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第19話 ~別れと帰属。そして……~

今回はシリアス回で長めの話です。

最後には予想外の展開(?)が?

「亜空間───というかこういう艦(ふね)に乗るのもこれが最後か……二回しか乗ってないけど」

 サイエンGOの窓際にあるベンチで黄昏る美少女、佐夜がアンニュイな表情で物思いに耽(ふけ)っていた。ちなみに身体は元(の男の身体)に戻っている。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 物質界・ミシバイクロでの事後処理中にやって来た協会メンバー『茨木透(いばらぎとおる)』によって剛達、世界破壊者(コードブレイカー)の一団は事後処理が終わる前にこの世界を去る事になり、それは佐夜との別れという事にもなり、前日佐夜が不貞寝していた所にリアがやって来て土産と共にお別れを告げにきた。


「貴女との出会いと過ごした時間は私にとってとても大切な物でした。これで最後になってしまうのは残念ですが、せめてこれを私だと思って受け取ってください」

「あ、おう……。俺もリアさんには結構色んな場面で助けて貰ったしな。こっちこそ感謝したいと思ってたんだ。けどそっか、もう行くんだな」

「はい。『異世界旅人(トラベラー)』のライセンス教育というものの講習が迫っている為、事後処理を待たずに出る事になりましたので」

「そうか……寂しくなるな」

 そう言って佐夜はリアから渡された紙袋を受け取る。中に入っていたのはウサギのストラップとどことなくリアに似ているこれまたウサギのヌイグルミ(小)だった。


「これは何ともリアさんっぽいチョイスだな」

「ええ、これがあれば佐夜さんも私を忘れる事が無いと思いまして」

「そうか、ありがとう……」

 受け取った物を大事そうに抱きしめる佐夜。この時点ではまだ女の子なので違和感はない。男の娘のままでも違和感は無いと思うが。


「ですが『さよなら』は言いません。いつかまた会いに行きますので。……それでは佐夜さん、また、いつか」

「ああ、元気でな」

 涙を堪えながらも必死に耐えたリアに佐夜は笑顔で送った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「やほー、さやや。隣、いい?」

「リオか(こくり)」

 リアとの別れを思い出し終えた直後、後ろからリオが声を掛けてきた。


「もうすぐお別れ、だね……」

「そうだな……」

 特に何か用がある訳でもなく、ただ2人して亜空間を見続ける。


「さややは、さ……」

「ん?」

 すると突然リオは顔を伏せながら再び佐夜に声を掛ける。


「さややは皆と別れるの、寂しくない?」

「何だ唐突に。そんな事か……」

「そんな事、じゃないよ!!」

「うお!?」

 佐夜の失言にムカッとしたのかリオが立ち上がって大声を出して佐夜ビックリ。


「さややにとってリオ達はその程度の存在だったの!?」

「いや、そうじゃないけど……って近い近い……ってうわぁ!?」

「ひゃあ!?」


 ドサドサッ────


 激オコするリオが眼前にまで迫ってきて、佐夜は思わず仰け反ったらリオごとベンチから転げ落ちた。


「痛たたた……。リオ、大丈…夫………」

「~~~~~っ」

 やや押し倒される様に転げ落ち、佐夜が上に乗っているリオごと身体を起こそうとすると、何故かリオがそのまま抱き着いてきて、佐夜の胸に顔を押し付け声を上げずに泣いている(ちなみにもうEカップではない)。


「……リオ?」

「寂しいよ………」

「え……?」

 突然泣き出すリオにどうしたらいいか分からず声を掛けるとリオは静かに言い、佐夜が聞き返す。


「さやや、いなくなっちゃイヤ!」

「いや、俺にそう言われてもな……」

 少なくともこれは佐夜を保護した協会と佐夜に関わった機関メンバーとの話し合いで決まった事で佐夜の気持ちでどうにかなるものではない。


「じゃあさやや、隊長達を説得してよっ」

「だから無理言うなって!」

 泣きっ面で膨れながら言うリオにツッコむ。


「ずっと一緒にいられると思ってたのにぃ………」

「だから泣くなって。そもそも何でお前は俺にこだわるんだ? 協会の仲間ならいっぱいいるんだろ?」

「それはそうだけど、そうじゃないんだよ~」

「どういう意味!?」

 そうだけどそうじゃないって意味が分からん。


「それは俺が説明しよう!」

「うわ出た!?」

「……アンデッドを見る様な視線は止めてくれ。地味に傷付くぞ……」

「あ、ごめん。つい……」

 リオが支離滅裂な事を言い出すので困っていると、何処からか現れた義信が颯爽と現れた。が、先日の義信死亡説から見事に(ギリギリで)復活したとあって「こいつ人間じゃねぇ」的な視線がちょくちょく佐夜から義信に突き刺さる。


「で、何の用だ?」

「ん? あ、そうだったそうだった」

 佐夜から送られる変な視線で話が逸れたが修正する。


 義信の話では、

 協会機関に置ける次元迷子(難民)や召喚者などは基本、元の世界に還すのが決まりとなっている。でないと新世界『イニシエ』がパンクするらしいからだ。

 しかし元の世界そのものが消滅したり、元の世界での居場所がどこにもない舞華やベリアル&ツァーヤ、魔王と化してしまった真桜、その真桜がまだ10才と幼い事もあってその保護者としての同伴を許された愛沙と正義は現状少なくとも帰属、または別の世界にすぐには移住できない。故に協会や機関で預かる事になっている。

