6.息ができない
アンディは眠れなかった。
ベッドに入っても、目を閉じても、頭の中に浮かぶのはジョゼットばかりだった。
オリバーに抱き締められる姿。
頬を染めて笑う姿。
そして――キス。
「っ・・・・。」
胸が痛い。
息が詰まる。
アンディは何度目か分からない寝返りを打った。
苦しい。
どうしようもなく苦しい。
今までジョゼットはずっと隣にいた。
朝になれば会えて。笑いかければ笑い返してくれて。触れれば当たり前みたいに受け入れてくれた。
だから考えた事がなかった。
ジョゼットが他の男のものになる未来なんて。
「無理だ。」
耐えられない。
オリバーの隣で幸せそうに笑うジョゼットを思い出すだけで、胸の奥がぐちゃぐちゃになっていた。
“ジョゼットが好きだ。”
ようやく認めたその感情は、アンディが思っていたよりずっと重く、深かった。
「(誰にも渡したくない。僕だけを見てほしい。ずっと隣にいてほしい。)」
そんな醜い独占欲が胸を満たしていく。
「ジョゼット・・・。」
ポツリと呟いた愛しい人の名。
「(会いたい。今すぐ会って、全部伝えたい。親友じゃない。好きなんだって。ずっと前から、誰より特別だったんだって。愛してるんだって。)」
――でも。
オリバーを選んだジョゼットの笑顔が脳裏を過ぎる。
「っ・・・!」
胸が痛む。
けれど。
「(それでも諦められないよ・・・!)」
アンディはぎゅっとシーツを握り締めた。
数日後。
アンディはハーヴィー伯爵家の庭園にいた。
どうしても我慢できなかった。
何も言わずに諦めるなんて無理だった。
ジョゼットに会いたい。
話したい。
ちゃんと、自分の気持ちを。
「アンディ?」
聞き慣れた声に顔を上げる。
そこにはジョゼットが立っていた。
淡いクリーム色のドレス。
柔らかな金髪。
碧い瞳。
好きだと思った。
姿を見ただけで胸が苦しくなるくらい。
「ジョゼット・・・。」
ジョゼットは少し困ったように笑った。
「久しぶりね、急に来てどうしたの?」
その笑顔が以前より少し遠い。
アンディはそれだけで泣きそうになった。
「・・・話があるんだ。」
「話?」
ジョゼットは首を傾げた。
その仕草すら愛おしい。
アンディは意を決して口を開く。
「オリバーと付き合うの、やめて。」
ジョゼットの表情が固まった。
「・・・・・え?」
「お願いだからっ!」
アンディは必死だった。
「ジョゼットがオリバーといるのが嫌なんだ。」
「アンディ・・・何言って・・・。」
「僕、ジョゼットが好きなんだ!」
勢いのまま叫ぶ。
ずっと押し込めていた感情が溢れ出した。
「親友なんかじゃない!僕、ジョゼットが誰より好きなんだよ!いや、愛してるんだ!」
ジョゼットは目を見開いたまま固まっていた。
アンディはそんな彼女へ一歩近付く。
「だからオリバーと別れて。」
ジョゼットの顔色が変わる。
「・・・・・本気で言ってるの?」
「本気だよ!」




