第22話 ~佐夜の奇跡~
この話で佐夜が再び僕っ子口調になります。
「ぺたぺたぺた。う~ん、さらしで巻いている様な感触は無いわね」
「……何やってんの?」
ゆかりが何故か佐夜の胸板をさわさわと触っている(意味不明)。
「あ、いや、ね。私が貴女を初対面で見た時、胸大きかったじゃない貴女?」
「あー、あの時か……」
佐夜も美里に憑依されていた時の影響の事を思い出した。
憑依された女性化した時、股間の喪失感と、当然の如くブラなんて着けていないものだからEカップもあるおっぱいの先端(直球的表現は控えます)が擦れて擦れて……ずっと痛みを堪えていたのは内緒である。
「ここに来る前、皆に「佐夜は男だー」みたいな事を言われていたんだけど、貴女の……こほん、貴方の無くなった胸を直接触るまでは全然納得してなかったわけ」
「無くなったって……元からねぇよ」
「……でもおっぱいが無くても男の子には見えないわね」
「それもよく言われるけど……ってどこ触ろうとしている!?」
「どこって……言わせないでよバカ(ポッ)」
さり気なく人の股間を触ろうとしたゆかりの手を掴む。痴女か!?
「だってほら。おっぱいが(Aカップ以下の)全然無い女の子も存在するじゃない? だったら上じゃなく下を触れば分かるかなぁーって」
「だからって勝手に触ろうとするなよ。いや、聞いても触らせないけどさ!」
「えー」
「えー、じゃない。つかアンタそんなキャラだったのか!?」
「ふっふっふー」
「不敵な笑みを浮かべる所じゃないだろ全く……」
やや破天荒のゆかりの行動に脱力する佐夜。
「でもお話しするだけの気力が戻ったんじゃない?」
「あ……」
「さっきまでの貴方、悲壮的な顔してたからね。もしその顔を一般男子が見たら心を鷲掴みにされて一発で落ちちゃうわよ。恋に」
「そんなの知るか!」
幻想界レニアナでそんな経験があるだけにトラウマってる。
「……それで? 結局アンタは何しに来たんだよ?」
「何しにってお話に来たに決まっているじゃない」
「ただ話するだけなのに何で胸やら股間に話題が行くかなぁ!?」
「だって気になったんだからしょうがないでしょ!?」
「逆ギレかよ! ったく……それで話っていうのは?」
全く話が進まないゆかりに怒ると逆ギレされた。
佐夜の身体について気になったゆかりの好奇心が一通り落ち着いた所でようやくゆかりが話し出す。
内容は会議室で皆に話したのと同様に自分達の過去話と、佐夜と自分達の共通点を話し佐夜が今後、どういう道を辿るのか問いだす。
しかし、
「ちょっと待て。つまり何だ? この世界でもその異能者バトルが行われているとでも言うのかよ!?」
「ううん、その可能性は低いって言ってた。その代わり佐夜君の代替えの人が現れたって事は佐夜君は将来『世界に貢献する有名人』か『歴史に残る芸能人』になる可能性が高いんだって」
「芸能人は分かるが世界に貢献するって何者になるんだ俺?」
「う~ん、この場合は貴方じゃなくて代替えの人の方じゃない? 今となっては」
「あ、そっか……(´・ω・`)」
「ご、ごめん。落ち込ませちゃった……」
この世界にとって最早いらない存在となっている佐夜がその事を思い出し、再び落ち込んだ。
閑話休題(慰め中)─────
「ズーン………」
「失敗しちゃった………」
再度慰め中──────
20分後───────
「そうだよねっ。人生生きていればいつか良い事あるよねっ!(ふんすっ)」
「そうよ、私達は世界を管理する立場なのだから常に前を向いて生きていかないといけないの。人間だから!(ふんすっ)」
「やるよー! 僕はやるよー! やったるよぅー!(うおー!)」
「………自分で言うのもなんだけど、やりすぎたかしら?(何気に僕っ子になってるし)まぁ、元気出たみたいだからいっか」
明らかにやりすぎたと頬をかきながら苦笑するゆかりを余所に佐夜は変なテンションになりながらも元気を取り戻した。
ちなみにゆかりは知らない。佐夜が一定のショックや精神的ダメージ、または落ち込んでいる時に付け込むと、たまに佐夜の性格や口調(僕⇔俺)が変わる事があるということを。
「う~ん……っ。元気出たら何だかお腹空いてきた。そういえば僕、リオを撒いて逃げちゃってたんだっけ。リオ怒ってるかな?」
現に既に佐夜の口調が『僕』で固定されてしまっているし……それに何気に仕草が女っぽくなっている様に見えるのは気のせいかしら、とゆかりは思った。
「さて、じゃあ佐夜。改めて聞くけど今後、貴方はどうしたい?」
佐夜を振り向かせて真面目な顔でゆかりは佐夜に決断を迫る。
1、自分の居場所を取られたとはいえ、ここは自分の故郷なので別の名前に改名し、別の人間としてこの世界で生きていく(推奨)
2、自分の居場所を取られ、色々な理由から居づらくなったので別の世界に移住する(物質界なら物質界へ)
3、自分の世界に帰属出来ないので、佐夜の希望があれば協会や機関入りする事が可能。もしくは世界破壊者同様にライセンスを取り『異世界旅人トラベラー』に進む道。
4、絶望し、自らの運命を閉じる(死、もしくは闇落ち)
まぁ、この時点で『4』の可能性は無くなったので残りは1~3番のどれか。
「僕は───────」
そして佐夜は決断する。
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時刻は午後4時の夕方。一人の女性が小さなビニール袋を持って帰宅ルートを歩いている。その中身からして調味料の類なのできっと夕飯の調理中に足りなくなった物を買いに行ったのだろう。
