幕話-1 ~機界と地核破壊兵器~
大分遅くなってすみませんでした。
本編前のプロローグみたいなものだと思ってくれればよいかと。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
全てが金属で出来た建物の間を一人の少女が走り、曲がり角を曲がる。
「チッ、ミウシナッタカ」
「イヤ、マダコノヘンニイルハズ。サガシダス」
「イエッサー」
その少女の背後をギリギリで見失った警察風のアンドロイド達が片言で話しながら手分けして少女を追う。
「はぁ、はぁ……。な、何でこんな事に………」
隠れられそうな場所を何とか見つけた少女はそこに身を隠し、荒れた息を整える。
そして少女は建物の間から覗く太陽を見上げて黄昏る。
何で自分がこんな場所にいるのかと。
そして何で自分が分け分からずの連中に追われているのかと。
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少女の名前は鈴原いずみ。ごく普通の一般家庭で育った普通の高校一年生だ。
勿論、異能力なんてものは持っていないし、体力も知能もごく普通。学校では帰宅部で唯一の取柄と言えば中学の時、陸上の長距離で鍛えたこの足だけだ。それ以外は本当に普通の少女なのだ。
んで季節は秋、大概の学校がそろそろ文化祭の準備を始めるこの頃、いずみもクラスの出し物の買い出しで友達2人と一緒にデパートで結構な買い物をした。3人共両手に持つビニール袋はパンパンだ。手が少ししんどい。
「あ、出張クレープ屋『キクラゲ』がある!」
「いずみ。いずみも食べてく?」
「食べるのは別に良いんだけど、両手塞がってるじゃない私達」
「そんなの向こうのベンチに置いて一人が荷物番すればいいじゃん」
「その荷物番は誰がやるの?」
「「はいじゃーんけーん───」」
「え、ちょ、早───」
「「ポン!」」←チョキ
「ポ、ポン!」←パー
後出ししたのにいずみは負けた。
「ブーブー!」
「後出ししておいて負けたのに文句言ってるし」
「大丈夫よ。荷物番やってもらう代わりに大盛にしてもらってあげ───」
「イチゴバナナアーモンドチョコアイスで!」
「間髪入れずに要求が来た!?」
「あ、あはは、了解。じゃ荷物番頼むね~」
「なるべく早く来てよ? 秋と言っても、まだまだ暑いんだから」
「「おK~」」
ベンチに荷物を置き、荷物番になったいずみに荷物を任せ、友達の2人は少し行列が出来ているクレープ屋に並んだ。
このクレープ屋に並ぶ2人と少し離れた場所でベンチに座るいずみ。さっきのじゃんけんでこうなった訳なのだが、この事がこの直後、いずみにある災厄が降り注いだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ──────
「え、じ、地震?」
最初は少し横に揺れる程度だった。
「きゃ、お、大きい!?」
だが段々その揺れは縦に揺れ、次第に大きくなり、
「あ────」
ガラッと音を立てながらいずみはベンチごと地割れで出来た溝に落ちていった。
「痛~~い……」
「結構大きかったね地震」
「何々大震災かと思ったわww」
一方、地震時に地面に伏せていた友達が立ち上がって心臓をバクバクさせる。
「そういや荷物といずみは大丈────え?」
「え、いずみどこ行ったの?」
そしてふとベンチの方を見てもそこにはもういずみの姿は無かった。
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「~~もう本当にここ、何処なのよー!?」
警察風のアンドロイドを何とか振り切り周りに誰もいない事を確認したいずみが思わず叫ぶ。
地割れの溝に落ちたいずみが気が付くと、そこは全てが金属で出来た世界だった。建物は勿論、地面や樹などもよく見れば全てが金属で石などの非金属や植物の類が一切無い。
そんな見た事も無い風景を物珍しく見て歩いていると、そこでようやく人の姿を発見。
「あのー、すみませ~ん」
「ハイ?」
「っ!?」