 そして元の世界で奴隷だった事もあり帰属願望が無いリア達や世界破壊者の剛も同様に他世界へ移住させる事は色んな意味で危険なので、とりあえず一旦預かる事になる。


 しかし佐夜の場合、舞華や真桜みたいな事情が無い上、剛の様な危険因子の持ち主でもない、そして何より真っ白だった世界が元に戻っ(・・・・)ている(・・・)事から帰属する事が可能になり、佐夜だけはすぐに還す事が決定した。

 ちなみにリオが願っていた協会機関への残留願望は自己のワガママ程度では通る訳もなく、余程の事が無い限り(愛沙や正義のパターン)は残留などできない。


「ほらリオ。佐夜との別れが寂しいからって報告書書くのサボるな。行くぞ、楓に怒られる前に」

「うわ~ん。さやや~~~~………(泣)」

「は、ははは………」

 ずるずると義信に引き摺られながらリオが退散し、ベンチには再び佐夜だけになる。


「………」

 誰もいなくなったので再びベンチに座り、何も考えず亜空間を見続ける佐夜。


「あれ佐夜、こんな所で何をしてるの?」

「……愛沙」

 すると今度は愛沙が私服姿でやってきた。


「いや。何もしてないし何も考えてもいない。………ただ」

「ただ?」

「あれだけ慌ただしかった日々が終わるのかと思うと何だかこう……切なくてな」

「そう……。何となくだけどその気持ち私にも分かるわ」

「分かる?」

「ええ。私だってこれまで一緒に過ごしてきた佐夜(なかま)が突然これでお別れだもの。寂しいし切なくもなるわ」

「そっか……。あれだけ最初、異世界に来てしまった時は『早く帰りたい』なんて思っていたのに今じゃまるっきり逆だからな。おかしいよな」

「何もおかしくは無いわよ。それも凄く共感できるわ」

「共感?」

「ええ。私や正義って佐夜みたいに何かの才能があって自力で習得した人と違って私のこの白魔法(ホーリィ)能力は召喚による特典の『祝福(ギフト)』によるものだからね。もし真桜が攫われていなかったり、魔王化せずに元の世界に帰る事になったら送還術を使用されて能力や記憶ごと消されてしまうもの」

「ああ、確か義信やユフィさんがそう言っていたっけ」

「だから送還術で元の世界に還されなかった事に正直ホッとしているの」

「羨ましい限りだな」

「ええ。だから生き抜くために自力で能力を習得した佐夜の方が元の世界に帰される事に凄く切なさを感じるの」

「そっかぁ。俺の事を思って切なくなってくれるのか。……ありがとうな」

「どういたしまして。ちなみに正義や真桜も同じ気持ちの筈よ」

「じゃあ戻ったら2人によろしく伝えてといてくれ」

「分かったわ。……じゃあ、戻るね」

「じゃあな」

 そう言って2人は別れる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あ、ようやく戻ってきたか」

 あれから1~2分して佐夜も部屋に戻り、入るとそこにはヴァンがベットで横になって寝転んでいた。

「え、何でここで寝てるんだよ?」

「いや、最初は普通に椅子に座って待っていたんだが中々お前が戻ってこなかったんでな。つい」

「ついて………」

 どうやら結構待っていた様だ。


「それで、だ佐夜。元の世界に帰る時の規則について説明するぞ」

「あ、ああ……」

 遂にこの時が来たのかと佐夜は覚悟を決めた。


 召喚対象者以外の者が元の世界へ帰属する場合、手動で召喚者同様に『記憶処理』と『能力封印(または削除)』をする必要がある(召喚者は送還された時点で自動で記憶・能力抹消済み)。

 これは今、佐夜が感じている寂しさや切なさ、非日常で慣れてしまった感情、生活リズムを元に戻す為である。

 それでヴァンがここに来たという事はまさにその『記憶処理』と『能力封印』をしに来たのだろうと佐夜は思った。


 しかし、

「元の世界に帰す前に対象者を眠らせてから色々と処置を行うのが本来のやり方なのだが今回の場合、ちょっと事情が変わってな」

「事情が変わった?」

 腕を組んで眉を顰めるヴァンに佐夜が首を傾げる。


「ああ、何でも機関サイドの勇治郎とゆかりが佐夜の世界について少し気になる事があるらしくてな。それまで処置を行うのは待ってくれと言われたんだ」

「気になる事?」

「さぁな。恐らく佐夜、お前とお前の世界について何か違和感を感じ取ったのかもしれない。現に来る必要の無い機関の連中も一緒に着いてきてるしな」

「違和……感?」

「ま、それは元の世界に着いてから判明するだろ。それまでは色々ともやもやするだろうがみんなに挨拶くらいはしておけよ」

「あ、ああ。それは既に終わらせてる。後はヴァンだけ」

「そうか……」

 どうやらヴァンが部屋で待っている間に済ませている様だ。


「ヴァン。レニアナから今まで少しの間だけどお世話になった。ありがとう」

「おう。これが俺達の仕事の一部だからな。じゃあ佐夜、明日転送装置前にちゃんとこいよ」

「分かってるって」

 そう言ってヴァンが部屋から出て行った。


「ふぅ………」

 誰もいない部屋で佐夜は先ほどまでヴァンが寝転んでいたベットにうつ伏せでダイブし小さく息を吐いた。


(これで、佐夜の大冒険は終わるのね……)

