第26話 ~アルケシスの行方と母親~
明けましておめでとうございます。
今年も細々と投稿し続けますので、少数ながら付き合って頂けている皆さん、宜しくお願いいたします。
「とある近未来と繋がってしまった物質界に出現した大量のロボを全部破壊尽くし、その際偶然『異端レーダー』に反応があってその場所を捜索したら【タック】と遭遇した……ね」
「ふも。ん~んんんんn~~(モゴモゴモゴ)」
「口に物詰め込み過ぎてもう何言ってるのか分からん(-_-)」
「あはは……」
佐夜とリオは街にある民衆食堂にニケとルイを連れて行き、ルイに話を聞きながら事の顛末を聞く。そしてニケは大量の料理を頼んで満喫中。ちなみに他の6人とはここで別れてカラオケに行くそうだ(愛沙の強い提案で)。
「でもさ、そのタックって人を保護したからって別にさややに報告する必要は無いんじゃない?」
「そうだよ。でも一応関係者である佐夜への事後報告と、あと単にニケ姉が佐夜に会いたがっていただけ。ついでに飯を食べに来たっぽい?」
「……寧ろ飯がメインじゃね?」
「……否定できない」
「ふも?」
横でムシャムシャ口いっぱいに物を食べているニケを見てルイが言った。
その後、大食い世界大会に出れば優勝出来そうな位の料理を平らげたニケは【タック】に起きている事をそのまま佐夜に話した。
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記憶が抜け落ちて大事な仲間だった7人目の存在を忘れてしまった【イング】【エミリア】【タック】【マナ】の4人はリオが壊した筈の次元転移装置が復旧した後、その失った7人目とニケを探す為、自分達の世界を飛び出して亜空間へと出た。
のは良かったんだが、最初は全く身動きが取れず、色んな意味でヤバかったらしい。
で、この亜空間内でも魔法が使える事が分かった後、全員一応風系の魔法が使えるので風魔法をそのまま揚力とし、手始めに近くにあった世界から調査いったそうな。
自分達と同じ剣と魔法の『幻想界』を3回、純白の羽が生えている種族の住む『天界』とその逆の『魔界』を1回ずつ、『物質界』が5回とその他の世界をエトエトラ……。
ぶっちゃけ佐夜より多く世界を回っているな。
幸い、協力してくれた各世界の管理人の神達の協力もあって入れる世界の所だけ入って調査し、それ相応の冒険をしてきたらしい。それもこの1年半の間に。
だが先日、次の世界に着いた途端、謎の闇落ち集団に襲われ、4人はそれぞれバラバラに逃げる事になってしまい、それ以降タックは他の3人と完全に逸れてしまったらしい。
そして逃げる最中、緊急事態だったとはいえ無許可で物質界に入り込んでしまった事でその世界の管理人から罰として門を使用して亜空間への外出が出来ず、しばらくの間その世界に留まる事しか出来なかったらしい。その滞在期間中にニケと合流したという訳らしい。
ちなみに謎の闇落ち集団とはヴァンと剛が戦った『世界破壊者』達の事である。
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「で、サヤ。どうする? タックに会ってくか?」
「いや、無理だろ。タックも俺の事忘れてる筈だし。それに万が一思い出してしまう様な事があったら今度はどんな天罰が来るか分からん」
「そか。けど注意しなよ。タックは偶然アタシ達が保護する形になったけど、他の3人は今後下手したら協会が先に発見して保護する事になった場合、見られる可能性高いぞ?」
「だね。ただでさえ佐夜は物質界を中心にアイドルとして人気があるっぽいからねぇ」
「アイドルさやや!」
「アイドル言うな!」
佐夜を弄る3人の視線は佐夜本人ではなく、佐夜の最新アルバム用に撮ったPVポスターだ。
うん、相変わらずどう見ても男には見えません。
「──って、ちょっと待て。物質界中心?」
「「あ……」」
ルイがうっかり口走ってしまった言葉に佐夜が気付き、ルイとリオが慌てて口を手で押さえるが時既に遅し。
「リオ、俺の歌ってこの世界(と物質界のミシバイクロ)でしか流れてないんじゃなかったっけ?」
「あー、それね……」
佐夜がジト目でリオを見ると思いっきり目を逸らされた。どう見ても疚しい事があるな。
