第17話 ~反省とお疲れ会 酷かった決勝戦のダイジェスト~
決勝の内容が酷い割にあまり濃い物ではなかったので端折り、一気に反省会に持って行きました。
果たしてその結果は?
「負けたねぇ……」
「ああ……ぐぅの音も出ないとはこの事だなぁ……」
「まさか手も足も出ないとは思わなかったぜ……」
「あれは反則ですわ……」
クラス対抗模擬戦の決勝が終わり、B組-aチームの代表達は教室で反省会をしていた。
本来ならその内容をそのまま載せればよいのだが、決勝での戦いがあまりにも酷かったので已む無く色々とカットし、何があったのかを簡単に説明しよう。
===============================
決勝戦は補欠の2人を含め、最大8人全員での参戦が可能。そして制限時間も60分に拡大し、全員が全滅すれば負けとなり、時間切れ時に生き残っている数が多ければ勝利になる。
決勝に勝ち上がったのは1回戦で負けて敗者復活から這い上がった佐夜達B組。
組織身内で組んでいる為、連携密度が高いリア達A組。
そして魔力、身体能力などが通常の者とは遥かに凌駕している魔族達Z組。
この3チームが決勝で戦うのだが、ほぼ楽勝で勝ち上がってきたA組・Z組とは違い、満身創痍のギリギリで生き残ったB組の8人は前日までの疲れや魔力がちゃんと回復しておらず、どう考えても圧倒的不利な立場にいる。
その結果、当然と言わんばかりに佐夜達B組は負けた。1番最初に。それも5分も経たずに……。
何でそうなってしまったのかというと、まずスペックの違い。
B組チーム内の健太、清良、佐夜は現代の物質界出身なので他の5人よりは当然弱く、逆にA組は鍛錬度の違いからマック達の1.5倍、Z組は全員魔族なので2倍くらいの強さがある。
次に連携度の違い。
1回戦で独断専行するほどあまり連携が取れていない佐夜達に対し、A組のリア達は普段から連携して事に当たっているらしく、簡単に攻撃が通らない。魔族達Z組はそもそも個人での攻撃力も高いので連携の必要性が無くても無問題。
最後に魔法使いの存在。
レベルは低いが一応回復魔法が使えるロッテしか魔法使いがいないので攻撃用の魔法があまり使えないB組では遠距離用の魔法(月の炎はスキル扱い)も、愛沙の様な特殊な魔法防御も出来ないので相手への対処が出来なく、佐夜だけでは不十分なのだ。
で、その悪条件での結果、まず超回避能力スキルを持つ健太がA組の足止めを喰らってあっけなく脱落(若干抵抗したが意味無し)。
椿姫(義輝)と詩織(信長)は基本強者を求めているのでここでも単独行動に出てしまい、それを見て慌てて追いかけた清良がA組とZ組の挟み撃ちに逢い脱落。
そして椿姫と詩織はある意味無謀にも魔族達4人相手に2人がかりで挑み、敗北した。一応身体能力的には戦国出身の2人の方が高いのだが、相手は魔法も使えるので身体能力UP系の魔法や、攻撃・防御魔法なんか使われ始めれば、そりゃ魔法が使えない2人では勝ち目なんて無い。何とか御留流で対抗しようともしていたがこちらは使用回数に限りがあるのですぐにあっさりと押し返されていた。
だがそんな中、ロッテが意外と健闘していた。
ロッテは『回復魔法(小)』と『突き』のやや一点特化した弱点の多いキャラなのだが今回に限っては逆に功を奏し、玉砕する事を前提に突っ込んだ事でA・Z組の者を1人ずつ脱落させる事に成功した。が、そんなのは3回も4回も通用する訳も無く、その後すぐに集中攻撃を喰らい退場させられた。
マックに至っては流石に乱戦は慣れているのか、かなり重たい筈の大銃剣『花鳥風月』を曲芸の如く操り、魔族やリア達の攻撃をいなしながら少しずつ攻撃を加えていく。が、これも長くは続かず、支点となる大銃剣の動きを封じられてからはまともに戦う事が出来ず、最後、結界までふっ飛ばされて脱落。
