幕話-4 ~転生者への禁止事項(簡易版)~
はい。予定通り20日の0時に更新しますた。
今回は転生者への対策と禁止事項(簡易版)についてです。
そしてここから佐夜達も再登場します。
ここは中世ヨーロッパみたいな感じの幻想界。
心温かい人達が多く住んでいることから争い事が非常に少なく、世界全般にどこか田舎っぽい雰囲気を醸し出しているが、そこがまたいい感じでレトロっぽい田舎ライフが楽しめた世界だ。
────そんな世界に一人の天才が生まれた。
レートン=エフク
一般家庭に生まれた長男で7才にしてリバーシー(オセロ)を開発。12才の時にはにトランプやUNOといった娯楽を生み出し一躍ブームとなった。
15才の頃には既にこの世界の料理に飽きたのか、この世界には無かったマヨネーズやオタフクソース、醤油などのを調味料を作り出し、この世界の料理界を劇的に進化させ、料理界の魔術師とまで言われていた。ただ調味料を作っただけなのに、だ。
18歳になる頃には麻雀やギャンブル系の遊具も開発しカジノを設立。するとこれまで温厚だった幻想界の人々が『天才』の作る物に興味をもってしまい、素人が手を出してはいけないギャンブルをやり始めた結果、ギャンブルにのめり込む人達が多発し、破産する人達が続出した。
また、魔法なども技術もあるのでイカサマもし放題なので、魔法が使えない者達が更なる自己破産に陥る者達も少なくない。
そしてお金が無くなると人は犯罪に走るケースが多くなるため、レートンは一時的にお金が借りられる『金融業』にまで手を伸ばし、物質界ではかなりの暴利ともいえる28%で金を貸しそれが更なる破産者を生む。
自己破産し、金が無い人はドンドン心が荒んでいき、最終的には盗賊にまで身を落とす者も年月を重ねる毎に増えてゆき、今では魔物より盗賊とエンカウントする方が高い。しかも街の外だけではなく街中でも普通に被害に遭うので最早安全な場所などほとんどないので、必然的に冒険者や騎士になって強くなろうとする者も増えた。これは喜ばしい事だ。
だがそれでも窃盗や盗賊などの犯罪者が増える方が遥かに多く、各国は治安維持に頭を抱えていた。
すると当然、各国のお偉いさん方は『天才』と言われているレートンにどうにかできないかと相談し、レートンは「抑止力になる物を開発中だ」といって了承し、各国はそれが出来るのを待っていた。
そしてそれから半年後、レートンが18歳になった時、それがようやく完成した。
その抑止力となる物とはズバリ、『銃』だ。
10才の頃から『銃』の開発に携わり、先週ようやく試作品第18646号の銃のテストが成功し、それを正式な銃として量産。そして各国に説明書と共に送った。
が、それが惨劇を生む結果となった。
自分の身の安全と世界中の犯罪者達に対する抑止力の為に作った銃なのだがそれを初見で見た王や商人が使い方が分からないからって下手に触って暴発し、死傷者が出たり、ふと目を離している間に子供がそれをおもちゃだと勘違いして親や他の子にそれを向けて射殺してしまったり、最悪なのが数を制限して作った筈なのにいつの間にかそれらが複製されて大量に出回り、それが戦争や暗殺に利用されてしまった事だ。
当然複製されて数が増えるって事は盗賊達にもそれが出回り出し、更なる悲劇を生む結果となった。
銃が出回り出し、たった2~3年で治安が改善するどころか最悪な程悪化し、最早手の付けようが無い程手遅れになっていた。
そしてレートンが22歳の時、それが起きた。
エフク家に盗賊(というか強盗)が押し寄せてきたのだ。それも2人や3人とかではなく50人。メイドとか他の使用人とかも数人殺され、たった今執務室にも強盗は1人侵入してきた。
レートンは相手が1人だけなら勝てると思い、(サイレンサー付き)銃で足を撃って動きを鈍らせてそいつを捕縛。
何でここを襲て来たのかを撃って負傷した強盗に聞くと、
「アンタが……アンタがカジノを作ったせいで親父は多額の借金して俺ん家は破産したんだ!」
と、怒鳴られ、
「他の連中にはお前が創ったという『銃』で親兄弟を殺された奴等も結構いる」
更に『銃』を作った事で一般人にも多くの被害者が出ている事を聞き、
「全部……全部アンタの所為だ!!」
「………っ!」
そう事実を突きつけられてレートンは顔が真っ青になる。
「だからアンタは俺が殺すっ!」
「っ!?」
レートンの顔が真っ青になって一瞬動きが止まった瞬間を盗賊の男は見逃さずいつの間にか縛られていた縄を解き、隠し持っていた銃でレートンを狙う。が、盗賊の怪しい動きから危険と感じたレートンは素早くアクション張りの動きで机の引き出しの下(椅子の部分)に隠れる。