声を掛け、人っぽい者が振り向くとその人はどう見ても人間ではなかった。いや、パッと見て二足歩行だし、顔や身体の造りも人間のそれっぽいのだが、着ている服から出ている腕のロボット特有の関節や、顔の両目から下に延びる線を見れば物質界の人間なら誰しもロボット(アンドロイド)だとすぐに分かる。
いずみもその人が人間でない事をすぐさま気付き、思わず後退る。
「アノー、ドウシマシタ?」
「あ、いや、その……何でもないです」
「エ?」
「すみません、失礼します!」
「ア、チョット!?」
アンドロイドの女性の制止を振り切り、いずみは脇目も振らず走ってその場から離れた。
しかし、
「ハイ……ハイ。セイゾウ(製造)バーコードヤ、シキベツ(識別)スキャンニモハンノウガアリマセンデシタ」
いずみの不審な行動に違和感を感じたアンドロイドの女性が逃げるいずみにバーコードが無かった事や、相手が誰なのかを認識する為のチップが体内に無くスキャンが通らなかった事で更に不審さが増したアンドロイドの女性は治安組織(警察の様なもの)に電波で伝え、これによりいずみにとって更なる不幸が襲う。
いずみがアンドロイドではない事はこの女性も分かったので製造バーコードやスキャンが通らなくても瞳に搭載されているモニターでいずみの姿を治安組織に送り、瞬く間にいずみはお尋ね者となり、気が付けばいずみは警察っぽいアンドロイドに三日三晩追われる事になったのだ。
幸いな事にいずみは友達と文化祭の買い出し、特に飲食店での買い物だったので一緒に落ちてきた荷物がほぼ全部食べ物だった事だ。この世界では川に流れる水以外全部が金属で出来ている為食べ物が確保できないのだ。
この世界に来て直後、いずみは誰にも持って行かれないな場所に荷物を隠していたがそれが功を為して何とか食べ物を確保出来ていたのだ。
しかし、それも長くは続かない。
食べればその分食料は減り、4日目の朝にはもうクラッカーが数枚しか残っていない状況になり、何とか他に食べられそうな物を探そうとするが追われている上に回りはほぼ金属だ。食べられる訳がない。おまけに街の外に出ようにも常に門番がいる為出られそうにもない。
いずみの絶望感が高まる。
「ヨ、ヨウヤクオイツメタゾ……」
「サンザン、テコズラセオッテ……」
「ツカレタ……」
「サァ、カンネンシロ」
「あ……ああ………」
そして空腹に耐えて意識が朦朧としている間に取り囲まれ、最早抵抗どころか逃げる体力も気力も失せ、膝を着き、治安部隊によって取り押さえられた。
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・
「………ぁれ?」
そしていずみが次に気が付くと、そこはどこかの医療室でいずみはそこにベットに寝かされていて腕に点滴をされていた。
「あ、気が付かれました?」
「ぁぇ?」
声を掛けられ、いずみが声のする方を向くとそこには一人の女性がデスクの椅子に座って本を読んでいた。しかもよく見ればその女性も人間ではなく、アンドロイドだった。
でもその女性はさっきまで見たロボ感満載の人達ではなく、見た目、動き方や喋り方が人間に近い。でも頭(両耳のやや上)にアンテナみたいな角がある事から人間じゃない事だけは分かる。
「喋れますか?」
「あ、うん……大丈夫だけど、ここはどこ? それに貴女は?」
「私の名前は世界観察機関に属しているアンドロイドの『アンドロメダ』。通称『アン』と及び下さい。それとここは貴女が先ほどまでいた世界ではなくその外にある亜空間内に浮かぶ艦【アルナナ】の医務室です」
場所と名前を聞かれ、アンと呼ばれたアンドロイドはいっぺんに捲し立てて言った。
「え、何処だって?」
この目の前にいるアンドロイド女性の名前は分かるがここが何処なのか
「貴女が先ほどまでいた『機界』ではなく、その世界の外にある亜空間という場所に浮かぶ艦【アルナナ】内の医務室です」
「………ごめん。何を言っているのか全然分かんない」
「そうですか……。ならとりあえずここは貴女が先ほどまでいた場所ではない、とだけ分かって頂けますか?」
「それなら何とか……でも私、どうしてここに?」
