後日談、六人の娘たちと亡霊
一度完結しましたが続きが描きたくなったので少し書きます。
完結詐欺ではないですがごめんなさい。
後日談 六人の娘たちと亡霊
パイロ・フェニックスが死んでから二年が過ぎていた、世界は少しずつ変わっている、能力者は以前ほど恐れられなくなり、王国も安定していた、大きな戦争もない、少なくとも表面上は、だからこそ六人が再び集まったのは偶然だった。
事件の始まりは北方の小さな村だった、村人が次々と行方不明になる、夜になると森の奥で緑色の光が見える、巨大な破壊音が聞こえる、王都調査隊が向かった、冒険者も向かった、しかし誰も戻らない。
その噂を聞き付けたのがスカーレットだった。
「面白そうですね」
それだけの理由で向かった。
相変わらずだった。
同じ頃、スノウも別ルートから情報を得ていた。
「緑色の光?」
違和感を覚える。
忘れられるはずがない。
《ハイ・ディメンター》。
カレンの能力色だった。
さらに黒猫も村で猫が消えているという理由で向かう。
ゴルディは報酬目的。
マリオネットは近くで人形販売をしていた。
アイリスは調査依頼を受けていた。
結果として六人全員が同じ村へ辿り着く。
「何でいるんですか」
ゴルディが言う。
「そっちこそ」
「偶然」
黒猫が答える。
「多分」
「絶対違います」
スノウがため息を吐いた。
久しぶりだった。
本当に。
全員揃うのはパイロの死以来である。
少し気まずい。
少し懐かしい。
そして。
誰も言わないが。
少し嬉しかった。
調査はすぐに始まった。
森の奥。
足跡がある。
人間ではない。
動物でもない。
巨大だった。
ティナの植物に似た痕跡もある。
さらに進む。
やがて。
それを見つける。
巨大なクレーターだった。
森が消えている。
木々が無い。
岩盤も無い。
綺麗に消滅している。
まるで。
次元ごと削り取られたように。
全員が黙る。
誰もが知っていた。
見覚えがありすぎた。
「嘘」
スノウが呟く。
「そんな」
「有り得ません」
ゴルディも固まる。
《ハイ・ディメンター》。
間違いなかった。
カレンの能力。
あの女しか使えない。
そのはずだった。
その瞬間。
森の奥で爆発が起きる。
轟音。
衝撃。
そして。
少女の悲鳴。
六人は同時に走った。
反射だった。
誰も指示していない。
昔みたいに。
現場へ到着した時。
そこには一人の少女がいた。
十二歳ほど。
能力暴走者だった。
右手が緑色に発光している。
周囲の森が消滅していた。
泣いている。
怯えている。
制御できていない。
「助けて」
少女が叫ぶ。
「止まらない」
「怖い」
「誰か」
緑色の光が暴走する。
空間が歪む。
周囲の樹木が消え、地面が削れ、空気そのものが軋むような異音を立てながら崩れ始める、その光景は嫌になるほど見覚えがあり、忘れたいのに忘れられない過去そのものだった。
六人は顔を見合わせた。
そして。
自然と笑った。
懐かしかったからだ。
「やりますか」
スノウが言う。
「やる」
黒猫が答える。
「助けましょう」
ゴルディも笑う。
「父なら殴ってましたね」
スカーレットが言う。
「カレンさんも殴る」
アイリスが頷く。
「却下です」
マリオネットが即答した。
久しぶりだった。
誰かを助けるために。
六人で戦うのは。
かつてはパイロの命令で、あるいは生き残るために能力を振るっていた、誰かの駒として、誰かの道具として、それ以外の生き方を知らなかった少女達が、今は自分達の意思で同じ方向を向いて立っている。
暴走する少女。
吹き荒れる次元崩壊。
その中心へ。
六人は飛び込む。
昔とは違う。
もう誰かの駒じゃない。
誰かの道具じゃない。
自分達の意志で。
自分達のために。
そして助けたいと思った誰かのために。
空では雪が降っていた。
静かに。
優しく。
まるで昔を知る誰かが見守るように。
そして。
ほんの一瞬だけ。
誰かが笑った気がした。
「暇だ」
そんな声が聞こえたような気がして。
六人は少しだけ笑った。
失われた仲間は帰ってこない。
あの日々も戻らない。
それでも彼女達はもう立ち止まらない、悲しみも後悔も抱えたまま前を向き、それぞれが選んだ人生を歩いている。
前へ走る。
今度は未来へ向かって。




