第7話 ~健太のキチンとした謝罪と忘れていた歌姫~
オリエンテーション回での反動で、この話とどうやって繋げようかと結構悩みました。
後、佐夜はたまに『女性化』するのでキーワードに『TS(F)』を追加しました。
「───と、いう訳で、明日からは土日なのでお休みです。ではまた来週お会いしましょう。お疲れさまでした」
と、労いの言葉を残し、ティーナは教室を後にし、担任がいなくなったので教室内は再び雑談が飛び交う。
「あー、やっと解放されたよ~」
「……何で教室から吹っ飛ばされているのに無傷なのさリオ?」
「やだなぁさやや。話の最後にダメージを受けた場合、大抵次回の始まりに軽傷、もしくは無傷になるっていうのがお約束だお☆」
「そんなお約束聞いた事無い! ……無いよ、な?」
リオの訳の分からないお約束事に一瞬否定する佐夜だが、確か過去にもこんな事があった様な気がする?
「あ、ルナルナ。じゃあね♪」
「また月曜に」
「あ? ……ああ、またな」
まさか帰りの挨拶をされるとは思わなかったのだろう。月は少し驚きつつも苦笑しながら先に帰って行った。
「さってと。それよりもさやや、この後どうする?」
「明日は休みだからね。今日は時間もあるしこのまま街の方に行ってみて散策したり夕飯の買い物をしたりしようかな? リオも来る」
「もち♪ さ~って、今日の夕ご飯は何かな~?」
「あはは、リオ気が早いって」
佐夜の前のスキップしながら歩むリオ。食いしん坊か。
「お?」
「あ、揚鶏君?」
「……健太で呼んでくれ。そっちだとますますお店っぽくなるだろ」
「そ、そだね……」
教室を出ると教室前で健太が待っていてうっかり名字で呼ぶと眉を顰められた。まぁ、その名前じゃ気持ちは分からなくはない。
「それでタッキー。どうしたの? 何かさややに用事?」
「タッキーて……。あ、ああ、美里に用があったんだよ」
「僕に?」
リオがますますあの某フライドチキンチェーンの名前を連想させるような渾名で健太を呼び、げんなりする健太だが、今は時間が無いとばかりに無理矢理話を戻す。
「えっと、だな……。昨日は…本当にすみませんでしたー!」
「えぇっ!?」
すると突然膝を着き、土下座をしながら謝ってきて佐夜が混乱する。
「昨日ってあの『入学式おっぱい鷲掴み事件』の事?」
「言い方悪いな!? ……で、そういう事だ。今朝は何だかんだできちんと謝り切れていなかった上に担任が割り込んで来たからさ。オリエンテーション時はそれどころじゃなかったし。謝るのなら早い方が良いだろ?」
「だからってこんな所で土下座しないでよっ」
今は下校時間真っ最中。当然クラスメイトや他のクラスの生徒達が佐夜に土下座している健太を見てヒソヒソ話をしている。まぁ、昨日の痴態をやらかした2人がこんな事をしているのだから当然だろう。
「と、とりあえず外、外で話そうっ」
「お? おああああっ!?」
「さやや!? ちょっと待ってよー!」
居たたまれなくなった佐夜は健太を引っ張り、リオも当然引き連れてダッシュで校舎を後にする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁ、はぁ……いきなり引っ張って走るなよ……」
「ご……ごめん……でも、あそこにいたら益々色んな人に、見られるから……」
「もう遅いと思うけどねー」
校舎を後にし、更にその勢いで街の方まで走ってきた3人。佐夜と健太は息を切らしているがリオは余裕らしい。鍛え方が違うから。
「と、とにかく昨日の事はもう気にしてないからいいよ。というか今朝も言ったけど僕は男だからな?」
「で、でも昨日のあの感触は確かに……」
「昨日は色々と事情があったの! それにほら!」
「え?」
昨日触った感触ですっかり佐夜=女の子だと思い込んでいる健太の手を掴むと、