「あら?」
すると一軒家の自宅前まで来た女性が自宅前にいる女の子に気付く。
その女の子は何故か悲しい顔をしながら買い物帰りの女性の家を見ている。
「ぁ………」
「貴女は……?」
するとその女の子も女性に気付き、女性が声を掛けると涙を潤ませた。が、ギリギリ涙は流さない。堪えたのだ。
「ご、ごめんなさい。他人の家、ジロジロ見ちゃって……」
「いや、いいのよ、見る位なら。それより何で泣いているのかしら?」
「え、あ、いや、これは………」
女性が感極まってウルウル状態の少女───佐夜に指摘すると、佐夜は急々(いそいそ)と涙を拭い、口籠る。まさか母親に見つかるとは思ってもいなかったのだ。
そう、この女性は先ほど再会できなかった佐夜の母親である。
「これは、その………この家が僕の家に凄く似ていたのでつい……」
「この建物が自分の家に似てたから見ていたのは分かるけど何故、泣いていたの?」
「それは、その……家庭の事情で色々あって……」
「そう……」
泣いてた理由を聞くと佐夜は悲しく笑い、間違ってはいないが適当にはぐらかし、母親はその佐夜の表情を見て何かその表情に見覚えがあり、とある予感を感じていた。
「じゃ、じゃあ僕はこれで………」
このままいると感情が爆発してしまいそうなので、佐夜は顔を見られない様に俯きながら母親とすれ違ってここから永遠にサヨナラしようとした……。
するとここで思いもよらなかった奇跡が起きる─────
「………佐夜?」
「っ!?」
母親とすれ違い、溢れ出そうな涙を堪えていた佐夜は母親に呼ばれる筈の無い名前を呼ばれて思わず振り向いた。
「な、何…で……?」
「分かったの?」と佐夜は言いたかったのだが嬉しさの感情が溢れ出し、涙も流れ上手く言葉に出来ない。
「やっぱり貴方だったのね佐夜……」
「わっ……」
すると母親の方から佐夜に歩み寄り、抱きしめる。
「何で……分かったの?」
「それは見れば分かるわよ。自分の子供くらいは、ね」
「っ!? ~~~~~~~っ!(涙)」
しゃっくりを上げながらも泣くのを我慢する佐夜の背中をポンポンと叩き、擦りながら言う母親の優しさに、とうとう佐夜は泣き出した。
「あらあら、しばらく会わない内にすっかり泣き虫さんになっちゃったのね」
「だってぇ……っ」
大泣きまではいかないが声を押し殺して泣く佐夜に母親は、
(この子がこんな姿になるなんてホント、色々あったのね……)
と、変わり果てた息子の姿を見て苦笑した。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・。
「なるほどねぇ。そんな事が………」
「まぁ、普通は信じられない内容だとは思うけど……」
その後、外に居たらご近所さんに見られてしまう恐れがあったので、母親の提案で佐夜はもう戻る事が出来ない筈の自宅へと入って今まで佐夜の身に起きた出来事を話す。
当然いきなりファンタジーな出来事を話されても信じて貰えないだろうと思った佐夜は母親に昨日割ったという皿を出してもらい、錬成術で直して佐夜の出来事を証明し今に至る。
「それで佐夜、貴方これからどうするの?」
そして母親が佐夜のこれからについて核心に迫る。
「うん。僕は───僕はこの世界を出ようと思う」
佐夜は少し俯き、いよ決して言った。
「……一応、理由を聞いていいかしら?」
「え、うん……」
『この世界から出る』という単語を聞いた母親は少し悲しそうな顔をして、どうして佐夜がそんな決断をしたのか聞いた。
「僕は今回、こういう被害に遭いつつも何とか無事に帰ってこれた。けどね、こういう『異世界に次元転移する』っていう事例は僕の以外にも沢山いるみたいなんだ」
「沢山?」
「うん。ほら、たまにニュースとかで聞かない? 『毎年年間○千人が失踪・行方不明になっている』みたいな事?」
「え、ええ。確かに年末とかのニュースでよく見るけど……ってまさかそれって!?」
「うん。失踪・行方不明した全員がみんな次元転移してるわけじゃないけど、僕を保護した人達が言うには『各・物質界での次元転移者は年間百人以上にも上る』って。だから約1割の人達が僕の様に異世界とかに行っちゃっているんだと思う」
「はぁ……そんな事が本当にあるのねぇ」
ヴァンやマロンから聞いた話を佐夜はそのまま伝えると母親は溜息をしつつも佐夜の謎の成長に感心していた。昔はここまで人の話を聞く様な子じゃなかったのに、と。
「それに加えて僕達がいるこの世界に似た平行世界や近似世界からも同様に被害者が出ているから全部合わせるととんでもない数になるんじゃないかな?」
「そ、想像したくないわね、それ……」
「そうだね。僕も現状どれだけの人が被害に遭っているのか分かってないからね」
今の佐夜が分かっている被害者は幻想界アルフィーニで出会った人達と舞華だけだ。
「それでこの世界を出て行くにしたって行く当てはあるの?」
「それは────」
「そこは俺が説明しよう!」
「っ、ヴァン!?」
独り立ちしようとしている息子を心配する母親に佐夜が答えようとすると、突然玄関のドアが開きそこから見覚えのある灰色の髪をした青年ヴァンが立っていた。
「どうぞ、粗茶ですよ」
「あ、これはご丁寧に頂きます(ズズズ)」
何故か玄関に居たヴァンをリビングに引き入れ、お茶を出されたヴァンがズズズとお茶を啜り、ぷはぁと息を吐く。何、お茶を楽しんでるんだ?