そこを狙い、バンバンッと盗賊が銃を撃つ。が、机の周り自体は木で出来ているのだが、椅子の収納部分だけは硬い金属で出来ている。何時かこういう事態に備えての対策で作った物なのだがまさか本当に役に立つなんて思わなかった。
「隠れても無駄だ────え?」
リボルバー式の銃なので弾を入れ直し、回り込んで撃ち殺そうとした盗賊だがそこにレートンがいなく、そこには穴があった。
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「はぁ、はぁ………」
レートンは暗い地下通路をひたすら走っていた。
銃を作ってから1年後、緊急時に執務室の机の下に脱出する為の穴を作っておいたのが功を奏してレートンは穴から地下へと降り、地下を爆走していた。ちんたら歩くようじゃ何時追いつかれてもおかしくないからだ。
そして行き止まりで梯子を上り、崖近くの所へ出て、昇って来た穴に蓋をし大きめの石を押して蓋に重石を乗せて追手が来れないようにした。
一通り逃げ切って追手が簡単に来れないようにし、レートンは一息を付いた。
「………あれだけ何度も警告をしたのに創ってしまったのね」
「っ!? 誰だ!?」
すると突然崖の方から少女の声が聞こえた。レートンは声のする方に銃を構えて訪ねる。もしかすると新手の盗賊や暗殺者かもしれないからだ。
「………久しぶりですね」
「お、お前は……っ」
少女の顔を見たレートンの顔が固まる。
その少女はロープを着ていて杖を持っている、言わば魔法使い風の少女だ。
しかしレートンが驚いているのはそこじゃない。
この少女が『この世界の者ではない』からだ。
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この少女の名前は【クー・ヴェルト】。
協会の高位魔法使いで年齢は15歳くらいでセミロングのふわふわの蒼髪。ゆっくりとした口調に少し眠たげな表情が可愛らしい。言わずもがな魔法使いなので三角帽子とロープ、そして杖は欠かせない。
「………あれだけ散々警告したというのに貴方という人は……」
溜息を付きながらもゆっくり話すクーだが何故かその言葉には怒りがこもっていた。
「だ、だってまさか本当にこんな事になるなんて思わなかったんだ」
「………思わなかった、ですか。………それで人の警告を聞かなかった結果、どうなりましたか?」
「せ……世界中の秩序が……崩壊した」
「………その通りです」
顔を伏せ、銃も下ろし、顔を歪ませながらレートンが震える。
協会において次元転移者、もしくは転生者が『銃』を作る事、もしくは持ち込んで誰かに見せる事は固く禁じている。それは協会内の者(ゼロや義信)も同様だ。
武術(拳)や剣、その他の武器や魔法などは経験を重ねればある程度避けられるし、弱い者達の護衛にも役立つ。
しかし『銃』は違う。銃の構造や弾の種類にもよるが、銃は剣や魔法と違い、一撃で相手を屠る事の出来る武器だからだ。どんな一流の剣術をもってしてもマッハを超える弾を見て弾く事は容易ではないし、魔法で防御しようにも銃の弾を何発も撃ちもまれれば障壁だって壊れるくらいの威力は銃にはある(物によるが)。
そして一度その存在が知られれば銃文化は瞬く間に世界中へ広がり、剣や魔法が使えなくても相手を殺せる手段として使われるようになり、戦争などの道具になったり、国王や金持ちが暗殺されるようになり最悪その世界の秩序は完全に崩壊し、某世紀末漫画の様な暴力が支配する世界へと成り果てるのだ。
「こんな結末になるって分かっていたのなら何でもっと早く俺を止めるなかったんだよ!?」
「………辞める様、警告したじゃない。それに貴方は次元転移者ではなく『転生者』。この世界に生まれた人間だから迂闊に手出しは出来ないの。だから警告する形で貴方を止めた筈だった」
「………」
「………でも私が最後に警告した時、貴方はあの時「……分かった」といって、その場にあった物を破棄して私を納得させた後、またすぐ作り始めていた。違う?」
「そ、それは………」
「………それは? ……つまり貴方は私の警告など最初から聞く耳を持たなかった。違いますか?」
「ち、違……」
「……………」
クーに問い詰められレートンから脂汗が噴き出て止まらない。
「………まぁ、もう手遅れですし、後は自然の流れに任せるしかありません」
そういってクーは宙に浮き、その場から去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! お、俺はどうすれば………」