ペタペタ────
「な? 昨日とは違うでしょ?」
「あ……ああ………確かに昨日と違ってペッタンコだし、さらしで巻いている様な感触じゃない。じゃないけど……」
「ないけど?」
確かに昨日とは違って胸は無い。無いが、
「自分の胸を手で掴んで触らすとか、どんだけ痴女なんじゃ主は?」
「だから僕は女の子じゃない……って、義輝さん!?」
「何っ!? って、信長もいる!?」
「まんふぁ(何だ)? いふぁふぁふぁふぇふぁふぉふぁ(いたらダメなのか)?」
いきなり会話に割って入ってきた義輝こと椿姫と、信長こと詩織を見て佐夜と健太は驚く。リオは気配に気付いていたようだが。
「何で君等がここに?」
「何でって買い食いに決まっておるだろう? な?」
「ふぉう(コクリ)」
両手に食べ物を持ったままの椿姫はともかく、詩織は両手どころか口いっぱいに物を含んでいる為、ちゃんと話せない。
「それよりもだ、美里よ。年頃の女子が容易く男に胸を触らせるものではないぞ?」
「そ、そうだ。もっと自分を大事にしてだな……」
「もぐもぐもぐ」
「あ、それ美味しいよね~♪」
「だから人の話を聞けぇー!」
全く理解していない椿姫や健太はともかく、詩織とリオも人の話を聞きやしないので佐夜は大声で捲し立てた。当然周りから変な目で見られる事になるが今は気にしない。
閑話休題(間違った使い方)───────
「じゃ、じゃあ本当に男───なのか?」
「違うよ。さややはリオと同じ『男の娘』!」
「リオは少し黙ろうか?」
「(・×・)」
そしてようやく理解してもらえたと思ったらまたもやリオがややこしくするので、怖い笑顔で黙らせた。
ちなみに今は『薄皮たい焼き屋』の店先にある席でたい焼きを食べつつキチンと佐夜の事を説明中。勿論ショックで切り替わる性格の事も含めて。
「……で、くどい様だけどその通り。見た目に関しては目を瞑っててくれると嬉しいけど……」
「いやいやいや、それは無理があるだろう」
「じゃな。生まれてくる性を間違えているとはいえ、世が世ならお主、絶対『あいどる』という者に成れるじゃろうて」
「え、さややは既にアイド──(もがもが)」
「(余計な事言わない様に)。あははは……流石に歌やダンスをしてる場合じゃないでしょ。ここではね」
リオがまたもや余計な事を言いそうになったので後ろから手で口を塞いだ。
「だな。生きる為の術や戦いの力を手に入れるこんな所でそんなアホな事をしてる奴なんて──────」
と、健太が目の前の道路に目を向けた。
その時、
【美里佐夜。1stアルバム『ヒカリ』。Now on Sale】
というロゴと、撮った(撮られた)覚えの無い【ミシバイクロ】での武道館コンサート時の佐夜の写真が載ったトラックが目の前を横切って行った。
「は?」←椿姫
「ん?」←詩織
「だ?」←健太
「半田?」←リオ
「………っ!?(絶句)」←佐夜
よくある一文字繋ぎで突然の事に3人がポカンとし、佐夜は顎が外れるかっていうくらい口を開いている。それはもう漫画みたいな感じで。
「リ、リリリリリリリ……リオ! これはどういう事だ!?」
「あ、性格が戻った?」
あまりの事態に思わず性格が戻ってしまう程の衝撃にリオも少し驚いている。が佐夜にとって今はそれどころじゃない。
「何で俺の歌がCDになって売られているんだ!? しかもあの写真、武道館のやつじゃん!」
「DVDとブルーレイもあるよ?」
「そういう事じゃねぇー!」
リオはやはりズレている。
「やってたのう。あいどる」
「やってたな。アイドル」
「めんこい(可愛い)なぁ」
そして他の3人は「やってたんかい(笑)」的な顔で頬が引き攣っていた。
ちなみに佐夜のCDやライブDVD&BLは既にミシバイクロや協会&機関が登録しているほぼ全ての物質界で販売されている事を佐夜自身は知らない。知らない方が良い事もあるのだ。
