょっと……待っ……て………」

「ぜぇ、はぁ………アニカちゃん早……杉………」

「文字通りの化け物(アンデッド)やー………」

「………(屍)」

 その頃、亜空間内で待機している局地巡洋艦アルゴノート内ではアニカとOP達による追いかけっこをしていた。というのもこれは遊びではなくアニカの定期精密検査の為に皆で捕まえようとしているのだが、精神が幼いアニカがじっとしている訳も無く全然捕まらない。なので今現在ブリッジで作業をしているのはいみずを含む3~4人だけだ。残りは皆でアニカ捕獲作戦中なのだが、ここにいるのはその殆どが非戦闘員なのでアニカ相手では体力が持たない。

 ちなみにアルゴノートの中は製作者の遊び心が詰まっている為、通路が結構複雑に出来ている所が他のクラスの艦より多いので鬼ごっこをやると結構大変。

 故に何人かは疲れ果て、通路でへたり込んでいる。まるで文字通り屍の様に。


「およ?」

「はぁ、はぁ………つ、捕まえた……」

 すると今まで逃げ回っていたアニカが急にとある扉の前で立ち止まり、何とか後ろを着けていたわかなに捕まった。


「はぁ、はぁ……。………? アニカちゃんどうしたの?」

「んー、なんか、このへやの中にだれかいる~?」

「え? この部屋って確か『死者蘇生(リザレクション)部屋(ルーム)』じゃない。って事は誰かが現地で死んだって事?」

 わかなに少し緊張が走る。

 何故ならこれが初死にだからだ。といってもここに戻って来た時点で復活している訳なのだからグロいのは無いと思うが誰が死んだのかわかなには想像がつかない。


「わかなお姉ちゃん、なか入る?」

「そ、そうね。誰が戻ってきたのか確認しないと……」

 佐夜の次に懐かれているわかながアニカの手を取り一緒に『死者蘇生(リザレクション)部屋(ルーム)』へと入る。


 ………で、そこにいた月(るな)(蘇生済みだが気絶中)はともかく、ベレッカ&重貴とアルゴノートクルー一同でちょっとした一悶着あったが、ゼロの物理的仲裁にて事が収まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「え? ルナルナが殺られた!?」

「そうみたい。リオの面倒を私達が見ている間に世界破壊者(?)と戦っていたらしわ」

「メンドウって……」

 ティーナにゆるディスされたリオが項垂れる。


「それよりもさ、ちょっと気になった事があるんだけどいいかな?」

「「?」」

 世界破壊者がそれよりも扱いされた事はさておき、佐夜がやや深刻な面持ちで2人を注目させる。


「ここの世界の食事、色々と危なくない?」

「………あー」

「……そう言われてみればそうですね」

 佐夜の指摘にリオとティーナは思い当たる節があるのか言葉を濁した。


 というのも。ここの世界は言わずもがな【幻想界】。調理法が超昔の欧州的な感じなので味気無いのは先ほども言った。

 でも佐夜が懸念しているのはそこではなく別の視点。


「勇者や次元迷子者とかが中途半端(・・・・)に地球料理を教えた所為で各地で食中毒患者が多発している件」

「「あー」」

 何処から出したのか既に書かれてあったフリップを出しながら言う佐夜にこういう「いつの間に書いたんだ?」というツッコミは定番すぎるので2人もスルー。


 あえてツッコまない2人はさておいて話を戻そう。


 ここアンヴェでは言わずもがな異界からの転移・召喚者が多く、いきなり転移された者は当然、生活基盤や戦って稼ぐ戦闘力も無いので(勇者は優遇されている)生活費を稼ぐには元の世界で得た知識だけが頼りになる。

 正直こういう『知識チート』は異界法違反に当たるのだが、当然そんな法律聞いた事が無い人にそんな事を言ってもしょうがない上、いちいち全ての世界の住人に説明する訳にもいかない。