いずみの記憶が確かならば気を失う前、警察っぽいロボに捕まっていた筈だ。でも何で目が覚めたら別の世界(?)に居るのか、いずみには理解不能だった。
それもその筈。いずみは最初から治安部隊から「捕まったら最悪殺されるっ」と思い、ずっと逃げ続けていたのだがアンの説明ではどうやら異世界から迷い込んだ者を保護する為に追いかけていたらしいのだ。
つまりいずみがさっきまでいた『機界』は機関の管理下にある世界で、この世界のお偉いさん方が迷い込んだ者の報告を聞き、機関へ連絡がいって今、こうしてわざわざ艦で迎えに来た。ということらしい。
「あれ? その人、目が覚めたんだ?」
アンが説明し、いずみにとってその説明の半分が理解不能で頭を捻っていると医務室の扉が開き、そこから裾の長い白衣を着た眼鏡の女の子がペロペロキャンディを咥えながら入って来た。よく見れば裾だけでなく袖も長く、手の先から袖が垂れ下がっている。
「君は?」
「ボクかい? ボクはリク。科学者さ」
いずみが尋ねるとリクと呼ばれた女の子は口に飴を咥えたまま腰に手を当ててて踏ん反りがえる。
「そしてこの方は私を作った博士であり、この艦の艦長です」
「え、この小さな女の子が!?」
足りない説明をアンが引き継いで言うといずみがビックリして言ってはいけない事を言ってしまう。
「むがー! 誰が女の子だ! ボクは男だぞ!」
「え、嘘。女の子にしか見えないよ? とっても可愛いし」
「うがー!(怒)」
だって髪はピンクでおかっぱだし、幼いからか身長も低いし声も高けりゃ顔も女顔だ。それに加えて白衣のダブダブな袖や咥えているペロキャンがより一層女の子さを引き立てている。眼鏡はどうでもいいけど。
「は、博士落ち着いて下さい。爆弾は出さないで下さい!」
「アン、止めるなー!」
「あはははは」
何処から出したのか火の付いていない爆弾を取り出すリクとそれを止めるアン。その光景を見たいずみはおかしくて笑う。
「あはは……(涙)」
「博士博士(焦)、彼女何か様子が変ですよ?」
「──む? どうした? どこか痛いのか?」
「ははは……ううん、ごめん。何だかおかしくて笑ってたんだけど、それと同時に何だか安心しちゃって、つい……」
「そ、そうか。大変だったんだな……」
大丈夫だと笑いながら泣くいずみにリクの怒りの炎は鎮火した。
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その後、疲れが溜まっていたのか約1日中いずみは寝て、翌日起きた後、アンの案内でブリッジに案内される。
そこには司令席っぽい椅子に座っているリクがいた。
「ん? おー、おはおー」
「お、おはよう」
いずみとアンに気付いたのか椅子を回して後ろを振りかったリクが昨日と同様、ペロキャンを咥えながら言ってきたので、そのリクの姿にいずみは思わず「も、萌え」と言いそうになったが何とか堪えた。
実はブリッジに入る前、アンにこう言われていた。
「いいですか? 昨日は何とか落ち着かせましたが博士には『可愛い』だの『小さい』だの『女の子みたい』とかのセリフは思っていても言わない様、お願いします。でないと本当に爆弾で攻撃してきますから。はい」
「何それ怖い!? でも何か照れ隠しみたいで可愛い!」
「……くれぐれも本当にお願いしますよ?」
「あ、うん。分かったからどアップで顔を寄せないで。真顔は流石に怖いって……」
はぁ、と溜息を付くアンにいずみは「本当に人間っぽいわね」と思った。それほどアンの人工知能は高いらしい。
禁止ワードに気を付けながらいずみはリクから組織内容といずみが置かれた状況を聞き、いずみがいた世界が既に調査済みで帰ろうと思えばすぐにでも帰れるという事を言われたのでいずみは「すぐにでも帰りたい!」と言った。
しかし、
「けどごめん。君を元の世界に帰す事は出来なくなったんだ」
「え、何でよ! 帰れるって言ったじゃない!」
「ま、まぁまぁ、いずみさん。落ち着いて下さい」
「これが落ち着ける訳がないでしょ! この二セロリ!」
「誰が二セロリだ! いいから人の話聞けー!(怒)」
スパンッ!
