ルートAー2.
その日から、ジョゼットはおかしくなった。
オリバーと会っていても上の空。
ぼんやりしている。
「ジョゼット。」
ある日、オリバーが静かに言った。
「アンディに会ったんだろ。」
ジョゼットの肩が跳ねる。
「・・・・・。」
「やっぱり・・・諦めきれなかったんだな。」
優しい声だった。
責めるでもなく。
怒るでもなく。
ただ、理解したように。
「オリバー・・・。」
「俺、勘違いしてたかも。」
焦茶色の瞳が細められる。
「俺は、アンディを一途に好きだったジョゼットが好きだったのかもしれない。」
「っ・・・。」
ジョゼットの胸が痛んだ。
「だから、俺たち別れようか。」
泣きたくなる。
オリバーは本当に優しかった。
だからこそ、自分の気持ちに気付いてしまった今、隣にはいられない。
「・・・ごめんなさい。」
ジョゼットは震える声で言った。
オリバーは少しだけ笑う。
「幸せになれよ。」
こんな素敵な人は他にはいないだろうとジョゼットは思った。
その日の夕方。
ジョゼットは再びアンディの部屋へ向かった。
ノックをして入る。
ベッドの上には、まだシーツにくるまるアンディがいた。
「アンディ。」
もぞりとシーツの塊が動く。
「・・・ジョゼット?」
「オリバーと別れてきたわよ。」
その瞬間。
アンディが勢いよくシーツから顔を出した。
「えっ・・・?」
真っ赤な目が見開かれる。
ジョゼットはゆっくり両手を広げた。
「愛してくれるんでしょ?」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「うんっ!!」
アンディは勢いよくジョゼットの腕の中に飛び込んだ。
「ジョゼット!!」
ぎゅうっと抱き締められる。
アンディの身体は少し痩せていた。
「好き!大好き!!」
「うるさい。」
「愛してる!!」
子どもみたいに泣きながら笑うアンディに、ジョゼットは呆れながらも抱き締め返した。
ようやく。
ようやく二人の想いが通じ合ったのだ。
その後。
アンディはレイラとの婚約を解消した。
当然、多額の慰謝料が支払われた。
トラワイス家が数年は贅沢できない程の慰謝料が。
「ごめんなさい!私のせいで・・・。」
「別にいいわ。」
レイラはさっぱりした顔で言った。
レイラの目の前には申し訳なさそうなジョゼット。
「こうなる事も予想してましたし。」
「・・・ごめんなさい。」
ジョゼットが申し訳なさそうに言うと、レイラは肩をすくめる。
「慰謝料たくさんもらえましたもの。多少評判に傷は付きましたが万事解決。」
「・・・・・。」
「むしろ自由になれてラッキーですわ。」
晴れやかな表情のレイラ。
本当に恨みはなさそうだった。
「(ローディ様から子種をもらう前でよかったですわ。)」
レイラはあの時の事を思い出し、笑いそうになったが必死に耐えた。
そんなレイラにジョゼットはハテナマークを浮かばせた。
世の中には知らなくていい話があるのだ。
しばらくして。
独身貴族の男女が集まる夜会で、オリバーは偶然レイラと会った。
「アンディ様、本当に酷かったですわよね。」
「分かるよ。」
二人はアンディとジョゼットの話で妙に盛り上がった。
「ジョゼット様しか見えてませんでしたもの。」
「あいつは昔からそうだった。」
「婚約者としては最悪でしたわ。」
「同情する。」
気付けば二人は笑い合っていた。
そして何度も会ううちに、少しずつ距離が縮まっていく。
やがて。
「レイラ嬢」
オリバーが真っ直ぐ彼女を見つめる。
「俺と婚約してくれないか?」
レイラは目を丸くした後、ふっと笑った。
「・・・はい。」
そして二人は婚約し、すぐに結婚したとさ。
数年後。
今日はジョゼットとアンディの結婚式の日。
「見てアンディ!オリバー達の赤ちゃん!オリバーにそっくりよ!」
ジョゼットが嬉しそうに声を上げる。
レイラに抱かれている赤ん坊は、驚くほどオリバーそっくりだった。
「ほんとだ!」
そこには幸せな3人の家族の姿があった。
ジョゼットとアンディは幸せそうに笑いあう。
2人のその姿を見て皆が幸せそうに笑った。
ジョゼットはアンディの腕にそっと自分の腕を絡める。
アンディは嬉しそうに笑って、ジョゼットの手に口付けた。
遠回りして。
たくさん傷付いて。
それでも最後に。
二人はちゃんと愛し合うことが出来た。
ジョゼットとアンディは。
ようやく、本当の意味で結ばれた。
「ジョゼット愛してるよ!」
「私も愛してる!」
ルートA.END
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