Hside オブジェ
(3)
腸の世界。
相も変わらず薄暗い場所。
コンクリートの壁に囲まれているこの世界の天井を駆け巡る管からは得体の知れない音がズォロズォロと漏れでている。
來禅はいつのもようにここの最奥に佇んでいる。慣れた手つきでその腰まで届くほどに長い金髪を結いながらぼんやりと「金庫」を眺めている。彼が何を考えているかはわからない。彼は戦闘行為をこよなく愛しているのでこの頃はこれを狙いに来る「奴ら」が少ないことを憂いているのかもしれないし単にそういえばこの中には何が入っているんだろうと今更なことを疑問に思っているのかもしれない。彼は野性が強いがしかしその頭の中ではオズよりも有意義なことを思考していたりもするので存外真面目なことを考えている可能性もある。色々と推察はきくがとにかく今の彼が考えていることは不明だ。
三つ編みが完成すると來禅はあたりをキョロキョロと見渡し始め、ふと近くに落ちている「奴ら」のうちの誰かが何時だったか落としていっただろう手首に目を留めた。
來禅はそれをひょいと拾う。「右手」と呟き、いじってみる。死後硬直という言葉では括り切れない強情さでその指は簡単には動かない。
その手首を持って來禅は再度近くを確認してみる。近くに今度はもはや腕と言っていいほどの部位だったがとりあえず手のあるものを見つけ拾ってみる。しかし「ハズレ」と言って直ぐに放り投げる。コロコロと転がるその腕は右腕。
その内に來禅は「アタリ」といって今度は肩ほどまである、というより左上半身までおまけでくっついてきている人体を拾い上げた。肋骨が数本ひゅんひゅんと飛び出ており片方の肺だかなんだかともかく何らかの内蔵が宙ぶらりん。見た感じではそこそこ最近の死体(の部位)。前の「奴」だったかその前の「奴」だったか。推している内に直ぐに分解されてしまった。來禅が肘から先の部分とそれ以外とをバキッと折ったからだ。
そして何をするのかと思ったら持っていた右手と新しく得た左手との角度と指の広がりに注意しながら掌を合わせ、力を出して上から圧迫する。ぐぐぐ。
ぐ、ぐぐぐぐ。
数秒もして離すと互いの手が絡み合い握手するような形になった。
來禅はウンウンと満足そうに頷くとおもむろにそれを闇へと放り投げた。ヒューッ、ドス!
そしてつぶやく。
「まだかにゃ~。オズ」
彼の空腹も精神もどうやら限界に達しているようだ。