「………そんなのもう私の知った事ではありません。貴方が次元転移者だったならばどこか適当な世界に連れていく事も出来たのでしょうが、今の貴方はこの世界の住人。おまけに世界的に見れば重罪人と言ってもいいでしょう」
「じゅ、重罪人……」
「………そんな人物になってしまった人をもう助ける事は出来ません。助かりたければ自力で何とかしてください」
「そ、そんな………っ」
去ろうとするクーに縋ろうとするレートンだが突き放され呆然となる。
※:保護できるのは次元転移者、もしくは己の世界で居場所を無くした者だけである(幕話-3の堕天使達など)。
「………もし荒れてしまったこの世界を改善出来たのなら、その時また会いましょう」
「ぁ………」
そういってクーは完全に空を飛んで行った。
そしてその20分後、レートンの元に屋敷を襲った盗賊、もとい強盗・暗殺者達は崖で呆然としているレートンを見つける。
レートンは理解した。
これは自分がこの世界で無双し、その無双に対して『やるべき事』をしなかった自分への【罰】なんだと。
やるべき事とはズバリ、新しい物を披露する際『注意』する事だ。カジノでのギャンブルもやり方だけを説明し、のめり過ぎると破産する事をわざと伝えなかったのだ。その方が自分にとって利益が出ると思ったから。
金融業での暴利もわざと借りる人に碌な説明もしなかったので借りる人がどんどん破産に追い込まれていく。
それだけならまだ取り返しは済んだのだが、決定的に後戻りが出来なくなったのがやはり『銃』の存在だ。銃の取り扱いと管理についてもキチンと説明しなかったせいで暴発したり盗まれたりして無意味な血が多く流れた。
そして銃の存在でこの世界の秩序が完全に崩壊し、各国の政治や法律などは完全に役に立たなく、暴力が支配する世界へと成り下がってしまったのだ。
これらは全てクーの警告を聞かなかったレートンの責任。責任を持って死ぬべきだとも思ったがクーは言っていた。「この世界を改善出来たらまた会おう」と。
つまりこの世界の秩序は最早修復不可能、レートンが今更何をしようが直せないと言われた様なものだ。
でも、そんな挑発的な事を言われたら意地でも死にたくなくなってくる。
そんな事を考えている間にもドンドン盗賊達は迫ってくる。
クーに挑発され、生きる気力を回復したレートンは落とした銃を拾い、振り向いて言った。
「かかってこいや、ごらぁぁ!!」
そしてレートンと盗賊たちが激突した。
その後、レートンとその世界がどうなったかは神のみぞ知る。
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「………ただいま」
「うぉう!? ってクーか。毎回毎回気配を消して後ろから現れるなよ」
自分でベルガイアに帰還したクー。
ヴァンが食堂でパソコンを相手で報告書を作成中、後ろから声を掛けられビクッとなる。少し離れたところで(沖縄風)稲荷寿司をパクついていた陽菜々とリオ、担々麺を啜っていた義信もビクッてなり吹いた。みんなビクビクしすぎだろう。
「……ふふふ。ヴァンの背後は、ワクワクが止まらない」
「俺はドキドキが止まらないぜ……」
「………両想い?」
首を傾げて言うクー。
「……いや、そういう意味じゃねぇ」
「?」
クーは分かってないようでヴァンは諦めてため息をつく。何気にいい雰囲気だ。
「………なんか、良い雰囲気、だね(もぐもぐ)」
「……むぅ。隊長の背中はリオのものなのに(もぐもぐ)」
「……一体ヴァンの背中に何があるんだよ?(ずるずる)」
ヴァン達から少し離れた所で三人がヴァンとクーの様子を窺う。
「で、どうしたクー? 合流地点より随分と早かったみたいだが?」
「ん。予定よりかなり早く終わって暇を持て余したから。前に注意を促してた転生者『達』の様子を見てからここに来たよ?」
「で、どうだった? 彼らは相変わらず無双していたか?」
ヴァンは苦笑して言う。どうやらクーはレートンの他にも立ち寄っていた所(世界)があったみたいだ。クーは肩を落とし、
「……みんなあれだけ言ったのに好き勝手(無双)やってた」
「まあ、ああいうのはやったもん勝ちだし、金儲けにはもってこいだしな。で、そのほとんどがやりすぎて世界中から目を付けられると」
「ん。様子を見てきた何人かは既に死んでた」
「だろうな」
肩を竦めて言うヴァン。クーも表情は変わらないが寂し気な感じがする。
「あれ? ヴァン、その子は?」
「ロープと杖からしてどうやら魔法使いのようじゃの」