ちなみに玄関から突撃してきたヴァンはその後、キチンと菓子折りを(異世界産のやつ)持ってきており、母親と挨拶を交わしていた。ついでに言うと佐夜の母親の名前は『美里沙奈』というらしい。
「それより何でヴァンがここに来たのさ?」
「そりゃあお前、何時まで経っても戻ってこないからさ。みんな心配してるぞ。特にリオの奴はな」
「あー」
そう言えばリオの事をすっかり忘れていた。ヴァンの話ではどうやら逃げた事は怒っていない様だ。
「それよりも佐夜と貴方達についての関係を聞きたいのだけどいいかしら?」
「あ、ああそうだった。その事も含めて話せる事は話しましょうか」
「……変な事は言うなよ?(ジト目)」
「分かってるって任せろ」
佐夜の牽制にヴァンが手を振って了承する。
ちなみに佐夜の言う変な事とは、レニアナでの王城ダンスパーティでのドレス姿や、アルフィーでのメイド、そしてミシバイクロでの女性化の事である。
これまでにも経験があるのか、スラスラと協会や機関組織の概念や活動内容、そして佐夜が行ってきた事の一部を除き、佐夜がこれまで活躍した内容を話すヴァン。
「戦いって……そんな危ない事もするの?」
「いや? 佐夜の様な戦闘に向いていない者はサポート重視で、戦いは基本俺達の担当だ。つってもこいつの場合、勝手に戦闘に加わっているからな」
「いや、だって味方が心配で……」
「だからって勝手に戦闘に参加して命を落としたらどうするんだ?(ジロリ)」
「う……ごめんなさい」
「分かりゃあいい」
これまでにも戦う必要の無い所で何故か戦闘に参加していた佐夜を叱るヴァン。先ほども言ったが佐夜はゲスト扱いなのであまり戦闘には参加させられないのだ。
「うふふ」
「? どうしたんですか急に?」
すると2人のやり取りを見ていた母親・沙奈が優しい笑みを浮かべる。
「いえ貴方達、結構仲が良いのね~って思って、ね」
「そ、そうなの……かな?」
「おい……そんな意味深な顔でこっち見るな。誤解されるだろ」
母親が2人の仲をニヤニヤと見つめ、佐夜が何故かモジモジしながらヴァンを見、ヴァンがツッコむ。少なくとも佐夜とヴァンはそれほど長い時間一緒にはいない筈だ。過ごした時間が長いのはリオだけだ。
「ここまで佐夜の事を心配くれている人がいるのなら私も安心して任せられるわ」
「おい、変な意味じゃないよな? な!?」
両手を合わせて首を傾げながら笑顔で言う沙奈に背筋が凍ったヴァン。
「うん。何か困った事があったら迷わずヴァンに助けて貰うよ!」
「だからお前も意味深な事を言うな!?」
この親にしてこの子あり、とはよく言ったものだ。
「佐夜、色々と大変だろうけど頑張るのよ!」
「うん、頑張るよ!」
「あ、頭痛い……」
「何なんだこの母娘(?)は……」とヴァンは頭を抱えた。
再会した当時は悲しくて泣いていた佐夜だったが、母親である沙奈のファインプレイによって佐夜の心は大きく救われ、別れる時には笑顔で送り出してくれた。
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「うう~、良かった、良かったよぅ~」←リオ
「良かったです~」←陽菜々
「ああ……一時は本当どうなるかと思ったぜ」←やすし
「うむ……(しみじみ)」←ニケ
佐夜の自宅から少し離れた公園で佐夜に着けた盗聴器(ゆかりと会った時に着けられていた)で話を聞いていた協会機関メンバーの一同及び、亜空間の艦で待機している者達が佐夜の奇跡に感動していた。通常ならこういう場面で必ずアン・ハッピーエンド(妥協した終わり方)になるのだが、何故だかは知らないが佐夜は上手くいったようだ。
笑顔で送り出してくれた母親。しかしまだ謎が残っている。
それは次回へ。
では。