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その後、買い食いを続けるという椿姫と詩織の2人と別れ、以外にも自炊をするという健太と一緒にショッピングモールの食品館へ入って行った。
「え? 仲間達の食事も健太が作ってるのか?」
「そりゃあそうだろ。平和な日本で育った俺が『超危機回避能力』というスキルがあるとはいえ、戦闘経験がほぼ無い俺が役に立つ事といえばそれくらいしかないからな」
2人共カートを押しながら健太とマック達の冒険の話を聞くと、どうやら健太が仲間達の食事担当をしている事が分かった。状況は佐夜の時と全然違うが、料理で少しでも役に立とうというのは同じだった。
「さやや、これも買おうー」
健太と食材を物色しながら話していると菓子コーナーからリオが両手にお菓子をいっぱい抱えて持ってきた。
「ってリオ。ほぼお菓子ばかりじゃないか。少し戻してこいっ」
「えー、いいじゃん。少しくらい」
「買い物カートの籠を山盛りにするのは少しじゃないっ。いいから半分くらいは戻してきなさい」
「ぶーぶ~」
「それでも半分なのか……」
厳しく言う佐夜だがそれでも半分は菓子で埋まるのでやはりリオには甘々なのだ。健太が「甘すぎだろ……」と苦笑している。
結局健太は生姜焼きだのカレーだの麻婆など割と簡単に作れる物(今は調理器具がそんなに無いから作れる種類が限定されているらしいから)を買っていき、佐夜はリオと共に新鮮な野菜やらお肉、調味料や発酵食品などの手の掛かる食材を選んでいき、2人では持ちきれない程の量になってしまったので、リオがヴァンをスマホで呼び、ヴァンに半分持ってもらいながら特殊寮へ戻って行った。
※:ちなみに協会機関の者達は『収納空間』というほぼ無限に入るアイテムをライセンス持ち以上の者は保有しているが、このイニシエではあまり使ってはいけないルールになっている。使用可だとスーパーとかで万引きし放題になってしまう為。勿論その類の監視カメラや特殊道具に対しての対策はされている。
そしてその夜、せっかくヴァンも(荷物持ちの為に)来てくれたので夕飯をご馳走した。本日の夕飯は(時間が無いので)回鍋肉と青椒肉絲(レトルトたれ+α使用)。
割と野菜が多い事にリオは文句を言っていたが、食べ始めてからは目を見開いて頬をいっぱいにしながら黙々と食べていた。あ、よく見ればヴァンもリオと同じ様にしながら食っている。
余程美味いのだろう、気付けばもう殆どオカズが無くなりかけていたので佐夜も急いで食べ始めた。
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そして休み明けの月曜、リオが割と食欲魔人だという事がここ2日で分かったので、休みの間に弁当箱の代わりに重箱を買いに行き、佐夜はそれにオカズを詰めていく。
「これ美味しそう(ぱくっ)」
「あ、こら。朝ご飯食べたばかりだろっ」
「だってアレだけじゃ少し物足りないよ~」
「全く……ほら」
「あーん(ぱくっ)」
朝からご飯を3杯も食べた筈のリオが口に指を咥えて佐夜を見上げる。ウルウルしたその小動物的な可愛さに佐夜は仕方なく重箱に入れていたウインナー(特に変な意図は無い)をリオに3~4本食べさせた。
何だか姉妹的な光景に見えなくもないのだが忘れてはいけない。2人は男(の娘)なのだ。例え佐夜が男子制服の上からフリフリのエプロンを着けていても、だ。ちなみにこのエプロンはミシバイクロで使用していたもので普通のエプロンは洗濯後まだ乾いていないので仕方なくこれを着用。ぶっちゃけ可愛すぎて全く男には見えない。リオも女子制服を着ているので男には見えない。つまりここに男はいません。反語(?)
