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異世界無双禁止規定(ステージ オブ グラウンド)『緩』 ~歌姫神と称された少年のあれこれ~  作者: 浅葱
第5章 ~学園狂想曲(スクールカプリッチオ)~
118/241

第4話 ~オリエンテーション(中編)『運勢の変わる瞬間』~

はい、長くなってしまったオリエンテーションの中編です。

ネタバレしますがここでまたもや佐夜の性格が変わります。

何でそうなったかは本文にて。

「……もうダメだ。俺はもう何の役にも立たない鼻をかんだ後の鼻紙(ティッシュ)以下なんだ………」

「「「「………」」」」

 廊下の隅っこで膝を抱えて蹲る覚助。それを見て他の4人は溜息をつく。


 何で覚助がこうもいじけているのかというと、オリエンテーションでおそらく佐夜に自分のかっこ良い所を見せようとし、それが見事に空回りしたからだ。それも7回も。おかげで9回中4つほどミッションを失敗し、次のラストを失敗すればオリエンテーションでのミッションは失敗になり、罰ゲームが待っている。

 ちなみに4つめのミッションは『謎解き&クイズ』。3人一組で参加し、色々な謎を解きながら部屋を脱出する言わば『リアル脱出ゲーム』というやつだ。それに当然の如く覚助が勝手にエントリーし、残りは佐夜とリオ(この場合はOKらしい)で参加したのだが、ここで問題が発生。

 なんと謎を解くためのキーワードである果物を佐夜達が見る前に勝手に覚助が食べてしまい、それが何の果物だったのか覚助には分からなかった為、謎が解けずミッション失敗。勿論覚助はその後月(るな)にボコボコにされていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 5つめのミッションは採取系。『裏山の森の中に生えているヨモギを30分で1kg採取せよ』という結構時間的に厳しい塩漬け(残り物)ミッション。ヨモギを1kg採取するのは骨が折れるのでこれは流石に全員での参加が可能。

 ここで注意しなければならないのがヨモギと間違えて『トリカブト』を採取しない事だ。取る前ならともかく、万が一採取した後に混ざってしまったら見分けが付かなくなる可能性があるからだ。

 忍であるリオや錬成術の材料として採取をした事のある佐夜の指示の下、他の3人にこの2つの見分け方を教え、慎重に採取する様に言った。少なくとも分からない時は聞くようにとも。

 そして1時間後、ようやく取り終えて集計したのだが、なんと後わずか10グラムほど量が足りなくて失格になってしまった。

 というのも集計前、覚助の籠を除いて間違いがないか見極めていた所、トリカブトは無かったが、その代わり『ニリンソウ』というこれまたヨモギに似た植物を取ってしまっていた事が判明。それも覚助が採取した物の半分がそうだった為、結果的にヨモギの量が足りなくなってしまったのだ。なので正直これは教えていなかった佐夜とリオの責任でもある為、月(るな)も覚助を強く責められなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 6つ目は再び採取系。今度は『食用キノコを30分以内に1kg採取』するといったもので、今度はリオが中心となり採取する。簡単に言えばみんなでキノコを取れるだけ取り、その後リオが判別するといった方法で行った。

 まぁ、結果的に言えばギリギリ1kgを越えていたので何とかクリア出来たのだが、実は採取したキノコの中には松茸やシイタケによく似たキノコがいっぱいあり、「これだけあればこっそり食べても大丈夫だろ」とまたもや覚助がこっそり火で松茸を炙って食べようとしていた。

 が、覚助が食べようとしていたやつは実はこれ松茸ではなく『カキシメジ』で勿論、毒キノコである。でも火で炙っていた所を御剣に見つかってしまった時、「あれ? 松茸の香りがしないでござる?」と不振に思った御剣は覚助にちょっと待ったコール(死語)を掛け、急いでリオを呼んだため、大事には至らなかった。

 ……素人が簡単にキノコを食すと危ないっつの。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 7つ目に選んだのは『迷路&逃走』のミッション。その内容はどう見ても某番組で見た『逃〇中』そのもので、スーツ&グラサンを掛けた無表情の本物のアンドロイドハンターから『30分1人でもいいから5体のハンターから最後まで逃げ切る』といったものだ。