仲間達が次々と脱落していく中、月はというと、直接戦わないで逃げ回り、敵の数が減ってから改めて戦う事を選んだ。しかしそんな作戦、敵が容認する訳も無く、徐々に追い込まれていき、最後は自爆技を放ってA・Z組を3人ずつ巻き添えにした(内1人はジュエル破壊にて退場)。
===============================
「結局まともに相手できたのってマックくらいじゃないか……」
「Ah-、まともに相手出来てた訳じゃなくて単に回避してただけなんだが……」
「そうなのか? あの時はてっきり余裕があったのかと」
「しつこく人の足元を狙ってくる亜人達相手、まともに相手出来るかっ」
「だな。人の急所や死角をピンポイントで狙ってくるんだもんな。A組もZ組も」
「全くですわ。これが模擬戦だという事を忘れているのではなくって?」
お菓子や飲み物を飲食しながら決勝で起きた事をダイジェストで語った一同。
するとここに来てようやく一同はさり気なく会話に参加している奴に目を向ける。言わずもがなクラス委員長の宝堂院花蓮だ。
「……つかよ。何でインチョまでここにいるんだ?」
「今更ですの!?」
「あ、自然にいるから気付かなかった……」
「まるで今気付いたかの様に言わないで下さいまし!?」
「もしかしてボッチなのか?」
「違いますわよ!?」
「そうだぞ。単にハブられてるだけだ」
「それ、ボッチと同じ意味じゃありませんの!? と言いますか別にハブられてなんておりませんわ!」
aチームの面々に言われ放題の花蓮は以外にも撃たれ弱く、軽く涙目だ。
「それより何でさややの事は回想しないの?」
「っ、……リオ、その事は思い出させるなっ|(寒気)」
「……そもそも、原因は佐夜なんだけどな」
実はあえて佐夜が脱落したのかを言っていない。のに何故かリオが混ぜっ返し、健太がジト目で見てくる。
===============================
それは佐夜がB組aチーム、最後の一人になって逃げていた時の事だ。
佐夜は月と同様に逃げながら敵の数を減らす作戦に出て、錬成術を用いながら敵の攻撃を掻い潜る。その中にはリアやチャアといった見知った者もいて、少しずつながらジュエルの色が落ちていく。だがそれでも佐夜は逆転の目を探っていた。
しかしそれは敵(A組3人、Z組2人)に囲まれ、逃げ場は無くなってしまった。というのも、このA・Z組の面々は佐夜達の2回戦を見ていて、佐夜が戦況を一変する可能性がある事を知っている。
2回戦はたまたま逆転勝ちしただけで今回もそうなるとは限らないが、2回戦で見せたあの立ち振る舞い、そしてこの決勝での逃げ回りからして何か企んでいるのだろうと、他の2チームは最後に残った佐夜を先に潰す事を選んだのだ。これには何故か観客席からかなりのブーイングが鳴るが、これも試合なので致し方ない。
「くっ、ここまでか………」
錬成術で何とか攻撃の直撃を躱すが、もうジュエルの色が赤黒色になっており、今度クリーンヒットを喰らうか、十何回か掠っただけでジュエルは割れるだろう。
最早逆転どころか生き残る事すらほぼ不可能となった佐夜は勝つ事を諦め全身の力を抜き、迫りくる攻撃の衝撃に備えた。
その時だった、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「「「「「っ!?」」」」」
ドォォォォォォォ─────ンッ!!
「え……?」
諦めていた佐夜の周りを取り囲っていた5人を何者かが上空で技を放ち、5人をふっ飛ばした。いや、攻撃を喰らう前にバックステップで躱している?