 それに何もしなければただただ飢え死にするだけなので『知識チート』はするなとは言えないし言わない。


 ただやるからにはキチンと伝授して欲しいのだ。その所為で色々と中途半端な事になり今、こうして現地の人々に迷惑を掛けまくっている。

 具体的には食事に関する事で、主だった原因となる料理・食材・調味料は5つ(他にも色々と問題はあるが程度が低いので今回はスルー)。


 まず1つめは定番の『マヨネーズ』。

 っといってもこれは前に講習で習った食材の組み合わせでの依存中毒ではなく、マヨネーズに使っている『卵』に問題があり、サルモネラ菌などの細菌を除去せずに加工した事で普通に食中毒が発生。マヨを技術提供した者も地球とこの世界での卵の扱いの違いが分かっていない所為でこうなった。

 おまけに腹を下す事が分かっていながらマヨの誘惑に勝てずマヨ依存中毒も発症し、胃腸を壊しまくった結果死に至るケースもあるみたいだ。怖い。



 2つ目が『パン』。

 幻想界のパンといえばフランスパンより凄く固いパンが有名。黒いパンもある。

 幻想界では天然酵母やイースト菌という概念が無かった為、柔らかいパンが無かっただけなのだが、その知識を持ち込んだ転移者(もしくは勇者)がそれを使い、柔らかいパンがこの世界でも普及した。

 で、ここでの問題点が『賞味期限』。

 柔らかいパンに比べ賞味期限が長いとされている固いパンは材料と保存次第で1~2ヵ月は持つが、酵母やイースト菌を含む柔らかいパンはどんなに密封しても5日も持たない(常温での話)。

 なのでここの固いパンと同じ様に5日以上過ぎて腐ったパンを食べてしまい腹を下す者も少なくない上、食パンなどに生えているカビを取って食べる者も多い。

 ※:カビの生えたパンはカビの部分を取ってもカビているので食べるのは危険なので絶対止めましょう。



 3つ目は『出汁(だし)≠コンソメ』。

 言わずもがな出汁とコンソメは似て非なる物でコンソメは野菜と肉を煮込んで作る、そのまま飲んでも上手いスープ。

 それに比べて出汁とはカツオや煮干しなどの魚介類か『昆布』、そして乾燥させた椎茸(しいたけ)などの『キノコ系』を煮詰めて作る調味料的なアレ。コンソメと違ってスープでは無いので単体で大量には飲めない。

 そしてここでの問題がこの『キノコ系』に当たる。

 コンソメや魚介系、昆布などの出汁ならば何の問題も無いのだが、キノコだけは形や色がそっくりな『毒キノコ』が豊富にあるので、何も知らない素人が「煮込めば毒、消えるだろ」と勘違いし、それを用いた料理を食して死に至るケースが少なくない。

 当然、味や臭いの濃い魚介系はともかく、昆布・キノコの説明や出汁の取り方もここに転移・召喚してきた者が教えた物だ(コンソメはポトフなどでも使われるので元からあった)。


 4つ目に問題視されたのが『カレー』。

 幻想界においてカレーはまさに食の革命だろう。現にメタな文章になるが今やどの異世界小説にもカレーが伝承され普及されつつある。

 正直これだけならば別に良い。

 が、忘れてはいけないのがここは『日本ではない』という事と、カレーに使うスパイスが必ずしも揃うとは限らないからだ。

 本来、日本的なカレーに使うスパイスは大体『香り・色・辛み』の3種類から構成されているが、それらのどれが欠けても日本人が好むカレーには程遠くなる。詳細はググってくれ。

 そしてここでの問題が『スパイス不足』と『水』だ。

 昔からスパイス=香辛料は『毒消し』と言われていて、それは幻想界でも変わらない。その為、少々(・・)「水が汚くてもスパイスの効果で毒は消えるだろ」というアホな考えにより、水からの食中毒患者が出る。

 しかもスパイス不足によりカレー自体味や臭いが薄く、更にとろみが無くてシャバシャバカレーは愚か、スープカレーをも通り越してただ単にカレー風スープ(味無し)になっている為、日本人的には食指が湧かない。