 このミッションには他のパーティーも参加する事になっていて各パーティから3人ずつ、計21名(7パーティ)がこのミッションに挑んだのだが、何とこのミッション、愛沙達とリア達のパーティーも参加していて上手くいけばクリア出来そうだった。


 舞台となるエリアは隠れる所が多そうな入り組んだ大きな工場をわざわざ貸し切っての場所で、佐夜達からは流石に覚助には自重してもらった為、佐夜、御剣、月(るな)の3人がエントリー。当然、月(るな)は物質界出身なのでこの『逃〇中』は知っているから説明は不要なのだが、今回の問題は御剣だった。

 今回はあくまで『逃げ切る』事が前提なので当然反撃は禁止されているのだが、ハンターに見つかって5分ほどしつこく追いかけ回された御剣は最終的に堪忍袋の緒が切れたのか追いかけていたハンターを2体をなます切りにしてしまった為、御剣は失格となった(当然紛失した分のハンターは追加された)。

 某番組ではハンターは人間がその役をやっていたので視野が死角的な部分もあり、逃げ切る事は出来そうだったのだがここの場合、ハンターは本物のアンドロイドなので体力、性能的な違いがあり、某番組を知っている参加者達(ほとんどが物質界出身の参加者)は皆次々と簡単に捕まえられていった。


 佐夜も残り5分を切った所で捕まってしまい、残りは月(るな)だけとなったのだがその月(るな)も体力が限界が近い時、残り1分で見つかり佐夜達はもうダメかと思った。


 がしかし、月(るな)は追いかけてくるハンターがあと少しで月(るな)に振れそうになったその瞬間、月(るな)は両手を斜め後方に突き出し、炎を噴出させブーストの要領で最後まで逃げ切る事に成功した。ちなみにこの場合、ハンターに攻撃が当たっていないのでセーフになる為、クリア扱いとなった。

 ちなみに愛沙達は終始、愛沙のシールドとその仲間が持っているらしい迷彩スキルを使用し、碌に動かずして余裕でクリア。リア達はリア自身がそもそも佐夜達とスペックが違う(亜人特有のやつ)ので見つかっても悠々と逃げ切っていてクリア。

 そんな愛沙達を見て佐夜は何か釈然としなかったが、これもオリエンテーションの醍醐味らしい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 8つめのミッションは『運』。「危機的状況で運があれば生き残れる」という当たり前の理屈でこのミッションがあるのだが、実際運が無ければ生き残れないのは事実。なので皆、運試しと言わんばかりにこのミッションをやるらしい。それは佐夜達も同じだった。


 ここのミッション内容は至極簡単。

 神社にある様なおみくじを全員で一回ずつ引き、それぞれに応じたポイントを11点以上集めればクリアとなる。

 ちなみにその振り分けはこうだ。

 大吉→5点。中吉→4点。小吉→3点。吉→2点。末吉→1点。

 無→0点。凶→-1点。大凶→-3点。

 つまり5人が引いて余程運が悪くない限りミッション失敗はありえないのだ。


 そう、失敗はありえないのだが、この時佐夜達は既にしくじっていた。

 先ほども言ったが余程の事が無い限り失敗しないので他のパーティーも皆こぞってここに来るので混雑するだろうと思って後回しにしていた佐夜達なのだが、今回それが完全に裏目に出た。

 まず佐夜がくじを開く。吉の2点。

 次はリオが開き、何と大吉の5点。

 次は御剣が開いて中吉の4点。

 次は月(るな)が以外にも緊張しながら開き、末吉の1点。


 つまりこの時点で12点あるので最後の覚助が大凶を引かなければクリアとなる。

 がしかし先ほども裏目(・・)と言ったのでとっくに薄々気付いていると思うが、そのまさかな事態を覚助が起こしてしまったのだ。


 覚助が開く。……『大凶』────


「「「「はぁあああああああああああああ!?」」」」

「は…ははははh………」


 一般的にも引く確率が低いとされている大凶を引いてしまい、これで9点。そしてミッション失敗。これにはくじを担当している教官も頬を引き攣らせて笑いを堪えていた。何故ならこのミッションを失敗したのは今の所、佐夜(きみ)達だけだと言うからだ。そりゃ笑えるわ。自分達でなければなっ。

 これには流石の月(るな)も覚助を殴る気すら起きなく黙っていた。ただでさえ大凶を引いてしまっているのに更なる不幸をお見舞いする訳にもいかないからだ。

 ん? だとすると何気に月(るな)って良い奴なのか?