「だな。美里さんが憑いているこの腕輪も元の世界に着いてから外すらしいから美里さんともこれでお別れだな」

(短い間だったけどね。私はやすしと直接話せた事や、自分と瓜二つの存在と出会えるという色々と濃い稀有な体験をしたから満足したけど)

「じゃあ成仏すんの?」

(さぁ? 少なくともこの腕輪が壊されない限りは居続けようと思うけどね)

「そっか」

 そう言って美里との会話も打ち切り、佐夜は意識を手放した。

 翌日は早いから。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


[物質界A-917-00784T]


 季節は秋、現地での日付は9月下旬。丁度シルバーウィークの初日に当たる。


 時刻は朝7時5分。

 美里家の自宅から少し離れた場所にある公園に転送してきた佐夜。その佐夜を見送りにきたヴァン、リオ、楓、陽菜々、正義(愛沙と真桜は泣いて騒ぐ可能性がある為不在)。この世界での違和感を探る為に来た機関メンバーの勇治郎、ゆかり、やすし、そしてニケと舞華。


「とりあえず一先(ひとま)ず先に佐夜を自宅に帰し、その後様子を見て佐夜の処置を行う。いいな?」

「ああ、それで良いと思う。このまま何事も無ければいいが……」

 ヴァンの説明に勇治郎が答える。がその表情は晴れない。一体何があるのだろうか。


「佐夜、元気でな……」←正義

「くぅ~ん、くぅ~ん……」←陽菜々

「サヤ……っ(抱)」←ニケ

「元気でね……(涙)」←舞華

「みんなもな。無茶して死ぬなよ!(涙)」

 その傍らでは最後の別れをしていた。リオが泣きながら抱き着いている楓はリオを優しく撫でてあやす事しか出来ない。


「……じゃあ、佐夜。そろそろ行きな」

「………っ。ああ!」

 そして30分後、別れの時間がき、佐夜はゆっくりと自宅への道のりを歩いて行く。その後ろではリオが「さやや!」と叫んでいるが佐夜はもう振り向かない。


 公園から自宅までの距離は約1.5キロメートル。その道を佐夜が歩く。


 GW(ゴールデンウィーク)のあの日、真っ白になった世界で取り残された佐夜が何とか脱出した世界を今こうして歩く。


 その自宅前では佐夜の母親が家の前で落ち葉の掃き掃除をしている。


 それを見ただけでも佐夜の目に涙が出てくる。が、佐夜は走らず焦らずゆっくりと歩く。


 残り1キロメートル。この距離からならば親に抱き着いて「ただいま!」と言いたい所なのだが、ここは焦らず慎重に、いっその事いきなり出て来て驚かせようという思考すら出て来た。


 そして下を向きながら落ち葉を掃いていた母親がゆっくりと顔を上げ、正面に歩いてくる佐夜を視野に入れようとした。

 対する佐夜も母親と視線がぶつかる瞬間、母親にちゃんと自分の顔が見える様に正面を向く。



 遂に感動の再会か─────





 後ろで見守っている協会機関メンバーの誰もがそう思った時、衝撃的な展開を迎える。


 ガチャ。


 玄関のドアが開き、顔を上げた母親が正面でなく後ろを向いた。その事で佐夜は少しズッコケそうになったが、とりあえずもう一度こっちを向いた時に視線が合うよう前を向く。


 するとそこに予想外の出来事が起きた。


「もうっ、お兄ちゃん! 何で起こしてくれなかったの!?」

 玄関から出て来たのは佐夜の妹、凪咲(なぎさ)だ。これは別に予想外でも何でもない。世界が正常に戻ったのなら妹もこうして動くのは当然の事。


 しかし凪咲は家の内側の背後の人物に対してこう言っていた「お兄ちゃん」と。


 美里家は父、母、佐夜、凪咲の4人家族だ。凪咲の言っている『お兄ちゃん』とは一体ダレノコトナノダロウカ?


 佐夜の思考が一瞬フリーズしかけたが、それでも何かの聞き間違いだと気を取り直して歩こうとした。


 その瞬間、とんでもない者が佐夜の視界に映った。


「いやー、すまんすまん。俺もすっかり寝坊してな。ふぁ~」


「っ!? っっ!!??」

 その者が佐夜の目に映った時、佐夜の世界は完全に違う意味で凍り付いた。












 そう。美里家から出て来たのは紛れもなく、



 【美里佐夜(短髪)】……本人そのものだったからだ。



元の世界に帰って来た佐夜が見たものは自分だった?

その後どういう展開になるかは次回へ。

では

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