「あ痛ー!?」
流石にいずみの心情を察しているのか、袖から爆弾ではなく大きいハリセンでいずみの頭を叩いた。
「まったく……。厳密に言えば『帰る事』は出来るよ。でもさ───」
そう言ってリクはデバイスを操作し、モニターにいずみの世界の地球を映す。
「え、何……コレ?」
「何と言われても地球、としか言えないよ。真っ二つになっちゃってるけどね」
そういいながらリクは眉を顰めて「どうなったらこんな事態になるんだよ?」と呟く。
いずみが見た地球は見た通り真っ二つに割れており、かろうじて底の部分で繋がっているパックマン状態だ。割れた所からは溶岩が噴き出ており、割れる場所から近い場所では建物が溶岩で溶かされ蒸気が凄い事になっている。また、離れた場所でも地球が割れてしまっている事でオゾン層が機能しなくなり太陽光、それも紫外線などがダイレクトで当たり、色んな場所で被害が出ている。
そして最悪なのが酸素量の低下だ。
オゾン層の破壊、及び溶岩による酸素の燃焼による一酸化・二酸化炭素の大量生産により窒息死する生き物達。それは瞬く間に地球全体を襲い、とてもじゃないが生物がまともに生きていける環境ではなかった。
そんな光景を目の当たりにしたいずみはへたり込んで黙ってしまった。
で、本来ならそっとしておくべきなのだろうが空気の読めないお子様なリクは、
スパンッ!
「痛い!?」
「博士!?」
呆けていたいずみの頭を再び叩き、アンがビックリしている。まさか死人蹴り(?)するとは思ってなかったからだ。
「気持ちは察するけどこっちも君の心の整理を待ってるほど暇じゃないの。で、君が次元転移する前、一体何があったのさ?」
「何がって……それは─────」
膝立ちになったまま呆けるいずみの前に立ちリクはいずみの事情を聴いた。
「転移する前に起きた大きな地震ね。ちょっと待ってなー」
そう言ってリクはいずみの世界の神に頼み、3種のシステムを調べた。
「終末現象及び、システムの異常は無いのか。だったらこのパターンは………ヒット!」
次にリクはアカシックレコードを調べ、いずみの世界の地球について調べた。
すると、地球が破壊される一週間前、ヨーロッパの方で何か大きな物が次元転移してきており、それを持ち帰って地下に運んだその国で大規模で致命的な爆発が起き、で、こうなったらしい。
その次元転移してきた大きな物というのが、
「地核破壊……兵器?」
そう、星を破壊する程の凶悪な兵器『地核破壊爆弾(兵器)』だ。それもこの兵器は未来の世界に属する『近未来』から転移された物で、そんな超危険な物だとは思わなかったのであろう、バカな国が自国の強化を図ろうと持ち帰り、バラそうとしたが、間違って兵器が起動し、そのままドカーンだ。
おまけにこの兵器は本来、5~6基くらい無いと星を破壊できないタイプで、1基だけではそこまでの威力は無いのだが、バラそうと持ち込んだ場所が地下深い場所だった事で地核から近い場所で兵器が作動した事で1基だけでも致命的な爆発が起き、そのまま地球を真っ二つにしてしまったのだ。
と、いうのがリクの見解だ。
「まぁ、この状態の星にどうしても帰りたいって言うなら送ってあげるけど……それでも帰りたい?」
「そんなの……無理でしょ」
「ま、当然だね」
リクに言われいずみはもう一度自分の世界の地球を見て首を横に振った。
ちなみに地球が破壊される時、いずみと同様に外の世界に投げ出された人が大勢いるらしい事もシステムを見てリクは知り、オペレーターの子にサーチを掛けさせた。それと同様にこの地球にまだ生き残りがいるかもしれないという事で、それもサーチを掛けさせて生き残りの生物を探させた。
そしてその後、いずみは気分が優れないと再び医務室に戻って睡眠薬で寝かしつけた。
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「それで博士、いずみさんの処遇はどういたしましょうか?」
「ん? それは本人に聞かないと分かんないさ。でもボク達についてくる気なら協会に預ける方が良いかもね」
「分かりました。ではいずみさんが目を覚ました後、どうするかを相談するとします」
「任せたよー」
そう言ってアンはブリッジを後にし、リクは再びデバイスを操作する。
「近未来から地核破壊兵器が転移してくるなんて危険すぎる。何か嫌な予感しかしないや」
ペロキャンを咥えながらリクは機関及び協会に「この事があったよ」と警戒する様に伝えた。
次回は『異邦世界』です。