リオに詳しい話を聞くと、どうやらこれはリオの仕業ではなく、やむおえない状況でこうなったらしい。
というのも実は最初、任務の為に歌った【ミシバイクロ】と【イニシエ】のみ佐夜のCD&DVD&BLを販売していたのだが、佐夜の歌を別の物質界に持ち込んだ調査員達が佐夜の歌声をうっかり現地人達に聞かれてしまった事で佐夜の歌が色々な世界に拡散していき、初めは2つの世界のみでの販売だったのが、今では調査済み物質界&近未来限定ではあるが佐夜の歌は知れ渡っている。
「……って事はおい。もしかして俺の歌、地元世界にも知られてるのか?」
「た、多分……?」
「………」
佐夜の言葉にリオは言葉を濁して言った。
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とある物質界のとある家にて、
プルルルルルルルrrr─────
「はい、もしもし?」
≪母さん!≫
「? その声は佐夜? 女の子の方の?」
≪いや俺、女の子じゃないし!≫
女の子みたいな容姿をしている奴が何か言ってる。
リオが確認していなかったので佐夜は急いで外界線を使用しての自宅に電話を掛けたのだ。ちなみに外界線は海外線と同じくらいの通話料が掛かります。どうでもいいけど。
「本当久しぶりねぇ。元気にしてた? ちゃんとご飯食べてる?」
≪食べてる食べてる、元気元気≫
佐夜の発言を無視して捲し立てる母親の沙奈に佐夜は御座なりな返事をする。
≪それより母さん。TVとかで俺の情報流れてたりする?≫
「情報? それってアーティスト関係の物かしら?」
≪そ、それだ! まさかもうそっちでも俺のCDとか販売してるの?≫
「してるわよ~♪ 本来、この歳になると歌とかはあまり聞かないのだけど、佐夜の歌はかなり良いわねぇ。何ていうかこう……心に響いてくる感じかしら?」
≪あー……うん。感想ありがと。マジか、本当に売ってやがるし……≫
調査済みの世界にのみ佐夜の曲を物理販売&ネット配信しているらしいのでもしかしたらと佐夜が実家に電話を掛けたら案の定、既に1stアルバムまでの曲は売られていたらしい。
んで、何事かと思った母親の沙奈は佐夜から協会が無許可で外界に歌を販売していた事情を聞く。といってもこれは単純にリオが最初に伝え忘れていて、その後言い辛くて黙っていただけの話なのだが。
と、佐夜は佐夜で事情を話し、決してアイドルに転向した訳ではないという事を伝えた。が、ここで一つ問題が発生していた。
具体的に言うと母親の沙奈がいる世界で、だ。
≪は? そっちの佐夜がマスコミに追われている!?≫
「そうなのよ。幸いあの子自身に被害は無いけれど、しつこいマスコミ関係者達に追われているみたいよ」
≪あの……さ。それってもしかして……≫
「ええ、恐らく貴女とあの子を同一人物とみなしているみたいね」
≪うわぁ……≫
実際佐夜は自分の代替え人に会った事は無いけれど、色んな意味で同情するわ。
「私に似た絶世の美少女の貴女に加え、『美里佐夜』っていう名前は今の所あの子しかいないもの」
≪た、確かに……≫
容姿だけ似ている、もしくは同姓同名だけなら他にいるのかもしれないが、現在【イニシエ】にいる佐夜と、母親の所にいる佐夜はまるで一卵性双子の様にそっくりなので疑われてもおかしくは無いのだ。
と言ってもイニシエの佐夜はロングのポニテだし、母親の所の佐夜はショートな上、男っぽいので2人を見比べればすぐに分かる程度なのだが。とはいえ、歌姫佐夜がそこにいない以上、代わりに母親の所にいる佐夜が追いかけられるのは必然である。
「あ、そうそう。あの子、記憶を失う前───実際は別人なのだけど、貴女と同じ【佐夜】という名前が嫌らしくてね、勝手に改名していたみたいなのよ」
≪はい?≫
勝手に改名した、という謎の事態に佐夜は首を捻った。
母親の沙奈から聞いた話だと、記憶喪失になった(と本人は思い込んでいる)物質界の方の佐夜は記憶を無くす前(実際は元々ない)の自分と今の自分は別人だと言い張り、更にイニシエでの佐夜の歌が物理販売&ネット配信され、マスコミに追われる事で更に【佐夜】という名前が嫌になったそうな。
「それでね。改名した名前が【火汰那】ですって。笑えるわよ~」
≪え、何が?≫
……どうやら佐夜にはまだ分かっていない様子。