 それにこれもさっき言ったがもし最初のミッションでここを選んでいたらその後の覚助の愚行も止められていたかもしれないからだ。つまりこのミッションを後回しにしてしまった事で覚助の今日の運勢が悪い事に気付かず空回りさせてしまい、ミッションを失敗してしまっていたのだ。

 なのでこの場合、覚助だけではなく全員が反省すべきなのだ。

 ……ともあれ、まだ2回チャンスはあり、あと1回クリア出来れば問題無いのだ。それも覚助の運勢も分かった事でこの後のミッションも極力大凶の影響が出ない様にすればイケる筈だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 しかし9つ目のミッション『シークレット』で事件が起きた。

 全7種あるミッションを最低でも1つずつやらないといけない事が後々になって判明し、佐夜達は仕方なく9つ目に『シークレット』を選んだ。

 ちなみにその事を知らなかった他のパーティーの何組かはこの時点で全部のミッションを回る事が出来なくなっていたので(例えるなら採取系を8連続やったとか)罰ゲームが確定しているそうだ。

 それについてなら佐夜達はまだ後2つやる事が出来たので、先に失敗してもいい様にと『シークレット』を選んだ訳なのだがこれがまたもや失敗する。


 毎回内容が変わるのはどのミッションも同じなのだが『シークレット』の場合はその内容を聞くまで内容が分からない。

 そしてその内容が判明した時、佐夜達は絶句した。


 今回の『シークレット』。その内容は『相撲(男性のみ)』。2人中1人、相手パーティーを倒せばクリアらしい。

 そして佐夜達のパーティには男子生徒は4人いるが、その内リオは色んな意味で参加出来ず、佐夜も生徒名簿上『女子』になってしまっている為参加出来ない。月(るな)は言わずもがな。

 なので本当は極力参加を控えるべき覚助と御剣が自動的に参加する羽目になってしまった。

 そして1人目の御剣の対戦相手は結構筋肉がある若干太めの柔道家(物質界出身の有段者)。いくら剣の技術が凄くても剣が無ければ接近戦は正直勝算が薄く、御剣はあっけなく投げ飛ばされて負けた。これは正直どうしようもない。


 で、問題はこちら。覚助の相手だ。相手側のパーティーも男子生徒が2人しかいなく、覚助の相手はなんと幻想界出身の魔法使いだ。勿論相手の男子は魔法が得意なのであまり身体は鍛えておらず普通なら余裕だと思うだろう。

 しかし今日の覚助の運勢は最悪らしく既に覚助が関わってきたもののいくつかは失敗、もしくは失敗寸前だったので何の安心も出来ない。

 が、今回は純粋な体力勝負。これなら勝てるかもしれないと佐夜達はこの時そう思った。


 だが、

「─────残った残ったー。……ん?」

 覚助が慎重に魔法使い生徒のまわしを取り、土俵際まで追い詰める。相手生徒も必死に踏ん張って耐えていて、それを行司(審判の事)が定番のセリフを言いつつ両者を見ているとある事に気付いた。


 そしてそれは突然起きる。

 覚助の慎重な猛攻に必死に耐えていた男子が掴んでいた覚助のまわしが取れ、覚助のアレがポロリしてしまったのだ。それと同時に相手の男子も土俵を割ってしまい、普通なら覚助の勝ちなのだが、相撲においてまわしが取れて股間のアレがポロリしてしまった場合『不浄負け』というらしく、結果覚助の反則負けになってしまった。

 この判定に納得がいかない月(るな)はすかさず行司のの下に行き、抗議したが、行司の話によると「普通はしっかり結んでいればそう簡単にまわしは取れない」と言っていた。一応キチンとまわしが結ばれているか戦う前に専門の人に見てもらっていたのだが、それでも取組中にまわしが取れてしまった事は事実。覚助の反則負けは覆らなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そして今に至る。

 こうして9つ中5つしかクリア出来なかった上に覚助の痴態がその場にいた生徒達に見られてしまった事で2重の意味で覚助は深く落ち込んでいたのだ。何気に覚助の身体が半分以上床に埋まって見えるのは気のせいなのだろうか?


