第6話 ~スキルテイカー~
今回は月のバトル編です。
バトル物といってもこの小説は結構バトルパートを省略してるので全然臨場感がないとは思いますけども……。
佐夜達は最後の方にだけ少し出ます。
太陰光 月は退屈していた。
月は元々何の変哲も無い物質界カテゴリーA世界の出身で、先日講習で習った次元の穴の出現で生じる魂の変異によって異能が開花、その異能が『炎系』という感情などで威力が変わるコントロールの難しいスキルなだけに本人はおろかその家族でさえも月の扱いに難航していた。
現に異能が開花し、家族との距離が次第に離れてしまうのを感じた月は次第に不良化してしまうのだがそれは別のお話しにて。
で、月の元いた世界の穴を塞ぎに来た協会メンバーが炎のコントロールをする月と遭遇しその後、月の家族の頼みもあって月は協会入りしたのだ。
その際、月は協会入りするにあたって条件を出した。
「暴れられるのならなんだっていい」と。
つまり透やわかな達の様なOP業務や雑務は一切やらず、訓練や現地での戦闘をメインに行う事を承諾させる事でストレス軽減や炎のコントロールを高めるのだ。
しかし現実はそう甘くはない。
学園に入学し、講習(授業)の座学は合間合間に時間がある為、自主練でのストレス解消&炎のコントロールが出来たし、体育や実技、模擬戦の時には思いっきり男子相手に全力でぶつかって己の実力を確かめていた。
だが一通りの講習を終え、現地での研修先に向かうと月を待っていたのは次元迷子者の保護。まぁ、一応他人の命に関わるから文句は言わないけどここ最近はずっとストレスを感じていた。退屈だと。
故に月はこうやって時間が空いた時、周りに誰もいなく、尚且つ燃える様な物も周囲に無い事を確認し、炎のコントロール───いや、今回は新技の開発を行っていて、それに大失敗して暴発した超火炎砲が明後日の方角にぶっ飛んで行き、
「「「「ぎゃああああああああああああ!?」」」」
4人の勇者達を巻き込んだ。一部悲鳴の変更有り。
そして「やべぇ、もしかして一般人巻き込んだか?」と思いつつもどうやったら新技をコントロール出来るかを考えながら悲鳴が聞こえた方へ向かい、そこで明らかな日本人の少年と地面に倒れている軍服を着た少女がそこにいた。
ちなみに先日『次元迷子の保護を最優先』という辞令が発動された時、「勇者にはくれぐれも注意する様に!」とティーナが言っていた。
これは単純に「元の世界に帰りたい!」という冷遇対応の次元迷子者に対し、勇者はこの世界ではVIP待遇される為、その殆どが「帰りたくない!」と言う者が多い為、強制送還の際戦闘になる事が多いらしい。
つまり、ここで戦闘になれば合法的に戦う事が出来る。
月は同じ戦闘狂(?)である椿姫から習った『名乗り』を上げながらニヤリと嗤った。まるで獲物を見つけたかのように。
つかまるで月が悪者の様だ……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「だらだらするのもアレなんでな。ってな事で、行くぜぇ!」
「っ」
ドンッ、と勢いよく炎の加速を利用した瞬動で月は一瞬で重力魔法が得意な勇者【多少 重貴】に肉迫し、重貴も咄嗟のクロスガードで防御するが月の殴る際に拳に纏った炎の威力により後方へずり下がった。
「業火双透掌!」
「ぐぅっ!?」
そして続けさまにダッシュで懐に入って炎の纏った双掌を重貴の腹に叩きこむがこれもガードされる。だが炎を纏っている為、若干の火傷を負わす。
「──なろぉっ!」
「っ!? ぎっ!?」
連続で攻撃を受けて後方へずり下がった重貴に追い打ちを掛けようとする月だったが、月の蹴りが重貴に当たる前に重貴は前方に瞬発重力波を放ち月の蹴りが当たるのを一瞬遅らせ、その一瞬の隙に重貴は蹴りを再度ステップで避け、重貴がいた場所を月が空振りで通過するのと同時にお返しの重力パンチを見舞った。
が、月も避けられた事を理解し、カウンターを左腕でガードしたが重貴の重力パンチの威力で横に吹っ飛んだ。
「重力振動!」
「っ、~~~~っ!」
月が横に吹っ飛ばされ、右手を地面に着いて体勢を整えようとする前に重貴は月の体勢を更に崩す為、上からベレッカに放ったのと同じ重力振動を月に当て、月は歯を噛み締めて耐える。
「はあああああぁぁぁぁ────」
「~~~~っ、『気合い』」
「何っ!?」
重力に縛られて動けない月に追撃しようと眼前まで迫った重貴だったがその直前で月は気合いで重力振動を弾く。そんな気合いで自慢の技を破られて驚く重貴だったが、時は既に重貴の拳は振り被られ月に迫っている。
通常ならそのまま動けない月に当たるのが当然なのだが、直前で月の拘束が解けた場合は話が別。
つまり、
「ぉ……っらぁ!!」
「ぐふっ!?」
ズガァーン!!