つまり、
佐夜=鞘(刀を仕舞う物)
火汰那=刀(文字通り)
≪……日本刀?≫
「笑えるでしょ~?」
≪何でそんな名前にしたんだよ、そっちの俺………≫
「多分、完全に別物にするより【佐夜】=鞘を連想して、ギリギリ元の名前と繋がる様な名前にしたんじゃないかしらね?」
≪あー、納得≫
安直ではあるが納得できるのでこれ以上は追及しない。
※:これからは代替え人である物質界の佐夜は【火汰那】と表記させて頂きます。正直どっちも佐夜故にごっちゃになるので。
その後、佐夜は母親の沙奈と他愛もない話をし、外界線を切った。
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「……どうだった、さやや?」
「ん? ああ、既に手遅れらしい。しかもあっちの俺も巻き込まれてるらしい」
「Oh……」
手遅れどころか悪化していた事にリオは顔を手で覆った。
「さて佐夜への報告も済んだ事だしそろそろ帰ろっかニケ姉?」
「うまうまうま────にゃ?」
「まだ食ってる!?」
タックの報告と佐夜の電話が終わってそろそろ帰ろうかという時にニケはデザートを食していた。
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猫がご主人様にベッタリする様にニケが佐夜から中々離れなかったのでルイが無理矢理引っ張っていって佐夜達と別れた。
「さやや、この後どうする? マオマオ達の所に凸する?」
「いや、愛沙達と別れてから1時間以上は経ってるから今から行っても終わりかけだろ。今日はこのまま買い物して帰るさ」
「じゃあ今日はお詫びとしていっぱい荷物持つよー!」
「いっぱいってお前そんなに持てないだろ」
「軽い物持つよ!」
「速攻で言ってる事真逆!?」
己の筋力がそんなに強くない事を思い出したリオが潔いほど前言を撤回した。
「……って、あや?」
「どした?」
「さやや、ちょっとあれ見て?」
「あれ?」
2人してバカな事をしているとリオが誰か見つけた。
「はぁ、はぁ……」
「く……っ。何でこの世界で追われなきゃいけないの……よ」
そこには同じクラスの【鈴原いずみ】と【光野詩紗】が誰から追われていた。
「ちょっと、待ちなさーい!」
「「え?」」
その2人の後ろから追いかけている人物を見て2人は目を見開いた。
「「舞華!?」」
そこには魔法少女に変身した姿の舞華がいた。
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~お正月SS~
佐夜が外界線にて母親の沙奈との会話中にて───
沙奈「あ、そういえば佐夜、明けましておめでとう」
佐夜≪あ、うん。おめでとう……ってそっちもう1月?≫
沙奈「ええ、丁度今日は1月2日だしね。凪咲ちゃんも火汰那君も友達と出かけているから家にはお父さんしかいないわ」
佐夜≪あーだから母さんコソコソと話してないのかー≫
万が一、家に火汰那とか凪咲がいたらこんな堂々と話せるはずがない。
沙奈「そうよ。そっちは今、何月?」
佐夜≪まだ9月≫
沙奈「そっかー。……佐夜の着物姿見たいわねぇ」
佐夜≪いや着ない、着ないから≫
沙奈「えー?」
佐夜≪えーじゃなくて。男、俺男ですから!≫
沙奈「でも、似合いそうよねぇ?」
佐夜≪う……≫
「確かに否定できない……」と佐夜自身もそう思った。
沙奈「そういえば貴女、喋り方変わってない?」
佐夜≪母さんこそ俺を『貴女』って呼んでね?≫
沙奈「気の所為よ。それより何で喋り方が変わっているの? それに何となく喋る時の雰囲気も変わってる様な……」
佐夜≪鋭いな母さん。流石母親ー≫
沙奈「???」
電話越しなのに佐夜の性格や雰囲気が変わっている事を察知した母親に佐夜は感心した。「やっぱり離れてても家族なんだなぁ」と小さく呟く。
と、いう訳で佐夜は自分の事を詳しく話す。前の時は僕っ子の時だったし、時間もあまり無かった故、話せていなかったからだ。
沙奈「はぁ……。まるで二重人格ねぇ」
佐夜≪正直俺もそう思う。記憶は共有してるっぽいけど≫
ぶっちゃけ他人から佐夜を見れば似てるけど違う双子の様に見られるだろう。火汰那も含めればある意味三つ子になるが。
バタンッ!