「後1つかぁ。厳しいね」

「ああ、正直ここまで苦戦するとは思わなかったわ」

「拙者ももう腕が痛すぎて動かないでござる」

「相手の生徒もそれだけ必死だったって事かな?」

 そんな覚助を脇目に佐夜達は残りの種目(ミッション)をどうしようかと相談していた。


 残り30分を切り、時間の掛かるミッションは無理なので短期決戦で終わらせないといけない。少なくとも『採取』は時間が掛かり、『謎解き』はこのメンツじゃ期待できない。『運』は1パーティ1回しか出来ないし、『バトル』ではまともに戦えるのが月(るな)だけなので無理(佐夜は基本サポート派でリオは参加不可、覚助は本日不運で御剣は今腕を傷めている)。『迷路&逃走』『技能』では既に参加定員を超えて締め切っている。

 故に残された選択肢は『シークレット』のみだ。しかも内容が分からないので勝算が全く分からない。


「………(ぶつぶつぶつ)」

「ああもう、イライラするなぁ。ぶっ殺してやろうかアレ!?」

「月(るな)さん落ち着いて落ち着いて。意味の無い暴力はヤバいよ」

「というさややも何気にルナルナの事を名前で呼んでるし~」

「ああ゛!?」

「あ、いや、その……太陰光(たいこう)って何か仰々しい名前だからつい……」

 ダークサイドに落ちている覚助を見てイライラする月(るな)に佐夜が宥めるがうっかり名前で呼んでしまた為、凄い睨まれた。


「……まぁいい、ここまで一緒に戦ってきた縁だ。名前で呼ぶのは許してやるさ」

「ほっ。ありがと(良い笑顔)」

「っ! そ、それよりこれからどうするかだろ。どうするんだ?」

「ん~、もう天に運を任せるしかないねっ」

 溜息をついて名前呼びを許した月(るな)に笑顔で答える佐夜。その顔を見た月(るな)は再び言葉を詰まらせ誤魔化し、リオが困った様な笑顔で言う。確かに最後が何かは分からないがこうしてウダウダしても仕方ない。


「佐夜殿、ちょっといいでござるか?」

「どうした?」

 最後の『シークレット』ミッション会場へ向かう前に御剣が佐夜を呼び止めた。


「実は覚助の奴、今日最初からお主とぱーてぃを組む事を決めていたのでござる」

「そうなん? でも何で今頃それ言うんだ?」

 実はも何も別にそれを本人に言う必要は無い筈。ましてや佐夜は昨日まで女の子として見られていた筈。そう考えると最初から佐夜とパーティを組むと決めていた覚助は最初から佐夜狙いだったと考えられる。

 だって明らかに自ら不利である頭を使う謎解きミッションに参加し、おまけに採取系ミッションの時も人一倍頑張っていたからだ。アレはどう見ても自分をアピールしているとしか思えない。

 だが積極的にミッションに参加してアピールした結果。見事に空回りし、運の悪さも相まって覚助の所為で3つもミッションを落としてしまったのだ。これには流石にアピールするどころか悪印象しか残せていないので、覚助が落ち込むのも無理はない。既に覚助の身体は床にめり込み過ぎて頭しか見えない(イメージ的に)。


 その事を御剣は佐夜に全部説明し、佐夜にどうしたらいいのかを伝える。

「覚助の奴を元気づけて欲しんでござるよ」

「元気ってアレはもう無理だろ……」

 ズブズブと沈む覚助を見てもうダメだろと戦慄する佐夜。


「病は気からとも言うでござるが拙者は運気も気の持ちようと考えているでござる。あの調子では万が一、九つ目のみっしょんと同じく拙者と覚助しか出れなかった場合確実に落ちるでござる。なので少しでも勝率を上げる為にも是非佐夜殿に覚助を元気付けて欲しいのでござる」

