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第2話 ~先輩サポート組~

今回は1名新キャラの紹介と、今まで表に出てこなかった先輩達が少し活躍します。

後、前回と比べて短いです。


 幻想界【アンヴェ】────


 流石に艦(ふね)ごと潜入(ダイブ)する訳にはいかないので地上に降りるメンバーだけ転送され、地上に送られるのは生徒65人と先輩サポート組8人(リオ含む)そして教師資格を持った者達だけだ。

 ちなみに転送先はこの世界にはある筈の無い破壊された体育館の残骸近く。残骸と化したがマップ上では目立つのでここにしたらしい。


「さぁ、皆さん。着きましたよ───ってどうしたんですか皆さん、顔が真っ青ですよ!?」

 戦闘用シスター服に身を包んだティーナが自作した3組の旗を手に皆を誘導しようとしたティーナがギョッとした。


「う……直接転送、気持ち悪い……」

「話には聞いていたけどこれほどとは……うぷ……」

「おろろろろろろろろr………」

「わぁ!? ここで吐くな!?」

「………」

「おい、立ったまま気を失うな!?」

 アンヴェに転送後、突然体調不良を訴える生徒達。吐いたり気絶している者が続出している。

 というのも転送は転移とは若干異なり、移動するのではなく、移動させられる感覚に近い。例えるなら転移は物理移動に近く、転送は魔法や科学を用いてのデータ転送というわけ。故に転移はともかく転送後は転送前との重力や五感が急に変わる事から初心者には体調を崩す者が多い。まぁ、ちょっと酷い乗り物酔いだと思ってくれればいいかと。


「やっぱ最初はこうなるよねぇ……」

「私達も初回はこうなったしね」

「普段乗り物酔いしない俺でさえ気持ち悪くなったからな。気持ちは分かるぜ」

 と、みんなよりは少し転送に慣れた愛沙達が顔を青くして吐く他のみんなを介護する。


「ううぅぅ……気持ち悪いぉ………」

「さやや……つわり?」

「んなわけあるっ───うぷっ!?」

 すると愛沙達と同様、少しは転送に慣れている筈の佐夜も皆と同様に気分を悪くし、リオがアホな事を言ってもまともに返せない。ちなみに何でこんな事になったのかというと、単純に到着する前日、興奮のあまり眠れなかったからだ。そりゃあ寝不足の状態で転送なんかされたら気持ち悪くもなるわな。




「さてお前等……このまま全員の体調が戻るのを待つのもいいが、そんな事……敵さんは待っててはくれなさそうだぞ?」

「「「「「「え?」」」」」」

 するとティーナと共に引率役を任されているゼクターが顎で先を指すとそこには冒険者らしい恰好をした連中が一定の距離からこちらを見ている。


「あれは……多分盗賊か」

「うぷ……。正義、何でそんな事分かるんだ?」

 バシバシと健太の背中を叩く正義に健太も少しだけ気分を持ち直して言う。


「だってよく見ろ。あの見た目の割に武器がおかしい。屈強な男が手にしている武器が女物の弓とか訳分からんだろ。それに迂闊に近付かず気配を殺してこちらを観察しているのはどう考えても冒険者の類じゃない」

「そうか……」

「冒険者を装って近付いてくるのも考えたけどああやって逆に近付いてこない時点で既に善良(カタギ)の者じゃない」

「いや、カタギて」

 お前はヤクザか。


「おい、そこにいる貴様等。こちらに何か用か?」

「「「「「!?」」」」」

 互いの姿が確認され、2~3分位双方互いに静観していると、先にこちらから動きがあった。盗賊らしき者達に声を掛けたのは優李達を保護した先輩の金髪女騎士【ルルセナ・クッコローセ】だ。


 え? 名前に悪意がある? いや気の所為だよ。


 実際過去、教室で自己紹介した際、その名前に気付いた物質界の者達による失笑を誘い、ルルセナがキレて剣を抜くなどの暴走をするのは毎年の定番らしい。ちなみに今年も同じ事があり、暴走した後は必ずルルセナは項垂れて「くっ、殺せ!」と言い、それがまた教室内で笑いが起きる出来事になるのだが……。