「っと」
「え? ええええぇぇぇぇ………?」
そして佐夜の側で着地した者を見て佐夜は良く分からない声を上げた。
だって佐夜を助けた(?)のは敵であるZ組の魔族──【リョグ】だからだ。
「えっと……何で俺を助けたんだ?」
「それは……見ていられなかったからだ」
「は?」
佐夜が声を掛けると魔族のリョグは苦虫を噛みながら言った。
「てめぇ……リョグ! 裏切る気か!?」
「何でZ組がB組を?」
その周りではリョグの攻撃をバックステップで回避したZ組の2人が憤り、A組の3人は頭を捻っていた。
「皆の者、よく聞け!」
「「「「「「!?」」」」」」
すると突然佐夜を助けたリョグは闘技場──いや、会場にいる皆に聞こえる様な大声で全員の動きを止めた。
「俺の名は【リョグ】。見ての通り魔族だ」
「んなの見りゃ分かるっつの」と言わんばかりに皆は眉を顰める。
「……俺は。俺には生きる気力も目標も無かった。それはここ『イニシエ』に連れてこられてからも変わらなかった」
「だから何だ?」と今度は溜息を付いて呆れる皆の衆。
「生きる為の目標が無かった俺だがある日、街を歩いていた時、聞こえたのだ。あの歌を……。そう、それはここにいる美里佐夜の歌だ!」
「!?」
まさか佐夜の歌を聞いてファンになったから戦わずに助けたのか?
と、まさかの展開に観客達は「まさかまたここからの逆転が?」と密かに期待した。
だがしかし忘れてはいけない。佐夜達は『負けた』のだ。
ではこの後、佐夜の身に何があったのかというと、
「佐夜の歌に胸を打ち抜かれた俺はそれから佐夜の1st、2ndアルバムも聴き、生きる気力や目標が芽生えたのだ!」
リョグの目標とやらに皆は「キタか!?」と思い、息を飲んだ。
……ところで何故、こいつは偉そうな口調なのだろうか?
「こ、こほん。その目標は流石に言えないが、俺の人生を変えた佐夜に一言、感謝の言葉を送りたい!」
「は……はぁ………」
「ええい、まどろっこしいわ!」と、会場の観客達は思った。
「すぅ────」
そしてリョグは大きく息を吸い、
「好きだぁぁぁぁぁぁ──────!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・。
「「「「「か、感謝じゃねぇ!?」」」」」
「「「「「まさかの告白!?」」」」」
「ありがとう」などの感謝の言葉ではなく、まさかの告白に闘技場内にいる選手はおろか、観客達全員がそうツッコんだ。
そして告白された側の佐夜は劇画状態(白目)でフリーズしている|(笑)。
そして更には、告白した事で興奮気味になったリョグは佐夜に対して更なるアプローチを行う。
「好きだぁぁぁぁぁぁ──────!!!」
がばっ!
「「「!?」」」
「ぐえぇぇぇっ!!?(ボキボキボキ)」
まさかの告白をもう一度言うのと同時にリョグは佐夜をがばっと抱きしめた。リョグ的にはハグ的なもので好意的な相手に対してするアメリカンな挨拶みたいなものなのだが、実際は正面から抱きしめている為、これでは唯の『サバ折り』になり、そのダメージで佐夜のジュエルは割れ、更には物理(背中の痛み)&精神的(男に告白された事)にオーバーキルを負って気絶した。
「ん? 何で気を失っているんだ? まさか俺の告白に感動して!?」
「「「「「んな訳あるかぁ!」」」」」←男性陣
「「「「「恋は盲目ってやつね……」」」」」←女性陣
「「いやいや、盲目過ぎるでしょ……」」←リオ&ルイ(いつの間にか来ていた)
そんな気絶中の佐夜に対し勝手な想像をするリョグに再び全員がツッコんだ。
そしていよいよ事件発生────
「………よし。こういう時は確か人工呼吸で───」
なんと、佐夜が気を失っているのをいいことに、リョグが立ち気絶している佐夜に口付けしようとしていた。
バ───ッキャーン!!