佐夜・沙奈「≪!?≫」
すると母親の沙奈がいる自宅の玄関が開き、
凪咲「キャッハー!!」
佐夜≪!?≫
妹である凪咲が謎の奇声を上げながら帰ってきた様子に佐夜はビックリする。「凪咲の奴、こんな性格だったか?」、と。
沙奈「あらあら、どうしたの凪咲ちゃん?」
凪咲「お母さん! 見て、SAYAの2ndアルバム|(DVD)と写真集! 抽選で当たったの!!」
佐夜≪っ!?≫
佐夜は妹の凪咲が自分のファンになっていた事に驚きを隠せない。電話越しだけど。ちなみに芸名はそのままモジってローマ字表記での販売らしい。
沙奈「あらあら、それは良かったわねぇ」
凪咲「2ndアルバム&写真集は数量限定の抽選でしか手に入らないから手に入るか不安だったよ~」
沙奈「ふふ、そうねぇ」
興奮した様子で話す凪咲に、まさかその本人が母親と話している事には気付かないだろう。そして勿論その人物が実の兄だとも思ってはいないだろう。火汰那と佐夜では雰囲気が違う(と沙奈は言っていた)し。
凪咲「早速手に入った事だし今日はそのまま友達の所にこれ持って行ってこれをみんなで見るね! いってきまーす!」
沙奈「はい、行ってらっしゃい。遅くなる時はちゃんと連絡しなさいねぇー」
凪咲「はーい!」
そう言って凪咲は友達の家に行った。
佐夜≪……何か凪咲の奴、アクティブになってね?≫
沙奈「ふふ、最近こっちでは話題になるものが無かったからねぇ。貴女──コホン、SAYAの歌がこっちで流れ始めてからはもう一月もしない間にファンが急上昇していったらしいわよ。確か日本だけでファンが一千万人以上を越えたってテレビで言っていたもの」
佐夜≪マジかよ……。そっちの世界で一千万人以上って事は、他の世界も合わせると………うわ、考えたくねぇ(;-_-)≫
沙奈「ど、どうしたの、急に悩ましい声なんか出して?」
佐夜≪いや、自分の預かり知らぬ所で勝手にファンが増える事に恐怖感がさぁ≫
沙奈「ま、まぁまぁ、悪い事ではないでしょう?」
佐夜≪そうだけどさぁ。アルバムとか出すのは一向に構わないけどそっちでのTV出演なんて出来ないぞ? そもそも忙しい上にアイドルじゃないし≫
沙奈「そうなの? てっきり佐夜がアイドルになる為にここを去ったのだとばかり思っていたわ。マネージャーさんもカッコイイ人だったわねぇ」
佐夜≪いやいや、うちは芸能事務所じゃないし。つかマネージャーってヴァンの事かい!≫
いつの間にか沙奈の頭の中でヴァンが佐夜のマネージャー扱いになっていた。
そんなこんなで佐夜は久しぶりの母親との会話を楽しんだそうな。
最後の辺りにここまであまり出番の無かった『いずみ』と『詩紗』が舞華に追われている所で区切りました。ちょっとお正月SSを入れたかったので。はい。
ではまた。