 話を戻そう。盗賊らしき者達に自ら声を掛けたルルセナは何も言わない盗賊達(?)を問い詰めようと近付く。

 

 すると、

「ヒャーッハー!」

「っ!?」

 ルルセナが通過した木の上に隠れていた盗賊がルルセナの背後に降り立ち、ルルセナを羽交い絞めにした。


「ルル先輩!?」

「来るな!」

 いきなりピンチになったルルに優李が助太刀に来ようとするが当人に止められる。


「ひっひひヒひ、やったぜ。久しぶりの異世界の(・・・・)人間だァ!」

「うっし。中々隙が無く声を掛けるか迷ったがこれで連中を一網打尽に出来るぜぇ!」

「これでまた大儲けっ。くぅ~っ。これだから異界人狩り(・・・・・)は止められない」

「さぁ、手前等、こいつの命が欲しかったら大人しく───ぐべぇっ!?」

「んなぐらんっ!?」

「へべっへ!?」

「くぁwせd!?」

 盗賊から『異界人狩り』というワードを聞いたルルセナは一瞬にして羽交い絞めをしていた奴の脇腹に強烈な肘打ちを喰い込ませ、引いた腕で正面にいた奴を思いっきり殴り飛ばし、残りの盗賊をいつの間にか抜いた剣で斬り捨てた(峰打ち)。


「ちっ、アンタ中々やるじゃねーか。……だが俺達の仲間はこれだけじゃねーゾ!(フィー!)」

 と、他の雑魚よりは多少腕の立つ盗賊の親分らしき男【ガジ】が仲間を呼ぶための笛を鳴らす。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 ・・・。


「あ?」

「残念だが───」

 しかしいくら鳴らしてもガジの仲間はやって来ない。ちなみにガジが統率する盗賊団の総員は300人を超えるこの世界では割と有名な粗暴で数がやたら多い盗賊団らしいが、そんな事ルルセナには関係ない。


 何故なら、

「貴様等の仲間とやらは既に私の仲間が制圧した」

「な!?」

 剣を鞘に納めながら言うルルセナにガジは後退りし、その視界の端には隠れていた筈の部下達が目の前の女騎士の仲間によって地面に平伏す姿が。


「先ほど貴様の仲間達は『異界人狩り』をやってると言っていたな。それも1回や2回じゃなく多数に渡ってやっているな?」

「うぐ……っ」

 うっかり手下共が口走ったセリフにガジは言い訳出来ない。


「ここで貴様達を成敗するのは簡単だが我々は無意味な殺生はしない主義なのでな。だから捕縛して……魚の餌にしてやる」

「せ、殺生はしない主義って今言ったじゃないか!?」

「あ、間違えた。自らの手で直接殺す事はしない方針、だ」

「それだったら直接殺せよォ!?」

 何で態々(わざわざ)生殺し状態にされ、最終的に変な方法で殺されるのか。それならいっそここで殺してくれと言わんばかりにガジが喚く。


「ふ……だが死ぬとしてもただじゃ死なねぇ。これを見ろ!」

「???」

 最後の抵抗としてガジは懐から何やら液体の入った瓶を取り出す。そしてそれを止められる危険を避ける為、さっさと地面に叩き割り、その中身が気体となって空気中に分散する。その中身は分からないがルルセナは一応その中身が自分に掛からない様に距離を取り、様子を探る。


「このボトルの中身は引魔香(ダークネスボトル)。それも濃度が高い高魔香(カオスボトル)だ! それをこの場所でぶちまけたらどうなるか。言わなくても分かるだろぅ?」

「まさか……っ」

 魔物を引き寄せる瓶。それも濃度が高い物となると誘き寄せられるのは小型の魔物ではなく、

「そうだ、ドラゴンや巨大な魔物がすぐここへやって来るのさ!」

「く……っ」

 殺すまではいかずとも早々に捕縛しなかった事で後輩達を危険に晒してしまう可能性があると直感したルルセナは苦痛の表情を浮かべる。うん、くっころだ。


 ズズズズズズズズズズズ──────


「な、何だこの揺れは!?」

「地震……?」

「いや、これは……」

「地面の下で何かが蠢いている!?」

 そしてそのお香に引き寄せられてきた魔物が地面の下で蠢き、そろそろ体調不良から回復しそうな3組の生徒達の警戒心を高める。


 ボコォォッ!