「「させるかぁー!!(憤怒)」」
すると、闘技場を覆っていた結界が突然割れ、とある男性が2人乱入してきた。
「な、何だお前達は? 佐夜は俺の物だ!」
「誰がお前の物だ!? 佐夜を物扱いすんじゃねぇ! つか俺んだ!」
「あ゛あ゛ん!? 手前等、俺の妻を寝取るつもりかぁ!?」
お分かりだろうか?
1番上のセリフはリョグで、2番目は乱入してきた覚助に3番目が同じく乱入してきたやすしだ。覚助とやすしは言うまでもなく佐夜の事を凄く好いているので、佐夜がサバ折りさ(抱きしめら)れた時点で既に臨戦体勢に出ており、普段絶対に壊れる事の無い結界は愛の力(?)で限界突破したやすしと覚助によって結界は木っ端微塵に破壊され、2人が乱入してきたのだ。
こうなるともう試合どころではなくなり、スマ〇ラ宜しく色んな者が乱入してきてまさしく『大乱闘』にまで発展した。
特に佐夜を巡っての争いは何故か2回戦で戦った優李と、やすしと同様に決勝を観戦していた舞華も佐夜争奪戦に参加し、本人が気絶中にゲームみたいな戦いになり、別の意味で観客達を沸かせた。
一方、佐夜以外のA・Z組の生き残り達は何か置いてけぼりを喰らって思わず戦闘を止めてしまっていたが、ここで何故か身体が鈍っていたのかニケが乱入し、更に既に負けていた筈の椿姫や詩織、その他1、2回戦で負けてしまって不完全燃焼気味の者達が大量に流れ込み、ここでも『大乱闘』が発生。それもチーム戦ではなく、個人&コンビ戦みたいになり、クラスなど関係無く皆が大暴れして最早収取が付かなくなった。
その結果、この騒動はこの世界のトップであるマロンが直々に実力行使で止めに来るまで続いた。
当然、この試合は没収になり、優勝チームは『無し』となった。
===============================
「うう……結局誰にも接吻されずに済んだけど、しばらくは筋肉ムキムキな奴(細マッチョも含む)は見たくない……」
「そんな……っ」
R・ハーマン程ムキムキではないリョグに思いっきりぎゅう~ってされて背骨がイッた佐夜は筋肉質の男が軽くトラウマになっている様だ。
「おーい。追加のお菓子とか買ってきたでござる~」
「こっちは肉まんとかホットドックとか軽食物だ」
「ジュースやお茶もあるよ~」
「って何で委員長、泣いているの?」
「だってぇ~(泣)」
買い出し組が教室に戻って来ると、aチームに弄られてすっかり涙目の花蓮がbチームの上原(女)に抱き付いた。
「そういえば試合の時、何か痺れる様で力が抜ける様な感覚があったけどあれって一体何だったんだ?」
「あー、ルナルナ気付いたんだ? あれ、実は魔族Z組の誰かが『超微弱電流』と『HPドレイン|(微弱)』を発動していたんだよ。魔法使いでも気付かない位、超弱めで発動してるから普段は使えないだろうけど」
「だからか。何か普段より身体の動きが鈍いと思っていたんだよ」
通常の魔法使いでは気付かない物でも罠師であるリオには普通に看破させていたらしい。
ちなみにこれらの魔法を使っていたのはシバタ。
「模擬戦も終わって多分明日か明後日くらいにはクラスの再編成があると思うからみんな楽しみにしてね♪」
と、リオは誰に向けたのか笑顔で言った。
はい。2回戦で結構な立ち振る舞いを見せた佐夜も流石の告白には対応も反応も出来ませんでした。
また佐夜の恋人候補が増えたっぽい(優李も含めて)。
次回は遂に再クラス編成です。
果たしてどこのクラスと一緒になるんでしょうか?
ではまた。




