6−2.
アンディは必死に続ける。
「僕、やっと気付いたんだ!ジョゼットがどれだけ大事か!愛してるか!」
「っ・・・!」
「今まで親友って言葉に逃げてた!でも違ったんだ!」
ジョゼットは俯いたまま震えている。
アンディはそれを心が揺れているのだと思ってしまった。
「ジョゼットだって、本当は僕の事――」
パァン!!
乾いた音が庭園に響いた。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
頬が熱い。
ゆっくり顔を上げると、ジョゼットが震えていた。
碧い瞳には涙が滲んでいる。
「最低・・・・・。」
掠れた声だった。
「アンディなんか、大嫌い!」
アンディの呼吸が止まる。
「ジョゼット?」
「今さら何なのよ・・・っ!」
ジョゼットは涙を零しながら叫んだ。
「なんで今さらそんな事言うの!?」
アンディは言葉を失う。
「私はっ・・・!」
ジョゼットの声が震える。
「私はずっとアンディが好きだったのよ!!」
世界が止まった気がした。
「え・・・。」
ジョゼットは涙を流しながらアンディを睨む。
「子どもの頃からずっと好きだった!婚約したいって思ってた!一生一緒にいたいって思ってた!・・・愛してた。でも、今はもうーー」
アンディの頭が真っ白になる。
「アンディは拒否したじゃない!!何度も!何度も!」
十歳の頃の記憶が蘇る。
『ジョゼットと婚約なんて絶対嫌だ!』
あの日。
泣きそうな顔をしていたジョゼット。
「親友でいたいって言ったのはアンディでしょう!?」
「それは・・・。」
「私は何度も諦めようとした!」
ジョゼットの瞳から涙が溢れる。
「婚約者が出来ても、距離を取ろうとしても、アンディはずっと中途半端に優しかった!」
アンディは何も言えなかった。
全部本当だった。
「私がどれだけ苦しかったと思ってるの・・・!」
ジョゼットは震える声で続ける。
「婚約者に浮気みたいだって言われて、婚約破棄されて・・・!私はアンディとの関係を見直そうって頑張ったのに!」
胸が痛い。
苦しい。
自分がジョゼットを傷付けていた。
「なのに今さら好きとか愛してるだなんて・・・。」
ジョゼットは唇を噛む。
「そんなの酷いよ・・・。」
アンディは何も返せなかった。
好きだ。
愛してる。
伝えたい言葉は沢山あるのに。
ジョゼットの涙を見た瞬間、全部喉に詰まった。
「オリバーは・・・ちゃんと私を選んでくれた。」
ジョゼットが震える声で呟く。
アンディの胸が抉られる。
「私がアンディを想ったままでもいいって言ってくれたの。」
「・・・・・。」
「少しずつでいいから、自分を見てほしいって。」
アンディは拳を握り締めた。
悔しかった。
でも、敵わないと思った。
オリバーは最初からジョゼットを“女性”として見ていた。
大切にしていた。
向き合っていた。
自分みたいに“親友”なんて言葉で逃げていない。
「アンディはずっと、私の気持ちから逃げてたくせに!」
ジョゼットは涙を拭う。
「私がやっと前に進もうとした瞬間に引き戻さないで・・・最低よっ!」
アンディの喉が震えた。
「・・・ごめん。」
やっと出た言葉は、それだけだった。
ジョゼットは悲しそうに笑う。
「遅いのよ、アンディ。」
その一言が、何より痛かった。
ジョゼットは泣きながら屋敷の中へと入って行った。
アンディは立ち尽くす。
胸が苦しい。
息ができない。
やっと気付いた。
やっと掴めたと思った。
なのに。
自分はもう、とっくにジョゼットを傷付け過ぎていたのだ。
「僕は、それでも、ジョゼット君をーー。」
諦めきれない。