「……友人想いなんだな、御剣は」

「そ、そんな事は無いでござる。あ奴は唯の腐れ縁でござるよ(照)」

 そんな事を熱心に言われ、佐夜はそんな関係良いなーっと目を細めて御剣を見るので御剣は柄にもなく照れた。


 覚助の過去については昨日会ったばかりなので当然知らないのだが、覚助が何を頑張っていたのかは佐夜にも分かる。

 それは佐夜に対して好意を持っている者が自分をアピールする為に必死になって頑張っている姿だ。

 その頑張っている覚助の姿がかつての親友『イング』と被るので実際、佐夜は覚助がミッションを失敗しても直接責めたりはしなかった。頑張っている奴を責めるのは間違っているからだ。

 とはいえ、ここでイングの事を思い出し過ぎるとまた精神が『僕っ子』になってしまう恐れがある故、イングと覚助の姿を被らすのは一旦やめて佐夜は覚助の下に行く。


「ほら覚助。行くぞ」

「……俺はもうダメなんだよ佐夜」

「何がだよ。覚助は今日偶々運気が悪いせいで空回りしたんだろ? それはもうおみくじの時みんな分かってるさ。だからもう落ち込むなって」

 実際、運勢が最悪だと分かった後、月(るな)もそんなに覚助を責めてはいない。誰しも星の巡りが悪い時もあるさ。


「違うんだよ佐夜。そうじゃないんだ……」

「そうじゃないってどういう意味だよ?」

「俺ってばいつもこういう場面で結果を残せず、気になった女の子の気を引くことが出来ないんだ……」

 そう言って覚助は自分の過去を軽く話す。今の『気になった女の子』が=『佐夜』だという事はこの際、横に置いておく事にしよう。


 笹原覚助は正直に言うとかなりのイケメンだ。それもテレビで見かける若手の俳優やアイドルにも引けを取らない程の美形男子だ。普段の覚助なら知識(知能)は低くても頭の回転は速く、緊急時にも臨機応変で対応できるほどかなりの優秀だと客観的視点で御剣が言う。そりゃそうだ、そうでなければあの明治(幕末)時代を生き抜く事は出来ないから。

 有能でかなりのイケメンである覚助は地元ではそれなりに女子達から人気もあるそうなのだがそれはあくまで遠巻きでのファンだ。

 なので女の子達と仲良くなるためには覚助自身自らが女子達に寄って仲良くならなければいけない。

 が、覚助はそこでも女運の悪さが災いし、お茶に誘っても(ナンパの事)アピールしてもそれが見事に空回りし、結果覚助に付けられたあだ名は『道化(バカ)』。せっかくのイケメンなのに行動が全部空回りするので覚助はこれまで一度も女子とデートをした事が無い。約束事までたどり着けずに終わってしまうのだ。


「これだけ頑張っているのにさ、何で空回りするんだろうなぁ、俺……」

「覚助……」

 その深く落ち込む覚助の姿に佐夜はまたもや覚助とイングの姿が被って見えた。

 覚助とイングには『女子と仲良くなりたい(気に入った女子に認められたい)』と『みんなに認められる男に成りたい(佐夜に自分を見て欲しい)』という違いこそあれ、どちらも『認められたい』という思いは同じく、更にどれだけ頑張っても報われない所が一緒で、最終的にはその認められる相手が佐夜だという事だ。

 最終的にイングの場合はバッドエンド風な終わり方をしてしまったが覚助の場合、その相手はいないが既に相撲での痴態が他の生徒達に見られてしまっているので別の理由でこちらも下手をすると女子達みんなに嫌われて孤独なバッドエンドを迎えてしまう可能性がある。


 そんな姿はもう見たくないと佐夜が思った瞬間、佐夜の精神のスイッチが再び切り替わり、その事に気付いたのはリオだけだった。


「覚助」

「? 何だ佐y───っ!?」←覚助

「うをぉっ!?」←月(るな)

「きゃあ!?(黄色い声)」←リオ

(ひゃあああ!)←腕輪の美里(幽霊)

「……ビックリでござる」←御剣

 佐夜が覚助に取った行動に皆がビックリした。


 佐夜は落ち込む覚助とイングの姿が被り、精神のスイッチが切り替わった事で、落ち込む覚助が可愛く見え、気付けば佐夜は覚助を横からギュッと抱きしめていた。これには流石の月(るな)、リオ、御剣もビックリ。抱きしめられている覚助はもうパニックだ。