で、特殊寮を出て校舎へ繋がる廊下を歩く。
「?」
「何か見られてるね?」
すると先週と同様、他の生徒達(主に他クラスの女子達)が佐夜達(主に佐夜)を見て何かこそこそ話している。
ガラッ────
「「「「「「「「あ………」」」」」」」」
「「ん?」」
教室に入るとクラスメイト達が一斉に佐夜を見て教室内がシーンっとなった。
「ど、どうしたんだみんな?」
「さ、さぁ? みんなさややを見てるからこの金~日曜の間にまた何かあったんじゃない?」
「金曜から日曜? 何かあったっけ?」
「う~ん?」
リオと「何かあったかな?」的な話をしつつ2人は金曜座っていた一番後ろの席、つまり月の後ろに座った。
「♪♪♪~♪~♪♪~~♪♪♪♪♪~♪~」
「あ、ルナルナ、おはー☆」
「♪♪~♪~、ん? ああ、2人共おはよう」
席に着くと前の席に座っていた月がヘッドホンをして何か音楽を聴いていた。リオに気付いてヘッドホンを外す。
「何かズイブンと熱心に聴いてたね。何を聴いてたの?」
「ああ、これか? これは─────」
と、リオの問いに月が答えようとしたその時、
「「「「「「美里さん!!」」」」」」
「べぶっ!?」
「みぎゃっ!?」
「うわっ!? な、何!?」
突然クラスの女子達が一斉(椿姫&詩織は除く)に佐夜の下に大集合し、その前にいたリオと月はそれらに押し潰された。
「聴いたよ! 美里さんの1stアルバム!」
「……は?」
そして一番前に来ていた女子がそう言った事で佐夜は思考がフリーズした。
「声がすっごい綺麗だった!」
「心に染みて泣いた!」
「アイドルをやっているとか何で言ってくれなかったの?」
「ファンになっちゃった!」
「DVDを見てつい一緒に踊っちゃった!」
「というかスマホに曲入れた!」
「いい歌過ぎて友達に拡散した!」
「もう百回以上はループ再生して聴いた! ……耳がちょっと痛い」
「2ndアルバム……ううん。次の新曲も楽しみにしてるね!」
などと、佐夜がフリーズしている間にも女子達は佐夜の(勝手に出された物だと思われる)アルバムに興奮し、それに収録されている曲がどれだけ神曲だったのかを熱心に語っている。
あ、よく見れば周りの野郎共(男子達)も腕を組んで頷いたり、知らなかった奴は知っている奴がデータを移したスマホのイヤホンで聴いて何やら感動して涙を流している。いや、涙を流すほどの歌は入ってなかった筈だろ!? 多分。
「み、みんな……それってもしかして3日前の金曜日に発売されたやつ。だよね?」
「「「「「「「「「うん、それ♪」」」」」」」」」
「はぁ……」
そして佐夜は今の今まですっかり忘れていた金曜の事を思い出した。
だがヴァンに手料理を振舞い、土曜は引っ越してきたばかりなので重箱やレイアウト用の素材を買いに行っていて、その時街道のモニターに自分の歌っている姿が映っていてゲンナリして出来るだけ目立たない様に行動し、そこまでは覚えていたのだが、日曜になり、リオの手も借りてレイアウトを1日中行っていたので佐夜は自分が今、どういう評価を得ているのかをすっかり忘れていたのだ。
その間にも金、土で佐夜の歌は瞬く間に新世界イニシエ中に広がり、今では誰がそう言ったのか『歌姫』と、どこかで付けられた呼び名で佐夜は有名になったのだ。本人からしたら実に不名誉なのだろうけど。
「後でリオを問い詰めて聞かないと、だな……」
本人の承諾無しにCDやらDVD(BL)が勝手に売られている事に関してキチンとした説明を聞かないと……いや、むしろ販売を止めさせないと駄目だ。
「はーい。皆さん席に着いて下さーい。出席を取りますよ~」
佐夜が女子達に質問攻め(?)に逢っていると、時間がきたのか教室に担任のティーナが入ってきて出席簿を叩いて女子達を席に着かす。
ティーナが出席を取っている間、ようやく一息を着けると佐夜は溜息を付く。あ、リオと月もヘロヘロになりながら机の下から這い上がってきた。リオは目を回しているが月は額に青筋が入っていてかなり怒っている。
……多分、月がさっき聴いていたのも佐夜の歌なのだろうが、今は流石に声を掛けられないな。
と、佐夜がそう思考していると、
「美里さーん。歌姫の美里佐夜さーん!」
「先生まで『歌姫』って言わないでください!!」
ティーナまでそう言ってきたので佐夜はツッコんだ。
そんなこんなで佐夜の学園生活は始まった。
あ、終わりじゃないよ?
次回もあるからね。
今回、変な終わり方をしましたが、実はこの後は一気に世界間での時期が飛び、3ヵ月後の話になります。佐夜達がどう成長していくのかを今度こそダイジェストに省略し、初任務まで持って行きたいですね。
次回は10/7か8日の更新デス。
では。