またしてもカウンターにて月の拳が重貴の顔面に突き刺さる。だが急なカウンターだった為、月も重貴の拳を回避する暇が無かった為、頬から当たって両者とも吹っ飛ぶ。
「はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、はぁ………。や、やるな…君……」
「アンタ…もな。久しぶりだよ、こんな手応えのある奴は……っ」
そしてすぐさま両者とも体勢を立て直し、息を整え終えて再び激突する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~R・ハーマンのワンポイントアドヴァイス~
R「縄や手錠、もしくは異能や魔法などで拘束、または攻撃魔法などで身動きが取れなくなった場合、意識を極限集中し、一気に気合いを入れる事で拘束が解けたり、攻撃を弾く事が出来るぞ!! はぁっ!!」
と言いながらムキムキのボディを披露する。
マロン「う~ん……いつ見ても……暑苦しいわ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あ痛たたた……くぅ、ようやく動けるようになった、か」
その頃、すっかり月と重貴に忘れられているベレッカが重力振動による衝撃での麻痺から回復し、身体の感触を取り戻す。
「……それにしてもあの2人は化け物か?」
そして精神的余裕が出来たベレッカは2人がいる方へ望遠鏡を使って覗き、戦闘を観察していた。
「私を襲った方の勇者はともかくあのヤンキーはあの協会の仲間だったな」
観察しながらもベレッカは先ほど名乗った月のセリフを思い返す。
「……何はともあれあの2人が戦っている今が撤退するチャンスだな」
と、他に誰もいない隙にベレッカは2人から距離を取ろうと踵を返す。
「ひぃっ!?」
だがその時、全く別の方向から強烈な『恐怖』スキルが使われ、ベレッカは恐怖で動けなくなり、何とか動く頭でその方角を見た。
そこにいたのは─────
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ふぅ………」
「かは……っ」
そして月VS重貴の戦いも短いながらも終焉を迎え、実践経験と鍛錬時間が長い月が勝ち、重貴が地面に仰向けで倒れている。
「勇者がスキル持ちの一般人に負けるとか……笑える」
そして勇者としてのプライドを折られた重貴は自虐的に笑う。
「……アホか、勇者だって人間だろ。なら勇者より強い奴は腐るほどいる。現にアタシの仲間にも勇者は2人ほどいるがお世辞にも強いとは言えないな」
あくまでも教師相手での話だが。
「世界はかなり広いらしいぞ。勇者=最強という概念? 幻想? は捨てた方が良い。でないと簡単に死ぬらしいし」
実際、リオや他の教師から聞いた話によると、異能持ちの一般人より勇者の方が自分から死にに行く可能性が高いらしい。やはり勇者としての変なプライドが高いからなのかもしれないが。
「で、俺をどうするつもりだ?」
「ん? んー、とりあえずお前には元の世界に戻ってもらう。勿論さっきアタシがふっ飛ばした奴等も含めてな」
「そっか……夢の異世界生活もこれで終わりか……」
「安心しろ。勇者送還する場合はここでの記憶も祝福もすべて消えて元の生活に戻るだけだ」
「そっか……」
それだけ言って重貴は大の字になって目を閉じる。
こうしてアンヴェに来て初の戦闘は協会の勝利に終わり月は重貴を含む5人の勇者を加奈か陽菜々を呼んでティーナの元に連れて行き、元の世界に送還される。
─────予定だった。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ──────」
「「ん?」」
重貴が身体を起こそうとした時、遠くから何かが飛ばされてきた。
ズザザザザザザ───────
「っ!?」
「こいつはさっきの……」
月と重貴の間をベレッカが通過し、地面にバウンドしながら木にぶつかり動かなくなったベレッカ。
「っ、拙い、死にかけてる!?」
そういって月は『空間収納(小)』から上位ポーションを取り出しベレッカの元へ向かった。
「こいつが飛ばされてきたって事は向こうで何が起きたんだ?」
少なくともさっきまでいた勇者4人だけならベレッカは逃げ切れる実力はあった筈。なのに今、ベレッカはボロボロになって死にかけている。
「……っ、かはっ。~~~~~っ」
「おい、無理するな。ゆっくり飲め!」
月がポーションを飲ますがベレッカは焦って咽て多少吐き出してしまう。
「に……逃げ…ろ……」
「え?」
するとベレッカが震えながら言う。