「大丈夫だよ。君(・)が過去でどんな事をしてどんな目に逢ったかは知らないけど、今日一緒に行動して君の行動全てが無駄だったなんて僕(・)は思わない」

「佐……夜?」

 今までの佐夜と話し方が違う事に覚助は驚くが、それよりも佐夜が自分の行動を無駄じゃないと言ってくれた事に覚助は衝撃を受け身体が震えた。


 頑張る方向性はまるで違う覚助とイングの2人だが共に頑張っているのに報われない。そんなところが佐夜の母性?乙女心?をくすぐられた結果、佐夜はまたもや『僕っ子』と化す。

「だから覚助、もう無理して頑張らなくてもいいよ。もっと肩の力を抜いて、自分らしくやればいいんだよ」

「で、でも……」

「うん……。頑張っている所を見せたい気持ちは分かるけどその分、無理をさせちゃってる感じもこっちに伝わってきちゃっているのも事実なんだよ。自覚ある?」

「……マジで?」

「そうだよ。だから多分今まで君のファンだった娘達は君に近付こうとしなかったんだと思う」

 下手に近付いて覚助が調子に乗ったり無理したりして覚助が怪我したり事故を起こすのを見たくなかったんだろう。と、佐夜は思った。


「さっきの相撲の痴態の所為で君の評価はガタ落ちになっちゃったかもしれないけど……それでも君には御剣や月(るな)さん、リオ、そして僕がいる。他の誰かに何か言われようと僕達は君の味方だから。安心して」

「………っ」

 そう言われて覚助は遂に涙を流した。だが決して声には出さず、下を向いて腕で嗚咽する。泣き顔は見せられないといわんばかりに。

「よしよし、よく頑張ったね」

 そんな覚助の背中をポンポンと叩いてあやす佐夜。どう見ても母親。


 閑話休題(なにはともあれ)。


「すばない。ずず……。迷惑をかけたな」

 そんな状態が5分くらい経ってようやく覚助が復活する。まだ泣き顔で顔が腫れているが気力は回復したようだ。


「んじゃ行きますか。もう残り時間も無いしね」

 時計を見たリオが両手を後頭部で組んで言う。あ、何気に貰い泣きしてるわこいつ。

 そう言って一同は最後のミッション『シークレット』会場へ向かった。



 ……実は佐夜達一同のその(くだらないやり取りの)光景を何となく見ていた者がいた。

「……女運の最悪だった男子の運気が……変わった?」

 それはD組担任のクーで、たまたま別のミッションの監督をし終えて自分のクラスへ戻ろうとした時に偶々見つけ、佐夜達の一部始終を遠巻きに見ていたのだ。

 魔法使いの一部は占いにも精通しているので見ただけで相手の運勢を見る事が出来る。

 勿論クーも高位魔法使い(ハイヴィザード)なので見ただけでその者の運勢を見る事が出来、佐夜に抱きしめられる前のダークサイドに落ちていた覚助の運勢を見ていた所、ものの見事に『女運』と『出会い運』、『アピール運』が異常に悪いく、「……これじゃあ気に入った相手を口説き落とす事も出来ないわね」と思って去ろうとしたのだが、佐夜が覚助を抱き締めてリオ達が黄色い悲鳴を上げて再び覚助を見た時、クーは驚いた。

 先ほどまで『女運』諸共色々と最悪だった覚助の運気がガラリと好転したのだ。 

 これには長年色々な人の運勢を勝手(・・)に見てきた(占ってはいない)クーには初めて見る現象で、これがきっかけでクーも佐夜に対する好奇心が芽生え始めた。


「……これは是非、研究対象として調べたい」

 フードの中でクーはニヤリと笑った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そしてラストの10つ目の『シークレット』ミッションの内容。それは、


「「「「「か、『格ゲー』。だと!?」」」」」

 物質界出身である佐夜と月(るな)、そしてやった事があるリオと、対戦相手であるマック達&清良達のパーティの健太と清良が戦慄した。




次話にてオリエンテーションのラストです。

果たして佐夜達はクリア出来るのか?

ではまた。

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