「……それもかなりの使い手ね。高位魔法使いっていうのかしら?」
するとそこに風呂上がりの3人、佐夜と真桜、愛沙が夕食を摂りに入って来た。いや、その後ろに正義もいたから4人か。
「………ヴァン、この人達は誰?」
「ああそっか。まだ伝えて無かったな。こいつらは────」
急にクーに帰還すると言われて寄り道した為、佐夜達の事は言ってなかったヴァンはそのまま佐夜達の紹介をする。
「………男の子?」
「ああ、男だ」
真桜、愛沙、正義の紹介が終わり、佐夜の紹介をした所でクーの目がクワッと開かれる。いつも眠たそうな表情をする彼女にしては珍しい。
「………。…………(凝視)」
「いや、何でそんな目で見つめるんだよ?」
「………こんな美少女が男の子な訳ないじゃない」
「そんな事言われてもな………」
佐夜に近寄って凝視するクーにそんな事を言われたがそれはどうしようもない。
「………ぺたぺたぺた」
「……何で胸を触る?」
「………サラシでぎゅうぎゅう巻きにしているのかと思って?」
「Eカップの胸をそんなきつく巻いたら心臓潰れるわ!」
「………何でEカップ?」
佐夜が意味不明な事を言ったのでクーは首を傾げた。まぁ、佐夜に憑いている美里が佐夜に憑依すれば確かにEカップになるんだが。そんな事クーは知らない。
「………それよりヴァン。ちょっと気になる事がある」
「ん?なんよ?」
佐夜との(物理的な)接触を終えたクーはヴァンの元に戻り顔をヴァンの耳に近付ける。
「………んと(ごにょごにょごにょごにょ)」
「…………は?」
「………ん」
「おい、マジか……」
ヴァンが片手を顔に付け天井を仰いだ。その様子は何か心当たりがあるようだった。内容はよく聞こえなかったが。
「むぁー! もう我慢できません。クーさん、いい加減に隊長から離れてくださいー!」
「………あ、ああああぁぁぁ~~~~」
直後、陽菜々と一緒に沖縄稲荷を食べながら見ていたリオが、クーとヴァンがイチャイチャ(していたように見える)してたのに我慢できず、クーの腕を取りどこかに連れて行ってしまった。
「リオふぁんもやひもひ屋はんでふね~(もぐもぐ)」
クー達と入れ替わりに陽菜々が稲荷を頬張りながらやってきた。
「男(こ娘)にヤキモチ焼かれてもなー」
「(ごっくん)。ダメですよヴァンさん。リオちゃんも心はちゃんとオンナノコなんですから。ちゃんと構ってあげないと」
「どっかで聞いた事のあるセリフだなおい。……まあ程々に構ってるさ」
「そういやヴァン。さっきクーの奴、何て言ってたんだ?」
担々麺を食い終わった義信が爪楊枝でシーシーしながらやってきた。行儀が悪い。というか小さい子の教育に悪い。
「なんでも任務の途中で未発掘の古代遺跡を見つけたらしい。で、未発掘なはずなのにそこに封印されてたらしきものが解かれてたらしいってよ」
「? それだけなら別に何の問題ないじゃないか?」
「そうだが、クーの奴は気になって他の世界にある『厳重封印されている兵器』を見に行ったら、いくつか盗まれてたらしい。その数、百は軽く超えるってよ」
「おいおい、まさかまた何か起きるのか? 次元戦争とかそういうのはもうこりごりだぞ」
「がくがくぶるぶる」
眉を顰めて義信が言う。陽菜々はクーの話の内容が怖かったのか、プルプル震えている。
「さあ?何が起きるかは分からんが、次元地震が起きたときは大抵碌な事にならん。実際多くの次元迷子が出てしまったしな。……そして陽菜々、俺に稲荷寿司渡されても解決しねえって」
「キューンキューン(涙目)」
「ははっ、余程次元地震が怖かったのか陽菜々。お?俺にもスシくれるのか?サンキュ(もぐもぐ)」
お行儀の悪い義信。傍から見たら寿司をカツアゲしているみたいだ(意味不明)
「こらー!、ひなちゃんの稲荷取るなー!」
「おまけに泣かした………お仕置き、『凍結』」
「ぎゃあああ!?」
案の定、戻ってきたクーとリオに誤解され、魔法で凍結された義信。
「あ、あははは……」
「ホント、賑やかじゃのぅ」
「だな。退屈しないな」
「ええ、これならイニシエにあるという学園にも期待が持てるわね」
そんな騒ぎを佐夜達は夕食を食べながら見ていた。
「………はっ!? 何で私を映すんですか? 特に何もありませんよ?」
一人ブリッジでカロルーメイツを咥えながらデバイスを操作し、黙々と作業をしている透が意味も無くツッコんだ。
次回から第5章となりますが、少し予定を延ばし31日からのスタートになります。
まぁ、学園編みたいなものですね。なので少し構想を練ってから載せようと思います。
学園編て色々難しいからねぇ。
では。




