第1話 ~クラスメイトと担任~
5章の1話目ですが、予想以上に話が長すぎて途中で区切りました。
自己紹介とオリエンテーションは次回以降へ
「はぁ~~~~~っ」
3つの寮を結ぶ食堂にてとある男子新入生が椅子に座ったまま大きく溜息を付いていた。目の前には先ほど頼んだAセット(魚セット)があるが手を付ける気にならないらしい。
この男子生徒の名は『揚鶏 健太』。
昨日、マック達と共に乗る『ノルノア』で入学式の終盤で乱入し、おまけに瓦礫に躓いた先にいた佐夜(女性化状態)のおっぱいを掴みながら押し倒し、しかもどさくさに紛れておっぱいを揉んで堪能し、被害者である佐夜に対し、謝るよりも前にお礼を言ってしまってぶっ飛ばされた少年だ。
「OHー。どうしたケンタ、溜息なんかついて?」
「いや、どうしたも何も理由はお前にも分かってるだろマック」
「まぁ……な」
テーブルで黄昏る健太にマックがCセット(バランスセット)を持ってやってくる。
この2人は現在、男子寮に同室で住んでいる。ロッテは女子寮の同じエルフの女子がいる部屋の一室が開いていた為、そこに住んでいる。
この3人は佐夜が新入生代表の時に言っていた『まだ到着していない者達』で、式が有耶無耶の状態で終わった後、3人はそのまま入学手続きに入って先ほど部屋に荷物を搬入し終わったばかりだ。おそらくロッテも同じだ。
ちなみに3人が乗ってきたノルノアは現在、艦製造ドッグに運ばれて修理中。そして3人以外の仲間達とマックの父親ドナルは街の方にあるホテルに滞在中。マック達以外の仲間達はノルノアの修理が終わり次第、アフリエイトのシステムコアを奪ったルシファーの行方を追うらしく、その間ドナルに「世界というものを学んでこい」と言われ、3人はここに居残りとなったのだ。
「アレの所為で俺は男子から英雄扱いされてるけど……女子からの視線が痛いや」
「ははは……」
式をぶっ壊した挙句、新入生代表の生徒相手に大胆な事をした健太は何故か他の男子から気さくに話しかけられたり変な尊敬な目で見られているが、一方で女子からの冷やかな視線が常に健太に突き刺さり、色んな意味で凄く居たたまれない。
「ま、何て言ったっけ? 75日もすればこの騒ぎも収まるんだろ?」
「それは噂の話だろ。こっちは事実でやっちまったから騒ぎが収まるとは思えない」
「ならこの騒ぎが収まるまで大人しくするしかないな。俺も原因の一つだしな」
「………はぁ、早く元の世界に帰りたい」
そしてようやく健太は自分の食事に手を付けた。
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「はぁ~~~~~」
「ね、ねぇ、さやや。まだ男の子の服を隠した事怒ってる?」
その頃、特殊寮から食堂へ延びる通路を佐夜とリオが歩いていた。佐夜は昨日の自分の痴態に対し溜息を付き、リオは流石に「悪戯が過ぎたかも?」と思い、恐る恐る佐夜の顔を覗き込んでいる。
「ううん、それに関してはもう怒ってないよ。むしろ昨日自分でやらかした事がな……」
「やらかした? ああ、なんやかんやで式が有耶無耶で終わった事?」
「そうだ、自分で中断させておいて最後逃げ出しただろ?」
「そだね。入学式にらんにゅうしてきた人におっぱい揉まれて逃走したね」
「おっぱい言うな」
「あたっ」
リオが恥ずかしい事を言うのでチョップした。ついでに言うと今はもう佐夜の身体は男に戻っている(胸以外何の変化も無いが)。
「ま、起こった事は反省してもしょうがないよさやや。前向き、前向きに行こう!」
「自分は被害喰らって無いからって呑気な奴め。……そうだな、何時までも凹んでる場合じゃないしな」
「そうそう、人の噂は何とやら、だよ」
「それ言うなら75日、な。それに噂じゃなくて事実……つか事故だろ」
「そうだっけ?」
やや頭の緩いリオが首を傾げる。何気に可愛い(男の娘なのに)
「……それにしてもリオ。お前制服似合うなぁ」
「そう? えへへ、ありがとー☆」
佐夜に褒められてリオがクルっと一回転する。スカートはギリギリで捲れない。
ここの制服は男子は『青』と『緑』をベースに、女子は『白』と『桃色』と『黄色』をベースに作られていて現代っ子や幻想界の女子達からは大好評らしい(過去の世界からやって来た信長と義輝はやや困惑気味らしいが)。
で、本来なら男子制服を着るべきリオだが、「リオは男の娘だから女子のを着る!」と謎の言い訳を入学当初に楓とヴァンに言い切り、以後2年間ずっと女子の制服を着ている。ついでに言うとスカートの下はスパッツ着用。
そして佐夜はというと、美里の憑依による女性化が解け、男の身体に戻ったので勿論男子制服を着ている。まぁ、胸以外はさほど見た目的に変わらないので昨日の女子制服を見た後では違和感が半端無いが。
「むー。さややも女子の制服を着ればいいのにー。勿体無い」
「アホか。何度も言うけど俺は男だ。男の娘じゃない」
「でもでも、昨日は『女の子』になってたじゃん」
「それは美里さんが憑依したからだろ」
(呼んだ?)