 そして最後の5つ目が『熟成○○』だ。

 これには『肉』と『魚』が入るのだが物質界では近年、熟成肉や熟成マグロといった熟成物が流行っている。

 なのでそれをパクろうとした馬鹿が素人感覚で教えた結果、当然の如く食中毒患者が続出した。それもこれまでとは違いO-157などの大腸菌的食中毒になる可能性が非常に高く、キノコ出汁より多くの死者が出ている。

 にも関わらずこの世界では今でも熟成○○に拘っている。その理由は単純に美味いからだ。

 しかしそれは単に『腐りかけている』だけであって熟成とは程遠い。

 物質界での熟成肉(マグロでも可)とは徹底された熟成環境によって出来るものであって、この世界では単純に放置のみの対応しかしていない。それでは普通に腐るだけであって大腸菌的な食中毒になっても仕方ないのだ。

 ※:素人が簡単に手を出してはいけない技術です。


 この様に中途半端に持ち込まれた調味料と調理によって今この現在、この世界では集団食中毒が各国で発生している。これは正直由々しき事態なのだが、皮肉な事にこれが原因で各国同士の戦争が休戦状態になっているそうだ(軍人も食中毒で動けなくなっている者が多発しているので)。


「……確かにこれは見過ごせないね」

「……ええ、こうなるのなら初めから持ち込まないでと言いたいのですが、既に教えてしまった技術(もの)は仕方ない上に記憶を消すには膨大な手間がかかるので凄く大変です」

 確かに今、この国の軍が機能不全に陥っているお陰で割と自由に動けたりするが、よくよく考えればこれは非常に危険な事だ。下手をすれば食中毒パンデミックで世界が滅びる(?)。


「だからね。次元迷子者の保護とか勇者の捕縛も大事だけど現地の人達のケアも大事だと思うんだ。だからティーナちゃん、中途半端に教えられた料理・調味料を現地(ここ)の人達に教えていいかな!?」

 と佐夜は真剣な面持ちで訪ねる。


 基本、協会や機関はこういう物理的侵攻や知識チートでの無双を取り締まる立場なので自ら違反するのはNGだ。だがこうなってしまっているのを放置も出来ない。なので佐夜はティーナを通して許可を取ろうとした。

 多分最初ダメと言われるだろうと思うのだがここは佐夜も折れる訳にはいかない。いつになく真剣な表情でティーナを見つめる。負けちゃダメだ、と。


「ええ、いいですよ。佐夜さんならその件をお任せしても大丈夫だと思います」

「いいんかい!」

 だがティーナにあっさりと許可されたので思わずツッコんだ佐夜だった。


「ZZZzzz………」

 ちなみに先ほどからやけに静かだと思っていたリオはいつの間にか夢の中。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ~SSS(かなり短いショート)~


アニカ「死体食べていい?」

わかな「ダメだよ!?」

いずみ「最後に凄いパワーワード来たわね……」

アニカ「じゃあバラバラになって本体が分からない物は?」

わかな「だからそんなもの食べちゃダメぇ!」

いずみ「そもそも何で死体を食べたがっているのかなこの子……」

 死体安置所の方を指差していきなりとんでもない事を言い出すアニカにわかなが止めた。アンデッドが死体を喰うとか意味分かんない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ~SSS(もう一本)~


陽菜々「きゅー! 待てー!」

アニカ「きゃははは、待たなーい!」

 陽菜々が再び精密検査から逃げるアニカを追いかける。


陽菜々「とうっ! 捕まえた!」

アニカ「捕まったー!」

 と言いつつ楽しそうなアニカ。


陽菜々「もう逃げないでよ。転移(テレポート)!」

 と、アニカを掴んでCT・MRI室へ転移する陽菜々。


 しかし、

アニカ「あばばばばばばばばb!?」

陽菜々「きゃあああ、アニカちゃーん!?」

 何故か転移した先がこの艦の燃料でもある塩の保管庫で、転移した際にアニカが転んで塩を被ってしまい、思わず浄化しかけた。流石アンデッド。塩に弱い。




アルゴノートで保護されたベレッカと重貴は後日再登場します。いつになるかは知らないけど。

ではまた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。