4−2.
そして王宮で大規模な夜会が開かれる日がやって来た。
煌びやかなシャンデリア。
優雅な音楽。
華やかな貴族達。
アンディは婚約者のレイラ・フォルナー侯爵令嬢を伴って参加していた。
「アンディ様?」
「あ、うん」
だがアンディは落ち着かなかった。
理由はすぐに分かった。
「ジョゼット・・・。」
会場に現れたジョゼットに視線を奪われたのだ。
淡い水色のドレスに身を包んだジョゼットは、まるで妖精のように美しかった。
そしてその隣にはーー。
「オリバー・・・・・。」
自然にジョゼットをエスコートするオリバー。
2人は並ぶ姿が妙にお似合いで胸の奥がざわついた。
「(なんでオリバーがジョゼットの相手なの?)」
ジョゼットは以前みたいにアンディの元へ来ない。
楽しそうにオリバーと笑い合っている。
以前ならそこには自分がいたのに。
それが何故か無性に気に入らなかった。
「アンディ様、顔色が・・・。」
「え?あぁ、ごめんレイラ。」
レイラは不安げに微笑んだ。
だがアンディの視線は無意識にジョゼットを追ってしまう。
レイラとのダンス中でも談笑中でも・・・。
オリバーがジョゼットの細い腰に手を回す度、アンディの胸はモヤモヤした。
「(なんだこれ・・・気持ち悪い。)」
分からない。でも落ち着かない。胸がムカムカしてきた。
やがて夜会が盛り上がり、人々が音楽に夢中になる頃。
ジョゼットとオリバーが人混みを抜けていく姿が見えた。
「(どこ行くの?)」
気付けばアンディは後を追っていた。
ジョゼットとオリバーがやってきたのは王宮の庭園だった。
庭園は静かだった。
夜風が花の香りを運ぶ。
月明かりの下、オリバーはジョゼットに向き直った。
「返事が聞きたい・・・よければ。」
ジョゼットは緊張したように息を飲む。
「私・・・まだ全部整理できてないの。」
アンディの事を考えると胸が痛む。
大好きな親友。
失いたくない人。
でも。
「オリバーといると、すごくドキドキするの。」
オリバーの瞳が揺れた。
「優しくされると嬉しいし、一緒にいると安心するし・・・もっと一緒にいたいって思うの。」
ジョゼットは真っ赤になりながら言葉を続ける。
「だから・・・私でよければ、お願いします。」
一瞬、オリバーは信じられないという顔をした。
次の瞬間。
「やったァ!!」
オリバーは嬉しそうにジョゼットを抱き締める。
「わっ!」
優しく、でも大切そうに。
壊れ物を扱うみたいに抱き締められる。
「本当に、本当に嬉しいよ・・・!」
オリバーの声は震えていた。
それほど想ってくれていたのだと知って、ジョゼットの胸が熱くなる。
そしてオリバーはそっとジョゼットの頬に触れた。
「キス、してもいい?」
ジョゼットの顔が一気に赤くなる。
恥ずかしい。
でも嫌じゃない。
小さく頷くと、オリバーは愛おしそうに目を細めた。
そしてゆっくりと唇が重なる。
触れるだけの優しいキス。
頭が真っ白になる。
胸が苦しくて、熱くて、幸せだった。
――その光景を。
アンディは物陰から呆然と見つめていた。
「・・・・・え。」
理解が追いつかない。
ジョゼットが。
自分のジョゼットが。
オリバーとキスしている。
胸の奥がぐしゃぐしゃに掻き乱される。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
苦しい。
「(なんで・・・!?)」
呼吸が苦しい。
頭が痛い。
見たくないのに目が離せない。
オリバーに抱き締められて幸せそうに笑うジョゼット。
自分に向けた事のない顔。
知らない表情。
その瞬間。
アンディは初めて理解した。
――取られたくない。
親友だからじゃない。
そんな軽いものじゃない。
ジョゼットが他の男のものになるなんて嫌だ。
胸が焼けるように苦しい。
「(なんでオリバーなんだ・・・!!)」
なんで自分じゃないのか。
そこでアンディは、ようやく気付いてしまった。
ずっと否定し続けていた感情に。
ジョゼットが好きだ。
親友なんかじゃない。
誰にも渡したくないくらい。
ずっと、ずっと愛していたのだと。