「呼んでない!」
「???」
リオとの会話中に美里がひょっこり出て来たのでツッコむと、美里が見えていないリオが首を傾げた。
ちなみに男子寮、女子寮、特殊寮、それぞれ部屋は同じ造りになっていて、中身は3LDKの2~3人が住める様になっていて結構広い。
そしてこの2人は特殊寮の同じ部屋に割り当てられ、朝夜と寝食を共にしているが実はリオ、元々ヴァンとティーナと同じ一軒家に住んでいたのだが、佐夜の為にリオはわざわざこうして寮へと転居してきたのだ。ついでに言うとリオ、パジャマや私服も女の子の服を着ていて、時々佐夜のリオに対する性別の認識が危うくなっている。
※:特殊寮は佐夜やリオなどといった性別が曖昧なキャラや、愛沙や正義、真桜などの家族ぐるみでの居住者、その他色々な意味で危ない奴等が住んでいる寮。
「ねぇさやや」
「うん?」
エントランスに差し掛かったところでリオは佐夜の方に振り返り、
「これからもよろしくね!」
「………ああ、よろしく」
満面の笑顔でいうので佐夜も苦笑しながらそう言った。
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「う~~~~」
一方、職員室では1人のミニスカシスターが自分が担当するクラスの出席簿に載っている一人の生徒を見て唸っていた。
「どうしたティーナ、唸ったりして?」
「あ、兄さん……」
コーヒーを飲みながら声を掛けてくるヴァンにミニスカシスター『クリス・ティーナ=如月』は困り顔で見上げる。
「実は私のクラスに問題児が2人ほどいるので頭が痛いんです」
「問題児って誰だ?」
「この人とこの子です」
「どれどれ───って佐夜とリオじゃないか!?」
「そうですね……」
ティーナが指で指し示す先には佐夜とリオの写真が。
「リオはまぁ……分からなくはないが、佐夜は何でだ?」
ヴァンのリオに対する扱いがやや酷い。
「だってこの方、入学式を中断させたじゃないですか」
「いや、確かに佐夜はあの時何かを言いかけていたが直接中断に追い込んだのは体育館に突っ込んで来たドナル達だろう?」
「それはそうですが、それだけじゃないです! この佐夜さんという方は兄さんの好みにドストライクじゃないですか。顔は可愛いし、スタイルは良いし、髪の綺麗なポニテだし、何よりおっぱいが大きいですしっ!」
「声が大きい、ってなに大声で人の好みバラしてるんだお前は!?」
「いふぁい、いふぁいれふー!(痛い、痛いですー)」
他の教職員がいる中で、大声で性癖をバラされたヴァンがティーナの頬を引っ張ってうにょ~んする。
「ったくお前はどうして俺が絡むとそんなポンコツになるんだ?」
「ぽっ!? ポンコツって酷いですお兄ちゃ───兄さん!」
「ほら、ポン娘ってる」
「ポン娘って言わないで下さい~(×_×)」
目を×にしながらティーナがヴァンの胸板をポカポカ叩く。
「……………(和み)」
そうやって戯れる兄妹を他の教職員達は温かい目で見ていた。和むわ~。
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「し、視線が痛い……」
「OH……凄い冷たい視線だな」
「自業自得、といえばそうなのでしょうケド………」
教室に入り席に着いたマック達、だが相変わらず女子からの健太に対する冷たい視線は地味に健太のSAN値を削っていく。発狂しないか心配だ。
ガラッ─────
「おー、ここが俺達の教室か。……広過ぎないか?」
「そう? 大体どこのクラスもこんな感じだよ?」
「「「あ」」」
するとそこに佐夜とリオが入って来て、佐夜を見たマック達が短く声を上げた。
「っ!」
「お、おいケンタ!?」
「ケンタさん!?」
すると佐夜を見た健太がすかさず一目散に佐夜の下に走って行き、
「すみませんでしたっ!」
「うわぁっ!?」
「わっ!? え、何なに!?」
これまた見事なフライング&スライディング土下座で佐夜の目の前に現れ、佐夜とリオだけでなく、クラス中のみんながそこに注目する。
「昨日の事は事故とはいえ、本当にすみませんでしたぁっ!」
「あ、あ~~~~~」
「潔いねー(ツンツン)」
教室の入り口で土下座しながら謝り倒す健太に佐夜は頬をかきながら苦笑し、リオはそんな潔い健太の頭を指でツンツンしている。何やってんのお前?