 キシャアアアアアアアアアアアア──────×50体以上


「い、いやああああああああああああああああああああああああああ!?」

「うがぁ、いきなり至近距離で叫ぶなぁ!?」

 そして地面の下から現れたのは巨大なミミズ。所謂『ワーム』と呼ばれる魔物だ。で、そのミミズもどきにはやや強烈なトラウマを持つ佐夜が近くにいた義信の鼓膜を破きそうな程、高音で叫んだ。


「……何だワームか。驚かすな」

「あ? 何呑気に余裕噛ましてやがる。あれはヘルワーム。肉食のミミズだ!」

「知っている。だがドラゴンやヘビモスなどの大災害級でなければ何の問題も無い」

「は? ヘルワームは立派な───は?」

 てっきりヤバい魔物が来るかもと思って剣を抜いたルルセナだったが、現れたのがただ大きいだけのミミズだったのでルルセナは剣を収めた。その余裕っぷりにカチンときたガジだったが、その直後呆然となる光景を目にした。


「おーわったぁぁあああああああああああ!」

「ほほほほほほう!」

「……これ食えるかな?」

「止めとけ。腹壊すぞ」

「それより佐夜ちゃんの悲鳴が気になるわぁ」

「流石メインヒロインって奴だな」

「あれ、主人公じゃなかったっけ?」

「どっちでもいいわ。可愛ければ正義」

「……同意」

 そこにはヘルワームを何の恐れも無く駆逐していく連中の姿が。

 その正体は3組の生徒達をサポートする為に着いてきた先輩達だ。

 本当ならこの程度のピンチ。自分達(こうはいたち)で切り抜けて貰わないといけないのだが今回は初の任務な上、未だ転送直後の体調不良者が多いのでその状態じゃ満足に戦えないという事で今回は先輩達全員でヘルワームを簡単に(・・・)駆逐していく。まるで大量の雑魚を相手にしているかの様にお喋りしながら。


「あ、あの……1匹だけでも街を滅ぼすと言われたヘルワームがあっさりとやられるなんて……」

 まさかの光景に尻餅を着いて震えるガジ。

「あ、アンタ等は一体何者……なんだ?」

「? ワタシ達か? ワタシ達は───」

 そんなガジの問いにルルセナは少し考え、


「ワタシ達は『神の使い』だ」

 と言った。

 まぁ、協会の元締め(トップ)はマロン=神だし間違ってはいないが、その言い方だと色々と問題が起きそうだ。


「す、すっげぇ……アレだけいた大型魔物をほんの数秒で倒しちまった」

「さ、流石先輩方。侮れないでござる……」

「ふ、そう来なくてはな」←顔が蒼い椿姫

「あ、ああ。何時か手合わせしたいものだ…な(うぷ)」←同じく顔の青い詩織

「こんな時まで虚勢を張らなくてもいいのに……。でも強いね先輩達」

「……アレ? リオは?」

「あ、あそこで逃げようとしている盗賊達を捕まえて縛ってる」

「見た目とは違ってリオも先輩だっけ。ずっと佐夜に引っ付いているから忘れてた」

「完全に佐夜の妹ポジだしね、あの子」

「妹ってか弟だろ? あれ、男の娘ってどういえばいいんだ?」

「……どっちでもいいよそんなこと。おぇ」

 そんな先輩達を褒め称えつつ、何故かリオをディスる(?)3組のメンバー。



 その後、ガジも捕縛し、一行は全員の体調が戻った後、ガジ達をその場に放置し、一先(ひとま)ずそこから近い東の国へと向かった。勿論本当は転送で行きたかったのだが、また体調を崩されても困るので徒歩で行った。



クッコローセとか……。どう見てもネタ名前でしょうに。

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