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前日譚、ハイ・ディメンター(絶対次元破壊者)

 外伝

 レアニス・ジェネシス

 第一話

 一人目の怪物


 王都西区画には誰も近付かない通りがあった。理由は簡単だった。生存率が低い。夜になれば人攫いが現れる。犯罪組織同士の抗争が始まる。死体が転がり朝になれば片付いている。そんな場所だった。

王国軍も放置している。冒険者も避ける。住人ですら長居しない。


だがそんな場所に毎日のように現れる女がいた。


「出てこい」


路地裏でカレンが言う。赤い髪に鋭い目付き、全身血まみれ。もっともその血のほとんどは他人のものだった。周囲の建物から男達が現れる。


 十人。


二十人。


全員武装している。



盗賊団。奴隷商人。誘拐犯。王都西区画では有名な連中だった。




「化け物女」




 男が吐き捨てる。






「今日は死ね」






「嫌だね」




 カレンは笑う。






「お前らが死ね」




 その瞬間。




 両手が緑色に輝いた。


 《ハイ・ディメンター》。


接触した対象を次元ごと吹き飛ばす超破壊能力。


防御不可能。


回避以外の対策なし。


まさしく災害だった。


カレンが踏み込む。


速い。


拳が接触した瞬間男ごと空間が消滅した。

爆発ではない。切断でもない。存在そのものの消失。

周囲へ衝撃波が走る。壁が吹き飛ぶ。

窓ガラスが砕け散る。男達がまとめて転がっていく。




「来いよ」




 カレンが挑発する。






「まだ生きてるだろ」




 完全に喧嘩を楽しんでいた。

しかしその時だった。頭上。建物の屋根。誰かいる、カレンが振り向く。

殺気がある。


強い・・・そこそこ・・・気になる。

屋根から少女が降りてくる。長い黒い髪。細身。無表情。美しい顔立ちで年齢は17歳(実年齢は14歳)ほど。初対面だった。だがカレンは直感で理解する。能力者だ。


「何だお前」


「見てた」


 少女が答える。


「面白かった」



「趣味悪いな」



「そうかも」


「お前、話し方なんかおかしいよな?転移者か?」


「ん、ロシアから来た」


「ロシアぁ?」


訳の分からない会話と相手にカレンはイライラしていた。

少女は周囲を見る。転がる犯罪者達。壊れた建物。


 血。


 そして。


カレン。


「強い」



 少女が言う。


「知ってる」


「自信家」


「事実だ」


 カレンは笑う。


 少女は少し考える。


 そして初めて名乗った。


「セレン」


「セレン・ヴォルゾフスキー」


セレンは転移してきたロシア出身の白人少女。

父が軍人で格闘技のマーシャルアーツが得意。母親から習ったロシア料理が自慢で美味しい。

普段は優しい動物好きな少女だが興奮するとロシア語を話す癖がある。



「そうか」



「カレン」



「カレン・オルタニアだ」



 これがレアニス最初の出会いだった。


 数日後。

カレンはまた同じ場所で暴れていた。

そして気付けばセレンもいる。


「お前またいるのか」


「暇だから」


「帰れ」


「嫌」



「面倒臭いな」



 少しずつ。本当に少しずつ。二人は一緒に行動するようになっていく。

ある日大規模な奴隷商人組織を潰した。

ある日人攫いの拠点を潰した。

ある日賞金首を捕まえた。


 その結果王都裏社会で噂されるようになる。


赤い怪物。


黒い亡霊。


二人組の能力者。


「組織名とかないの」


ある日セレンが聞いた。


「いるか?」


「知らない」


「じゃあなしだ」


「適当」


「面倒だからな」


「知ってる」


 この頃のカレンは知らない。


 もう一人、後に人生を変える少女がいることを。


 

王都南部。捨てられた温室跡地。



 そこで一人の少女が植物達と暮らしていた。

ティナ、ティナ・ロータス。 後にレアニスの中核になる少女だった。



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