「き、昨日のは事故だっていうのはこっちも分かってるから大丈夫だ。それにもう気にしてないから顔上げてよ。みんな見てる」
「し、しかし……」
「……リオ、どうしたらいいかなこれ?」
大分反省しているのは分かるけど、これじゃあこっちもいたたまれない。
「んー。じゃあとりあえず2人共、自己紹介だね」
「???」
「いや、何でそうなる?」
佐夜がリオに相談すると、何故かリオはそう言い、健太と佐夜は首を傾げた。
「だってお互い相手の事何も知らないでしょ? これから同じクラスメイトとして行動するんだから自己紹介してお互いの事を理解してから色々とやればいいんだよ」
「……なるほど、な」
「そう……か?」
リオの言葉に佐夜は納得したが健太は良く分かっていない。そりゃそうだ健太の事はともかく佐夜の場合、見た目と性別が違うのでその事を話さないと先に進めなさそうだ。
「と、とりあえず身体を起こしてくれ。自己紹介がしづらい」
「あ、ああ……分かった。────っ!?」
佐夜の手を取り、起こしてもらった健太は佐夜の恰好を見て目を見開いて固まった。いや、よく見れば他のクラスメイト達の何人かが健太と同じく石化していた。
「……何か良く分かんないが複雑な事情がありそうだな?」
「君は?」
すると固まったままの健太に代わり、マックがやって来た。
「俺はマック・ヘプカーラ。入学式とやらで君にこいつを嗾けたのは俺だからな。なのでこうして俺も謝りに来たんだが……一ついいかな?」
「何だ?」
「どうして君は男子の制服を着ているんだ?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
マックの素朴な疑問にクラス中のみんなが息を飲んだ。
そりゃあ、佐夜が教室に入ってきた時からみんな「何で男子制服?」という疑問は持っていたが、「もしかして特別な事情が?」とか「まさか昨日の事件が原因か?」とか、色々推測したが誰もその答えを持っていなかった為、マックが本人に直接聞いた事でみんな佐夜達の方に耳を立てる。
「あー、やっぱりその事聞かれるかぁ」
「だねー」
いっそ流してくれた方が助かるんだけどなー、と佐夜は思ったが流石に昨日と恰好が違うのは見逃してくれそうにはない。
「分かった。このままじゃみんなスッキリしそうにないからこの場で言った方がいいか」
「でもさやや、それを言ったら余計ややこしくなるんじゃないの?」
「だからだよ」
そう言って佐夜は教台の方へ向かう。
しかし、
「皆さん、席に着いて下さーい」
「「「「「「あ……」」」」」」
「?」
ガラッと音を立てて担任のティーナが教室へ入って来て、再び佐夜の説明ターンが途切れてしまった。今入って来たばかりのティーナは「どうしたの?」と首を捻った。
「ま、また説明できなかった……」
「よしよし」
担任が入って来たので佐夜はしぶしぶ教台から降り、リオに背中をヨシヨシと撫でられながら席に着いた。
今日はここまで。
またもや自身の説明が出来なかった佐夜。
次回には自己紹介で何とかしないといけませんね。
では。