ズオオオオオォォォォォォ─────
「奴…が……奴が……来るっ」
「奴? 奴って誰の事───っ!?」
「っ、この気配、まさか────」
震えるベレッカに誰の事なのかを聞こうとするがその必要は無く、その凄まじい気配によって月と重貴に緊張が走る。
「おや? こんな所にも獲物がいたんですか」
「「っ!?」」
そしてベレッカをふっ飛ばした元凶の少年が呑気な声と共にやって来た。だがそんな呑気な声と裏腹に凄まじい殺気と恐怖スキルによって月とベレッカは委縮してしまう。
「お前は……っ」
「? ああ……多少君もいたんですか。久しぶりですね」
「久しぶりも何もお前、どこ行っていたんだ!?」
「どこってそりゃあ………この世の地獄、ですよ」
ゴオオオオオオオォォォォォォォォォ─────
「~~~っ、なんて殺気だ………」
謎の少年との会話中にも殺気が3人を襲い、気を抜けば意識を持って行かれてしまう恐れがあり、2人は先ほどの戦闘で怪我をしているが謎の少年相手に構えを取る。
「この凄まじい殺気。まさか奴は『世界破壊者』……なのか?」
イニシエにいた時実は一度『四月朔日剛』に会った事がある月はその時感じた威圧感を思い出し、今それに近い物を感じて呟く。
「……その世界破壊者ってのが何なのか知らんけど、奴には近付くなよ。スキルや魔法、ステータスを奪われる危険があるっ」
「スキルや魔法を奪われる? ……じゃあ奴は『スキルテイカー』か!?」
まさかの相手が世界破壊者(?)でおまけに『スキルテイカー』だというチートどころかイカサマな奴が相手だという事に月は「ああ、変な事願わなけりゃ良かったわ……」と密かに後悔していた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~マロンのワンポイントアドヴァイス~
マロン「『スキルテイカー』とは文字通り相手の『技』や『異能』、『魔法』などの技・術に加え、『体力』や『魔力』などのステータスも奪うイカサマ的存在よ」
何故か女教師宜しく眼鏡をして話すマロン。暇なのだろうか?
R「『チート』とは違うのか?」
そしてその身体には100%合わない学生服に身を纏っているハーマンが質問する。
マロン「チートとイカサマは辞典などで調べたら意味は同じだけど、『チート』はあくまでも『常識を超えた力を手に入れる(諸説あり)』事で『イカサマ』は本来そんな実力も無いのに『楽して勝つ(諸説あり)』事を意味するのよ」
R「ふむ、つまりスキルテイカーは自分で自分を鍛えるのではなく、強い相手からスキルや魔法、ステータスを奪って楽している存在なのだな?」
マロン「ええ、だから協会メンバーや機関メンバーにはそれを防止する為の加護もしているからせっかく習得した技を奪われる心配は無いって訳」
R「ほう。だが殺される可能性はあるのだろう?」
マロン「う……だから殺されても大丈夫な様に蘇生システムを行ってるんじゃない」
例え、スキルテイカーにスキルを奪われないとしても殺されない可能性は無いのでその為にこういう加護が付いているのだ。
マロン「ま、まぁ、スキルテイカーなんてそうそう出会わないから問題ないでしょ」
R「そうだな。我も未だに出会った事が無いしな!」
2人は知らない。
今、まさに261期生の1生徒がそれと対峙している事に。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして一方佐夜達はというと、
リオ「ふい~ん|(泣)、書類整理が終わらないよぅ~」
ティーナ「しょうがないでしょ、アンタが変なトラウマ再発するから」
リオ「う~~」
リオが机に向かって今まで休んでいた分の書類を作成し、ティーナがそれを監視していた。
ガチャ。
佐夜「お疲れ2人共、お菓子とお茶持ってきたよー」
リオ「わーい\(^O^)/」
ティーナ「あ、佐夜さん駄目ですよ。終わるまでそれはお預けです。レポートが進まなくなるので」
リオ「そ、そんなぁ~」
見てわかる様な落ち込みっぷリオ。
義信「お、何だ佐夜の手作り菓子か、頂きま──」
リオ「フシャー!(怒)」
バリッ!
義信「ぎゃああああ、目がー!?」
ティーナ「うわ、分かりやすいリアクションですね……」
佐夜「というか何で義信がここにいるんだろうかね?」
ゴロゴロ転がるこの場所は宿の一室であり、義信は別の部屋どころか別の宿なので何故ここにいるのかは目を引っ掻かれて悶絶しているためしばらくは聞けそうにもない。
うむ、今現在、超ヤバい状況に置かれている月と違ってHEIWAだ。
次回は『初死に』です。
ではまた。




