ルートA.好きだった人が愛してるとか言ってきたからルート
この数日間。
ジョゼットに拒絶されてから、アンディは部屋から出なくなった。
カーテンは閉め切られ、部屋は薄暗い。
食事もまともに取っていない。
銀色の髪は乱れ、目の下には濃い隈が浮かんでいた。
ベッドの中。
アンディはシーツを頭まで被ったまま中でぼんやりとしていた。
「(どうしたらジョゼットは戻ってきてくれるんだろう?)」
何度も考えた。
「(どうしたらいい。どう謝ればいい。どうすれば昔みたいに笑ってくれる。)」
でも。
考えても考えても答えは出ない。
ジョゼットはオリバーを選んだ。
自分じゃなくて。
それが苦しくて、息が出来なかった。
「・・・ジョゼット・・・。」
掠れた声が漏れる。
胸が痛い。
会いたい。
抱き締めたい。
どうして今さらこんな気持ちになるのか、自分でも分からなかった。
だが、今さら理解してしまった。
自分はずっとジョゼットが好きだったのだ。
親友なんかじゃない。
誰よりも。
何よりも。
愛している。
「っ・・・・・!」
目頭が熱くなる。
アンディはシーツの中で小さく丸まった。
そして今日も使用人を困らせていた。
「アンディ様、少しでいいので食べてください・・・。」
使用人が何度頼んでも、アンディはベッドの中から出て来なかった。
「いらない・・・。」
「ですがもう何日も食べてません!」
「食べたくない。」
食欲がない。
何も喉を通らない。
頭の中はジョゼットでいっぱいだった。
何日もそんな状態が続くと、トワイス家は流石に危機感を覚え始めていた。
「・・・・・これはまずいな。」
ローディは深いため息を吐く。
このままでは死んでしまうかもと家族はアンディを心配していた。
そこでローディは、迷惑になると分かっていても直接ジョゼットに会いに行った。
ジョゼットしかアンディを救えないと知っていたから・・・。
ジョゼットに会いに行くと、ジョゼットは笑顔でローディを迎えた。
「ローディお兄様久しぶりね!何の用?」
そして現在のアンディの様子を伝えた。
「アンディが?」
ジョゼットは目を見開いた。
「何日も食べてない。」
ローディは疲れ切った顔で言う。
「正直、かなりまずい状態だ」
「・・・・・。」
ジョゼットは黙り込む。
ローディは少し言いづらそうに続けた。
「あいつ、ジョゼットに告白したんだろ。」
「・・・・・はい」
「アンディはフラれたんだよな。」
「・・・・・。」
ジョゼットは視線を落とした。
あの日の事を思い出す。
アンディは必死だった。
泣きそうな顔で、自分を引き止めようとしていた。
けれど。
「(遅すぎたのよ・・・・・。)」
もうアンディとは滅多な事では関わらないと思っていた矢先。
ローディがやってくるとは。
どうやら直ぐに滅多な事がやって来たみたいで、ジョゼットはため息を吐いた。
「頼む。」
ローディが頭を下げる。
「一回だけでいい。あいつに会って、飯を食べるよう説得してくれないか。」
「っ・・・。」
ジョゼットの胸が痛む。
まだ。
本当に微かにだけ。
アンディを好きな気持ちは残っていた。
「(これを最後にしよう。)」
ジョゼットは静かに決意する。
親友として。
本当に最後に。
「・・・・・分かった。一回だけだからね。」
こうしてジョゼットはフった男に会いに行く事になった。
オリバーへの罪悪感を抱えたまま。
久しぶりのアンディの部屋は暗かった。
カーテンが閉め切られ、空気も重い。
「アンディ。」
ジョゼットが声を掛ける。
ベッドの上で、シーツの塊がぴくりと動いた。
「・・・ジョゼット?」
掠れた声。
「何しに来たの。」
「ローディお兄様に頼まれたのよ。ご飯食べないんですって?」
「いらない。」
子どものような返事だった。
ジョゼットはため息を吐く。
「ちゃんと食べなさい。」
「・・・ねぇ。」
シーツの中から拗ねた声がした。
「どうやったらオリバーと別れてくれる?」
「はぁ?」
ジョゼットは呆れた。
「別れるわけないでしょ!」
「なんで。」
シーツがもぞもぞ動く。
「僕の方が何千何百倍もジョゼットが好きなのに。」
「・・・・・。」
「愛してるのに。」
「アンディ・・・。」
「僕と付き合ってよ。」
「・・・・・。」
「最初からやり直そう・・・?」
シーツ越しに口説いてくる声は、情けないくらい弱々しかった。
ジョゼットは苛立つ。
「男らしくないわね!」
勢いよくシーツを剥ぎ取った。
「ちゃんと顔見て言いなさいよ!」
そして。
ジョゼットは固まった。
「っ・・・!!」
久しぶりに見たアンディの顔は酷かった。
やつれている。
顔色も悪い。
目は泣き腫らして真っ赤だった。
頬には涙の跡まで残っている。
あのキラキラした美少年が。
たった、自分にフラれただけで。
こんなにも変わるなんて。
「ジョゼット・・・。」
アンディは涙ぐんだ目でジョゼットを見る。
その顔を見た瞬間。
ジョゼットの胸の奥で、何かが大きく揺れた。
「(……この人は。)」
思ってしまった。
「(この人は、私がいないと駄目なんだ。)」
駄目男にハマる駄目女みたいに。
ジョゼットの中で、母性が爆発した。
放っておけない。
支えなきゃ。
自分がこの人を守らなきゃ。
そして同時に気付いてしまう。
「(・・・まだ好きなんだ。)」
アンディを愛している気持ちが、完全には消えていなかった。
むしろ。
今、再び燃え上がってしまった。
「っ・・・!」
ジョゼットは慌てて立ち上がる。
「ジョゼット?」
「帰るっ!!」
「えっ。」
ジョゼットは逃げるように部屋を飛び出した。
廊下を走る。
胸が苦しい。
「最低じゃない・・・!」
涙が滲む。
「私にはオリバーがいるのに!」




